ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

スバル クロストレックのコンセプト【デザイナーインタビュー】〜XVとの違い〜[MJ]

SUBARUからクロストレックがデビューした。

予約開始から約5か月で1万2000台を上回る受注があったそうで、快調な滑り出しだ。

そこで、このクルマのコンセプトやデザイン、旧名XVからなぜクロストレックになったかなどについて解説したい。

〇文・写真:内田俊一 写真:SUBARU

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キーワードはFUN

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

「このクルマは我々SUBARUも、そしてお客様も“楽しい気持ち”になってほしいという思いで、“FUN”をキーワードに開発しました」と話すのは、SUBARU商品企画本部プロジェクト・ゼネラル・マネージャーの毛塚紹一郎さんだ。

スバルクロストレック担当者毛塚さん。写真:諸星陽一
SUBARU商品企画本部プロジェクト・ゼネラル・マネージャーの毛塚紹一郎氏

このFUNを実現する要素は大きくデザイン、走り、安全、使い勝手の4つの要素が挙げられた。

デザイン

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

デザインは、
「SUVらしい頼もしさとともに、身軽で躍動的、軽快感も必要です。
そこで大型で少し異形のヘキサゴングリルから始まる立体的なフェイスやフェンダーで頼もしさを表現。
そしてリアは少し絞り込んで軽快感を出しています」という。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

内装

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

内装は、「上質というよりも使い勝手、居心地の良さを重視したことがコンセプトです。
パットに守られた空間や、斜めのモチーフを積極的に入れて軽快感やスピード感を演出しています」とのことだ。

走り

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

そして走りの部分では、「ずっと乗りたくなる。そして気持ちよく運転できること」が狙いだ。

そこでこれまでのSUBARUが持つ指標に加え、人体構造に基づいた新たなアプローチも取られた。

それは、「人の動きをターゲットにして、“人の構造”などを踏まえながら大学の医学部と連携して居心地の良さに反映しています」と毛塚さん。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

例えば、「音で感じる部分などを研究し、車内音の収束を向上させ、すっきりした車内音を実現し、音でも乗り心地の良さを体感してもらえるでしょう」。

そのために車体の接合部などに使うウェルボンドという接着剤をこれまで以上に使用したほか、サスペンションの取り付け部の剛性向上などが図られた。

同時に座った時の頭部の揺れなども計測。
その結果を踏まえシートを一新して、体の骨を支えるような仕組みが取られた。また、電動パワーステアリングも、「2ピニオン仕様にすることで、走り出した瞬間から気持ちの良さが実現できています」と毛塚氏は自信を見せる。

安全

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

重要な安全の部分では、SUBARUは死亡交通事故ゼロを目指してクルマの開発を進めているが、同時に今回は“繋がる安全”も取り入れ、クルマ自身と連動させたシステムを採用している。

まず、クルマ全体としてはヘッドランプ内蔵のコーナーランプを採用したほか、マルチビューモニター(クルマの直前直後、フロントタイヤ周りを映し出すカメラ)を搭載。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

また、予防安全の向上として、新型アイサイトに単眼カメラを追加し、より広い角度で対応できるシステムに進化した。

そして繋がる安全としてドライバー異常時対応システムが取り入れられた。これは、アイサイトツーリングアシスト(高速道路などでのすべての車速域で、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作をクルマ側でアシストする、安全運転支援システム。ドライバーは常にステアリングを握り緊急時には対応する必要がある)作動時に、クルマ側がドライバーの異常を感知すると、レーンキープアシストを継続作動させながら、ハザードランプを点灯し、周囲に異常を知らせるためにクラクションを鳴らしながらゆっくりと停止するものだ。

そして、緊急通報も行われる。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

使い勝手

最後は使い勝手だ。

アウトパックやレヴォーグで採用している11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム(センタークラスターにある大型のディスプレイ)を搭載。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

「レヴォーグから採用していますが、市場の声を受け改良した仕様を今回導入しました」とコメントした。

ボディサイズは先代XVを踏襲。
一方先代になかったFWDをラインナップした。予約状況では3割ほどがFWDであるという。

XVからクロストレックへ

ここまでクロストレックの概要を記してきたので、ここからは、毛塚さんにもう少しディープに説明してもらおう。

毛塚さんはクロストレックと間もなく発表されるインプレッサの開発責任者を務められてきた。

最初は内装設計というところでエアコンやラジエターなどの設計を15年ほどされたあと、商品企画に移り2代目フォレスターのクロススポーツ、3代目フォレスターなどを担当。

その後、先代のアウトバックやB4などの開発に携わってきたので、SUBARUの基幹車種を手掛けてきたことになる。

コンセプト“FUN”

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

今回のコンセプト、“FUN”になる背景にはコロナ禍があったそうだ。

「開発が始まるころに新型コロナが流行し始め、会議ができないとか、海外に出張に行けないなど、結構暗い感じでした。
そのほかにも様々な問題がある中でのスタートだったのです。
そこでこのクルマでお客様もそうですし、SUBARU全体も楽しくしたい、楽しくしなくてはいけないなという思いに至りました。
ちょうどその頃にアメリカの販売会社の会長から“FUN”という気持ちを忘れずにやろうといわれましたので、この言葉を最初から意識して、楽しいクルマを作ろう、そんなことを考え続けました」と教えてくれた。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

