ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

ホンダN-BOXコンセプト・デザイン事前説明会開催!! Happy Rhythm Boxをコンセプトにさらに進化[MJ]

ホンダは日本で最も売れている軽スーパーハイトワゴンのN-BOXをフルモデルチェンジすると発表。

発売は2023年秋の予定だが、その前に一部メディア向けにその概要やデザインについての説明会が行われた。

そのグランドコンセプトは“HAPPY Rhythm BOX”というもの。

これにそって新型車の開発が行われたのだ。

〇文・写真:内田俊一 写真:ホンダ

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日本ならではのファーストカーにするために

2023ホンダn-box

“HAPPY Rhythm BOX”というグランドコンセプトに込められた思いは、運転が不安な方でも安心して堂々と運転できること。

2023ホンダn-box

大人4人がのびのび過ごせること。

子供も気軽に使える優しい配慮が歴代重要と考えられており、それらを踏まえながら、家族、家庭だけではなく仲間や趣味を大切にしたいという思いや、車内を自分だけのプライベート空間と考え、自宅にいるように寛ぎたいと考える方が多いこと。

2023ホンダn-box

そして、家族との豊かな暮らしを大切にしたい、自分らしく自由に仲間と楽しみたいといった価値観からこのワードが生まれた。

特に、毎日忙しいママさんたちが家族のためだけでなく、自分のためにも1日を“リズミカルに”N-BOXとともに過ごせるようにという思いが込められている。

さて、まずはパッケージングから話を始めよう。

2023ホンダn-box

これはクルマのレイアウト、簡単にいうとエンジンの搭載位置や居住空間、荷室の広さから始まり、それぞれに必要な機能部品などをどのように配し、かつ、居住空間をいかに快適性とともに確保し、N-BOXであれば“HAPPY Rhythm BOX”をいかに実現するかという、陰の立役者的な存在である。

その担当は本田技術研究所デザインセンターパッケージデザインPLの飯泉麻衣さんだ。

2023ホンダn-boxと飯泉さん

「N-BOXの持つ価値をずっと大切にしながらも、家族やこれから広がる仲間がもっと楽しくなる空間やデザインを目指しました」とその思いを語り始める。

まず、「2代目の魅力を実車を用いて検証し、守るべき価値を整理。そこから3つの価値を見出し、これを守りきることで、幅広い層に選んでいただける日本のファーストカーにできると考えました」という。

その考え方をひとことでいうと、「多くの人に愛されているN-BOXの魅力をさらに磨いたパッケージ」と表現。

「軽規格や安全性向上のため、各部の寸法を極端に変えることができない中で、2代目以上の魅力を創出しました」とその完成度に自信を見せる。

2023ホンダn-box

その3つの価値とは、すっきり視界で安心して堂々と運転できる。
2代目同等以上のゆとりでみんながのびのび過ごせる。
荷室での自転車の積載性を向上させるなどの優しい配慮である。

それぞれ説明しよう。

まずすっきり視界では、もともとN-BOXはミニバン同等のアイポイントの高さにより、運転に不慣れな方でも堂々と運転できる安心感のある見通しの良さを実現していた。

そこで新型N-BOXでは、そのアイポイントの高さを継承しながら、インホイールメーター(ステアリングの中からメーターを見るレイアウト)に変更された。

2023ホンダn-box

2代目はステアリングの上からメーターを見るレイアウトだった。
この採用理由は前方に向いている視線の移動がメーターを見るときにその移動量が少ないため、安全性が高まると判断したことによる。

しかし、小柄な女性から見難いという意見があったため、インパネを水平基調にしながらメーター位置を下げたのだ。

2023ホンダn-box
2023ホンダn-box

同時にメーターをTFT液晶にして視認性を向上。さらに速度表示を大きく上に配することで、視線移動を少なくする工夫がなされている。

2023ホンダn-box

居住性においても大人4人がゆったり座れるクラストップの空間を継承し、新型N-BOXでも依然として軽スーパーハイトワゴンにおけるトップを達成。

2023ホンダn-box

後席についてはショルダールームを拡大。
リアサイドポケット上部のハーネス(内部の配線)の通し方を変えることで室内側への張り出しを削ぎ落とし、2代目に対し55mm後席ショルダールーム(乗員の肩回り)を拡大した。

