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モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

ヒョンデ日本復帰第3弾、ヒョンデコナは日本市場向けにチューニング[MJ]

韓国の自動車メーカー、ヒョンデの日本法人ヒョンデモビリティジャパンは、2022年より日本の乗用車市場に再参入。

まずはネッソとアイオニック5にてスタートし、今回3機種目のコンパクトSUV、コナを導入した。

〇文:内田俊一 写真:内田俊一・ヒョンデモビリティジャパン

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ネット販売、BEVのみで再開

ヒョンデの日本導入はどういうものか。販売方法を含めて特徴的なので、この説明から始めよう。

ヒョンデは2022年の2月に日本市場で乗用車の販売を再開した。

実は12年ほど前まで“ヒュンダイ”という名前で乗用車を販売していたのだ。因みに商用車はユニバースというバスの販売は2022年以降も継続して日本で販売していた。

この再開にあたっては大きく2つのチャレンジがあった。

ひとつはインターネットによる販売だ。

通常はディーラーで商談をしてクルマを買うものだが、近年、多くの商品の購入に際してはインターネットが一般的になりつつある。そこでヒョンデとしてもこの流れに乗ろうというものだ。

ヒョンデネッソ(左)とアイオニック5(右)。撮影:内田俊一
ヒョンデネッソ(左)とアイオニック5(右)

もうひとつはゼロエミッションビークルだけのラインナップにしたことだ。導入当初はFCVのネッソとBEVのアイオニック5でスタートした。

このアイオニック5はアジアブランドとして初めて日本カーオブザイヤーのインポートカーブザイヤーを受賞。
長いホイールベースを生かした広い室内空間や、先進のパワートレインが実現した長い航続距離などが評価された。

その一方でアイオニック5は3000mmのホイールベースということもあり、室内が広いのは良いが、若干取り回しのしにくさなどを含めて持て余しそうなどという意見もあった。

こういった声に対応すべく、ヒョンデが持つEVの先進性はそのままに、取り回しの良いコンパクトサイズのSUVとしてコナを導入することが決定したのである。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

このコナという名前はアメリカハワイ島の地名コナにちなんで付けられた。

ヒョンデのSUVは従来からリゾート地や観光都市にちなんだネーミングを採用し、
「SUV特有の活気あふれるイメージを伝えています。コナもそのような発想から、スキューバダイビングなどが盛んなコナのアクティビティなイメージ。
そして同じ名前のコーヒーのように日常を彩るクルマというイメージを込めて命名いたしました」とヒョンデモビリティジャパン代表取締役CEOのチョ・ウォンサン氏はいう。

導入されるコナはグローバルでは2代目で、初代は2017年6月から発売。

昨年、初代コナのグローバルでの販売台数は約23万台で、「特にEVモデルは北米とヨーロッパのお客様に多く愛されてきました」。

新型のコナは今年の3月にワールドプレミアされ、韓国を皮切りに、11月からは北米とヨーロッパでも販売を開始されている。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

ピクセルとアーマーデザイン

ではコナの特徴を述べていこう。

全長4,355mm、全幅1,825mm、全高1,590mm、ホイールベースは2,660mmで、先ごろ紹介したBYDドルフィンの全長4,290mm、全幅1,770mm、全高1,550mm、ホイールベースは2,700mmと比較すると、ホイールベース以外は少しずつ大きく幅広いことが分かる。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

特に全幅に関しては大きく異なっている。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

そのデザインはヒョンデのEV共通のテーマであるピクセルグラフィック、画像の最小単位である正方形が随所にあしらわれている。

例えばフロントのグリル周りやホイールもその象徴だ。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

特にそのフロントは非常に特徴的であり個性的だ。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

シームレスホライゾンランプと呼ばれるライト周りは、横一直線にデイタイムランニングライトを配されているので、遠くから見てもコナだということが分かるだろう。

コナのデザインテーマにはラギット&ダイナミックというものがある。

無骨さや力強さとともに、ダイナミックさも表現するというもので、それが最も表れているのがサイドデザインだ。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

アーマーデザイン呼ばれるそのデザインは、Zのキャラクターラインが力強さを、そしてフロントのフェンダーアーチとリアアーチ、フロントのヘッドラインとリアのコンビネーションランプのそれぞれをフェンダーアーチの端に収めることで、まさにアーマー、甲冑、鎧のような力強さを表現しているそうだ。

リラックスできるインテリア

インテリアデザインでは、インパネ周りをドライバー側に若干向けた、ドライバーオリエンテッドにレイアウトされ、運転のしやすさを強調。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

空間は十分なゆとりがあり、リアの足元はマフラーなどの取り回しが必要ない電気自動車ならではのフラットなフロアだ。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

インパネは12.3インチの大型ディスプレイを2つ横に並べたデュアルパノラマディスプレイを採用。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

ここに車両情報や走行情報を一元化して見えるようにレイアウト。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

シフトレバーはコラムタイプでステアリングコラムに取り付けることで、センターコンソール周りのスペースを拡大し、カップホルダーのスペースとされた。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

そしてその部分も使用しない際は収納でき大型のコンソールになることで、ハンドバッグなどを置くことも可能になるという。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

フロントシートはアイオニック5と同様のリラクゼーションコンフォートシートを採用。

アイオニック5のリラクゼーションコンフォートシート
アイオニック5のリラクゼーションコンフォートシート
ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

