ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

コスパ重視、このサイズでこの値段!HONDA WR-Vの正式デビューは12月[MJ]

ホンダは一部報道陣に2024年春発売予定のコンパクトSUV、WR-Zの一部情報を公開した。

正式発表は2023年12月である。

〇文・写真:内田俊一

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サイズは大きく、価格は安く

ホンダWR-V。写真:内田俊一

WR-Vとはそもそもどんなクルマなのだろう。
ホンダでは冒頭に記した通りコンパクトSUVの価格帯のクルマだと定義。

そこでまずボディサイズを見ると、全長4325mm、全幅1790mm、全高1650mm、ホイールベースは2650mmである。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

コンパクトSUVの代表格ともいえるトヨタヤリスクロスは全長4180mm、全幅1765mm、全高1590mm、ホイールベース2560mmなので一回り以上大きいクルマで、WR-Vよりも価格帯が上となるヴェゼルの、全長4330mm、全幅1790mm、全高1580mm、ホイールベース2610mmとほぼ同じサイズになる。

ではなぜ同じようなサイズのクルマを日本市場に投入したのか。
それはホンダのラインナップにSUVが少ない(現在ZR-Vとヴェゼルのみ)こと。

その一方、日本市場においてSUV市場、特にホンダのラインナップにないコンパクトSUV市場の拡大が著しく、そこに商品を投入したかったのである。

ホンダはこの課題に立ち向かうべくタイにあるホンダR&Dアジアパシフィックが中心になって開発。

そこでの最大の目標は低価格であることと、開発期間の短縮だった。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

開発責任者を務めた金子氏もそこは認めるところで、「できるだけお求めやすいものにしなければいけませんでしたし、かつタイムリーに開発しなければいけなかったのです」とコメント。

そこでパワートレインを絞り込み、ガソリンエンジンのみ、駆動方式はFFのみとなった。
ハイブリッドや四駆があるとそれに合わせた開発も行わなければならなくなるので、その分コストと時間がかかってしまう。それを避けたかったのである。

また、WR-Vが属するコンパクトSUVセグメントの動向を見ると、他以上にコスト感覚に厳しく、自分に必要なものとそうでないものを見分ける力も強い。

ホンダWR-Vの運転席からの視界。写真:内田俊一

さらに、「次はハイブリッドだと考えている人は確実にハイブリッドに移行しますし、現在ハイブリッド車に乗っている人も同じでガソリンに戻る人はほぼいません。ただし、現在ガソリン車に乗っている方の4割ぐらいは次もガソリン車を希望されているのです。その最大の理由は価格でした」と調査結果を教えてくれたのは、本田技研工業日本統括部商品ブランド部商品企画担当の佐藤大輔さんだ。

その理由は様々だがキーワードが価格であることは明確なのである。

一方でヴェゼルはe:HEVというハイブリッドがメインで、最も売れているe:HEV Zグレードは300万円ほどでコンパクトSUVの多くのクルマの価格を大幅に上回っている。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

しかし、WR-Vは200万円台前半の値付けになるとのことなので、サイズは大きく、室内も広く、しかし価格は安くというコストパフォーマンスに優れたクルマを狙っていることがわかる。

使い勝手の良いSUV

ホンダWR-Vの運転席からの視界。写真:内田俊一

そうはいっても安っぽい、使いにくいなどであれば意味はないが、そこに抜かりはないようだ。

コンパクトSUVを購入する理由のひとつにその名の通りサイズがコンパクトだからということがあるだろう。
サイズが小さければ運転がしやすいという視点だ。

そこでホンダは運転のしやすさを追求。
特に前方視界ではボンネットの先端の見やすさや左先端の確認がしやすいように工夫した。

ホンダWR-Vの視界の説明スライド。写真:内田俊一

その一例がボンネットの形状だ。中央部が下げられ、左右のフェンダー周りは高くなっている。そうすることで、見切りが分かりやすくしているのだ。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

