ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

ジャパンモビリティショー2023のスズキブースには間もなく発売されそうなスペーシアとスイフトが![MJ]

ジャパンモビリティショー2023でスズキは発売間近のスペーシアとスイフトをそれぞれコンセプトモデルとして出展。

そのほか世界戦略EVとして登場予定のeVXや、軽のEVのコンセプトモデルeWXなどが展示された。

それぞれデザイナーに話を聞きながら解説してみたい。

〇文:内田俊一 写真:中野英幸・内田千鶴子

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出光のカーリース・ポチモへ
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スズキスペーシアコンセプト…コンテナをイメージしたデザインへ

スズキスペーシアコンセプト

スズキの軽乗用車「スペーシア」は2013年3月に広くて便利、軽くて低燃費の軽ハイトワゴンをコンセプトに発売。

以来、広く開放的な室内空間、使いやすく乗り降りしやすいパッケージング、充実した安全装備、優れた燃費性能で高く評価されてきた。

現在販売している2代目スペーシアは2017年12月に全面改良し、前方の衝突被害軽減ブレーキに加え、軽自動車で初採用となる後退時の衝突被害軽減ブレーキを採用するなど、安全装備をさらに充実させたクルマであり、スズキの主力車種のひとつである。

そのスペーシアが3代目に進化するようだ。

スズキスペーシアコンセプト

そのデザインのコンセプトは、「“ライフプロ、暮らしをもっと楽しく、自分らしく“」というものだと教えてくれたのはスペーシアコンセプトのCMFデザインを担当した佐藤優花さんだ。

このプロとは職人ではなく、「毎日をもっと楽しく自分らしく過ごしたいと思っている人たち」のことを指し、「そういった人たちを応援できるようなクルマにしたい」という思いが込められている。

スズキスペーシアコンセプト

また、2代目スペーシアはスーツケースをモチーフにデザインされたが、今回は、「より道具を積めたり、使い勝手も良く、もっとストレスフリーに丈夫に使える箱をイメージし、コンテナをモチーフにしています」とのこと。

コンテナは横にプレス形状が入っているので、それを外観のサイドビューでも表現。

スズキスペーシアコンセプト

インテリアもドア周りや助手席前あたりにもビード形状が入るなどで表現された。

スズキスペーシアコンセプトインパネ
スズキスペーシアコンセプト運転席

2代目と同様、標準車とカスタムの2種類が用意されるようだ。

標準車はワクワク感と心地よさがより伝わるようなデザインに、カスタムは、上質感と華やかさをテーマに作り分けている。

スズキスペーシアカスタムコンセプト

どちらもフロント周りでの差別化が大きく、標準車はヘッドライトにLEDを使いながらも柔らかい表情を作り上げ、カスタムはクロームを廃したヘッドランプとしたが、そのぶん、メッキのグリルを横基調でデザインすることで、2代目の迫力は残しつつ、より大人っぽいデザインに仕上げられている。

スズキスペーシアコンセプト
スズキスペーシアカスタムコンセプト

そのほか標準車には新色のミモザイエローを初採用。

「毎日を優しく彩ってくれるようなカラーで、スペーシアとしての楽しさや個性を表現したいという思いで作ったカラーです」と佐藤さんはコメント。

スペーシアコンセプトのCMFデザインを担当した佐藤優花さん
スペーシアコンセプトのCMFデザインを担当した佐藤優花さん

また、後席座面の前方に“マルチユースフラップ”といういわばオットマンのようなものをスズキとして初採用し、後席の快適性を向上させているのは室内の大きな特徴といえる。

スズキスペーシアコンセプト

今回はエンジンやトランスミッションなどエンジニアリング的な側面は公開されなかったが、磨きをかけた衝突被害軽減ブレーキなど、安心装備が満載されるという発表もあったので、かなりの真価が見て取れそうだ。

スズキスペーシアカスタムコンセプト
スズキスペーシアカスタムコンセプト運転席

スイフトコンセプト…フロンティアブルーの精神をまとって

スズキスイフトコンセプト

続いて、こちらも発表間近な様相のスズキスイフトコンセプトを紹介しよう。

スイフトは、個性的でスポーティーなデザインに、しっかりしたハンドリングと高い走行性能、取り回しのしやすいコンパクトなサイズ、使い勝手の良さ等を特長とし、2004年の発売以来グローバルで展開されているスズキの主力コンパクトカーである。

スズキスイフトコンセプト

そのコンセプトモデルについてスズキ代表取締役社長の鈴木俊宏氏は、「歴代スイフトが受け継いできたデザインと走りに加え、クルマと日常を楽しめるという新しい価値を吹き込みました。
そして新開発の高効率エンジンを搭載しています。もう少しでお届けできます!」とショーのオープニングで語っていた。

