ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

新型セレナ e-POWERの実燃費を試乗して計測してみた。[MJ]

○文:工藤 貴宏

ファミリーミニバンとして人気の高いセレナには、ガソリン車に加えて「e-POWER(イーパワー)」と呼ばれるハイブリッドモデルが用意されています。

ハイブリッドを用意する最大の理由は燃費性能を高めるためですが、その実力はどのくらいなのか気になるところですね。

そこで、実際に走って計ってみました。

工藤 貴宏 の記事一覧

出光のカーリース・ポチモへ
出光のカーリース・ポチモへ

新型セレナの概要

日産セレナ。写真:工藤貴宏

日産「セレナ」は標準仕様が5ナンバー枠に収まる運転しやすいボディサイズながら、3列目まで快適に人が座れる室内スペースを確保したバランスのいいパッケージングが自慢のミニバン。

子育てファミリー層に人気があり、トヨタの「ノア」や「ヴォクシー」、そしてホンダ「ステップワゴン」が直接的なライバルとなります。

日産セレナ。写真:工藤貴宏

最新モデルは、6世代目として2022年にデビューした世代で、バリエーションは従来通りに標準タイプ(「X」や「XV」グレード)とエアロ仕様の「ハイウェイスター」を展開。

加えて最上級仕様として高速道路を手放し運転(ドライバーが操作しなくても車線の中央を走るようにハンドルを制御する)機能の「プロパイロット2.0」を組み込んだ「ルキシオン」と呼ぶグレードも新たに追加されました。

新型セレナのパワートレイン

日産セレナ。写真:工藤貴宏

新型セレナのパワートレインは、従来モデルに引き続きガソリンモデルとハイブリッドモデルが用意されています。

ガソリン車は従来通りに排気量2.0Lの自然吸気エンジンを搭載。
いっぽうでハイブリッドモデルは、従来の排気量1.2Lエンジンから、新型では1.4Lエンジンへと大型化されたのがトピック。

排気量をあげたのは、発電時のエンジン回転数を下げて音を静かにすることを狙っているほか、エンジンパワーによる走行中の動力性能向上、そしてさらなる燃費向上も考えてのことです。

両パワートレインのスペックを比べてみましょう。

セレナのポチモのバナー

ガソリン車

  • 直列4気筒自然吸気
  • 排気量:1997cc
  • 最高出力:110kW(150ps)/6000rpm
  • 最大トルク:200Nm/4400rpm
  • 使用燃料:レギュラーガソリン

ハイブリッド(e-POWER)

  • 直列3気筒自然吸気
  • 排気量:1433cc
  • 最高出力:72kW(98ps)/5600rpm
  • 最大トルク:123Nm/5600rpm
  • 使用燃料:レギュラーガソリン
  • フロントモーター最高出力:120kW(163ps)
  • フロントモーター最大トルク:315Nm

e-POWERが一般的なハイブリッドと異なるのは、エンジンパワーが直接駆動力として使われる状況がないこと。
エンジンは発電専用として働き、そこで起こした電気を使ってモーターを回して駆動力を生み出すのです。

日産セレナ。写真:工藤貴宏
日産セレナ。写真:工藤貴宏

ハイブリッド用のエンジンはガソリン車のエンジンに比べると排気量が小さく、その分出力が低め。

しかしモーター出力はガソリン車のエンジン出力とほぼ同じで、トルクはガソリン車の約1.5倍。
つまりバッテリーを活用した一時的な状態では、ガソリン車よりも力が強く、より鋭い加速を実現するのです。

そしてハイブリッド車の最大の特徴は、燃費の良さ。
電気を効率よく使うことでエネルギーを無駄なく活用し、優れた燃費を実現するのがうれしいですね。

新型セレナのカタログ燃費はどのくらい?

日産セレナ。写真:工藤貴宏

カタログに記載されているセレナ(「ハイウェイスターV」のFF車)の燃費は以下の通り。

左側の数字がガソリン車、右側はハイブリッド車のものです。

  • WLTCモード総合燃費:13.0km/L / 19.3km/L
  • WLTC市街地モード燃費:9.5km/L / 19.7km/L
  • WLTC郊外モード燃費:13.6km/L / 20.7km/L
  • WLTC高速道路モード燃費:14.9km/L / 18.3km/L

WLTCモード燃費は、各自動車メーカーで共通の決められた走行パターンにおいて測った燃費値。
総合的な値となるWLTCモード総合燃費をみると、ハイブリッド車は19.3km/Lという燃費性能を誇ります。

ミニバンとしてはかなり低燃費ですね。

ガソリン車とハイブリッドを比べると全体的にハイブリッドのほうが優れた燃費ですが、高速道路モードよりも郊外モード、郊外モードよりも市街地モードと速度域が低いほどガソリン車との差が大きいことがわかります。

つまり、このハイブリッドシステムは速度域が低いほど効率がよく、ガソリンエンジンに対して優位というわけです。

とはいえ、高速道路モード燃費もガソリン車を上回る18.3km/Lですから、高速域になっても実力は高いと言えるでしょう。

セレナのポチモのバナー

新型セレナe-POWERの実燃費はどのくらい?

