11代目ホンダアコード登場 このクルマに乗ると活力が得られる[MJ]
ホンダは日本市場のフラッグシップとなるアコードをフルモデルチェンジ。
2024年春夜販売を開始すると発表し、23年12月より先行予約の受け付けを開始する。
それに先駆け一部報道陣に事前説明会が行われたので、全体のコンセプトやデザインについて解説したい。
〇文・写真:内田俊一
INDEX
弱みを強みに
日本市場では4年ぶりにフルモデルチェンジするホンダアコードは、デザインや走りの刷新に加え、最新の安全技術とインフォテイメントを備えたことが特徴だ。
日本市場への導入の狙いについて本田技研工業日本統括部商品ブランド部商品企画担当の永坂徹さんは、
「お客様ニーズが高い領域を充実させ、日本でホンダ発となる技術を搭載し、操る喜びに加え、先進性を兼ね備えた日本のホンダを牽引するモデル」と位置付け、高い安全やコネクト、ハイブリッドなど、日本市場においてホンダ初となる技術を搭載。
なぜこのような進化をとげたのか。
その背景について永坂さんは、
「先代のアコードの商品評価はデザインや走行性能は非常に高かったのですが、近年ニーズが伸びているナビやコネクト、安全機能といった領域でやや物足りないといった声がありました」
と振り返り、その弱みを強みに変えるべく開発したことになる。
また、ユーザー層も「60代のお客様を中心に購入していただいたが、40、50代のお客様の販売比率が落ちていました」とのこと。
そこで、新型アコードの進化の方向性としては、
「先代の強みであるデザインと走行性能は、上質さをキーワードに正常進化。弱みである安全やヒューマンインターフェースなどでは、ホンダセンシング360やGoogleビルトインといったホンダの日本市場では初となる機能を搭載しました」と説明し、
「こういった機能がもたらす先進移動体験を、新型アコードの新たな強み、価値として提供していきます」と述べた。
アーバンダンディーがターゲット
ホンダは新型車を開発する際にクルマ全体の方向性を定めるグランドコンセプトを作る。
新型アコードでは、“Driven by My ACCORD、相棒アコードとより高みへ”と定められた。
その背景について本田技研工業四輪事業本部四輪開発センターアコード開発責任者の横山尚希さんはアコードの歴史から語り始める。
「1970年代の半ばはエネルギー問題や新しい排ガス規制といったものの影響を受け、自動車にとっては大きな変革の時代でした。その中で、乗る人たちへのゆとりとクルマを取り巻く環境への調和を目指して初代のアコードが誕生しました。
以降、時代に先駆ける技術や価値を取り入れながら、社会とともに進化し、アコードはグローバルモデルと成長しました。
その成功は、初代から脈々と受け継いできた高い志と確かな技術によって、お客様との信頼関係を40年以上にわたって築き上げてきたことだと考えています」と述べる。
そして11代目となる新型アコードの開発では、
「この信頼をさらに強固なものへと育て上げ、単なる移動の道具としてではなくて、お客様のより充実した日常や人生の成功へ向けて、共に歩む存在となることを目指しました」といい、
「私たちはアコードによる輝ける新しい世界への飛躍、Creative New Worldを提案したい」とコメント。
そのターゲットとなるユーザーは2つ。
1つは既存顧客である50代後半から60代のお客様、もう1つは弱かった40代後半から50代前半のお客様だ。
前者は、「これまでアコードの価値やブランド等に共感いただいて歴代乗り継いでいただいたコアユーザー、特に60代のお客様の期待に応えられるような商品にしていきながら、さらに先代でなかなか満足度を上げることができなかった40代から50代のお客様にもお届けしていきたい」とのこと。
ターゲットを作る際、ある特定の仮想人物を想定することがある。
それをマーケティング用語でペルソナというのだが、アコードの場合は、
「自らの価値観を大切にし、自分らしく生きる40代から50代を想定。ペルソナのキーワードはアーバンダンディーとしました。
ペルソナ像の彼の名は工藤大、47歳です。
