トヨタのEV戦略や水素社会への取り組みに対して海外の反応は?

トヨタは2021年12月に、バッテリー式電気自動車(以下BEVと表記)のbZシリーズの発表会を開催しました。

そこでは未発表の車を含めたBEV紹介や2030年までにEV 車種を増やすこと、さらに2035年にはグローバルでバッテリーEV100%を目指すことなどを公表しており、トヨタが電気自動車に対して強気の姿勢で臨んでいることが分かります。

この記事では、トヨタが電気自動車に取り組んでいることや海外からの反応について紹介します。

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トヨタがバッテリー式EVの販売に強気の姿勢

トヨタの二酸化炭素削減対策された自動車といえば、ハイブリッド車(HEV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)が挙げられます。

トヨタが販売するBEVはレクサスUX300e、トヨタ bZ4X、トヨタ イゾアEV(中国版C-HRのBEV)と数えるほどしかありません。

2023年に発売が予定されているレクサス RZとトヨタ bZ3を含めても5つの車種しかなく、トヨタはBEVに消極的とされていました。

その中で、2021年12月にトヨタは、16台の新型BEVのお披露目と今後のEV戦略の説明会を同時に行いました。

手が届く目標として、2030年までに全世界のBEV30種で合計350万台のBEV年間販売達成を掲げており、これを実現する段階を詳細に発表しています。

350万台はスズキ自動車の年間販売台数に匹敵するため、トヨタはBEVだけで達成する準備を進めています。

BEVに消極的といわれているトヨタですが、発売こそされていませんが、研究対象にBEVは常にありました。

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BEVではなくPHEV、FCVを生産する理由

BEVは環境性能が高いことで世界中で人気となっており、高級車が特に顕著です。
トヨタもこの市場に参入することを表明しています。

しかし、トヨタはBEV生産に消極的でした。

BEVではなくPHEVやFCVを生産していた理由は何でしょうか?

BEV生産の問題の一つに、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載することによる車両価格の高騰があります。

そのため、ユーザーが手を出しにくかったことが一因と考えられます。

BEVには航続距離や充電時間の長さ、充電ステーションの不足なども課題としてあり、
それらの欠点と比較し、以下のような利点を持つPHEVやFCVが選択肢に上がったのではないでしょうか。

PHEVのバッテリー性能の高さ

PHEVのメリットに充電効率の良さと航続距離があり、充電時間を短縮し、長距離走行にも対応することができます。

FCVのクリーンエネルギーと供給基盤

FCVは燃料電池を使用しており、排出されるのは水蒸気だけというクリーンエネルギーが魅力です。

また、水素の供給基盤も整備されつつあり、普及を後押ししています。

現在、ヨーロッパを中心にBEV化が進んでおり、その動きはポルシェなどの高級車で顕著になっています。

トヨタでは、関連会社を通じて埋蔵リチウムの開発を手がけるなどバッテリー確保を進めており、バッテリー高騰に歯止めがかかることが期待されます。

2023年に発売のレクサスを皮切りに、2030年までに全世界のBEV30種で合計350万台のBEV年間販売達成という目標を抱えており、今後はBEV生産に力を入れていくことがわかります。

トヨタの新たなEV戦略の背景と現状

EV給電より

トヨタは、2030年までにBEVの生産と年間販売台数を大幅に拡充しようとしています。
その背景について紹介します。

顧客ニーズや自動車市場の対応と変化の速さ

二酸化炭素削減は、SDGsにも掲げられている世界共通の目標です。
これを受けて世界中でBEVが人気となっており、高級車が特に顕著です。

この動きに対応している自動車が、ポルシェ タイカンアウディ イートロンGTです。
レクサスもこの市場に参入するべく2030年までにBEV専門メーカーとなって、全世界で100万台規模の販売を目指しています。

世界の主要な自動車市場では、欧州が2030年を目処にICE車の販売終了を決定しています。
ICEとは内燃機関のことで、ガソリンやディーゼルなど化石燃料で動く普通のエンジンを意味します。

他にも北米では2035年にICE車の販売を終了予定であり、インドは2030年で終了します。
中国は2035年を目処にICE車の販売終了を検討しています。
そして日本も2030年代にICE車の販売終了を予定しています。