日産セレナ。写真:工藤貴宏

では、そんなセレナe-POWERの実燃費はどのくらいでしょうか?
今回は、「e-POWERハイウェイスターV」で実際に走り、燃費を計測してみました。

走行時は燃費運転を意識することなく、流れに乗って通常通り走ることを意識しての記録です。
夏なので外気温は30度を超える状況となり、エアコン(25度でオート設定)としています。

この外気温は燃費にとっては不利な状況と言えるでしょう。

なお、走行モードはいずれも「ECO」ではなく「スタンダード」とし燃費の数値はメーター内の燃費計のものです。

流れのいい首都高速では27.9km/L

日産セレナ。写真:工藤貴宏

渋滞がなければ燃費に悪影響となる停止/発進がなく、なおかつ高速道路としては走行速度域が低い首都高速道路は燃費にとってかなりいい条件。そこを27.3キロほど走っての燃費値は27.9km/Lでした。

走行時は全く渋滞がなく、平均速度は60km/hとWLTCモード計測でいえば郊外路に近い状態。かなり燃費に有利なシチュエーションと言えます。

とはいえ、カタログのWLTCモード燃費値を大きく超える優れた数字が出たのだから驚きですね。
1Lのガソリンで25キロ以上走れてしまうのですから、素晴らしい実力といっていいでしょう。

走行環境によっては、カタログ記載値を大きく超える実力を持つハイブリッドということもわかりました。

順調な市街地では23.9km/L

日産セレナ。写真:工藤貴宏

幹線道路を中心に、帰宅ラッシュを避けつつ一般道を49.7キロ走って計測した燃費は23.9km/L。ミニバンとしてはかなり優れた燃費といえます。

走行速度は高くても60km/hほど。平均速度は36km/hでした。
渋滞はありませんでしたが、赤信号によるストップ&ゴーは頻繁にありました。

80km/h制限の高速道路をゆっくり走って21.3km/L

日産セレナ。写真:工藤貴宏

最後は高速道路です。
中央自動車道や(厳密には高速道路ではありませんが)富士五湖有料道路を、制限速度を目安にACCを使って走りました。

セレナのポチモのバナー
日産セレナ。写真:工藤貴宏

平均速度が69km/hと低めなのは、中央自動車道が80キロ制限だったのに加えて富士五湖有料道路の制限速度が70キロであること、さらには混雑で走行速度が低下した区間があったことなどが理由です。

223キロ走っての燃費は21.3km/L。これは十分に満足できる実力と言えるでしょう。

日産セレナ。写真:工藤貴宏

カタログ記載のWLTC高速モード値よりも伸びたのは、今回の走行速度がWLTC高速モード計測時の走行速度よりも低かったからと考えられそうです。

いずれにせよ、セレナe-POWERの燃費は満足できる水準。
カタログ燃費を見るだけでも素晴らしいですが、実走行でもそれを上回るほどの好燃費なのだからたいしたものですね。

新型セレナe-POWERで燃費をよくする運転のコツ

日産セレナ。写真:工藤貴宏

新型セレナe-POWERで燃費をよくするコツは、“モーターの有効活用”と“空走の活用”そして“車速管理”です。

まず加速する際はゆっくり加速するのではなく、少しアクセルを踏み込み気味にしてモーターを効果的に使うのがポイント。

ダラダラではなくキビキビと加速し、巡行速度に到達したらアクセルをスッと緩めると瞬間燃費計の示す値がスッと燃費のいい状態となり、結果的に燃料消費を減らせるのです。

これが一般道で燃費を伸ばすコツです。

日産セレナ。写真:工藤貴宏
日産セレナ。写真:工藤貴宏

下り坂になった時や前方の車両が減速した時も、早めにアクセルを離すと空走状態で前へ進むのでエネルギーを節約。
そのためには、車間距離を多めにとって前方の様子をしっかりと確認するのがいいですね。

また市街地ではエンジンを止めてモーターだけで走る「EVモード」を積極的に活用すると、その状態での走りはガソリンを消費しないので燃費が良くなります。

日産セレナ。写真:工藤貴宏

加えて、高速道路は速度も重要。ゆっくり走ったほうが燃費を伸ばすことができます。
とはいえゆっくり走りすぎるのは周囲との車速差ができて安全とはいえないので、オススメは左車線を走るトラックに速度をあわせ、その後ろを淡々と走ること。

空気抵抗も減るので、燃費に有利です。

また、アクセルペダルから足を離すと回生ブレーキが強めに効く「e-ペダル」ですが、燃費を重視するならこれは使わないほうがいいでしょう。

回生ブレーキによってエネルギーを回収できるのは間違いないですが、再び加速する際にはどうしてもロスが生じます。

それよりも、アクセルオフ時はできるだけ速度を落とすことなく空走状態とするのがエネルギーロスが少なく燃費向上には有利だからです。

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.1

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.2

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.3

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.4

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.5

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.6

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.7/ジャパンモビリティショー2023特集

モータージャーナリストレポート一覧 Vol.8

出光のカーリース・ポチモへ
出光のカーリース・ポチモへ

この記事を書いた人

モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

関連する記事

カテゴリーから記事を探す

error: このページの内容は保護されています。