それ以外にもボディサイズが大きいことに比例して室内も広々としており、特に頭上高と後席空間は競合他車を大幅に上回っている。

さらに、居住性も競合車に対し縦方向、幅方向、高さ方向のすべての領域において有意性のある空間を確保。

ホンダWR-Vの寸法などのスライド。写真:内田俊一

もちろんSUVらしさというところでは着座位置は高く、同時に最低地上高195mmを確保。大抵の未舗装路や段差は気にしなくていいだろう。

ホンダWR-Vの最低地上高のスライド。写真:内田俊一

デザインもしっかりとSUVらしさをアピール。
コンセプトはマスクリン&コンフィデントとされ、日本語にすると自信あふれる逞しさだという。

ホンダWR-Vのデザインコンセプトのスライド。写真:内田俊一

「一目でわかる分厚いボディによる安心感。スクエアなロングノーズによる堂々とした風格。そして高い重心と水平基調のリアデザインによる力強い佇まいによって表現しました」と説明してくれたのは本田技術研究所デザインセンターエクステリア担当の中村啓介さんだ。

「体幹を貫くような分厚いノーズの勢いが後ろまで続き、掘りの深いシャープな顔つきで堂々とした風格を演出しています」という。

ホンダWR-Vのエクステリアデザイン。写真:内田俊一

そしてサイドビューは、「スリークなキャビンを、高く張り出したショルダーと筋肉質なフェンダーでしっかり支え、力強いスタンスを表現しています」とのこと。

ホンダWR-Vのサイド。写真:内田俊一

また、「高く配置した水平基調のリアコンビネーションランプやバンパー造形で、ワイドな後ろ姿にもこだわりました」と説明。

ホンダWR-Vのサイド〜リヤ。写真:内田俊一

インテリアも、「プログレッシブで向上心を高めるマインドセットの提供。そしてプロテクティブで快適・安全な乗車体験を目指しました」と中村さん。

ホンダWR-Vのインテリアデザイン。写真:内田俊一

「堂々とした水平基調のインパネに、柔らかなパッドに包まれたような守られ感のある空間。そして先進機能を最適に配置しています。
また、優れた視界により安心感と運転のしやすさを追求し、加えて細部に目を移すと、エアコンのアウトレットをはじめとするシルバー加飾や、ピアノブラックのアシスタントパネルなどで上質感を高めつつ、所有者の自信につながるようなたくましさも感じられるデザインを実現しました」とのことだった。

ホンダWR-Vのインパネ。写真:内田俊一
ホンダWR-V。写真:内田俊一

内装の使い勝手も、「コンソールシフト周りのカップホルダーはスペースだけではなく、カップへ触れる際にシフトノブに干渉しないレイアウトや、取り出しの時に指がかからないよう開口間口を広げるような使い勝手の配慮もしています。
ドアアームレストポケットにはスマートフォンスタンドを設置。また、ドアポケットには室内への張り出しを最小限に抑えながら1リッターのペットボトルが収まるスペースを確保しました。
ラゲッジスペースは床下収納やコンビニフックも装備しています」とかなりの配慮がなされているようだ。

ホンダWR-Vのユーザビリティスライド。写真:内田俊一

必要な装備かどうか

ホンダWR-V。写真:内田俊一

価格が安いということは装備などが大幅に省かれているのではないかと考えてしまう。

確かに今回わかった範囲では、シートヒーターはなく、必要にして十分な安全運転支援システムは搭載されているものの、前車追従式のアクティブクルーズコントロールは、渋滞時などで完全停止はしないなどの簡略化が見て取れる。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

昨今、装備に関してはあらゆるものが搭載される傾向にあり、一方でこれは使わないというものも少なくない。
特に価格を重視するユーザーにとってはいらない装備を押し付けられるよりも、その分安くしてほしいというのが本音だろう。

