けん引免許とは?取得する方法や条件などについて解説
仕事で車の運転を行う人は多いですが、その中でも、貨物などを運ぶ際には車の後ろにトレーラーなどを付けて運転をするという仕事があります。
街中で車が運ばれている光景を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
こうした運転のことを「けん引」と呼びます。
通常の運転とは異なるけん引運転では、「けん引免許」と呼ばれる免許が必要です。
この記事では、けん引免許の概要や必要性、取得するための方法や条件、罰則などについて解説します。
これからけん引免許の取得を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:免許証の種類はいくつある?種類ごとに運転できる車についても解説
INDEX
けん引免許とは?
けん引免許とは、車を連結してけん引するときに必要な免許のことです。
道路などを走っている際に、トレーラーなどを車に連結させてけん引している様子を見ることがあるでしょう。
そのような方法でのけん引を行う際にはけん引免許が必要になります。
けん引する側の車のことを一般に「けん引車」と呼び、けん引される側の車は「被けん引車」と呼ばれます。
この場合、トレーラーなどはエンジンなどの装備を持たないため、自走できません。
従って、けん引車の動力で被けん引車をけん引することになります。
一方、通常の自走できる車をけん引する際にも「けん引」という用語を使います。
いずれの場合でも、「車両の重量」と「最大積載量」を合わせた合計が750kgを超える場合には、けん引免許が必要です。
なお、けん引免許は3つに分けられます。
続いては、各免許について解説します。
けん引自動車第一種運転免許
まずは「けん引自動車第一種運転免許」です。
トレーラーをけん引する場合や、ほかの車をけん引する場合は、けん引自動車第一種運転免許が必要となります。
便宜的にけん引免許と呼ばれることもあります。
けん引自動車第二種免許
「第一種免許」と違い「第二種免許」は、旅客運送用の自動車を運転するという目的の際に必要となる免許です。
旅客運送でけん引を行うシーンが想像しにくいですが、たとえばトレーラーバスなどのような車両を旅客運送の用途で運転するときには、けん引自動車第二種免許が必要となります。
けん引小型トレーラー限定免許
通常、750kgを超える車両総重量を持つ車をけん引する場合には、先ほどのけん引自動車第一種運転免許が必要です。
一方でこの「けん引小型トレーラー限定免許」は、名前のとおり「限定」を付した免許となります。
車両総重量が「750kg超から2,000kg以下」の車両をけん引する場合に限って利用できる免許です。
けん引免許の必要性
同じように見える「けん引」という行動でも、免許が必要となるケースと必要ないケースがあります。
続いては、免許が必要となるケースとそうでないケースについて、詳しく解説します。
けん引免許が必要なケース
けん引免許が必要となるケースは、車両総重量が750kgを超える車両をけん引する場合です。
これが、けん引免許の原則的なルールです。
けん引免許が不要なケース
車両総重量が750kgを超えるものをけん引する際に免許が必要となるため、750kg以下の車両をけん引する場合、免許は不要です。
また、故障した車などをロープ・クレーンなどでけん引する場合も免許が不要となります。
ただし、この場合はけん引するロープに白い布を付けて、けん引状態であることが分かるようにしなければなりません。
加えて、けん引車と故障車との車間を5m以内に留める必要があり、故障車の重量によって最大時速も25km、35km、40kmと制限されています。
けん引の罰則について
けん引についての交通ルールを破った場合、交通違反として取り締まりを受けます。
注意するべきは「運転免許を持っているけれども必要なけん引免許を持っていない」というケースです。
このような場合、自動車運転免許については免許があるものの、けん引免許については「無免許運転」の扱いとなります。
無免許運転は道路交通法違反となり、罰則として「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」を課されます。
また「最低25点の交通違反点」が付与され、「免許取り消し」に加えて最低で2年の免許欠格期間、つまり免許の再取得ができない期間が発生するため要注意です。
通常の交通違反と比べて非常に重い罰則となるため、けん引を行う際には無免許運転とならないよう、充分注意しなければなりません。
関連記事:免許取消しされるとどうなる?条件や再取得する方法などを解説
けん引免許を取得できる条件とは
先に解説したように車両総重量750kgを超える車をけん引する場合には、けん引免許が必要ですが、取得するための条件があります。
けん引免許を取得するための条件は以下のとおりです。
- 二種、普通、中型、大型、大型特殊免許のうち、いずれかの運転免許を保有していること
- 満18歳以上であること
- 視力が「両眼で0.8」以上であり、かつ「一眼でそれぞれ0.5」以上であること
※メガネ・コンタクトレンズ使用可 - 深視力検査3回の平均誤差が2cm以下であること
- 赤・黄・青色を識別できること
- 10mの距離で、90dBの警告音が聞こえること
- 運転に支障をきたす恐れのある身体の障がいがないこと
けん引免許の取得方法
取得可能な条件を満たしたうえで実際にけん引免許を取得するには、大きく分けて2つの方法があります。
- 教習所を利用してけん引免許を取得する
- 運転免許試験場の一発試験で合格する
それぞれの方法の詳細について解説します。
教習所で免許を取得する
けん引免許を取得する一般的な方法として挙げられるのが、指定の教習所に入学して免許を取得する方法です。
一般的な運転免許と同様に、適性検査や運転適性検査(視力・聴力など)の検査を行ったのち、技能卒業検定を経て試験場にて適性検査を受けてけん引免許証の交付を受けます。
なお、教習所でのけん引免許の取得には、最短で12時間の技能試験を受けなければなりません。
一般的な運転免許と異なり学科試験はなく、実技(技能)試験のみとなります。
なお、教習所でけん引免許を取得する場合は、一般に約12~15万円ほどの費用が必要です。
運転免許センターの一発試験で免許を取得する
教習を経てけん引免許を取得する以外に、運転免許センターで行われる一発試験を受けるという方法もあります。
一発試験の場合は、運転免許センターにおいて技能卒業検定と適性試験の2段階の試験を受け、いずれも合格すればけん引免許を取得できます。
この一発試験でけん引免許を取得する場合の費用は、おおむね6,000円前後です。
まとめ
今回は、けん引免許の概要や必要性、取得するための方法や条件、罰則などについて解説しました。
トレーラーや貨物などを引きつつ運転をするけん引は、通常の運転とは異なる技術が必要です。
そのため、けん引は誰もが行ってよいものではなく、故障車をけん引する場合を除いてはけん免許を取得する必要があります。
けん引免許を取得せずに無免許で運転をすると重い罰則があるほか、運転者やほかのドライバーにも危険が及ぶため注意が必要です。
これからけん引免許の取得を考えている人は免許の種類や条件、取得方法などをしっかり確認し、免許取得を目指してみてはいかがでしょうか。