そこで気になるのはXVからクロストレックに名前が変わったことだ。

クロストレックは海外で使われているネーミングで、日本ではこれまでXVと名乗ってきた。

毛塚さんは、
「クロストレックとは、クロスオーバーとトレッキングを合わせた言葉。
アウトドアをイメージしてもらいたいので、トレッキングという言葉が入っていますから商品名として分かりやすい。
そこで海外で使われていたクロストレックを全世界統一して使うことで、イメージが強調できますし、お客様にも我々のメッセージが伝えやすいと考えて決めました」と説明する。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

同時に、XVは、「アルファベット2文字ですと意味がわからないし、浸透が厳しいことも現実でした。そこで名前を変えて、より我々の思いを伝えたいネーミングで販売していくことにしたのです」。

乗った瞬間に前と違うねと分かるように

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

新型車を開発するにあたっては、先代の振り返り、つまり良い点と悪い点の洗い出しをするのが常道だ。

つまり良い点はそのクルマの強みであり伸ばしていくべきところ。
悪い点は期待値に届いておらず、改善しなければいけないところになる。

そこで先代XVの状況はどうだったのかを聞いてみた。

毛塚さんによると、
「先代のXVは全体的によく仕上がっていましたので、十分商品力があるクルマだと感じていました。実用性もあり、安全装備も充実しています」と説明。

ではこのままでいいのか。すると、「XVが属するカテゴリーは、様々なクルマが導入されて来ていて活気があります。
そこでよりよく進化させるとともに、このクルマを際立たせるようなこともやらなくてはいけない。
そこで強みをさらに伸ばすことにしました」。

一方で、「インフォテインメントのようなところは、時代進化も激しいので、これまでのままでは厳しいので手を入れました」と教えてくれた。

進化したポイント

伸ばした強みは、乗り心地や、走りの部分、安全面だ。

これらは、「他銘柄に対して負けてないと思います。今回、SGP(SUBARUグローバルプラットフォーム)は補強しましたが基本骨格は踏襲。
十分にこのプラットフォームで世界の安全基準に対応できたからです」と、このSPGこそがXVの強みだったことを示唆。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

ただし、より伸ばすために気になるところはあった。

それは「乗ったときに少し“ガタピシ”したところや、ステアリングももうちょっとスムーズになるとずっと良いんだろうなというところは、密かに感じていました」と毛塚さん。

そこで、「一般のお客様がどこまで求めてるか」を議論した。

常にハイスピードでコーナーを攻めるわけではないからだ。

そこで基準して、「乗った瞬間からちょっと違うね。前のとは違うよねというところにお金を使いました」という。

それは、シートなどを含めてどんな人でもすぐにわかるようなところを重点的に作り込んでいったそうだ。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

ユーザーの多様化に合わせて

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

さて、XVからクロストレックになって、新たにFFが追加された。

毛塚さんは、「先代をご購入いただいているお客様は満足されているんですが、1つ例としてあげると、XVは比較的エントリー、お客様が初めておクルマを購入される、あるいは、SUBARU車を最初にご購入いただくケースが多いんです。
そうした時に、特徴的な色だとか、アイサイトとかついているなどで、興味を持ってお店に来てもらった時に、AWDしかないの?という声もあるのです。
我々は道路環境や安全性を重視してそれを売りにしてるのですが、お客様の1つの価値観として、お金が高いからではなく、自分に必要ないものはいらない。
そこにお金をかけないというお客様もいらっしゃるわけです。
そういったお客様に向けて、FFを追加してラインナップを広げたのです」と多様化する価値観に応える形で、ラインナップの見直しが図られたのだ。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

さて、SUBARUとして、クロストレックはどのようなユーザーをターゲットにしているのだろう。

「XVの年齢を見ると50代から60代がピークでした。
ちょうど子育てが終わって、旦那さんと奥様と2人でどこかに出かけるみたいな時には、ちょうどいいサイズだと思いますので、そういった方でご支持されているのは事実です」と毛塚さん。

しかし、「若い人たちにもSUBARUの良さをこのクロストレックで感じていただきたいんですね」とも。

「若い人は何か装備をつければ振り向いてくれるかといえばそういうことはないんです。
自分らしさとか、個性とか、新しい価値みたいなところが重要。
主役は自分なので、自分が欲しいものが求められている。
そこでデザインでも少し特徴的なところを入れたり、快適に乗れるとか、FFの話のように、必要なものかそうでないかを判断しながら仕上げています。
また、インフォテインメントで、ワイヤレスカープレイなどはマスト要件なので、そういったところは力を入れました」と語ってくれた。