ホンダではそういった視点で何を装備し何を落とすかの選別を行ったようだ。その結果として250万円以下の価格が実現したことになる。

コンパクトSUVの中にはより装備が充実しているクルマもあるが、一方でWR-Vは広々とした室内と荷室空間が広がる。

ホンダWR-Vのリヤシート。写真:内田俊一
ホンダWR-Vの荷室。写真:内田俊一

同じ価格でどちらを重視するかはユーザー次第なのであるし、より装備が欲しい、あるいはハイブリッドが欲しい人はヴェゼルやZR-Vなどを勧めることでカバーできるとホンダは割り切っているのだ。

3つのグレード

設定されたグレード構成は3つ。

その違いについて中村さんは、「Xグレードは16インチのフルホイールキャップを採用。ZとZ+グレードは硬質で力強いデザインの17インチアルミホイールで、ベルリナブラック塗装と切削加工のコンビネーションです」という。

ホンダWR-V。写真:内田俊一
左はZ、右はZ+

エクステリアもZではLEDフォグランプがXに対して追加され、Z+はZに対しグリルがベルリナブラック塗装、そしてルーフレールガーニッシュ、ドアガーニッシュのシャープシルバー塗装、クロームメッキアウターハンドル、シルバードアモールディングが追加される。

インテリアもファブリックと合成皮革のコンビネーションシート、そして本革巻ステアリングをZとZ+に採用。

ホンダWR-Vのインテリアグレード資料。写真:内田俊一

Xのシート生地はファブリックのみで、センターコンソールアームレストもファブリック生地となり、ステアリングはウレタン樹脂となる。

ホンダWR-Vのグレードバージョン資料。写真:内田俊一

2つのターゲットユーザーだが

ホンダWR-V。写真:内田俊一

WR-Vのターゲットユーザーは大きく2つ。

ひとつはミレニアル世代。もうひとつは子離れ世代だ。

ボリュームとしては子離れ世代が多くを占めるだろうが、あえてホンダではミレニアル世代をメインと据えた。
その理由は彼らの価値観にある。

ホンダWR-V。写真:内田俊一

本田技研工業日本統括部商品ブランド部商品企画担当の佐藤大輔さんによると、「本質的に彼らは良いものを見極める目を持っていますので、コスパを重視し、安くて良いものを使いたいというものがあります。
同時にアクティブに気兼ねなく自分らしく使いたいというニーズがありますので、そこに250万円以下という手の届くSUVを提供します」と述べた。

ホンダWR-Vのルーフレール。写真:内田俊一

もうひとつ、若い世代にホンダファンになってもらうことで、今後のユーザー確保にもつながる狙いもある。

ホンダWR-Vの荷室スライド。写真:内田俊一

最後にWR-Vという車名について佐藤さんに聞いてみた。WR-Vの海外での名称はエレベートというからだ。

「WはWinsomeという英単語があり、楽しいとか、快活なという意味です。そこでこのクルマのユーティリティの高さ、よりお客様にアクティブに楽しんでいただきたい、いろんなところに行ってもらいたいという思いのもとに、WR-Vとしました」と教えてくれた。

また、国内ではZR-VやCR-VなどホンダのSUVの〇-RVという名称になじみがあることから、ホンダのRVだと想起しやすいというポイントもあった。

来年春に発売予定のWR-Vだが、最大のポイントはこれまで述べて来たとおり250万円以下という価格と、その価格帯に存在する競合車に対して広い室内と荷室にある。

ホンダWR-Vの荷室。写真:内田俊一

先ほど2つのユーザー層がターゲットと記したが、個人的にはもうひとつ、子供が生まれたばかりの層もあるように思う。

ベビーカーだけでなく、様々な荷物が多い方達にとってこのクルマの荷室や後席の広さは大きなメリットになるだろうし、何より価格の安さは魅力だ。

安全運転支援システムも必要にして十分なものが装備されているとなれば、積極的にショッピングリストに載せたくなる1台になるだろう。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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