世界一高い車であるBugatti「La Voiture Noire(ラ・ヴォワチュール・ノワール)」とは?

ブガッティは、これまで数々のスーパーカーを誕生させてきたフランスのスポーツカーメーカーです。

なかでも「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は世界で最も高額な車として話題を集めました。
世界一高い車とはどのような車なのか気になっている人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ブガッティの「ラ・ヴォワチュール・ノワール」についてご紹介していきます。

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世界一高い車とは

ジュネーブ

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、ブガッティが創業110周年を記念して製造した世界で1台限りのワンオフモデルです。

2019年にスイスのジュネーブで開かれたモーターショーにて発表され、車両価格は税込みで1,670万ユーロ(日本円で約21億円)ともいわれ、市販車のなかで最も高額な車として大きな話題を集めました。

ラ・ヴォワチュール・ノワールは、2021年に顧客のもとへ納車されました。

ブガッティの歴史

世界一高い車を製造したブガッティはいつ頃創設されたのでしょうか。
ここでは、ブガッティの歴史について解説していきます。

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ブガッティの創設

ブガッティの創設者であるエットーレ・ブガッティは、イタリアのミラノで芸術家一族のもとに生まれます。

いくつかの会社を経て、1909年に自らの名前を冠した自動車会社「ブガッティ」を歴史的にも要所であるフランスのアルザス・ロレーヌ地方、モールスハイム(Molsheim:モルサイムとも呼ばれる)という所で設立しました。

ブガッティが開発したエンジンは優れた性能を発揮し、数々のレースで好成績を収めました。

タイプ35の生産をスタート

ブガッティタイプ35|撮影:内田俊一
タイプ 35|撮影:内田俊一

1924年には、レースカー「タイプ35」の生産を開始します。

タイプ35はモナコグランプリでの3年連続優勝やフランスグランプリで4年連続優勝など、さまざまなレースで好成績を残しました。

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タイプ41ロワイヤルの登場

ブガッティタイプ41ロワイヤル|撮影:内田俊一
タイプ 41 ロワイヤル|撮影:内田俊一

1927年には12.7リットルの直列8気筒エンジンを搭載した大型高級車「タイプ41ロワイヤル」を製造します。

タイプ41ロワイヤルは、1927年から1933年までの約6年間で6台しか生産されず、うち1台は大破してしまいました。

大破した1台は修復はされましたが、6台しか売れなかったのは、イギリスで約5,250ポンドという高額であったこと、世界恐慌の真っ只中にであったことが原因です。

同じ時期のロールスロイスが1,750ポンドであったことを考えるといかに高額であったかが想像できるでしょう。

ちなみに売れなかった車のエンジンは、汽車(レイルカー)に使用されました。

タイプ41ロワイヤルは、6台しか存在しなかったにも関わらず、その優れた存在感により後世にまで名を残す名車となりました。

特に、タイプ41ロワイヤルのなかでも有名な「クーペ・ナポレオン」で施されたカラーリングは、その後のブガッティ車でも使用され、ブガッティの象徴といわれているカラーです。

タイプ57の登場

ブガッティタイプ35|撮影:内田俊一
タイプ 57|撮影:内田俊一

ブガッティは、1934年に「タイプ57」の生産を開始し、1940年までに700台以上を製造しました。

タイプ57の中でも高性能版である「タイプ57S」「タイプ57SC」はあまりにも有名です。

Sは、「surbaissé(下げられた)」を意味し、全高を抑えたモデルとなっています。
「タイプ57SC」は、「タイプ57S」にターボチャージャーが搭載された車で、ほとんどの「タイプ57S」はオーナーの要望によりターボチャージャーを付けて「タイプ57SC」と化しました。

タイプ57は、3.3リットルの直列8気筒DOHCエンジンを搭載しており、なかでも「タイプS/SCアトランティーク・クーペ」は、200馬力、最高速度が200km/hを超えたとして有名な車です。

この車は、有名なファッションデザイナーであるラルフローレン(ralph lauren)が1台所有していることからも「世界一美しい車」と言われることもあります。

しかし、実は本当の「世界一美しい車」は、先述した「タイプ 35」のことを指します。

その理由はタイプ 35が、“黄金比”を実現していたためです。
真横から見ると全てのバランスが整う“黄金比”にしっかり当てはまっており、当時の芸術界から賞賛されていました。