2023ホンダn-box

3つ目のやさしい使いやすさの例では、自転車の積載性が語られた。

「自転車で出かけた子供を予期せぬ雨などで迎えに行くことがあるでしょう。そのときに自転車を容易に積み下ろしできれば便利に違いない」
ということから2代目で重要視された自転車積載性は新型でも踏襲しながらも、

2023ホンダn-box

「前輪を乗せやすい荷室床面地上高や、積み下ろし時に自転車のハンドルが干渉しにくい開口の高さなど、いずれもクラストップとなる積載性を守っています。
さらに2代目に対しては荷室ボードの一部をくぼませることで、自転車の前輪が通りやすくすると同時に、自転車のスタンドを立てた際の安定性を高めました」と話す。

さらに、こういったシーンではテールゲートを跳ね上げなければいけない。

2023ホンダn-box

その際にテールゲートを開閉するためのドアハンドルの位置が高いと、小柄な人だとゲートの下端が自分にぶつかってしまうことが懸念される。

そこで新型では2代目より70mm位置を下げることで、その懸念を払しょくしている。因みにナンバープレートの上部にそのハンドルは隠されている。

N-BOXらしさは守りながら

2023ホンダn-box

新型N-BOXは先代から引き続き標準のN-BOXとN-BOXカスタムの2種類がラインナップされた。

標準車のN-BOXは、
「日本の家族の生活を見つめ直し、暮らしや街に調和するデザインを目指しています。一目でN-BOXとわかる骨格とシンプルで日常に自然と溶け込む親しみやすさを追求しました」と話すのは、本田技術研究所デザインセンターエクステリアデザインPLの小向貴大さんだ。

2023ホンダn-boxと小向さん

サイドは一目でN-BOXとわかるシルエットを踏襲。

2023ホンダn-box

これはルーフからサイドウインドウ下端と、そこからボディの割合がいわゆる“黄金比”を構成していることから、今回も守られた。
因みに、サイドウインドウ下端をより下げてみたところ、N-BOXには見えなかったそうだ。

またリア周りはテールゲート下端と、バンパーにボリュームを持たせ、どっしりとした見え方にすることで、軽自動車の枠を超えた普通車に匹敵するほどの安定感が目指された。

2023ホンダn-box

ヘッドライトは個性的だ。

小向さんによると、「安全と信頼の瞳をテーマに、灯体としての機能を集約させつつ、瞳を思わせるデザインを追求しました。
具体的には黒目のバランスや人のまぶたの隠れ量を参考に、親しみやすさを最も感じるデザインをミリ単位で吟味し、どの角度からでも瞳らしさが感じられる造形にしています」とのこと。

2023ホンダn-box

また小向さんはフロントグリルについても説明する。

「昨今、フィンやメッシュタイプが多い中、ボディカラーと同色で、シンプル家電のような丸穴デザインとして、新鮮な見え方や清潔感のある、暮らしに寄り添うイメージを目指しました」と説明。

2023ホンダn-box

ヘッドライトと並び、街に溶け込むやさしい表情が印象的だ。

給油リッドにはさりげない凹みが設けられ、最も少ない力で開けられる位置が一目でわかるような工夫もある。

2023ホンダn-box

ボディカラーは、シンプルで日常に溶け込む色を追求し、ベーシックカラーでは人気の高い無彩色を充実させた7色。

2023ホンダn-box

ファッションスタイルでは新色のオータムイエロー・パールを含めた3つの有彩色を設定。

2023ホンダn-box

オフホワイトのドアミラー、アウタードアハンドル、そしてボディ同色のトリムホイールを組み合わせ、さりげなくオシャレなコーディネートを目指している。

2023ホンダn-box
2023ホンダn-box
2023ホンダn-box

威圧感ではなく品格とパフォーマンスを感じさせたい

2023ホンダn-boxカスタム

N-BOX Customのデザインは、いままでの軽カスタムのような、他者に対しての威圧感や力強さを表現するのではなく、「自分を高める特別なもの、自分自身に誇りが持てるものにしたいという考えから、クラウドリズムをキーワードとして開発しました」と小向さん。

