ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

スバル クロストレック試乗記【e-BOXERで実現したFUNな走り】[MJ]

SUBARUからクロストレックが発売された。

一部報道陣向けに試乗会が行われたので、その第一印象をレポートする。

〇文・写真:内田俊一 写真:SUBARU

内田俊一の記事一覧

ポチモバナー青
ポチモバナー青

エンジンとモーターの組み合わせに絞って

クロストレックの概要やデザインについては別項に詳しい( スバル クロストレックのコンセプト【デザイナーインタビュー】〜XVとの違い〜 )ので、そちらをお読みいただくとして、パワートレインやアイサイトなどについて簡単に説明しておこう。

搭載されるパワートレインは、先代ではe-BOXERとガソリンエンジンの2種類があったが、新型ではe-BOXERのみとなった。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

搭載される2リッターDOHC直噴エンジンの最大出力は145ps/6000rpm、最大トルクは188Nm /4000rppmを発揮。

そこに最高出力13.6ps、最大トルク65Nmのモーターが組み合わされる。

これがe-BOXERというパワートレインだ。

低速域ではモーターのみのEV走行も可能で、街乗り時の実用燃費を稼ぎ、また、軽自動車1台分の最大トルクを発揮するモーターアシストにより、エンジン単体の駆動に加える形で動力性能も向上させ、モーターアシストならではのリニアで軽快な加速が味わえる設定だ。

新型クロストレックは先代のものをベースに、制御系の改良が施された。

まずエンジン始動時のショックを軽減した新制御を採用したほか、電動ブレーキブースターとのマッチングによる自然なブレーキフィールを実現したという。

ゼロ次安全を見据えたレイアウト

そのほかにも様々な変更が加えられているが、それは都度述べることとして、早速走り出してみよう。

今回の試乗は片道35kmほどで一般道や高速、ワインディングなどが組み合わされたコースだった。

行きは最上級グレードのリミテッドのFF、帰りは同じくリミテッドのAWDをテストした。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一
スバル クロストレック リミテッド FF
スバルクロストレック。写真:諸星陽一
スバル クロストレック リミテッド AWD

リミテッドはもうひとつのグレードであるツーリングと比較し、タイヤが225R6017インチから225/55R18になるほか、安全運転支援システムのアイサイトセーフティプラスのアダプティブドライビングビームやデジタルマルチビューモニターなどが標準装備されるなどの違いがある。

さて、ドアを開けて室内に乗り込み、最初に感じたのは、シートの座り心地の良さだった。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

これまでは、見た目は良くても体を支えてくれなかったり、シートに座った時の体重の分散がいまひとつだったのだが、新型ではしなやかな座面とともに、どこか一部に力が加わることもなく、すっと腰を支えてくれる良いシートとなっていた。

これは、医学的アプローチによるもので、仙骨を押さえて、骨盤を支える構造のシートを採用したことによるものだ。

さらに車体とシートをより強固に結合することで、車体の揺れと乗員へ伝わる振動が一致し、頭の揺れを抑えることにつながるように設計。

その結果、疲労低減にも効果があるという。

ドライビングポジションもシート位置と調整代が適切なので、自然と足を伸ばしたところにペダル類があり、ステアリング位置も素直な位置だった。

実はこういったことひとつひとつが重要で、ドライバーの疲労を軽減させるゼロ次安全という最も基本的な安全に繋がっていくのだ。
因みに電動パワーシートの作動音も静かになったことを付け加えておこう。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

このゼロ次安全に繋がるもうひとつとして、視界の良さが挙げられる。

クロストレックの場合、乗用車よりも乗車位置が高いので見晴らしは良好。

さらにドアミラーがドアにマウントされ、小さな三角窓がその先にあけられているので、特に右折時において、右前方の死角が減ることから、かなり視認性が高くなる。

同時にリアのピラー部分にも小窓が開けられてるのも死角を減らし、斜め後ろの視界を確保しているのもありがたい。

また、ボンネットの左右に峰が走っているのだが、意外とこれが車幅の認識にも役立っている。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