仕事や家族に対する責任感はとても強く、常に若々しくありたいと願っています。
また上質、高品質なものを選び、自分の気に入ったものにコストをかける、そういった価値観を持っています」。
そして、「新型アコードは彼のように毎日忙しくありながらも充実した生活を楽しんでいる人に使ってもらうことを常にイメージしながら開発を進め、自らの価値観を大切にし、自分らしく生きるアーバンダンディーのニーズをまとめていきました」と説明。
そのニーズとは、「新型アコードへの提供価値として“格・艶”、“整・冴”、“社会とともに進化”。この3つのキーワードを設定しました」とのこと。
そのアコードの3つの提供価値をもう少し詳しく教えてもらおう。
「格・艶はそこにいるだけで醸し出す成功者の存在感、格の高さや艶やかさを意味し、整・冴は移動中、次の目的地に向かう際に気持ちを整えることができるように、お客様の気持ちに素直に応えて細部にまで配慮が行き届いたクルマを意味します。
そして進化は革新技術によって社会とともに進化してきたアコードらしく、先進の知能化装備、コネクト技術や新しいハイブリッドシステムによって、優れた電動価値を提供します」と横山さん。
「私たちはアーバンダンディーな人々がこの新型アコードによってステータスを過不足なく表現でき、また次の目的地に向かう際には気持ちの切り替えを助けられる存在でありたいと考えています」と述べ、そういったところから、グランドコンセプトを“Driven by My ACCORD、相棒アコードとより高みへ”と定めていったのだ。
クリエイティブブラックタイがコンセプト
ではここからデザインについて本田技術研究所デザインセンターエクステリア担当の石井裕樹さんに説明してもらおう。
デザインコンセプトはクリエイティブブラックタイ。
「セダンに必要不可欠な不変性をしっかりと押さえつつ、遊び心のある価値観を兼ね備えたデザインを表現するためにこのキーワードになりました」と石井さん。
クリエイティブブラックタイは、「正装の基本を抑えながら個性を貫く姿勢を意味し、不変性と個性を高次元で調和させた新型アコードに相応しい魅力的なデザインの実現を目指しました」とこのワードを説明。
サイズはホイールベースと全高は先代モデルを踏襲しながら、全長を延長することで伸びやかさと格式を創出。また、リアトレッド(リアタイヤ間の幅)を拡幅することでさらに安定した佇まいを表現している。
運転のしやすいコックピット周りのデザインとして、フロントウィンドウの下限とフロントフードの見切りを水平基調とし、ベルトラインとフロントフードの稜線がつながって見えるよう設定することで、車両の動きや進行方向がつかみやすい前方視界を追求しているのも特徴だ。
エクステリアでは先代モデル同様にベルトラインを水平基調とすることでロー&ワイドな骨格を強調。
また、ボディの厚みを薄く見せることで、リアタイヤの存在感を高める効果ももたらしている。
全長を先代に対して延長した余裕を生かして、ボディ全体の伸びやかさによってより高い車格に見せることで、装飾(メッキパーツなど)に頼らない新しいフォーマルを表現している。
今回延長したフロントオーバーハングはノーズを低く長く見せることにも寄与。ボディサイドを貫くキャラクタラインと一体となった、シャープで力強いフロントエンドを表現している。
そしてサイドシルに施されたブラックガーニッシュはボディを薄く長く見せる効果を持たせ、車格の高さだけでなく軽快さをも感じさせるデザインとされた。
傾斜したリアビラーを持つスリークなキャビンを、より長さを強調したボディに対して後方に配置することで、のびやかで動きのあるスリークなシルエットを完成させている。
視界においても後退時に車両感覚がつかみやすい後側方視界を提供していると運転のしやすさも十分考慮されている。
インテリアのインターフェースデザイン
インテリアデザインは、「意のままの移動体験を提供するという志からスタートしました」と石井さん。
「ホンダが元来大切にしてきた使いやすさや、近年特に力を入れている視覚品質等をベースに、意のままの使える新しい移動体験を追求しました」という。