2023ホンダn-boxカスタム

「2代目以上の品格とハイパフォーマンスを感じさせるデザイン表現を目指し、フォーマルでありながらアグレッシブな走りを予感させるデザインです」とのこと。

顔周りは、左右のポジションランプと中央のグリーンライトをつなげ、全幅いっぱいの横一文字で光らせるのが特徴だ。
それによって加飾に頼らないでワイド感や存在感を強めている。

2023ホンダn-boxカスタム

また、ヘッドランプはレンズ周辺のメカニカルな形状により精緻で高性能感のある表情にしつつ、ホンダで初めて採用したダイレクトプロジェクションLEDにより、既存のリフレクター式に比べ光源の輪郭が鮮明になっているという。

2023ホンダn-boxカスタム

リアコンビランプはN-BOXと形状は共通だが、アウターレンズはN-BOX Custom伝統のクリアとされた。

2023ホンダn-boxカスタム

そのほかN-BOX Custom専用のパーツでは、フロントグリルはN-BOXの丸穴デザインに対して、立体感のある精緻な造形となり、光沢のあるブラック仕上げによって光の当たり方で表情が変化する見え方を実現。

また、フロント、サイド、リアにそれぞれにロー&ワイドのスタンスとエアロダイナミクスを考慮したカスタム専用デザインを採用している。

2023ホンダn-boxカスタム

ボディカラーはお客様の個性がより際立つバリエーションを提供。

ベーシックカラーはN-BOX Customらしいスポーティーでスタイリッシュな色調とし、2代目で好評のミッドナイトブルービーム・メタリックを加えた6色をラインナップ。

2023ホンダn-box

また、コーディネートスタイルとして全3色がラインナップされた。モノトーンまたはブラックルーツの2トーンを選択できる。

いかに運転しやすく、快適に過ごせる室内にするか

2023ホンダn-box

インテリアは、家族はもちろん、友達や、ここから広がる仲間たちが楽しく集える、そんな空間を目指してデザインされた。

「どんな人でも自然と楽しく集えるよう、見て、優しい気遣い。乗って、安心して過ごせる。使って、すっきり使える。そんな空間を目指しました」
と話すのは本田技術研究所デザインセンターCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインPLの松村美月さんだ。

本田技術研究所デザインセンターCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインPLの松村美月さん

優しい気遣いでは、「インテリア空間全体をひとつの大きなラウンドリビングと捉え、乗員みんなをぐるっと優しく包み込むことで一体感が生まれ、自然に会話が弾む。そんな空間を目指しました。インパネ、ドア、シートをシームレスにつなげることで、乗員同士の会話を豊かにし、また、守られている安心感を得られる空間になっています」と説明。

2023ホンダn-box

さらに、「人に優しいカドマル処理や、インパネやトレイ端末など要所要所の角を大らかに丸めたカドマル処理にすることで、人に対して優しい印象を与えています」という。

2023ホンダn-box

続いて安心して過ごせるについては、「運転に不安がある方でも、すっきり見やすい視界と骨格によって、毎日安心して使ってもらえる空間を目指しました」。

2023ホンダn-box

視界は、前述の通りメーターをインホイールにレイアウトすると同時に、インパネ上面をフラットですっきりとしたデザインとされた。

車幅感がつかみやすい骨格も目指され、各部を水平・直線基調とすることで、車幅感覚や自車の向きを把握しやすくしている。

2023ホンダn-box

インパネは上面のフラット化とともに全体を水平基調で構築し、車幅やクルマの傾き姿勢がつかみやすいように配慮。窓ガラス下端とフロントフードの稜線を直線的に連続させることで進行方向を把握しやすくしている。

また、毎日が楽しくなる表示として、メーターにカレンダー表示やバースデー表示なども追加。
特にカレンダー表示については、日付の背景に都道府県の名所写真が車に乗るためにランダムに表示され、家族や仲間とどこかに出かけたくなる演出となっている。

2023ホンダn-box

後席周りでは、子どもが楽しく過ごせる仕掛けなどを入れることで、ドライバーが安心して過ごせる空間とされ、一人で乗り寄り楽々グリップを装備。

2023ホンダn-box

サイドライニングの一部にグリップ状のくぼみを設けることで、子どもや高齢者が一人で楽々と乗り降りできる配慮だ。

2023ホンダn-box

また、遊び心満載で楽しいライニングとして、トランクサイドポケットを2代目はドリンクホルダーだけだったが、ボックスティッシュを入れることが可能となり、大幅に容量を拡大。

