ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

BMW XM日本発売!スーパーカーM1以来の専用モデル第2弾[MJ]

BMW XMが日本でも販売が開始された。

価格は2130万円で、サーキット走行を想定し最高速度を270km/hに高めたMドライバーズパッケージを標準装備するとともに、内外装カラーやオーディオも最高品質のものを採用したうえで、ワンプライスでの販売となった。

文:内田俊一 写真:内田俊一、ビー・エム・ダブリュー

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出光のカーリース・ポチモへ
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M社というBMWのサブブランド

BMWには大きく2つのサブブランドがある。

ひとつは2011年に発足した「i」だ。“innovation(革新)”の頭文字で、電気自動車のi3やプラグインハイブリッドのi8から始まり、現在では完全な電気自動車のiX3やi7などがこのサブブランドのもとで販売されている。

そしてもうひとつが「M」である。

BMW M1,写真:内田俊一

1972年、BMWがモータースポーツ部門としてBMW Motorsport GmbHを設立。

1993年に他のビジネスグループと統合されBMW M GmbH(以下M社)となりサブブランドとして現在に至る。

モータースポーツ活動を中心として設立した会社であることから、当然そこに由来するクルマ達が多く生産されてきている。

例えばM3やM5といったサルーンをベースにしたものから、SUVのX3M、X5Mなど、モータースポーツで得た知見や技術を惜しみなく注ぎ込み、街中だけでなくサーキットまで視野を広げて開発したのがM社のクルマ達である。

そのM社の名を冠した初めてのクルマがM1である。

BMW M1,写真:内田俊一

これはM社専用車として市販化されたスポーツカーで、1978年のパリサロン(フランスはパリで開かれているモーターショー)でデビュー。

そのデザインはジョルジェット・ジウジアーロが手掛けていた。

このクルマを説明しだすととてもページが足りなくなるので割愛するが、1981年まで生産され、ロードカー399台、レースカー54台が生産された。

BMW M1,写真:内田俊一

それ以降M社専用車はなく、市販車をベースにしたクルマ達を世に送り出してきた。

そして昨年、M社は昨年創立50周年を迎え、その記念という意味も含めてM社専用モデルをついに発表。

それがXMなのである。

つまり、M1以降2台目の専用モデルなのである。

M社がSUVタイプを選んだわけ

BMW MX,写真:内田俊一

モータースポーツ由来のM社がなぜSUVタイプのこのクルマを開発したのか疑問に思う読者も多いだろう。

ビー・エム・ダブリューBMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティングプロダクト・マネージャーの御舘康成さんに素直に聞いてみると、

「このクルマの開発にあたり、まず、Mとしてのモータースポーツから来るヘリテージ、そしてそのパフォーマンスと、ラグジュアリーとしての快適性や高品質感を1つのクルマで実現したいという思いが一番強くあります。
M社が手掛けるクルマは間違いなくBMWの究極の姿なので、そのMというブランドにおいて、それを実現したいとのがそもそもの発端です」

と教えてくれた。

BMW MX,写真:内田俊一

SUVタイプを選んだ理由も、

「ラグジュアリーとしての快適性を求めると、それ相応の室内空間の広さも必要になってきますので、SUV/SAV(BMWではSUVをSAVと呼び、スポーツアクティビティビークルの略)のボディータイプで実現するのが、最もわかりやすい。
そして、ハイパフォーマンスSUVのマーケットが大きくなってきていますので、このボディースタイルが最も適切であろうと考えています」

とのことだった。

BMW XM,写真:内田俊一

フロントデザインは、近年のBMWのラグジュアリー・モデルで多く使われている上下2分割のツイン・サーキュラー&ダブル・ライトを採用。

BMW MX,写真:内田俊一

上部はターンインジケーターを含むLEDデイタイムランニングライトで、下部はアダプティブマトリックス機能(LEDを必要に応じて点灯・消灯させる機能)を採用しコーナリングライト機能も併せ持つLEDヘッドライトとしている。

BMWデザインの象徴であるキドニーグリルは、外側のエッジに向かって細くされ、八角形を用いることで存在感と力強さを表現。

金のクロームで縁取ることで50周年を記念していることを暗に物語っている。
また、夜間は点灯し、存在感を増す仕組みも採用された。

BMW MX,写真:内田俊一

サイドデザインは、ロングホイールベースとともに、23インチのホイールを標準装備することにより、力強いシルエットを強調。

BMW MX,写真:内田俊一

さらに、サイドウィンドウ周りに施されたアクセントバンドは、ウィンドウ全体を大きく囲み、力強くダイナミックな印象を与えている。

BMW MX,写真:内田俊一

リアデザインは、横方向に伸びるL字型LEDコンビネーションライトにより、力強さを表現。

リアバンパー内に収められている縦に配置された六角形デザインのMデュアルエギゾーストテールパイプは、視覚的に近未来的な印象を与えているとBMWではコメントしている。

BMW MX,写真:内田俊一

なお、先程述べたアクセントバンドはM1のサイドウインドウ周りに配されたブラックストリップを、XMのリア上部左右に配されたエンブレムは同じくM1のリアウインドウ左右にあるエンブレムから想起されており、ヘリテージも感じさせるようデザインされている。

BMW XM,写真:内田俊一

前後別々のコンセプト

インテリアに目を向けると、12.3インチのメーターパネルと、中央の14.9インチのコントロールディスプレイを一体化させ、運転席側に湾曲させた最新のカーブドディスプレイが目につく。

