ドラムブレーキとは?ディスクブレーキとの違いを解説!
自動車で走行中にブレーキペダルを踏めば減速するのは当たり前ですが、実はブレーキには複数の種類があり、適切に使用しなければブレーキの効きが悪くなってしまいます。
車のブレーキの一つに、ドラムブレーキがあります。
「ドラム」と聞くと楽器を連想しますが、実際にドラムのような形をしています。
この記事では、自動車に使われているドラムブレーキとは何か、またディスクブレーキとの違いついても併せて解説します。
INDEX
ドラムブレーキとは
ドラムブレーキとは、車のブレーキシステムの一つです。
ブレーキドラムと呼ばれる密閉された円筒状の部品がタイヤの内側に付いており、タイヤと一体となって回転するブレーキのことです。
カバーが付いているため、外から見ただけでは単なるドラムのような筒にしか見えません。
ドラムブレーキの内部は、ホイールシリンダー、ブレーキライニング、ブレーキシューという部品で構成されています。
走行中にブレーキをかけると、配管の中に満たされているブレーキ液(ブレーキフルード)を通してホイールシリンダーに圧力がかかり、ホイールシリンダーのピストンがブレーキシューを押し出します。
押し出されたブレーキシューに貼り付けられたブレーキライニング(摩擦材)が、回転するブレーキドラムに押し付けられて、制動力(ブレーキ力)が発生するという仕組みです。
ブレーキシューは摩耗材のため、消耗して厚さが薄くなってきたときには、新品のブレーキシューをブレーキライニングに貼り替えることができます。
ドラムブレーキの種類
ここでは、ドラムブレーキの種類について紹介します。
リーディングトレーリングタイプ
リーディングトレーリングタイプのドラムブレーキには、左右両側にピストンが付いたホイールシリンダーが1つ装着されています。
ブレーキペダルから圧力が発生すると、左右のピストンが作動して左右2つのブレーキシューを押し出します。
ドラムの回転方向に押し付けられるシューを「リーディングシュー」、その反対方向に押し付けられるシューを「トレーリングシュー」と呼びます。
「リーディングシュー」がブレーキドラムに押し付けられると、ブレーキドラムの回転力でリーディングシューの押し付ける力がさらに強くなるという、「サーボ作用(自己倍力作用)」が働くことによって強力な制動力が発生します。
また、後進時にはブレーキドラムの回転方向が反対になるため、前進時に「トレーリングシュー」だったものが「リーディングシュー」となり、強力な制動力を発生します。
このようにリーディングトレーリングタイプは、前進・後退どちらでも強力な制動力を発生できるという特徴があります。
ツーリーディングタイプ
ツーリーディングタイプは、シリンダーが上下に2つ装着され、1つのホイールシリンダーが1つのブレーキシューを押し出します。
両方のブレーキシューがリーディングシューとして作動するため、前進時の制動力は、先に紹介した「リーディングトレーリングタイプ」を上回ります。
しかし、後進時には2つのブレーキシューともトレーリングシューとして作動するため、前進に対して制動力が弱くなってしまいます。
このツーリーディングタイプは、大きな制動力が必要とされるトラックの前輪に採用されることが多いです。
ドラムブレーキのメリットとデメリット
ここでは、ドラムブレーキのメリットとデメリットについて紹介します。
メリット
ドラムブレーキのメリットとして、構造がシンプルで低価格で作れるという点が挙げられます。
ドラムブレーキは構造がシンプルなため、低価格で製造できます。
そのため、価格競争力が重要なコンパクトカーや軽自動車などのリアブレーキに採用されることが多いです。
また、ドラムブレーキは摩擦材であるブレーキライニングが回転しているドラムに圧着する面積が広いため、制動力が強力になります。
さらに「サーボ作用(自己倍力作用)」によって強力な制動力が発生する、という特徴もあります。
作動時に異音が発生しにくい点も、メリットといえるでしょう。
デメリット
ドラムブレーキは密閉された構造のため、熱が内側にこもりやすく放熱性が悪い点がデメリットとして挙げられます。
長時間ブレーキを使ったり、強いブレーキを使ったりすると摩擦材であるブレーキシューが高温になってしまい、摩擦係数が下がってブレーキが効きづらくなってしまう「フェード現象」という状態になってしまいます。
長時間のブレーキや、繰り返されるブレーキは、「フェード現象」の他にも「ベーパーロック現象」を引き起こす可能性があります。
長い下り坂などでブレーキペダルを踏むフットブレーキを使いすぎてしまった場合、摩擦材で発生する摩擦熱がブレーキ油(ブレーキフルード)に伝わりブレーキ油が沸騰し、ブレーキ油内に気泡が発生します。
ブレーキ油内に気泡が発生してしまうと、ブレーキペダルを踏んだ圧力が気泡に吸収されてしまい、ブレーキの効きが悪くなってしまうことを「ベーパーロック現象」といいます。
また、ドラムブレーキのドラム部分はカバーでおおわれており、水や泥などがドラム内部に入りにくいようになっています。
しかし、一度ドラム内部に水が入ってしまうと水が抜けにくく、制動力が低下してしまうと回復しにくいというデメリットがあります。
ドラムブレーキとディスクブレーキの違い
ここでは、ディスクブレーキの構造やドラムブレーキとの違いについて紹介します。
ディスクブレーキの構造
ディスクブレーキは、ディスク(円盤状)の形をしたディスクローターがタイヤと一体となって回転し、それをブレーキパッドという摩耗材で両側から挟み込んで減速・停止する仕組みです。
乗用車などの前輪に、ディスクブレーキが採用されているケースが多いです。
また前輪のアルミホイールの隙間などから、ディスクローターが見える車種も多くあります。
ディスクブレーキの方が放熱性に優れている
ディスクブレーキは大半の部品が外気にさらされているため、放熱性に優れています。
また、回転するローターの遠心力で水を吹き飛ばしやすいため、雨天時でも安定した制動力を発揮しやすいというメリットがあります。
そのため、現在では負荷の大きな前輪側のブレーキには、軽自動車から高級車といわれる自動車まで、ほとんどの車にディスクブレーキが採用されています。
ドラムブレーキに比べて生産価格が高い
ディスクブレーキは、ドラムブレーキに比べて生産価格が高くなってしまうというデメリットがあります。
また、作動時に「鳴き(異音)」が発生しやすい点もデメリットといえるでしょう。
まとめ
この記事では、ドラムブレーキについて概要を解説しました。
ブレーキの効きが悪くなってしまう「フェード現象」「ベーパーロック現象」を防ぐには、下り坂でフットブレーキだけでなくエンジンブレーキを併用する、ブレーキ油(ブレーキフルード)を定期的に交換するといったことが重要となります。
ブレーキ油の特性は吸湿性が高いため、自動車の走行距離にかかわらず時間の経過とともに沸点が低下していきます。
そのため、あまり距離を走らない自動車でも、定期的にブレーキ油を交換する必要があります。
普段は効いて当たり前と思っているブレーキですが、仕組みや性質を知り安全に使うように心がけましょう。