デザインコンセプトであるクリエイティブブラックタイと、新型アコードが目指す相棒としての役割を実現するために、「コンフォート、インテリジェンス、アドバンスと3つのテーマを設定し、開発に取り組みました」と話す。
この3つのテーマを、より具体的なキーワードと手法に落とし込み、
「コンフォートは流れを遮らないピラー構成、水平基調と連続感で包まれるインパネ、ドアモチーフを用い、インテリジェンスは大型ディスプレイオーディオを中央に配置し、情報を整理し、フレキシブルな使い勝手を提供しています。
そして、アドバンスはふさわしい車格を感じさせるコンソール、アームレストによって表現しています」と説明した。
さて、今回のアコードで力を入れているのがインフォテイメント系で、それはデザインでも変わらない。
石井さんによると、
「運転に集中でき、走行中の使いやすさを提供するインターフェースデザインとしています。アコード初採用となるエクスペリエンスセレクションダイヤル(センターパネル中央のダイヤル)は、3連ダイヤルを用いた従来型のヒーターコントロールユニットを脱却し、様々な機能をひとつのダイヤルに集約。
お気に入りの空調モードを一発で選んで起動できる上、空調、オーディオ、照明を自分好みに組み合わせたオリジナルモードを最大8個まで登録可能です。
また、ダイヤルディスプレイの時計デザインも計10種から選択できます。
モード選択などのダイヤル操作はディスプレイオーディオの画面上にフィードバック表示され、先進的、未来的でありながらわかりやすい表示操作を体験することができます」と説明。
視覚品質の観点では、
「一貫性を重視し、高揚感と遊び心のあるコーディネートを演出しました。各造形はモダンかつわかわかしい表現で統一。また、ドアを開けた際にしか目に触れることのないインストメンタルパネルのサイド面にまで気を配り、可能な限り部品点数を減らすことでシンプルな見え方としています」という。
安全運転支援機能も国内ホンダ初採用
パワートレインも一新された。
本田技研工業四輪事業本部四輪開発センター車体設計開発責任者の岡野克彦さんによると、「走りと環境のバランスを考慮して、新世代のe-HEV2リッターハイブリッドシステムを採用しています」という。
その概要は、エンジンや2モーター内蔵電気式CVTを刷新。
これによって、「優れた燃費性能やクリーン性能に加えて、トライバーの意思に忠実な動力性能を実現しました」とのこと。
そして、ホンダセンシング360という国内ではアコードが初採用となる安全運転支援システムは、約100度の有効画角を持つフロントセンターカメラを採用し、フロントレーダーと各コーナーに合計5台のミニ波レーダーを装備。
また、リアのコーナーレーダーはブラインドスポットイフォメーション用のレーダーの約25mに対して、今回大幅に長い90mまで後側方の車両計測ができるようになった。
また、近距離の障害物の検知に対しては、前後6台ずつのソナーセンサーを装備している。
またレーダーカメラの性能向上によって、現行のセンシングと比較し、従来機能の支援シーンの拡大に加えて、新たに3つの機能、左右前方から接近してくる交差車両の情報を通知する前方交差車両警報、レーンチェンジ時の接触事故抑制機能の車線変更時衝突抑制機能、そして、ドライバーがウインカーを操作すると一定条件下でシステムがステアリング操作をアシストする車線変更支援機能が追加された。
Googleビルドインを初採用
新型アコードの大きなキーはキャビンエクスペリエンスというコンセプトの元に開発された電装領域だ。
インパネ周りのデバイスは、ホンダのヒューマンマシンインターフェース(HMI)の考え方に基づきレイアウト。
ドライバーが向き合うステアリング周辺には運転のための情報を整理した情報系デバイスを配置。インパネ中央には操作系デバイスを最適化して配置された。
インパネ上部にはフロントウィンドウ投影型の大型ヘッドアップディスプレイを採用。先代モデルに対し約2倍の画面サイズで、より見やすく分かりやすくなっているという。