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グリーンピースの自動車環境ガイドレポート

グリーン、環境、エコ

環境保護団体として名高いグリーンピースによると、交通・輸送機関が排出する二酸化炭素は全体の5分の1の20%であり、その中で自動車は45%を排出するそうです。

さらに全世界で生産される自動車は、生産台数トップ10に入る会社だけでも8割を占め、グリーンピースは、トップ10の自動車メーカーの中で気候保護に最も消極的なメーカーがトヨタである旨のレポートを2021年に作成しています。

このレポートは世界中で報道されており、報道が広まることで、トヨタが長年かけて築き上げてきた顧客との信頼関係が失われることにもつながり、ビジネスが下向く恐れもあります。

そこで目に見える対策として、BEVの開発とリリース予定を発表する必要がありました。

しかしそれでもグリーンピースは2021年に続き2022年も同じレポートを提示したため、最下位になりました。

グリーンピースが自動車メーカーに望む気候保護対策は毎年変更されており、2022年のレポートでは下記の要求がされています。

  1. ICE廃止のスピードアップ
  2. 再生可能エネルギー充電と資源削減の推進
  3. 早急な鉄鋼の脱炭素化
  4. 労働者、組合、労働団体など利害関係者の利益を確保しつつ、公正な移行
  5. モビリティの再考および自家用車の保有数削減

グリーンピースの厳しい要求は、気候変動の激しさを示します。

世界を走る自動車の10台に1台がトヨタ車です。

そのためトヨタがゼロエミッション(排気ガスを出さないこと)を達成すれば、全世界で排出される二酸化炭素の約1%が減ることになります。

トヨタのEVやその他の取り組みや海外の反応は?

ドイツ/ドレスデン

グリーンピースのレポートが示すように、トヨタは本当に気候変動保護に消極的な自動車メーカーなのでしょうか。

ここでは、トヨタのEVやその他への取り組みと海外の反応について紹介します。

HEVやPHEVの取り組み

トヨタは1997年に量産車初HEVとなるプリウスを発売し、ゼロエミッションとはいかないまでも排気ガス削減(カーボンリデュースビークル)を20年以上も率先して行っています。

カーボンリデュースビークルは他にもプリウスPHVを皮切りに、RAV4、ハリアーとPHEVを拡充しています。

欧州では2021年にトヨタ製HEVが前年比19%増の579,698台を販売。

北米ではHEVにおけるメーカー別シェアでは、トヨタは6割を占めており北米内の4工場でHEV用エンジン製造ラインの拡張に投資しています。

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FCVの取り組み

トヨタは水素で発電するFCVを実用化し、2014年には初代ミライを発売しています。

そして2020年には2代目へとモデルチェンジし、FCV技術の熟成が進んでいます。

しかし、世界でFCVの乗用車を販売しているのは、トヨタとホンダ、韓国の現代自動車です。
中でもトヨタが最も力を入れています。

一方で、FCVを搭載した大型トラックやバスは種類が多く、トヨタも関連企業の日野自動車でFCVトラックを製造しています。

世界的にはFCVは北米カリフォルニア州と中国で、商用車を中心に普及が進んでいます。

水素エンジンの取り組み

現在、世界中で廃止が叫ばれているエンジンは、ガソリンや軽油など化石燃料を使用するエンジンです。

南米のブラジルではサトウキビから作られるバイオ燃料で動くエンジンがあり、日本では水素を燃料とする水素エンジンが実用化目前です。

2022年8月には、ベルギーで開催された世界ラリー選手権第9戦(デイ2)で、水素エンジンを搭載したGRヤリスがモリゾー(豊田章男社長)の運転でデモ走行を行い、水素エンジンのポテンシャルを見せつけました。

コ・ドライバー(副運転手のこと)によれば、パワー感がガソリンエンジンと変わらず、ゼロ・エミッションのため、カーボンニュートラル達成の選択肢の一つになるとコメントしています。

北米で車載用バッテリー工場へ投資

トヨタは2021年12月に、米国・ノースカロライナ州に車載用バッテリー工場を建設する旨を発表しました。

投資金額は12億9000万ドル(1ドル140円で1806億円)で、しばらくは4本のラインでそれぞれ年間20万台、合計80万台のリチウムイオンバッテリーが製造予定です。

