ベントレー ベンテイガ EWB|ホイールベース延長で更なるラグジュアリーSUVへ[MJ]
ベントレーモーターズジャパンはSUVのベンテイガにロングホイールベースバージョンのベンテイガエクステンデッドホイールベース(EWB)のデリバリーを開始した。
〇文・写真:内田俊一 写真:ベントレーモーターズジャパン
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INDEX
ベントレーとは
イギリスの高級車メーカーであるベントレーは、ロールスロイスと双璧をなすブランドで、どちらかというとロールスロイスがショーファーカーだとすれば、ベントレーはドライバーズカーという位置付けである。
1919年にW.O.ベントレーによって設立されたベントレーは、積極的にモータースポーツに参戦。
始まったばかりのル・マン24時間レースにも出場し、多くの優勝を飾るなどでその技術力をアピールしたのである。
そして現在ベントレーは2ドアクーペのコンチネンタルGTシリーズ、4ドアセダンのフラングスパーシリーズ、そしてSUVのベンテイガシリーズの大きく3つのボディラインナップがある。
今回はベントレー市場の中で販売台数の多いベンテイガシリーズに、ホイールベースを延長したベンテイガEWBが日本デビューしたので取り上げてみたい。
日常生活に溶け込んだラグジュアリーSUV
初代のベンテイガは2015年に登場。
その目的は、「新しいラグジュアリーSUVマーケットを作ること」とされており、実際にその市場には次々と競合車が登場したことで開拓に成功。
現在ではラグジュアリーSUVマーケットは大ブームの様相を呈している。
現行車となる第2世代は2019年にデビュー。
ベントレーのラインナップにおいて、ベンテイガのグローバルでのシェアは42%とベントレービジネスの屋台骨であり、核になっているといっていい。
それは日本においても同様で、国内でのシェアは50%と、グローバル以上に人気を誇るクルマとなっている。
エンジンバリエーションは、V型8気筒が70%、フラグインハイブリッドが20%、12気筒が10%という販売割合であるという。
では、実際に購入した人たちがどのように使っているか、使用実態についてベントレーモーターズジャパンマーケティング&コミュニケーションマネージャーの横倉典さんに聞いてみよう。
「ほぼ8割の方々が日々の移動に使われています。そのうち74%がタウンユース。SUVだからと野山を駆け巡ったりというシーンはほとんどないようです」という。
つまり、「日常の生活に溶け込んだラグジュアリーSUV」という位置付けなのだ。
そして、「その街乗りの中で更にコンフォートに、さらに快適に移動したいというお客様のために生まれたのがベンテイガEWBなのです」と語る。
ホイールベースを延長しても
このベンテイガEWBは、「現在、ベントレーがお客様に提供できる最高の“ウェルビーイング”を体現、具現化したモデル」と紹介するのはベントレーモーターズジャパンブランドダイレクターの牛尾裕幸さんだ。
ウェルビーイングとは、“心身ともに満たされた状態”という意味だそうで、ベントレーに乗ることでこのような状態になってほしいという開発コンセプトが取られ、科学的、心理的要素を組み合わせて車両開発が行われている。
ベントレーは冒頭にも記したようにドライバーズカーであり、
「多くのオーナーが自分で運転します。従ってEWBであってもドライビングパフォーマンスは決しておろそかにしていません。
それと同時に後席での最高の快適性を兼ね合わせたクルマに仕上げました」(牛尾さん)とのことだ。
ベンテイガEWBの主な特徴は、現行ベンテイガをベースにホイールベースが180mm延長され、後席スペースが拡大されたことにある。
ホワイトボディのアンダーフロア、サイドパネル、ドア、ルーフなどに変更を加え、ベンテイガのボディラインとプロポーションが醸し出す独特のスタイルと存在感を損なわないように、ホイールベースを2995mmから3175mmに延長。全長を5322mmとした。
そうすると、当然街中での使い勝手が悪くなると想像するが、ベンテイガEWBにはベンテイガ初となる“エレクトロニックオールホイールステアリング”、つまり四輪操舵が搭載されるため、ホイールベースが長くなっても、リアタイヤが僅かに操舵するので回転半径は標準仕様のベンテイガより7%小さく5.9mmとなるので、意外と街中でも使いやすくなっていそうだ。
後席でウェルビーイングを体感して
そして、ウェルビーイングの一例を挙げるとするならば、リアシートに世界で初めてオートクライメートシステムと高度な姿勢調整システムが装備されたことがある。
これはベントレーエアラインシートスペシフィケーションというリアシートを選択することで装備されるのだが、まずリアシートをリラックスモードにすると40度までリクライニングでき、それと同時に助手席がモーター駆動で前方に移動。
助手席後部からレザーのフットレストが展開する。
ビジネスモードにするとリアシートがいっぱいまで起き上がり、移動中も快適に仕事ができるようになる。
そして、オートクライメートシステムは乗員の体温と表面湿度を検知し、ヒーターかベンチレーター、またはその両方を作動させ、乗員が快適と感じる温度を保つものだ。
姿勢調整システムはシート表面全体の圧力を測定し、乗員の着座位置と圧力ポイントを自動的に微調整。
このシステムには独立した6つの圧力ゾーンがあり、3時間単位で177箇所の圧力を個別に変化させることで快適性を向上させ、移動中の疲労を最小限に抑えるものだ。
静粛性の向上
またもうひとつウェルビーイングに関しては静粛性の向上を挙げておこう。
横倉さんによると、「競合車と比較し4%から26%ほど静かになっています」という。
「人間は70dB以上の音にずっと晒されていると、65%ほどの人が集中力がなくなったり、注意力が散漫になったりする研究結果が出ています。それを抑えるために車内の静粛性をベントレーは重要視しているのです」とのことだ。
また、振動、特にピッチ(上下の揺れ)とロール(左右の揺れ)に関しても、「競合車に比べて27%くらい抑えられています」とのことだ。
これに貢献しているのが、世界で初めてベンテイガで採用された48Vのアクティブアンチロールコントロールシステムで、EWBにも標準で装備された。
これはコーナリング時にキャビンをできる限り水平に保ち、高速道路での巡航時などには振動や段差による衝撃を軽減するもので、「ワインディングなどでロールを抑えて非常にフラットな姿勢でコーナリングフィールを体験できるでしょう」と教えてくれた。
搭載されるエンジンは標準モデルと同じ4リットルV型8気筒ツインスクロールツインターボを搭載し、最高出力550psの最大トルク770Nmを発揮。
最高速度は290km/hで、0-100km/h加速は4.6秒を達成。いずれも標準のベンテイガと同じ数値が発表された。
さて、現在ベントレーはパッケージオプションを模した、デリバティブ戦略を用いている。
今回展示されたのはアズールというもので、快適性に注力したグレード。乗り心地や安全性、乗客の快適性を向上するオプションが標準パッケージになっている。
その他にはラグジュアリーな仕立てのマリナー、よりスポーティなSというデリバティブが用意されている。
その結果として、「よりお客様が選択しやすくなる試みをしています」と横倉さんは説明した。
最後に横倉さんは、
「ベントレーのフラッグシップサルーンだったミュルザンヌよりもヘッドスペースがありますので、現代のベントレーの頂点に立つ最高の移動空間を持つクルマ、ラグジュアリービークルといえるでしょう。
まさにミュルザンヌに変わる新しいフラッグシップです」と紹介するように、セダンタイプよりも居住空間の広いSUVタイプで、かつ、ホイールベースを延長して、居住性をさらに高め、なおかつデザイン的には破綻していないという見事な仕上がりに、さすがはベントレーのフラッグシップといえるだろう。