ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

ランボルギーニサービスセンターインタビュー[MJ]

街中で多く見かけ、普段の足で活躍してくれるクルマ達。一方、たまに見かけるハイパフォーマンスのスーパースポーツカー。

そのどちらもメンテナンスは重要だが、性能という視点では大きく違っている。

では、スーパースポーツカーはどういったメンテナンスをしているのか。その際に重視していることは何か。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターのメカニックに聞いてみた。

〇文・写真:内田俊一

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メカニックもアンバサダーに

ランボルギーニ名古屋サービスセンター。写真:内田俊一

名古屋市中区にあるランボルギーニサービスセンターは作業スペースも広く、整然とした印象で、床にゴミはおろか、オイルのシミひとつない清潔な環境だ。

それはもちろんランボルギーニの規則や、整備の際にオイルがあると滑ってしまうなどの危険があることからだろうが、あとで掃除をしようなど後回しにせず、ごみが出たら即片付け、汚れたら即掃除するということが習慣化しているからこそ、この雰囲気が出来上がっていると感じた。

ランボルギーニ名古屋サービスセンター。写真:内田俊一

なぜこの点を冒頭に記しているかというと、私の経験からどんな整備工場であっても汚いなと感じられるところは得てして、そのレベルが低いことが往々にしてあるのだ。

一方清潔感があり整理整頓が行き届いているところは、必然的に作業の効率的につながり、高いレベルのメンテナンス技術を持っているところが多いのだ。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターは、その点においても素性の良さを大いに感じさせてくれた。

さて、今回お話を聞かせてくれたのは、ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さんだ。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

先日ランボルギーニの新型車の研修のため、イタリアに渡航。

サーキットでの実車テストだけでなく、ストリップモデルと呼ばれる、ボディがなくエンジンや足回りなどがそのまま見られる状態のものをもとに、設計者や実際に開発したメンバー、そしてデザイナーなどから、メンテナンス方法だけでなく、なぜこういう構造にしたのか、そのこだわりは何かなどに関して直接レクチャーを受けたそうだ。

例えば、カーボンの使い方ひとつでも、場所によって素材を変えた理由などの説明があったとのこと。
そういったことを最高技術責任者であるルーヴェン・モール氏やデザイン部門の責任者であるミィティア・ボルケルト氏などから受けたことから、そのクルマの全てを吸収してきたことが十分に推察された。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

また、ランボルギーニUNICA(ウニカ)というオーナー向け専用アプリがある。
これはサンタアガタ・ボロネーゼのランボルギーニワールドにコネクトすることで、ユーザー個人に合わせた豊富なコンテンツを提供するものだ。

その内容はランボルギーニのニュースや、レース、ライフスタイルイベントの情報などのほか、購入した新車の生産状況をリアルタイムで確認することも可能なものだ。この使用方法などのレクチャーも受けて来たそう。

なぜメカニックにここまで手厚い対応をしているのか。

それは彼ら自身がアンバサダーになってほしいからだ。
カタログや資料などを基に顧客と話をするのではなく、実際の開発者たちから直接聞いたことを自らの言葉で語る方が、何倍も説得力があり、臨場感あふれるものになるだろう。

その知識を営業だけでなくメカニックも持ってることが重要なのだ。
当然その知識は顧客に伝わるとともに、自身の整備に向かう姿勢にも表れても来るはずだ。

ランボルギーニ。写真:内田俊一

何かトラブルがあったとしても、その基本的な開発経緯が分かっていれば、その取り組み方も闇雲ではなく、的を得たものになっていくからだ。

実力主義の世界

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

現在ランボルギーニでは、営業やサービススタッフにいくつかの資格が与えられている。

まずは入社後3ヶ月以内に“プロフェッショナル”になるための試験に合格しなければならないという。
当然トレーニングを受講したりWebによる講義を受けたりなどから知識を蓄えていくのだ。

その後“マスター”や“アンバサダー”といった上級資格を獲得していく。

実はメカニックの世界にはいまだに徒弟制度が根強く残っており、それは顧客側から見ても同様で、こんな若い人にクルマを任せられるだろうかという不安感だ。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

ランボルギーニの資格制度はそれを払しょくするための仕組みで、顧客の安心感とともに年齢に関係なく、実力さえあれば上級職に就けるというやる気にもつながっているようだ。

また、ディーラーでなければ、専用コンピューター診断機(ランボルギーニでは“ODIS”という)がないことから、ディーラーに訪れたすべての人たちに、不安なくクルマを預けられるように本国研修も含めたトレーニングをしっかりと受けた人たちがいることをこの資格制度で強調しているのである。

いまODISの話が出たので、少し触れておこう。
ODISで取得したデータは、イタリア本国のランボルギーニともつながっているアフターセールスシステムに保管され、そのクルマの修理履歴なども含めすべてのデータが記録されていく。