2023ホンダn-box

また、ポケットの下の部分にスリット状の穴を開けることで子どもが入れたおもちゃなどが見えるような工夫や、スピーカー部分の周辺のスリットをレールのようにして、ミニカーを走らせて遊ぶこともできる。

2023ホンダn-box
2023ホンダn-box

また、思わずディスプレイをしたくなるインパネトレイも用意。

上部のインパネトレイは、大切なものを思わず飾りたくなる出窓のような雰囲気を狙い、コルクのような質感と形状でデザイン。

2023ホンダn-box

さらに下部のグローブボックスは、荷物の多い子育て層のために容量を拡大し、2代目に対し約2倍の容量を達成。

オーナーズマニュアル、ボックスティッシュに加え、ポーチやテーブル類、さらには子育て層が毎日使う除菌シートなどがすっきり収納できるようになった。

2023ホンダn-box

また、充電コードを挟まないスリット形状が一部あり、タブレットなどを充電しながら収納できて便利になっている。

2023ホンダn-box

N-BOXのインテリアコーディネートは、毎日すっきり使えるリビングライクなコーディネートが目指された。

「乗る人が毎日くつろいで過ごせる空間を目指し、思わずディスプレイしたくなる異色ミックス樹脂トレイを採用。ベージュを基調に複数のカラーを取り入れました。
樹脂製でありながらコルクのような見え方を実現し、塗装やフィルムといった従来加飾とは異なり、樹脂材そのもので加飾と機能を両立させる新しい表現です」と松村さん。

2023ホンダn-box

また“シボ”と呼ばれる模様も新たに開発。
クルマのインパネ上部やドア内張などをよく見ると模様が入っているのを見ることができるだろう。

これがシボと呼ばれるものだ。通常は革をモチーフにしたものや幾何学模様が多かったが、今回は新開発したシボを採用。

これはおうちの壁材のようなリビングライクな石面調シボになっている。

2023ホンダn-box

これは「自宅でくつろぐようなリラックス感の提供を目指しました」という。

2023ホンダn-box

また、シートマテリアルはメイン部に奥行きのある杢ファブリックを採用し、ソファーのような質感と柔らかな触感で乗る人を心地よく包み込むシートに仕上げた。

2023ホンダn-box

また、子どもがよく手をつくシートクッション端末や肩口部分を汚れが目立ちにくいダークグレーにしているため、子育て層のお客様にも安心して使えるようになっている。

一方、N-BOX Customでは質感高いパフォーマンスが感じられるコーディネートが目指された。

2023ホンダn-box

松村さんは、「しっとりと手に馴染む本革巻ステアリングホイールを採用したほか、エアコンスイッチ、シフトレバーなど操作部の要所に視認性の高いシルバー加飾を施しました」と話す。

2023ホンダn-box

照明を加飾表現のひとつと位置づけ、インパネトレイ奥に光源を配置したLEDアンビエントランプを採用しました。

光量や反射角度を吟味し、美しいグラデーションを浮かべらせることで、ゆったりと贅沢に過ごせる空間が目指された。

N-BOX Customの異色ミックス樹脂トレイはコルク調のN-BOXに対し、ブラックを基調に白色や赤茶色をミックスしたストーン調のトレイとした。

2023ホンダn-box

「硬質でストイックなイメージでN-BOX Customのインテリアに調和させています」という。

今回の説明はコンセプトとデザインに特化したものだった。

あくまでもキープコンセプトではありながら、ユーザーの声を聴きながら手を入れるところは入れ、長所を満遍なく伸ばしたのが今回のフルモデルチェンジといえる。

2023ホンダn-box

ママ層の使い勝手や運転のしやすさが向上することは、同時にほかのユーザー層にも同様の効果が表れるという発想のもとに、今回はいかにママ層に受け入れられるかが考えられた。

当然いま述べたようにN-BOXのユーザーはママ層だけでなくダウンサイザー(ミニバンや大型のセダンなど)も多い。

従って、ファーストカーで使われる傾向もあることから、新型では今回の静的部分だけではなく、動的部分にもかなり手が加えられていることが予想される。

今後その説明会も予定されているようなので、開催され次第、改めてお伝えしたい。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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