こちらもエンジン関係はまだ語られなかったが、衝突被害軽減ブレーキ“デュアルセンサーブレーキサポートⅡ や、アダプティブハイビームシステム、ドライバーモニタリングシステムなど数多くの先進安全技術を搭載するほか、高効率エンジンの搭載などにより、走行性能と燃費性能の向上を両立しているとされた。

スズキスイフトコンセプト運転席

こちらもデザインに関して話を聞くことができた。

そのコンセプトは「ハッとするデザイン。何気ない日常でひらめきや、気付きなど、ハッとする瞬間があるでしょう。そのときにワクワクしたり、気持ちが高まったりすることがあると思います。
歴代のスイフトが持っている良いところを継承しつつ、新しいこれからの時代に向けてハッとする要素を盛り込んでワクワクするようなクルマ作りを見つめ直しました」と話してくれたのは、スイフトコンセプトのCMFデザインを担当した鈴木正哉さんだ。

スイフトコンセプトのCMFデザインを担当した鈴木正哉さん
スイフトコンセプトのCMFデザインを担当した鈴木正哉さん

スイフトらしさとは、キビキビ走る軽快さや、コンパクトカーらしい使い勝手の良さと捉え、先代が持っていた前後フェンダーをブリスター風(上から見下ろすと少し水平の面があるようなフェンダー形状で、サイズの大きなタイヤを覆うためのモノ。食品のパッケージなどのブリスターパックと似た形状)や、ベルトライン(サイドウインドウ下端のライン)がリアのピラー(Cピラー)あたりでキックアップしているなどが特徴で、そういったところから軽快さや走りの良さを強調していた。

スズキスイフトコンセプト
スズキスイフトコンセプト

そしてスイフトコンセプトでは、クルマ一周ぐるりとキャラクターラインがまわるようにした。
「そのキャラクターラインの下側に、ランプ類を出来るだけ幅広く配置することで、ロー&ワイドのようなスタイルをデザインしました」と、先代から表現方法が変わったようだ。

また、質の高さも、「フロントグリルのピアノブラックや、その下のシルバーのカラーガーニッシュなどで表現しました」という。

スズキスイフトコンセプト

インテリアではドライバーオリエンテッドの考え方を導入。
運転に集中できるような空間作りとして、全てのメーターやオーディオなどがドライバー側に向くようにレイアウトされた。

スズキスイフトコンセプトインパネ

そして、新色も用意されているようだ。

出展車に塗られていたフロンティアブルーがそれで、SUZUKIというブランドロゴにはブルーが使われており、それはスズキブルーと呼ばれている。

「スズキという企業のフロンティア精神を表現しているブルー」と鈴木さん。その思いをもとに、「さらにこれからのスズキを代表するブルーにしたいという意気込みで開発しました」と語った。

スズキeVX…2025年までに発売予定のEV世界戦略車

スズキeVX

2023年1月にインド・デリー近郊で開催されたAuto Expo 2023において、スズキのEVコンセプトモデル、eVXがスズキのインド子会社マルチ・スズキ・インディア社のブースで世界初公開。

その際は外観のみであったが、今回はインテリアも含めての発表だ。

スズキeVXインパネ

このeVXは、スズキのEV世界戦略車第1弾で、スズキのSUVに相応しい本格的な走行性能を実現するEVと位置付けられ、2025年までに市販化が予定されている。

スズキeVX

スズキは、グランドビターラをはじめ、S-CROSSといったSUVモデルを世界各国で展開。
このEVモデルであるeVXも、スズキのDNAである本格四輪駆動車の力強さと、最新EVの先進性を融合。

一目でスズキのSUVとわかるエクステリアと、電子制御の四輪駆動技術をさらに進化させ、スズキのSUVに相応しい本格的な走行性能を実現するEVモデルとしての提案だ。

そのサイズは全長4,300mm×全幅1,800mm×全高1,600mmとされ、航続距離は500kmである(あくまでもコンセプトモデルを考える上での想定値)。

スズキeVX

このサイズからもわかるように、ミドルサイズ、BセグセントのSUVだ。コンセプトはEV×SUV。
ハイテク&アドベンチャーをテーマに内外装、カラーリングもデザインされた。

エクステリアは、「EVらしい先進的な処理をまといつつ、さらにSUVらしい力強さとして、造形の立体感や、硬質な表現を合わせています」と説明するのは、eVXのエクステリアデザインを担当した前田貴司さんだ。