つまり、いつ入庫し、そのときにどういったメンテナンスを受けたのかが明確に記録されていく、いわば整備記録簿になるわけだ。

またODISによって不具合箇所が分かれば、なぜそこが故障したのか、その原因を本国とも連携しながら突き止めていくことも可能で、このあたりはある程度経験や知識がものをいうところだろう。

だからこそ前述したトレーニングなどが必要なのだ。

乗り方に応じた臨機応変な整備内容

ランボルギーニ名古屋サービスセンター。写真:内田俊一

いまランボルギーニには、SUVのウルスやV型10気筒エンジンを搭載したウラカン、V型12気筒PHEVのレヴエルトと多彩なラインナップを誇っている。

ではこういったクルマ達のメンテナンスはそれぞれで違ってくるのだろうか。

川口さんは、「クルマの違いもありますが、どちらかというとお客様の使い方の方が大きいかもしれません」という。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

具体的には、「ウルスは割と普段使いが多いですし、ウラカンやレヴエルトなどは日常的に乗るわけではなく、大事なお休みの日に使うことメインになりがちです。
そうすると距離は伸びないかもしれませんがサーキットを走るなどタフな使用条件も考えられます。そのようにお客様の使い方に応じて変えているところはあります」。と話す。

ランボルギーニ名古屋サービスセンターサービスマネージャーの川口卓己さん。写真:内田俊一

例えばサーキットを多く走る場合には、「タイヤの状態、空気圧やタイヤが減っているかのチェックだけではなく、表面の状態などですね。
また、ブレーキパッドも残量だけではなく、パッドに熱が加わって炭化することもありますからその表面状態なども細かく見るようにしています」とのこと。

ランボルギーニ。写真:内田俊一

ディーラーによってはサーキット走行会なども開催するので、その際は走行前と後で必ず入庫してもらいチェックは欠かさないそうだ。

やはり300km/hを超えるようなスペックを誇るクルマを扱うだけに、整備そのものには手間と時間をかけているようだ。

「ちょっとしたことが大きな事故に繋がってしまうこともあり得ますので、細心の注意を払ってメンテナンスをするようにしています。特にブレーキやタイヤ、足回りは特にメインにチェックしています」と話してくれた。

フルオリジナルが最も重要

取材した日には工場にカウンタックも入庫していた。

ランボルギーニカウンタック。写真:内田俊一

こういったヒストリックカーも本国と連携を取りながら、純正部品を取り寄せてメンテナンスをしていくとのこと。

現在ランボルギーニではポロストリコというヒストリックカーの認証制度(真贋やそのオリジナル性などを判断する機構)もあり、そこから新車当時の情報も手に入るそうなので、心強い。

ランボルギーニカウンタック。写真:内田俊一

また、当然中古車を手に入れて整備に持ち込むことも可能だ。

ただし、これまで記した通り超高性能車を扱うことから、新車で工場から出てきた状態、つまりフルオリジナルのみの受け付けとなる。
ただし、改造された個体であっても、そこからオリジナルに戻していく作業に関しては問題ないとのこと。

そこから現在の状態や、今後手を入れていくべき方向なども相談ができるようだ。

川口さんは、「私たちディーラーは本国で教育を受け、しっかりとした技術を持った人間が専用の器具やコンピューターのODISなどを使ってメンテナンスをしています。
さらに純正部品を使って整備していますので、この3つ(人、専用器具、純正部品)でお客様のクルマのクオリティを最高の状態に保っています」とその技術に自信を見せる。

ランボルギーニカウンタック。写真:内田俊一

さらにメンテナンス履歴が明確なので、リセールも高いという。

だからこそそのクオリティを保つために改造車のメンテナンスはNGになっているのだ。
そのうえで川口さんは、「どこで買ったクルマでもきちんと見ますので、まずはご相談ください」とコメントしていた。

1000馬力を超えるレヴエルトをはじめ様々なランボルギーニのハイパフォーマンスカーのメンテナンスを手掛けるには何が大切なのか。

そもそもの始まりはそこからだった。

しかし、ふたを開けてみるとランボルギーニでもほかのクルマでもその整備項目は一緒。

ランボルギーニ。写真:内田俊一

基本は走る、曲がる、止まるためのメンテナンスだからだ。

ただ、そこにかける技術力や注意力、そしてそのクルマの特徴だけでなく、顧客の使用状況を踏まえながらクルマと向き合う姿勢はプロフェッショナルそのものであり、またランボルギーニを扱うというプライドを感じた。

ハイパフォーマンスカーになればなるほど、信頼に足るディーラーでのメンテナンスが必要なのだ。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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