BMW MX,写真:内田俊一

これも最近のBMWに多く採用されており、今後の主流になるものだ。
結果として優れた視認性と高い操作性を実現。

BMW MX,写真:内田俊一

また、センターコンソール周りにあったBMW特有のiDriveコントローラーは廃止された。

そのセンターコンソールには、赤色のエンジン・スタート/ストップ・ボタンが採用され、Mモデルであることを印象付けている。

BMW MX,写真:内田俊一

一方のリアは、スポーティーさとラグジュアリーさを併せ持ちながら、ゆったりとくつろげる独自のMラウンジコンセプトを採用。

BMW MX,写真:内田俊一

立体感のある彫刻的なデザインがルーフライニング表面に施され、上質な空間を演出。

BMW MX,写真:内田俊一

レザーとアルカンターラの大型クッションを組み合わせたシートは、ラウンジソファーのようにサイドまで包まれる感覚と座り心地を後席乗員に提供しており、前席と後席とで違うコンセプトを用いた珍しい例である。

BMW MX,写真:内田俊一

走る愉しさと快適性の両立

さて、M社が手掛けたからにはパワートレインを語らないで終わっては片手落ちだ。

最高出力489PS(360kW)/5,400rpm、最大トルク650Nm /1,600–5,000rpmを発揮する4.4リッターV型8気筒ターボガソリンエンジンと、電池容量29.5kWhを持ち、197PS(145kW)を発揮する電気モーターによるプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインを搭載している。

BMW XM

これに8速Mステップトロニックトランスミッションとの組み合わせで、システムトータルの最高出力は653PS(480kW)、最大トルク800Nmを発揮。電気自動車を除き、BMW史上最強のパワーユニットを備えるモデルの1つになった。

BMW XM

もちろん電気のみでの走行も可能で、約90kmまでゼロエミッション走行すると発表されている。

サスペンション周りでは電子制御ダンパーとアクティブロールスタビライザーを備えたアダプティブMサスペンションプロフェッショナルを採用。

長距離走行において優れた快適性を実現するComfort(コンフォート)モード、スポーツ走行に適合するボディ剛性を高めるSport(スポーツ)、さらに、ダイナミックな走行を可能にする、Sport Plus(スポーツ・プラス)モードの3種類をMセットアップメニューから選択可能である。

さらに、回頭性と俊敏なレーンチェンジを可能とするインテグラルアクティブステアリング(後輪操舵)や4輪駆動システムのM xDrive(エム・エックスドライブ)等の採用により、Mモデルに相応しい優れた駆けぬける歓びを実現するよう仕立て上げられている。

BMW XM

実はPHEVはもちろん、電子制御のダンパー類や四輪操舵などはM社として初採用だ。

その理由は、レース時にリニアな反応が得られなかったり、重量増によるデメリットが考えられていたからだ。

しかし、XMでは採用に踏み切った。

御舘さんはまずこのクルマの性格から説明する。
「BMW最高のM社のパフォーマンスドライビングが楽しめる前席と、後席に座ればラグジュアリーカーとしての快適性が楽しめるクルマです」という。

BMW XM

さらに、「ガラスがアコースティックガラスを採用しています。これはBMWのフラッグシップである7シリーズなどに使う4.5から5mmぐらいの厚みのあるガラスなのです。
通常Mモデルでは、排気音を聴きたい、あるいは軽量化したいということで、こういうものは採用しません。
しかしこのクルマは後席でリラックスしてもらいたいので、従来のMモデルとは違うのです」と話す。

BMW XM

また、M社として初採用の電子制御技術なども、

「7シリーズなどに使う技術なのですが、これはここまでできるという進化を表現しています。
つまり、スポーティーとラグジュアリーは相反するものじゃないということを強調したいのです。
電子制御技術が進んでエンジンにモーターを組み合わせてもダイレクトレスポンスは維持したまま、より太いトルクとパワーが出せる。

後輪ステアを入れてもスポーティーさはむしろ強化できた。
さらにこのシステムはレーンチェンジの際は安定性が増すので、快適になる。
このようにスポーティーさと快適性を最新の電子制御を使えば両立できるということを改めてこのクルマでアピールしているのです」

と語ってくれた。

まさにこのXMを表すのに御舘さんのコメントが一番しっくりくる。それはスポーティーさとラグジュアリーさの両立だ。

BMW XM

これまでも多くのメーカーが同じようなことをコンセプトにクルマの開発をしてきたが、M社の実力により、BMWが目指す究極の走る愉しみが込められたのがこのXMといえそうだ。

BMW XM

FREUDE by BMW – CONNECTED THROUGH TIME

なお、このBMW XMの発売を記念し、ポップアップ・エキシビション「 FREUDE by BMW – CONNECTED THROUGH TIME(フロイデ・バイ・ビーエムダブリュー – コネクテッド・スルー・タイム)」を、東京は原宿に期間限定でオープン。

BMW Harajuku

XMとともにM1も展示されているので、一見の価値があるだろう。
また、ドイツはミュンヘンにあるBMWのミュージアムからこのために運ばれた逸品も展示されている。

bmw写真:内田俊一

さらにこのイベントでは、車両の展示のほかに、ファッションというテーマで、原宿にある有名なセレクトショップGR8(グレイト)とコラボレーション。

ストリートだけでなくラグジュアリーなども含めた時代の最先端のファッションを展開。
また、アーティスト、ルカ・サバとコラボレーションし、このエキシビションのためだけにデザインし、この場所でしか販売されない限定のオリジナルファッションアイテムや、独自企画のイベントも開催する予定である。

そのほかにカフェも併設されるので、気軽に訪れてみてはいかがだろうか。

ポップアップ・エキシビション「 FREUDE by BMW – CONNECTED THROUGH TIME」
場所: 東京都渋谷区神宮前6-35-6(旧JING 現ヨドバシJ6ビルディング)
期間: 2023年3月4日(土)から2023年4月4日(火)まで
時間: 期間中毎日11:00から20:00まで
入場: 無料
※終了しています。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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