いくら夢や理想を語っても、充電スタンドをつくっても電気自動車は普及しない
電気自動車(BEV)の市場は近年、多くの注目を集めています。
環境保護と持続可能な社会の構築に向けた大きな一歩として、多くの企業や政府がEVの普及に力を入れていますが、この動きにも関わらず、BEVの普及率は依然として低いのが現実です。
この記事では、BEVがなぜ広く普及していないのか、その要因を詳しく掘り下げ、解決策を探ります。
持続可能な地球のためを思う方はぜひ最後まで読んで、考え方の1つとして捉えていただければ幸いです。
関連記事:【2024年】国産BEV(電気自動車)一覧!メリット・デメリット・ランキングも紹介!
INDEX
BEV普及の障壁となっていると考えられる問題
ここではまず、BEV普及の障壁となっているであろう問題点を洗い出しました。
大きく以下のような事柄が、BEVが普及しない理由として考えられます。
- インフラの問題
- バッテリー充電にかかる時間
- BEVの本体車両価格
- 環境への影響に対する不信感
- 航続距離(一充電走行距離)への不安
- バッテリーの寿命
- 法規制や制作の課題
インフラの問題
EV普及の最大の障壁の一つは、充電インフラの不足です。
地方を中心とした多くの地域では充電スタンドの数が不十分であり、長距離を移動するドライバーにとっては大きな懸念点となっています。
現在、日本国内に設置されている充電スタンドの数は、電気自動車の需要に追いついていません。
特に地方都市や郊外では、充電スタンドの数が限られており、BEVを利用することが困難な現状が未だ解決されていません。
高速道路やコンビニエンスストア、ショッピングモールなどに併設されてはいるので改善は進んでいますが、コンビニまで車で行くような立地では初期の設置費用に見合わないという懸念点があります。
関連記事:これから車を買うなら電気自動車(EV)?今後の展開も予想
バッテリー充電にかかる時間
充電時間もBEV普及の障壁となっています。
現在の技術では、急速充電を使用しなければ完全に充電するのに数時間かかることが一般的です。
これに対し、従来のガソリン車では数分で給油が完了します。
ここまで時間に差があると、多くのユーザーにとって大きなデメリットとなり購入をためらってしまいます。
関連記事:クルマが走るにはエネルギー補給が必要 EV充電の初心者マニュアル
BEVの本体車両価格
BEV普及の障壁の1つは、その高い本体車両価格にもあると考えられます。
従来のガソリン車と比較して、BEVはバッテリーや技術開発のコストが高く、これが車両価格に反映されています。
価格は一般的に消費者の購入意欲を低下させます。
特に、経済的に余裕のない層にとって、BEVの購入は大きな負担となり得ます。
例外として、ギッフェン財などの劣等財・下級財は価格が低いほど需要が下がります。
ギッフェン財とは、経済学の文脈で使用される用語で、価格が上昇すると需要が増加する財を指し、一般的に低所得者向けの代替品や必需品がこれに当たります。
車は贅沢品的な要素もあり、高価格なものほど需要が高い側面もあるため、BEVの開発コストをそこに反映させることで需要を落とさずにEVシフトを進める策も考えられます。
また、2023年に販売されたBEVであるレクサスRZ450e “Version L”(880万円〜)とその同一グレードであるレクサスRX450h “Version L”(872万円〜)の販売価格の差は8万円しかなく、BEVとほぼ同一の価格にまで標準車の価格を上げることで、EVシフトを進める策をとっています。
環境への影響に対する不信感
BEVは、ゼロエミッションを実現することで環境に優しいとされています。
しかし、そのバッテリーの製造過程や廃棄における環境への影響も無視できません。
バッテリーの製造には大量のエネルギーが必要であり、また使用済みバッテリーのリサイクルも難しい問題であるため、不信感を抱いている方も多くいらっしゃいます。
EVバッテリーの製造過程では、リチウム、コバルト、ニッケルなどの鉱物が必要です。
このような鉱物の採掘は、環境破壊だけでなく時に人権問題をも引き起こすことがあります。
また、バッテリー製造自体も大量のエネルギーを消費し、CO2排出の原因となっています。
使用済みのEVバッテリーの処理も課題です。
バッテリーのリサイクル技術はまだ発展途上であり、廃棄されることも多くあるため資源の無駄使いであるという意見です。
確かにBEVの動力源であるリチウムイオン電池はリサイクルできないという現実があるため、リユースによる再利用が現実的です。