メーターは10.2インチデジタルグラフィックメーターを採用。
右側にはスピードメーターを、左側にはパワーメーターを配置。
中央のマルチインフォメーションディスプレイではホンダセンシングの作動状況や車両情報などのコンテンツをグラフィカルに表現。
右側のステアリングスイッチの操作で表示の切り替えや選択を行うことができる。
ディスプレイオーディオは、先代の8インチから12.3インチに拡大。
ホームキーお好みのアプリを設定できるショートカットキーをドライバー側に集中配置。
大画面のメリットを生かし、一画面にオーディオとエアコンを同時表示し複数の情報表示と簡易操作を集約し、使いやすさを向上させている。なおアプリの順番は好みで設定も可能だ。
新採用のエクスペリエンスセレクションダイヤルは、エアコンや照明などの車内環境の操作を一括して行えるシステムだ。
回して押すだけという簡単操作で運転に集中できるようになった。
具体的にはダイヤルを回し、ディスプレイに表示されるメニューからモードを選択し、そこでダイヤルプッシュすることで完結する。
新型アコードではGoogleビルドインを新たに採用。
GoogleアシスタントやGoogleマップなどGoogle Playで提供されているアプリを車内でも利用できる。
Googleアシスタントを使えば、ステアリングから手を離したり、前方から視線を移動することなく、電話やメールの送受信、音楽の再生、リマインダーの設定、車内の温度調整などができる。
また、Googleマップは音声操作でリアルタイムの交通情報、迂回ルートの自動表示などで、より早く目的地に到着するサポート。
また、Googleマップはメーターのマルチインフォメーションディスプレイに表示することも可能なので、少ない視線移動で安全に確認することができる。
Google Playで普段使っているお気に入りのアプリをスマートフォンで使うときのように、車内でも簡単にダウンロードも可能だ。
そのほかLEDアンビエントライトもエアコンの温度の上下で色が変わるほか、ドアを開けるとライトが連動し、ドアのライン照明がアンバーに点灯したり、音声認識起動中にはインパネのライン照明がライトブルーと紫に交互に明瞭するなどその状況においてカラーの変化などで視覚的に認識できるよう工夫されている。
一点の妥協もない走行性能
今回の事前説明会では走行性能などについての詳細は語られなかったが、開発責任者の横山さんはエンジン開発出身なので、手は抜いていないはずと思い、少しだけ突っ込んで話を聞いてみたところ、
「先代では走り出しで少しモタっとするシーンや、アクセルを踏んでいった時にエンジンの回転数が高止まりでビーンとなるなど、お客様のフィーリングとアンマッチなところがありました。
それをいかにお客様の気持ちに寄り添えるような制御するかにはすごく注力しました」という。
また、「エンジンなどのサウンドと加速などのGが連動しないと気持ちよさが出ないんです。そういうところでもお客様が気持ちいいなと思えるような調和をいろいろ入れてます」とも。
またエンジン関係もトルクアップをしていることからロックアップ(簡単にいうとエンジンとトランスミッションが直結し、燃費の向上を果たす)も幅広い範囲で可能となっている。
さらに、ハンドリングも、
「特殊な技術が入っているわけではありませんが、切ったぶんだけちゃんと曲がるよう、すごくセッティングに時間をかけて熟成させています。走りに関しては一点の妥協もありません」とその完成度に自信を見せていた。
横山さんと石井さんが口を揃えていっていたのは、
「次の仕事に向かうときに、このクルマに乗っていると、気持ちがすっきりしたり、整ったりしてさあやるぞと頑張れる、そんな力をもらえるようなクルマ、そういった活力をもらえるようなクルマにしたい」というものだった。
そういったクルマが彼らにとって良いクルマなのだという。
今回は電子デバイスが満載なので使いこなすには時間がかかることが予想される。
しかし、それができた暁には相棒アコードとしてドライバーに寄り添ったクルマになることだろう。