しっかりとしたシフトレバー(こういうものも操作ミスを防ぐ大事なものだ)をDにセレクト。

電子式サイドブレーキはアクセルを踏み込めば自動で解除されるので、そのままスタート。

袖ヶ浦フォレストレースウェイから鹿野山九十九谷(千葉県君津市)の乗り換え地点に向かうことにしよう。

剛性アップは難を隠す

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

国道に出て信号や右左折を繰り返すうちにいくつか気付いたことがある。

前述のシートの良さはもちろんだが、それ以上に驚いたのは静粛性の高さだ。
特にエンジンの透過音は全くといっていいほど気にならない。

これはボディ剛性の高さから来るもので、ベースとなるスバルグローバルプラットフォーム(SGP)は先代から流用しながらも、構造用接着剤の適用部位拡大やねじり剛性向上、締結部剛性の向上などが大きく貢献しているようだ。

特に構造用接着剤は効果が大きく、これまではスポット溶接という“点”で剛性を確保しようとしていたところを、面で剛性を確保できるようになったので効果が大きいのだ。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

この静粛性の高さはCVTの悪癖も隠してくれている。
通常のオートマチックはギヤを使い変速するのに対し、CVTはベルトとプーリーを使い無段階で変速を行うので、理論上はその時々に最適な回転域を選ぶことができ、燃費にも貢献する。

一方で、エンジンの回転が上がり、その後回転数が一定になってから、速度がその回転に追いつくような違和感を覚えることがある。

実はクロストレックもCVTを使っているためにこの症状が表れているのだが、エンジン音が静かなためにこの違和感に気付きにくいのだ。

もちろんタコメーターとスピードメーターを見比べていればああやはりと思うのだが、そこまでするのは重箱の隅をつつくようなものである。

ただし、1500rpmから2500rpmあたりの回転域で、坂道などでアクセルペダルを少しずつ踏んでトルクを掛けていくと、少しワウワウワウというような僅かなギクシャクした動きを感じたのは、他のCVT車と同じであった。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

乗り心地は抜群に良くなった。これもボディ剛性が高くなったことと締結部分の剛性アップによるものだ。

ボディ剛性が低いと、ショックをボディが受け止めきれなくなるのと同時に、サスペンションの取り付け部分が弱くなるので、結果としてサスペンションを固めなければならない。

しかし、ボディがしっかりしていれば、サスペンションをしっかりと動かすことができるのだ。

その結果としてきちんとサスペンションがストロークしてショックを吸収してくれるので、クロストレックでいえば2クラスくらい上のクルマに乗っている気分にさせてくれる。

同時にステアリングフィールも先代にあった軽い違和感、ステアリングを一定速度で切っていくと本当に僅かな遅れやギクシャクした反応が返ってきたのだが、新型では全くそういうことはなく、極めて自然なフィーリングなったのも評価したい。

また、アイドルストップからの再始動はとても静かで、観察をしていれば若干振動を感じるものの、ほぼ気付かないレベルだ。

さらに信号からのスタートする際はモーター走行になる機会が多く、そこからエンジンがかかってもほとんど違和感はなかった。

進化したアイサイト

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

高速に合流する際に、一気にアクセルペダルを踏み込んでみたのだが、必要にして十分な加速を手に入れることができた。

直進安定性も比較的高く、当日は吹き流しが真横に向くくらいの風が吹いていたが、それほど進路を乱されることはなかった。

高速で早速アイサイトを使ってみた。

クロストレックではこれまでのアイサイトに単眼カメラを追加したことで、その精度が高くなったという。

実際に使用してみると、確かにその通りで、以前は時々あったレーン内での軽い蛇行や、前車追従時に、そのクルマが車線変更などでいなくなると、少し先に(目測で500mほどか)先行車がいても一気に設定速度まで加速して、追いつくと強めのブレーキを掛けるようなシーンも減ったのは喜ばしい。

ただし、その一つ一つの作動に対してこれまでと同じように“ピッ”と音が鳴るのは非常に煩わしく感じた。

これはドライバーが分かればいいことで、乗員全員に知らせる必要はないと思う。
せっかく静粛性の高い車内でしょっちゅうこの音が繰り返されては、ドライバー以外の乗員も落ち着けないことだろう。

