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諸星 陽一もろほし よういち

自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展YOKOHAMA 2023レポート・サプライヤー編[MJ]

○文:諸星 陽一

2023年5月24日(水)~5月26日(金)の3日間にわたり、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展YOKOHAMA 2023」が開催されました。

同展は1992年に第1回が開催された展示会で、その名称通り自動車の技術について各方面の展示を行うもの。
主催は公益社団法人 日本自動車技術会です。

自動車メーカー編に続いて、サプライヤーなどの取り組みを紹介します。

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出光のカーリース・ポチモへ
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ジヤトコ

ジヤトコは静岡県に本拠地を持つ変速機など、駆動系の専門メーカーです。

今回の「人とくるまのテクノロジー展」には、e-アクスルを2機種、電動自転車用のモーターシステムを1機種展示しました。

JATCO

e-アクスルというのは電気自動車に使う駆動ユニットで、モーターやインバーター、減速ギヤなどが一体化されたユニットのことです。

e-アクスルのうちの1つは、平行軸タイプで15インチのノートパソコンサイズというコンパクトさ。
出力は60kW程度とのことなので、軽自動車より少し大きめのクルマへの対応が可能となるでしょう。

JATCO

もちろん、少し出力を絞ることで軽自動車の出力自主規制に合わせることも可能なはずです。

もうひとつのe-アクスルは大型車やピックアップトラックなどへの搭載を前提とした変速機付きのタイプ。

JATCO

変速機を搭載することで、変速機のないものに比べて3倍程度のトルクの確保が可能となり、重量の重い大型車などへの搭載を可能としています。

自転車用のモーターシステムは、アシストモーターと変速機構をハブ内に一体化したユニットで、スマホ連携なども視野に入れているとのことです。

HKS

チューニングパーツなどでおなじみのHKSですが、じつはさまざまな製品を開発リリースしている総合的なパーツメーカーでもあります。

今回HKSブースに展示されていたなかで注目なのは、XING MOBILITY社のバッテリーを冷却するシステムです。

HKS

電気自動車のバッテリーは加速はもちろん、回生ブレーキ作動中も発熱します。

もっとも大きく発熱するのは急速充電時で、この際の熱管理をいかに行うかによって充電できる電力量も変わってきます。

HKSの液浸冷却モジュールは最大800Vまでの組合せに対応できる拡張性があるとのこと。

多くの冷却機構がモジュールを間接的に冷やすのに対し、HKSのシステムではモジュール内のセルが誘電体冷却水に浸かっているため従来の間接冷却式に比べ冷却性能が向上、セルの性能を最大限引き出すことが可能とのこと。
液浸のためバッテリ全体の熱暴走を防ぐことが可能で安全面でも優れているということです。

ZF

ZFはドイツに本社を置く世界的な自動車サプライヤーで、おもに駆動系などのシャシーテクノロジー、アクティブ&パッシブセーフティ分野を得意としています。

そのZFが展示していたなかで注目を浴びていたのがeビームアクスルという部品です。

ZF

eビームアクスルはピックアップトラックやバン用に開発されたリジッド電動アクスルです。

エンジン車のリジッドアクスルは写真中心の膨らんだ部分に、エンジンからの動力を伝えるプロペラシャフトという部品が伸びてきていますが、eビームアクスルはこの中心部分にモーターなどの部品が収められています。

EV化でエンジンが不要になるのはご存じだと思いますが、プロペラシャフトなどの関連部品も不要になり、より構造は単純化されます。

このeビームアクスルは400V、800Vのどちらでも使用可能。
最大出力は180kW〜350kWを達成しているとのこと。リヤホイールステア(4WS)にも対応しています。

東京R&D

T-R&D

東京R&Dは量産車はもちろんレーシングカーやトラック、バスなどあらゆるタイプのクルマの開発、研究、試験などを行う総合研究開発企業です。

今回の「人とくるまのテクノロジー展」では、燃料電池システムを使ったFCEV(燃料電池車)スポーツコンセプトというモデルの開発に着手することを発表しました。

まだ、現車は存在せず、設計図段階での発表でしたが、ブースにはひときわ注目を浴びる1台のスポーツカーが展示されました。

T-R&D

このスポーツカーは東京R&Dが2000年に市販した「VEMAC(ヴィーマック) RD200」という2シーターのスポーツカーです。

エンジンはホンダ製2リットルをミッドシップに搭載。
軽量なボディは非常に高いスポーツ性能を発揮しました。

筆者はこのVEMACに試乗したことがありますが、量産自動車メーカーが作るスポーツカーとは異なり、少量生産だからこそできるスポーツカーに思いっきり寄ったハンドリングマシンでした。

VEMACはエンジン車でしたが、次に登場するスポーツカーはFCEVになるとことなので、これもまた楽しみです。

企画展示

主催である日本自動車技術会が設けた企画展示のコーナーでも面白い展示を見つけたので紹介します。

紹介するのは、自動車メーカーである日産自動車、電機メーカーのJVCケンウッド、電池メーカーのフォーアールエナジーの3社が共同開発したポータブル電源です。

蓄電池

ポータブル電源は装置内に電池を内蔵していますが、その電池を日産の電気自動車などに使われている電池を再利用しようというわけです。

新品電池を製造する場合、1kWhの電池で約100kgの二酸化炭素を排出するといわれているので、バッテリーを再利用することで、製造時の二酸化炭素量を大幅に減らすことができます。

日産自動車が企画立案と車載使用に向けたノウハウを提供、JVCケンウッドが設計とデザインを担当、フォーアールエナジーが再生バッテリーを二次利用するための開発を担って作られたのがこのポータブル電源。

見た目はもう完全に完成品という印象でしたが、市販化はまだということ。出力端子はAC100VのほかにDC5VのUSB-A、USB-C、DC12Vのシガーソケットが用意されていました。

自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展

「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展」は、7月5日(水)〜7日(金)まで「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展NAGOYA 2023」として、セントレア空港直結のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて開催されます。

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この記事を書いた人

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諸星 陽一もろほし よういち

モーター・フォト・ジャーナリスト。東京生まれ、東京育ち。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ボッシュ認定CDRアナリスト。

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