しかし、そもそも最近のBEVのバッテリーに関しては寿命を迎えている車が多くなく、リチウムイオン電池の新たな使い道は良くも悪くも未知数です。
リチウムイオン電池に関しては「可能性はあるもののビジネスモデルとして成り立つのか」などの葛藤がありますが、パリ協定での目標として二酸化炭素の削減の方を優先することが地球規模での課題となっています。
関連記事:電気自動車(EV)の仕組みって?種類や充電方法、SDGsへの貢献を解説
航続距離(一充電走行距離)への不安
現在のBEVは、一回の充電で走行できる距離(航続距離・一充電走行距離)に限界があり、長距離を頻繁に移動するユーザーにとって大きな不安材料となっています。
充電のたびに限られた距離しか走れないことに対する不便さは、多くの人にとって大きな問題です。
しかし、軽自動車である三菱eKクロスEV、日産サクラの一充電走行距離は180kmであり、普通自動車であればもっと長く走行できます。
少し前の2020年発売車種であるホンダのhonda e、マツダのMX-30 EVこそ300kmに届いていないものの、2022年モデルのスバル ソルテラ、トヨタ bZ4X、日産アリアなどは400kmを超えているため、普段の街乗りであれば特に問題はありません。
関連記事:第10回を迎えた白馬EVラリーに三菱ekクロスEVで参加
バッテリーの寿命
BEVの性能は大きくバッテリーに依存します。バッテリーの寿命も重要な問題です。
長い間使う車としてBEVが向いていないというのは現状の事実としてあります。
10年10万kmほどがガソリン車の買い替え時期と言われていますが、愛着を持ち丁寧なメンテナンスをしっかりと行うことで、もっと長く乗ることも可能です。
しかし、どうしても性能の低下は免れません。
BEVの場合、寿命が長いことを想定されていないという事実があり、寿命の前の長期間にわたる使用による性能の低下は、ユーザーのBEVに対する信頼性を損なう要因となります。
関連記事:車の走行距離は20万キロを超えても余裕?長く乗るためのメンテナンス方法について
法規制や政策の課題
BEVの普及は、現行の法規制や政策によっても影響を受けます。
特に、BEVに関する税制や補助金の制度は、その普及に大きな影響を及ぼしています。
政府の積極的な支援政策は、BEV普及のために不可欠で、補助金や税制優遇など、具体的な支援策が求められています。
CEV補助金は毎年のように「予算が尽きる前に申告を」と急かすような言い方をされていますが、予算を使い切ったことはまだ起こっておらず「余裕を持って申告を」程度の言い方でなければ不信感が増す結果となります。
確かに尽きる可能性があることは理解できますが、令和の時代に脅すような言い方で人を動かすのは時代的にあっておらず、ポジティブな印象を与えるような告知の仕方ともっと広範囲に告知する手法を探すべきという意見もあります。
関連記事:令和5年度(2023年)CEV補助金はいつまで?対象車一覧と令和4年度(2022年)との変更点
実は急速に進んでいる技術革新
EV普及の障壁を克服するためには、技術革新が不可欠です。
充電時間の短縮、バッテリーのコスト削減、リサイクル技術の向上など、多方面での技術開発が求められているのですが、実は逆に使う人間側が追いついていないほど急速に進んでいます。
見返すと以下のような問題点がEVシフトへの懸念点でした。
- インフラの問題
- バッテリー充電にかかる時間
- BEVの本体車両価格
- 環境への影響に対する不信感
- 航続距離(一充電走行距離)への不安
- バッテリーの寿命
- 法規制や制作の課題
このうち、対策が着々と進んでいるのは以下のような事柄です。
- インフラ設備の増加
- バッテリー充電時間の短縮
- 一充電走行距離の改善
一方で解決に遅れをとっているのは以下のような事柄です。
- 本体車両価格:経済的な課題
- 不信感:心理的な課題
- 不安感:心理的な課題
- 法規制:法的、社会的な課題
バッテリーの寿命、バッテリーの再利用こそ技術的な問題が残っていますが、それ以外は使う人間側の方が大きく遅れをとっています。
全て簡単に払拭できるものでもありませんが、現実を知って対策をどう考えるかが鍵となるように思えます。
まとめ
BEVの普及は多くの障壁に直面していますが、上に挙げたような問題に対処することで、持続可能な交通手段としての地位を確立することができます。
政府、業界、消費者が協力し、これらの障壁を克服するための努力が求められています。
そして将来的には、これらの課題が解決され、BEVがより広く普及することが期待されています。