サーキットと公道の両方を見据えた新たなラインナップ、それがフェラーリSF90XXストラダーレだ[MJ]
フェラーリジャパンは、SF90ストラダーレをベースとした799台の限定生産の新たなスペシャルシリーズ、SF90XXストラダーレを国内初披露した。
価格は9800万円からで、同時にスパイダーもラインナップ。こちらは1億801万円からだ。
〇写真・文:内田俊一 写真:フェラーリ
フェラーリのラインナップ
フェラーリには大きく3つのラインナップがある。
まず通常のカタログモデルとなる、SF90ストラダーレやプロサングエなどだ。
そしてそのクルマ達をベースとしてよりパワーアップさせ、特にレーシング特性を向上させたスペシャルバージョンである599GTOやF12TDF、488ピスタなどのクルマ達がある。
そして最後はXXプログラムと呼ばれる、一部のエキスパートオーナー向けにサーキットオンリーのクルマでサーキットを体験してもらうためのF599XX EvoやFXX K Evoなどである。
そして今回発表されたSF90XXストラダーレはスペシャルバージョンとXXプログラムのそれぞれで得た経験を生かして、両プログラムのエンジニアリング・コンセプトを最大限に実現した公道走行可能なモデルなのである。
新たなコンセプトを纏ったモデル
その名の通りSF90 XXストラダーレは、SF90ストラダーレをベースとしており、PHEVであることも変わらない。
具体的にはV型8気筒エンジンと3基の電気モーターが組み合わされ、2基のモーターはフロントアクスル左右に独立して搭載。
残りの1基はリアのエンジンとギアボックスの間に配置。
この構成によって、最高出力は1030馬力に達し(SF90ストラダーレから30馬力アップ)している。
もう少し詳細に説明しよう。
V型8気筒ターボエンジンは最高出力797馬力を誇り、リアミッドシップに搭載。
吸排気ダクトをポリッシュすることで効率性を高め、燃焼室への特殊な機械加工と新ピストンによって圧縮比を引き上げることでパワーアップを実現。
同時に排気ガスを浄化させる二次空気導入装置を除去することで3.5kgの軽量化が図られた。
続いて3基の電気モーターは最高出力が233 馬力/171 kWに達し、後述するエクストラブーストも実現。
高性能リチウムイオンバッテリーによりフル電動モードでの航続距離は25 km、135 km/hの最高速度まで可能とされた。
そのエクストラブーストはF1由来の制御ロジックで短時間で強力なパワーを発揮するものだ。
eマネッティーノと呼ばれる走行モードの切り替えでQuelifyingモード選択時のみ作動し、車両がコーナーを立ちあがる際にパワーを上乗せする。
この機能単独で、フィオラノ(フェラーリのテストコース)のラップタイムが0.25秒短縮するという。
やはりこういったスーパースポーツモデルであれば、パフォーマンスは語っておきたいところだ。
最高速度は320 km/h、0-100 km/hは2.3秒、0-200 km/h加速は6.5秒と発表。
SF90ストラダーレと比較すると最高速は同じながら0-100km/h、0-200km/hともは0.2秒速くなっている。
固定式ウイング復活
エクステリアで最も特徴的なのはリアウイングにある。
F40やF50で採用されて以来の固定式ウイングが取り付けられた。
同時にその下にあるボディ側の平面部分にシャットオブガーニーと呼ばれる空気抵抗を変化させる機能を搭載。
通常はボディとフラットな形状でスムーズに空気を流し、ダウンフォースが必要な場合にはその部分がボディの中に下がり気流の変化をもたらすことで空気抵抗を増やす。
その結果としてダウンフォースを稼ぐことができるのだ。
こういったエアロダイナミクスの結果から、リア周りはベースモデルのSF90ストラダーレとは違った印象になっている。
一方フロント周りでは特徴的なハンマーヘッドシャークノーズを、SF90ストラダーレと同様に採用。
ただし、シャープなラインをもたらしながらもフロントスプリッター(バンパーコーナーの整流効果をもたらすもの)がSF90 ストラダーレよりも大型化されるなど、より空力に関しては改良が加えられている。
それは走りにも如実に表れており、フロントの安定性が向上したことにより、5速や6速でまわることができる高速コーナーではミリ単位でラインをトレースすることが可能な一方、タイトターンではドライバーの限界に挑む大胆な動きも可能になっているそうだ。
当然軽量化も徹底されており、インテリアではドアパネル、トンネルコンソール、そしてシートなどが主なものだ。
特にシートは、運転する楽しみをより向上させるためにXXシリーズからインスピレーションを得て開発。軽量(SF90ストラダーレからマイナス1.3kg)でありながら、快適性も実現しているという。
改めて記しておくと、XXプログラムから生まれた新たなコンセプトがこのSF90XXストラダーレである。
サーキット占領車でないことから実用面でも配慮され、乗り心地の向上のため、シートなどに新たな取り組みが見える。
そうはいってもサーキット走行も見据えたものなので、ハードな走りにも十分耐えうる、いや、楽しむことができるクルマに仕上がっているようだ。
これまでのようにロードカーとそれをベースにしたハイパフォーマンスカー、そしてサーキット専用車だけでなく、その両方を兼ね備えたラインができたことで、フェラーリを真剣に走らせたいドライバーにとってはより楽しみが増えたことになる。