また、ノースカロライナのバッテリー工場の建設発表から、半年で当初の2倍の金額を追加投資しています。

ノースカロライナ工場は、2025年から稼働開始予定で当初の計画通りであれば、生産ラインは合計6本で、年間120万台のリチウムイオンバッテリーの製造が可能です。

トヨタの取り組みに対する海外の反応

トヨタがEV戦略に関する説明会でEV強化策に乗り出したことで、海外メディアに大きな反響を与えました。

これまでトヨタの社長は、EVが本当に消費者に必要なのか、急いでEV強化すれば今の自動車産業のビジネスモデルに大きな影響を与えてしまうのではと述べていました。

ハイブリッド技術に力を注いでいたことも、EVに対して消極的だった理由の一つです。

消極的な姿勢から一転したことで海外メディアからは、「テスラとの直接対決の準備に入り、カーボンニュートラルを推し進めるグループの仲間入りをした」「大きな変化が起きそうだ」「EVへの野心が増加した」といった反応が見られています。

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トヨタのEV推進と水素社会の展望・課題

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トヨタは二酸化炭素削減のためにBEVだけでなく、HEV、PHEV、FCV、水素エンジンと複数の選択肢を準備しています。

トヨタのEV推進と展望

EVは一般的には電気自動車の意味ですが、電動化車(Electorified Vehcle)という意味もあります。

つまり、HEV、PHEV、FCVも広義ではEVというわけです。

これらの技術は、毎年のように厳しくなる燃費・排気ガス規制をクリアしてきましたが、2030年から世界中でさらに厳しくなります。

今までは自動車の走行時だけの燃費・排気ガス規制でしたが、2030年からは自動車の燃費に加えて、使用エネルギーの製造過程で排出される二酸化炭素も規制対象となる「WtW規制」が始まります。

さらにその先には、現在欧州で協議されているLCA規制があり、これは自動車の製造から廃棄、使用エネルギーの製造まで自動車産業に関わっている業種すべての二酸化炭素排出規制のことをいいます。

LCA規制をクリアするためには、二酸化炭素を排出しない発電方法による再生可能エネルギーの拡充が求められます。

その中には、EVに搭載されるバッテリー製造に自動車産業全体が排出する二酸化炭素の3割が含まれています。

バッテリーの製造過程で再生可能エネルギーによって発電された電気を使わなければ、EVの製造や販売が難しくなるのです。

2030年に再生可能エネルギーが電力に占める割合の予測では、全世界で40%前後であるのに対し、日本は最高でも24%です。

日本の自動車メーカーの一つであるトヨタだけの対策は困難であるため、日本政府を中心に動いてもらう必要があるといえるでしょう。

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水素社会の推進と展望

EVを推進するには、再生可能エネルギーによる発電が必要です。

しかし予測では世界トップの欧州で53%です。

再生可能エネルギーによる発電は地形や気象の条件に左右されやすく、その上安定した大規模な発電が困難です。

再生可能エネルギー以外に二酸化炭素を排出せずに安定的に大規模な発電ができる発電所としては、原子力発電所が挙げられますが、世界の流れは脱原子力発電所のため、水素による発電しか代替手段がありません。

水素は燃焼しても酸素と水しか排出しないためクリーンです。
さらに大気中に含まれており、どこでも手に入りますが、課題となる水素をエネルギーとするためのインフラが整っていません。

自動車の燃料とするためには圧縮水素の製造が必要ですが、この製造工場は少ない上に製造費用が高いです。
加えて自動車の燃料としての需要も微量で、水素ステーションも大都市部にしかありません。

地方都市では水素補給に片道100km以上走行し、帰宅時には満タンにしたはずの水素が半分減っていたという実話もあるほどです。

水素社会実現のためには、まず水素の需要を増やす必要があり、自動車であればFCVの種類を増やすことも重要といえるでしょう。

まとめ

BEVに消極的といわれてきたトヨタですが、実はBEVの開発は常に行われてきました。

そんなトヨタが満を持して2030年に年間350万台のBEVを全世界で販売する計画を実行しています。

トヨタが環境に配慮した自動車を製造することは、世界トップクラスの自動車メーカーとしての責任と、常に顧客に寄り添い続ける企業であり続けるために大事なことです。

海外では、特に欧州や米国でHEVの評価は高く、販売も好調です。
世界中でトヨタの二酸化炭素削減策は、受け入れられていると考えてよいでしょう。

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