休憩時などの際に体圧を分散してリラックスできるように、スイッチ操作でシートが調整しながら自動でリクライニングしていくシステムだ。

リアシートはカーブレスベンチシートと呼ばれるもので、フラットな形状とすることで、仮に3人乗る場合でもそれぞれが快適に乗れるようになっている。また後席もリクライニング機能を採用。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

ラゲッジスペースは466リッターで、スマートキーを持ったままテールゲートに近づくと、ハンズフリーでテールゲートが開く、スマートパワーテールゲートも装備されている。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

日本仕様は環境に応じた専用セッティング

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

日本に導入されるコナは、バッテリー容量48.6kWhで航続距離456kmのカジュアルと、バッテリー容量64.8kWh、航続距離541kmのラウンジとラウンジツートーン。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

そして同じくバッテリー容量64.8kWhで航続距離625kmのヴォヤージュである。ラウンジとヴォヤージュの航続距離の差は装備による重量差とタイヤサイズの違いによるものだ。

さらに進化したバッテリーコンディショニングシステムにより、猛暑や真冬においてもバッテリーを冷却、消温し温度を最適化することによって、急速充電性能を確保。

90kW級の急速充電器を使用した場合、10%から80%まで45分で充電することができるという。もちろんCHAdeMOにも対応している。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

日本に導入されるコナはBEVのみだが、グローバルでは内燃機関やハイブリッドもある。

これらのプラットフォームは共通で、EVの開発を先行し、そこで必要なプラットフォームやデザイン、レイアウトを開発。そのうえで内燃機関やハイブリッドに流用する方法を取った。

つまり、BEVありきで開発されたということだ。

実はEVの場合、床下にバッテリーを配するためどうしてもシート位置が高くなり、それをクリアするためにルーフも高くしなければならないので全高が高くなりやすい。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

しかしコナの場合はフロントシートの高さを適正化するために、開発時にバッテリーの前方だけ少し薄くするなどが可能だった。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

こういったところもEVで開発したことの恩恵といえる。

さて、コナを日本に導入するにあたり、ヒョンデはかなり日本の道路事情を研究したようだ。

ヒョンデモビリティジャパンシニアスペシャリストの宮本潤さんによると、日本の道路環境は、「北海道の豪雪地帯や複雑な首都高をうまく走行しなければいけないこと、ワインディングロードや富士山のような高い山もあるなど、非常に多彩な交通環境の中で生活をし、レジャーを楽しんでいるという特徴があります」という。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

また、日本市場には国産メーカーだけでなく多くのインポーターも参入しているので、「お客様は非常に目が肥え、要求レベルも高く、とても繊細な感覚でクルマに強いこだわりを持っている方々が多い」と分析。

そういった市場に向けてコナは、「どのようなお客様にも満足して安心して乗っていただきたいと、日本専用にチューニングも施しています」とコメント。

その一つがドライブモードだ。エコ、ノーマル、スポーツ、スノーの4つのモードがあり、そのうちのエコ、ノーマルモードでは、本来よりも発進時のアクセルレスポンスをスムーズで滑らかなセッティングにされた。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

これは、「発進時のレスポンスの良さがEVの特徴ですが、やりすぎると過敏に感じられたり、ほかの乗員が不快に感じたりすることもあります。日本の交通環境は比較的穏やかなので、運転がなめらかになるセッティングです」。

一方スポーツモードは他の国よりもアグレッシブなセッティングにされた。
「山坂道、ワインティングロードを走る際はスポーティな感覚も味わっていただきたいので、このように幅広い設定になっています」と説明した。

また、スノーモードは、「テスト車を冬の北海道に持ち込んで、スタッドレスタイヤを履かせてFFでありながらもしっかり発進できるようなグリップ、安心感、ブレーキを含めてできるように入念に雪道でもセッティングを施しています」とのことだった。

EVは回生ブレーキを上手く利用し、いわゆるワンペダルフィーリングを実現しているクルマが多い。

これはアクセルペダルの踏み込み量や戻す量によって加速、減速、さらに停止まで右足だけで操作できるものだ。コナでもステアリングコラムのパドルシフト状のもので強弱を調整できる。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

同時にスマート回生システムも搭載。

アクティブクルーズコントロール使用時以外でも、システムを起動しておけば、前走車に追いついた際に、アクセルを戻すだけで、車間距離を適正に保つべく自動的に回生ブレーキの強さを加減するものだ。

またARナビゲーションも装備し、実際のフロントカメラからのライブ映像に矢印など視覚的効果を取り入れることによって、ドライバーに直感的にルートガイドできるものだ。

ヒョンデコナ。撮影:内田俊一

そのほか多くの安全運転支援システムも搭載されており、装備に関しては充実したものといえる。

このように日本市場に向けた専用セッティングを施し、安全運転支援システムをはじめ多くの機能を搭載したコナ。

ネット販売というところが気になるかもしれないが、実車を見たい、試乗したいということであればヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜(神奈川県横浜市)をはじめ各地域にあるショールームなどで可能だ。

また整備工場も全国展開されているのでアフターサービスもそれほど心配はないだろう。

商談のためにショールームに訪れるのには抵抗があるという層には、有意義な取り組みといえるだろう。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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