【日本だけの特別仕様|内装・外装】ルノー・カングーは人生を楽しくしてくれる実用的なクルマ[MJ]
○文:工藤 貴宏
ルノー「カングー」は、もともとは荷物を運ぶための“仕事車”として開発された働くクルマです。
日本車でいえばトヨタ「ハイエース」のような存在。
本国フランスでは郵便車としても採用されていることもあって、街で見かけることも多く親しまれています。
そんなカングーの内外装を上質に仕立てた乗用モデルはなぜか日本では子育て層を中心にオシャレなファミリーに大人気。
今回は、先日デビューした新型モデルの内外装を紹介しましょう。
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INDEX
先代よりもひとまわり大きくなった車体
カングーの特徴である、ほのぼのとした雰囲気はフルモデルチェンジして3世代目となった新型でも変わっていません。
しかし、車体はひとまわり大きくなりました。
具体的にいうと、全長は210mm伸びて4,490mmに。全幅は30mm広がって1,860mmとなりました。4,490mmという全長は日産「セレナ」、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」、そしてホンダ「ステップワゴン」など国産ミドルサイズミニバンに比べて20cm以上短いもの。
サイズ的には大きくないのです。
いっぽう1,860mmの全幅はそれらよりも15cm以上広いので、駐車環境によっては考慮するべきポイントとなるかもしれません。
ただし、人気車種であるトヨタ「アルファード」と同等と考えれば、多くの人にとっては受け入れられる範囲内ともいえそうです。
日本仕様だけの特別なコーディネート
先代や先々代において日本においてカングーでもっとも人気のあるボディカラーは「黄色」ですが、新型は日本だけのスペシャルなコーディネートが用意されました。
「ジョン・アグリュム」と呼ばれる黄色が日本のために、日本仕様だけに設定されたのです。
何を隠そう、商用車としてではなく乗用のファミリーカーとしてカングーが人気なのは世界の中でも日本だけの特別な現象。
それを本国のカングー関係者もがしっかり理解したうえで、日本のマーケットを重視して日本専用の仕様を作ってくれたのです。
そして、もうひとつ日本仕様だけのスペシャルなコーディネートがあります。
それは「ゼン」や「クレアティフ」に施されている、ブラックバンパー(無塗装の黒バンパー)仕様。
なにしろ、日本におけるカングーは高級に見えるボディ同色バンパーよりも質素なブラックバンパーのほうが人気という珍しい車種。
そこで、本国では商用仕様にしかないブラックバンパーの設定が世界で唯一、日本に限り乗用モデルにも用意されたのです。
「ゼン」や「クレアティフ」は、前後バンパーだけでなくドアミラーだけでなくドアレールカバーも無塗装の樹脂仕上げとし、ドアの下部には同様に樹脂素地のドアモールも追加。
またホイールも飾らない質素なスタイルを組み合わせるほか、上級仕様がLEDとなるドアミラーウインカーをあえて電球としてチープに見せているのも面白いところです。
もしかすると「そんな商用車みたいなスタイルよりも高級なほうがいい」という人もいるかもしれません。
そんな人のために「インテンス」というボディ同色バンパーの仕様も「クレアティフ」と同価格でラインナップされています。
どうして日本では質素なスタイルのカングーが好まれるのか?