特にこだわったのは、ジムニーやヴィターラなどのように「フェンダーがしっかりとタイヤをつかむ力強さと、使いやすくてコンパクトなキャビンのバランスです」とのこと。

スズキeVX

インテリアは、「室内前後に通るドライブシャフトがあった時代のT字型のインパネのレイアウトは残しながらも、軽く見せられるようにドアトリムまでつなげて、幅広く見せ、さらに薄く見せています。
コンソールは浮遊感を持たせることで先進感に結びつけるような表現をしています」とeVXのインテリアデザインを担当した林田崇さんはいう。

スズキeVX運転席

また、「先進的なデバイスを使った直感的なインターフェースが特徴なので、ハードキー(物理スイッチ)ではなく、スクリーン上などに入れたソフトキーにしています」と説明した。

フローティングしたコンソールは2段になっていることも特徴だ。

スズキeVXセンターコンソール

ボディカラーも特徴的だ。eVXのCMFデザインを担当した温泉美祝さんは、「SUVの持つタフさや、力強さ、自然とつながれるような感覚を大事に、あえて低彩度なグリーンをベースのカラーにしています」と説明。

左から順にeVXのデザインを担当した温泉美祝さん、林田崇さん、前田貴司さん
左から順にeVXのデザインを担当した温泉美祝さん、林田崇さん、前田貴司さん

「EVらしい先進性もしっかり表現したいのであえてマットの質感に仕上げています」とのこと。

インテリアのカラーコーディネートも、「スズキらしい遊び心として絶対に有彩色は入れようと思っていました。ただ、スズキとしてはフラッグシップになるようなクルマですから、遊び心全開にならないように、モノトーンに近い色味でまとめて、お客様が乗り込むときに目に入るようなシートの肩周りや照明色でオレンジ色を効かせることで、所有欲を満たすような遊び心を表現しました」と説明した。

スズキeVXフロントシート

eWX…普通に見える軽EVに遊び心を加えて

スズキeWX

当然軽自動車もEVになっていくことが予想され、それを見据えたスズキの提案がこのeWXだ。

鈴木社長は、「軽ワゴンEV、軽自動車のお客様にとって直感的に使いやすく操作が分かりやすい。このことは大切なことです。それを追求したのがeWXです」と紹介。

スズキの軽自動車の特長である楽しく実用的な軽ワゴンと、EV らしい先進感をクロスオーバーさせたコンセプトモデルだ。

スズキeWX

EV らしくすっきりとしたシンプルなボディ造形に、親しみやすいキャラクターを施したエクステリアと、軽やかで使いやすく居心地の良い室内空間で、毎日の生活を支える“相棒”のような存在を表現しているという。

スズキeWXリヤシート

このデザインは、「スズキらしくお客様に近い存在のEVを作りたいと考えました。
ハイテク感アピールとか、EVだからこそみたいなものではない、もう少し普通に使えるEVとして凄くシンプルに作りました。
まるで子供でも描けるようなシルエットとキャラクターでしょう」と話すのは、eWXのデザインを担当した小笹哲哉さんだ。

「それでいて遠目に見てもすぐは認識できるような、そういうデザインを目指しています」という。

一方でシンプルに作るのは難しい。下手をすると商用車に見えてしまうからだ。

そこでeWXは面質にこだわった。
「少し曲面を用いたり、サイドのハイライトにビーっとマゼンダが入るように色でもトライしました」とのこと。顔周りもぐるりと囲んだ中にランプ類を入れるなどでシンプルさと楽しさを両立させているようだ。

eWXのデザインを担当した小笹哲哉さん(左)と竹口久志呂さん(右)
eWXのデザインを担当した小笹哲哉さん(左)と竹口久志呂さん(右)

インテリアもエクステリア同様にオーバルをモチーフに随所にあしらわれた。

そのうえで、EVではあるがあえてアナログなスイッチやセレクターをレイアウト。
操作をしてもどこに入っているのかが分かりやすいことを意識したという。

スズキeWXステアリング

また遊び心として、助手席前やドアトリムにマグネットでできたフックを配し、そのデザインは“+”と“-”で、電気自動車からイメージしたもので、「その楽しさを昇華させています」とeWXのインテリアデザインを担当した竹口久志呂さんはいう。

スズキeWX助手席
スズキeWXインパネ

もうひとつGUIにも竹口さんのこだわりがある。

それはメーターだ。「アナログとデジタルの融合として、あえてドットの荒いようなデザインを採用して、ファミコンみたいなちょっと懐かしい感じとともに、スイッチ類は3Dのようにして分かりやすく表現しています」と説明してくれた。

スズキeWXセンターパネル

発売直前から近未来のコンセプトモデルまで幅広く見せてくれたスズキブース。

そこに共通するのは遊び心だ。

色使いやちょっとクスッと笑顔にさせてくれるような、でも少しだけ未来が見えるような、そんなデザインがちりばめられていた。スペーシアとスイフトはそう遠くない時期に正式発表されるだろうから、改めて詳細を解説してみたい。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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