この辺りはぜひ改良を望んでおきたい。

コーナーも楽しい

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

高速を降りて折り返し地点までは少し狭いワインディングロードで、路面は荒れ気味。

クルマにとってあまり良い条件ではないのだが、ここでもクロストレックは乗り心地の良さとステリングフィールの気持ち良さ、そしてシートの快適さが際立っていた。

そしてもう一つ付け加えるならば、クルマの身軽さだ。

FFとAWDと比較すると車重の差は約50kg、大人一人分ほどなのだが、その差以上にFFの身軽さが際立った。

これは帰りに乗ったAWDの安定性の高さという性格の違いから浮き上がってきた印象である。

もちろんこういったシーンで非力さは全く感じないし、思い通りの加減速を手に入れることができた。

そして何よりも、コーナリング時に狙った通りのラインを舵角の修正なくクリアできるのはハンドリングの優秀さの証左である。

FFの身軽さ、AWDの安定感

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

さて、AWDに乗り換えて袖ヶ浦フォレストレースウェイに戻ろう。

基本的にはFFの項で述べたことと同じ印象である。

ただ2点だけ大きく違う印象があったので記しておきたい。

まずひとつは乗り心地だ。どちらもしなやかで快適なのだが、AWDの方が少し締まった印象で、段差や継ぎ目などがより明確に体に伝わってきた。

通常は重い方がしなやかさは増すものだが、クロストレックに関しては逆の印象だった。
どちらもタイヤのブランドはファルケンZIEX S/TZ05である。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

それともうひとつは走りの味だ。

先ほども述べたように、FFはひらひらという軽快さを楽しむドライビングスタイルであるのに対し、AWDは路面をしっかりと捉えたような印象で、安心感のあるドライブを楽しむという印象に近いだろう。

従って、高速においても直進安定性はAWDの方が高い。

燃費だが、全く同じルートとはいえ行きと帰りだったので純粋な比較はできないことをお断りしておく。

参考値としてお知らせすると、FFが15.8km/L、AWDが14.6km/Lであった。
WLTCモード燃費ではFFが16.4km/L、AWDが15.8km/Lなので、それほど大きく外れていないと予想する。

3つの単語で目的地をぴたりと指定

さて、クロストレックに面白い機能が追加されたので付け加えておきたい。

それはwhat3 wordsというものだ。

これは世界を3メートル四方に区切り、それぞれの区画ごとに決まった3つの単語で割り当てた地図アプリだ。

スバルクロストレック。写真:諸星陽一

使い方はまず、スマートフォンなどにアプリをダウンロードし、そこから行きたい場所を指定。

すると、その区画に該当する3つの単語(例えば「さいりよう。うみやま。ほんだな。」といった関連性のないワードが表示される。因みに隣の3メートル四方の位置情報は全く違う3ワードが決められている)が指定されるので、それをクルマ側に搭載されたwhat3wordsに入力。

そうすれば目的地まで誘導してくれるシステムだ。
これだけ読むと、普通のナビで良いじゃないかと思うだろう。

実は私もそう思った。
さらに、一度携帯を使わなければいけない煩わしさも感じた。

しかし、そのメリットは3メートル四方に区切ったことにある。
つまり、カーナビよりも細かい場所指定ができるのだ。

例えばキャンプ場で友人たちと待ち合わせをしたとしよう。
その広いキャンプ場までは通常のカーナビで誘導してくれるが、その先のどこに友人たちがいるかわからない。

そこで活躍するのがこのwhat3wordsなのだ。先に到着した人がwhat3wordsから現在地点をタップし、そこに表示された3つの単語をほかの人たちに送ればぴたりとその地点を教えてくれる仕組みだ。

すでに海外では多くの企業が導入しているので、これから日本でも普及してくることが予測される。
前述のようにまだ車載機だけで完結しないのは不便だが、要望が強くなればその点も改善されるに違いないので、期待して待ちたい。

さて、クロストレックのFFとAWDに触れてみて、最も感じたのは現在のSUBARU車の中で最良のクルマということだった。

すべての面において生真面目に進化し、かつ、それをバランスよくまとめ上げたということだ。
エンジニアの独りよがりにならないようにドライバーや乗員の視点に立ち、どうしたら快適に、かつ、楽しく出かけられるか。

まさにFUNという開発目標を具現化しようとした意気込みが感じられた。

今回は100kmにも満たない試乗だったので、改めて1000kmほど走り込んでみたくなる、そんな良車であった。

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.1

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.2

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.3

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.4

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.5

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.6

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.7/ジャパンモビリティショー2023特集

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.8

ポチモバナー青
ポチモバナー青

この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

関連する記事

カテゴリーから記事を探す

error: このページの内容は保護されています。