ブガッティの買収

1939年にエットーレの息子であるジャン・ブガッティがテスト走行中の事故で亡くなってしまいました。

ジャンの求めていた先進性こそまさにブガッティの進むべき道だったのかもしれません。

ジャンを失った後もエットレーはその芸術的なセンスを活かし、さまざまなモデルの車を作りました。

しかし、第二次世界大戦や恐慌の煽りをうけ、エットレーが本当に作りたかった高価格帯のスポーツカーやサルーンはことごとく失敗に終わりました。

ついに世界大戦中に工場は破壊され、1947年にはエットーレ・ブガッティも亡くなってしまいました。

その後、1963年にフランスのイスパノ・スイザ社に買収され、「メシエ・ブガッティ」へと改名されます。

1987年には、ロマーノ・アルティオーリがブガッティの商標権を購入し、イタリアに「ブガッティ・アウトモビリ」を設立します。
「EB110」の製造・販売を手掛けますが、1995年に事業を終了しました。

その後、1998年にフォルクスワーゲンがブランド権利を取得し、子会社として「ブガッティ・オトモビル」を設立して現在に至ります。

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世界一高い車である「ブガッティ ラ・ヴォワチュール・ノワール」の特徴

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世界一高い車、ブガッティの「ラ・ヴォワチュール・ノワール」の特徴について紹介します。

モチーフは「タイプ 57 SC アトランティーク・クーペ」

車名の「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、日本語で「黒い車」を意味しています。
これは、「タイプ 57 SC アトランティーク・クーペ」をオマージュした車です。

タイプ 57 SC アトランティーク・クーペは最高速度200kn/hに達する性能を持つ美しい車で、設計者のジャン・ブガッティは「La Voiture Noire(ラ・ヴォワチュール・ノワール:黒い車)」と呼んでいました。

4台のうち1台は、第二次世界大戦の戦火を避けるため南フランスへと搬送されている途中に行方不明になり、2023年4月現在も発見されていません。

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、こうしたミステリアスな背景を持つ車をモチーフにデザインされたモデルです。

「シロン」をベースにハンドメイドで仕上げられたボディ

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、「シロン」をベース車両にしています。

漆黒のボディはカーボンファイバー製であり、すべてハンドメイドで仕上げられているのが特徴です。

ブガッティの名工たちの手により、優雅なクーペボディや車体の中央に引かれたクロームのラインなど、タイプ57SC アトランティーク・クーペのエッセンスが随所に見られます。

バンパーはボディと一体しており、リアには幅いっぱいに広がるテールランプと並んだ6本のエグゾーストが存在感を表しています。

8.0リットルW16気筒ターボエンジンを搭載

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」のミッドシップには、8.0リットルW16気筒+4ターボエンジンが搭載されています。

最大出力は1,500hp/6,700rpm、最大トルクは1,600Nmを引き出し、トランスミッションは7速デュアルクラッチ「DSG」、駆動方式は4WDです。

アートのように洗練されたエンジンは、0~100km/h加速2.5秒、最高速420km/hと超一級の性能を備えています。

伝説的な名車を現代的に解釈した「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、モータースポーツの輝かしい歴史や伝統を持つブガッティだからこそ造り上げられたスーパースポーツカーといえるでしょう。

世界一高い車の購入者について

20億円を超える「ラ・ヴォワチュール・ノワール」の購入者は誰なのでしょうか。

ブガッティは購入者を明かしておらず、「ブガッティの熱烈なコレクター」とだけ回答しているため、さまざまな憶測が飛び交っています。

一部メディアでは、世界的に有名なサッカー選手が購入したのではないかと報じられていますが、事実は不明です。

ほかにも、ポルシェ創業者一族でフォルクスワーゲングループの元会長であるフェルディナンド・ピエヒ氏や、カーコレクターとしても有名なラルフ・ローレン氏ではないかとも噂されています。

ラ・ヴォワチュール・ノワールのモチーフとなったタイプ57SC アトランティーク・クーペは世界に3台存在しており、うち1台を所有しているのがラルフ・ローレン氏です。

ラルフ・ローレン

ブガッティへの情熱があり、タイプ57SC アトランティーク・クーペをモチーフにした腕時計や置物を発表していることから、可能性が高いのではないかと推測する人もいます。

また、過去にヴィジョン・グランツーリスモを納車している、サウジアラビアの王子バドル・ビンサウード氏の名前も上がっています。

まとめ

この記事では、世界一高い車であるブガッティが販売した「ラ・ヴォワチュール・ノワール」について紹介しました。

20億円を超える「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は日本語で「黒い車」を意味し、ブガッティの創業110週年を記念して製造された世界に1台限りのワンオフモデルです。

1930年代にわずか4台のみ生産された「タイプ57SC アトランティーク・クーペ」をモチーフに現代的な解釈が加えられ、デザインされています。

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」はブガッティが築いてきた歴史や伝統が注ぎ込まれた、究極のスーパースポーツカーといえるでしょう。

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