乗り心地とスポーティーさを両立させたSUBARUレヴォーグレイバック(プロトタイプ)試してみた[MJ]
SUBARUはレヴォーグをベースにしたレヴォーグレイバック(以下レイバック)のプロトタイプを一部メディアに公開した。
わずかな時間ではあるが、公道を封鎖した一般道で試乗が許されたので、その印象を記したい。
〇文・写真:内田俊一 写真:SUBARU
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INDEX
レヴォーグと基本は一緒
解説編でも触れたがレイバックの基本はレヴォーグに準じており、エンジンをはじめとしたパワートレイン系での大きな変更はない。
しかし、サスペンションに関しては最低地上高がレヴォーグから55mmアップされ200mmになったこともあり、専用チューニングとなった。
もう少し具体的述べると、レヴォーグの魅力だったスポーティーな操縦安定性はそのままに、乗り心地の良さを向上。
そのために形状の変更はないが、ダンパーとコイルスプリングは専用にチューニングされている。
また、タイヤはクロストレックにも採用されている225/55/R18のオールシーズンタイヤを装着。これはスバル車専用に開発されたものである。
レヴォーグのワゴン性能も踏襲し、荷室フロアで441リッターとサブトランクの69リッターを合わせ561リッターの容量を誇っている。
エンジンも同様で1.8リッター直噴ターボエンジンを搭載。最高出力130kw(177ps)/5200-5600rpm、最大トルクは300Nm/1600-3600 rpmを発生し、リニアトロニックCVTを介して駆動される。
さらに良くなった乗り心地と静粛性
今回の試乗は新潟県の佐渡島にある大佐渡スカイラインを封鎖し、およそ3.5kmを2往復するものだ。
コースはワインディングで、センターラインのあるところとないところや、荒れた路面、ジャンピングスポット的な場所も3か所ほどあり、様々なシーンを体験することができた。
試乗に際しては、センターラインは割らず、かつ、制限速度を守っての走行となった。
さて、シートに座ると思った以上にアイポイントが高く、見晴らしの良さはこのクルマの美点ともいえる。
シートの座り心地も良く、今回の走行に限っていえばサポート性もまずまずで不満は感じなかった。
しっかりとしたストロークを持つシフトレバーでDを選択し走り始めると、オールシーズンタイヤの影響もありその静粛性はレヴォーグ以上のものだ。
かといって操縦安定性が失われているということはなく、とてもスムーズにコーナーをクリアしていく。
コーナリング時は若干姿勢の高さは感じるものの、それはアイポイントの高さが大きく影響しているだけで、不安感は全くない。
コーナーに差し掛かってステアリングを切っていくと自然な感じでロールが始まり、ある程度のところでその姿勢は保たれる。
そのままコーナーをクリアすればまた元の姿勢に戻るという違和感のないもので、専用チューニングが効果を発揮していることが伺われた。
同時に前述したジャンピングスポット的な大きなうねりのある路面でもしっかりとタイヤは路面を捉えて離さず、サスペンションはしっかりとストロークして乗員の乗り心地も確保するという、教科書的な動きを見せていた。
同時に乗り心地の良さも実感できた。
レヴォーグの場合は特に荒れた路面ではバタつく足周りが非常に気になったが、レイバックでは全くそのようなことはなく、特にコーナーで路面を捉え切れず跳ねそうになったりする不安感は一切感じられなかった。
通常車高を上げると色々なシーンで違和感が出てしまったり、挙動が不安定になりがちなのだが、このレイバックに限っては全くそういうことはないのは非常に高く評価できる。
エンジンもレヴォークと共通で、後述するCVTの件もあり、マニュアルシフトすると、上まで回りきる気持ちの良いエンジンといえ、またステアリングも適度なクイックさを備えており、街中からスポーティーに走りたいワインディングまで十分に満足できるものといえる。
残念なCVT制御
その一方で非常に気になったのは大きく2つある。
まずはCVTだ。レヴォークからそのまま移植されたこのトランスミッションだが、そのチューニングも同一。
つまり、少し古い印象がぬぐえなかった。具体的なシーンで説明すると、上り坂でスタートしようとすると、一瞬エンジン音が高まり、おや、思い通りに加速しないなと思う頃からスピードが乗ってくる。
また、コーナー入口で減速して侵入、出口でアクセルを踏み込んでもワンテンポ遅れて加速が開始されるという、CVTの悪癖が散見され、運転のテンポが狂わされた。
結果としてマニュアルモードを選択し、コーナーの手前で減速ではパドルシフトでエンジンブレーキを使い、そこから徐々にアクセルを開けていくというドライビングスタイルを取らざるを得なかった。
実は試乗当日、インプレッサとクロステックにも乗る機会があったのだが、こちらはここまでCVTの癖は感じられなかったので、スポーティー性を強調するならぜひ改善を望んでおきたい。
もうひとつはタイヤだ。前述の通りクロストレックと同じサイズだが、さすがにレイバックでは若干力不足のようで、少し勢いよくブレーキングすると早い段階からスキール音(急ブレーキなどで発するキーッという音)が発生しそうになった。
個人的には極力サイズダウンしたタイヤがあらゆる面で望ましいという考えだが、少し力不足の印象があった。
土の香りは似合わない
解説編で述べた内外装のデザインに関しては総じてクルマのコンセプトにあったもの。
つまり、土の香りがしないSUVに仕上がっているといえる。
特にエクステリアは変更点が少ないにもかかわらず、違和感なくまとめ上げられている点は見事だ。インテリアも上質感があり確かにこの内装に土は似合わないなと感じた。
ほんのわずかな時間と距離であったので、特徴的な点のみを述べさせていただいた。
レヴォーグレイバックが属するセグメントにはトヨタハリアーなどが存在するが、もしこの辺りを検討されているなら、ぜひレヴォーグレイバックも積極的にショッピングリストに入れてもいいだろう。
ハリアーよりも静粛性は高く、乗り心地も良い。
また、例えばマツダCX-5と同等レベルの操縦安定性もあり、また安全運転支援システムも充実しているので、かなり商品力は高いクルマということができる。
これでCVTが改良されればこのセグメントのベストバイといえるかもしれない。