他のクルマとは一線を画する「飾らない雰囲気」や「本物の道具感」を求めているからと言われています。
後席ドアはスライド式。リヤゲートは観音開き
カングーの後席ドアは日本のミニバンと同じようにスライド式です。
しかし注意しないといけないのは、日本で重視される電動開閉機構が設定されていないこと。
開け閉めに必要な力の感覚や操作感などが電動式とは違うので、購入前に実車で確認しておくべきでしょう。
さらに日本のミニバンと大きく異なるのが、リヤゲート。
日本では多くのミニバンが上部へ開く跳ね上げ式ですが、カングーは左右に向かって開く観音開きなのです。
本国の商用仕様が観音開きになっているのは、この開き方のほうがパレットに積んだ荷物をフォークリフトで車内へ積む際の邪魔をしないから。
本国の乗用仕様は日本のミニバンと同じく跳ね上げ式が標準設定ですが、日本向けは商用モデルと同様に観音開きとなっています。
なぜなら、日本のユーザーがそれを求めるから。
観音開きは、跳ね上げ式とする日本車のミニバンと違って車両後方に広い空間がなくても開けられるという実用面のメリットがあります。
それは日常生活で利便性をもたらしてくれるでしょう。
しかし、ルームミラー越しの後方視界に柱が入って邪魔になるのも事実なので、ここも購入前に確かめておきたいポイントです。
ただ、カメラ式のルームミラーを装着することで、後方視界はウィークポイントではなくなるでしょう。
広い室内と豊富な収納スペース
室内は広びろで、窓も大きくて開放的。
後席も同様に開放感があります。
ただし、実際に後席に座ってみるとひざ前空間(ひざとフロントシート背中との間隔)自体はそれほど広いわけではありません。
そして室内で注目したいのは、収納の豊富さです。
たとえば運転席と助手席の頭上にはオーバーヘッドコンソールと呼ぶ“棚”があって、荷物を収納できる部分の天地高は90~130mm、奥行きは300mmもある広さがうれしいところ。
ボックスティッシュなども楽々収まります。
また、ダッシュボードの上部には中央にA4バインダーも置けるトレイがあるほか、なんと運転席の正面となるメーターバイザーの上にもリッド付きの小物入れ(内部に充電用のUSBアウトレットが2つもある)が用意されるなど運転席まわりの収納力は抜群。
使い勝手の良さは、さすが質実剛健のプロツールですね。
運転環境はデジタル化が大きく進んだ
あまりにも質素だった先代と比べて、新型の運転環境はグッと進化。
メーターは中央が7インチのTFTカラーメーターとなり一気にデジタル化したし、ダッシュボード中央部分は8インチのタッチパネル式ディスプレイも標準装備。
車載カーナビは組み込まれていませんが、スマホを接続することで、そのナビアプリをカーナビとして活用できます。
また、パーキングブレーキは電子制御式が採用されました。
そして何を隠そう、見えない部分も新型になって大きく進化。
それは先進安全機能&運転サポート機能です。
衝突被害軽減ブレーキをはじめ車線の中央を維持するようにハンドル操作を支援する機能、
車線をはみ出しそうになるとハンドルに介入して車線逸脱を防ぐ機能、
車線変更時などに斜め後方にドライバーが気が付いていない車両がいる場合はそれとの接触を防ぐために自動的にハンドルを少し切る機能、
そして運転サポートのデバイスとしては高速道路の渋滞時には完全停止まで機能する追従式のクルーズコントロールなどが搭載されました。
「事故を起こさない性能」と「運転の疲れを軽減する機能」は先代から飛躍的に高まったのです。
アクティブに遊べる広い荷室
カングーといえば、広い荷室も大きな魅力。
当然新型も荷室を広く作られていますが、荷室自体も先代より広くなりました。
後席を畳まない状態での荷室容量は、先代比プラス115Lの775L。その際の荷室の奥行きは先代より約130mm増した910mmまで伸びました。
また最大積載量が250㎏も引き上げられ、1トンとなったのも自慢です。
ファミリーでキャンプに行く際などは、荷物が増えがち。そんなシーンでもカングーなら安心というわけです。
まとめ
「実用重視の本物」「日本仕様だけ特別なコーディネート」そして「広くて使い勝手のいい荷室」。
新型カングーを理解するうえで、知っておきたい3つのキーワードがあります。
その内容についてはこの記事に書いた通りですが、いずれもカングーの特徴であり、カングーがいかに特別なモデルかを示しているといってもいいのではないでしょうか。
確かにカングーは、日本のミニバンのように痒い所に手が届くようなホスピタリティはないかもしれません。
しかし、実用主義の骨太な道具として、特別な存在感を放っているのは間違いないでしょう。
間違いなく言えるのは、人生を楽しくしてくれるクルマだということです。
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