乗っている人をもっと格好良く見せたい

スバルクロストレックデザインの井上さん。写真:諸星陽一
SUBARU商品企画本部デザイン部主査の井上恭嗣氏

では、そのデザインの特徴をSUBARU商品企画本部デザイン部主査の井上恭嗣さんに教えてもらおう。

やはり井上さんもクロストレックのチーフデザイナーが決まった時、FUNを意識したそうだ。

「SUBARUお客様はすごくいい人が多くて、僕も大好きなんです。
そういう人たちをもっと楽しませたり、もっとかっこよく見せたりしたいなというのはずっと思っていました」という。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

そこでクロストレックでは、「グローバル商品としてみると、コンパクトなクルマなので、パーソナルユースが多いことが分かりました。
しかも他社の同じようなクルマに乗っているユーザーよりも自然の奥に行って、色々アクティブに、アグレッシブに楽しんでいるんですね。
このクルマはそんな使われ方してるんだと気づきました。
そこでそういうシーンにベストマッチするクルマを作ろうと考えたのです」と話す。

また、「近年街中でもアウトドアのファッションとか道具とを普段使いしている傾向が強く見られます。
そういったことがおしゃれ、ファッショナブルだと取られていますので、そういったテイストをクロストレックにも取り入れました」と説明する。

一方で井上さんは、クロストレックらしさは失わないようにしたともいう。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

それは、「軽さです。
身軽さとか軽快さ。
アウトドアシーンで四角い重たいクルマで、ごとごと行くのではなく、軽快な感じで、駆け足で登山するような感じですね。
そういったキャラクターが街中でも使えるということだと思っていますので、そういうキャラクターを強めたい。
そこでスピード感のあるシェイプを持たせつつ、でも地上高は高くなっています。
顔は迫力があってSUVらしくて、荷室もそれなりにある。
駆け足で行くわけですから、しっかりした体、アスレチックな体でないといけないので、フェンダーも強調しています」と説明してくれた。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

そのフェンダー、特にリア周りはかなりのボリューム感を持たせている。

井上さんは、「先代とボディサイズは同じなので、そこは結構工夫して、時間をかけて仕上げました」という。

当然荷室は確保しなくてはならない。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

そこで、上から見ると、リアに行くにしたがってウインドウ周りを絞るようにした。そうすることでよりフェンダーにボリュームを持たせ、スポーティさとともに、大地をしっかりと踏みしめている印象を見る者に与えているのだ。

デザイン

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

インテリア

インテリアの印象は先代とは大きく違い、近年のSUBARUのデザインを踏襲している。

それを踏まえ井上さんは、
「アウトドアに遊びに行くことを考えると、高級そうに見えたり、高価格に見えたり、ドラマチックに何かがあるという空間ではないんです。
いままでのクルマの内装はそういう方向が多かったのですが、このクルマはそうではなく、部品1つ1つの機能感だったり存在感だったり、使い勝手の良さも含めてデザインしています。
普段、デザイナーがもっと物入れは広くした方がいいよとかはいいません(笑)。
でも物入れは広くした方がいいですよねとか、飾りみたいなものはない方がいいなどといいながらまとめているのは、レヴォーグやアウトバックとはちょっと違うところでしょう」。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一
スバルクロストレック。写真:諸星陽一

この背景にあるのは、ユーザーに1番楽しい時の写真を送ってもらったものを見ての気づきだった。

「車内での過ごし方を見るとみんな“自分の”笑顔なんですね。
気取ってなくて。
なのでそういうことができる空間、そういう笑顔がマッチする空間はどういうものかを考えると、やはり気取らない。でも機能はしっかりしているものなのですね」と述べる。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

ボディーカラー

最後に井上さんにボディーカラーについて説明してもらおう。

なぜならXVの特徴のひとつにボディーカラーがあるからだ。

「XVはボディーカラーのキャラクターとしてオレンジが思い出しやすいと思います。
元気なビタミンカラーみたいな色と、あとページュとかカーキ、いまのいい方でいえば、くすみ系みたいなアースカラーですね」と振り返り、それを踏まえながら今回は方向性を変えて新色を2つ作った。

それはオアシスブルーとオフショアブルー。
両方ともブルー系だ。

そして両方とも自然に由来した名前が付けられた。

オアシスブルーはオアシスなので、「砂漠の泉。ちょっと活力のある感じ。色そのもので元気1発という元気な感じで選んでいただければいいなと思います」。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

オフショアブルーは海なので、「少しメタリックが入っていて、それがくすみ系としてはちょっと面白いところです。
日光の具合によって色味が微妙に変わるので、なかなか飽きない色だと思います」と井上さん。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

因みにシートのトリコットの柄はテトラポットを意識しているともいうので、海つながりが多いようだ。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

企画やデザインを聞いて、そして見る限り、横にレヴォーグやアウトバックが並んでも特に寂しさは感じられない仕上がりといえる。

それは、その2車種と大きく世界感が違うからだ。

より元気に、楽しくどこかへ出かけたい。

現地でパワーをもらって、それを活力にまた普段の生活に向かおうと、クロストレックが語りかけてくれるような仕上がりなのだ。そこに年齢や性別は関係ない。

要は、価値観をどこに求めるかだ。そこがレヴォーグやアウトバックと大きく違うところなのである。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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