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モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

新型 Renaul Kangoo(ルノー カングー)の燃費性能を解説!ガソリン車とディーゼル車の実燃費も比較[MJ]

○工藤 貴宏

子育て層を中心にお洒落なファミリーカーとして人気のルノー「カングー」。

そんなカングーの燃費はどのくらいでしょうか。

この記事では2023年にデビューした3代目カングーに関して、カタログの燃費に加え、実際に走って計測したガソリン車とディーゼルの燃費、そしてライバルとの比較も紹介します。

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カングーの概要

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

カングーは、フランスのルノー車がラインナップしているハイトワゴン。

ミニバンと違って3列シートではなく2列ですが、スライド式の後席ドアを組み合わせたり広いラゲッジスペースを備えるなど実用性の高さが魅力です。

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

そもそもカングーは荷物を運搬するためのクルマとして開発された商用車で、いわばプロのツール。
パッケージングから室内の収納スペースまで、利便性を高めた質実剛健なつくりが特徴的です。

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

また、業務車両としてハードに使われることまで想定し、ドアの開閉、シートのへたり、さらには車体やエンジン、サスペンションに関する耐久テストは一般的な乗用車とは比較にならないほどたくさん行われているのも商用車らしい特徴といえるでしょう。

走行テストは、のべ地球15周分ほどおこなわれているというから驚きです。

カングーのパワートレイン

ルノーカングーエンジン。写真:工藤 貴宏
ガソリンエンジン

2023年にデビューした3代目カングーには、2種類のパワートレインが搭載されています。
ひとつはガソリンエンジン、もうひとつはディーゼルエンジン。

まずはその2つのエンジンの概要を紹介しましょう。

ガソリンエンジン

直列4気筒ターボ

  • 排気量:1333cc
  • 最高出力:131ps/5000rpm
  • 最大トルク:240Nm/1600rpm
  • 使用燃料:ハイオク

ディーゼルエンジン

直列4気筒ターボ

  • 排気量:1460cc
  • 最高出力:116ps/3750rpm
  • 最大トルク:270Nm/1750rpm
  • 使用燃料:軽油

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに対して排気量が少し大きいですが、最高出力はやや控えめ。

しかし最大トルクは大きく、また使用燃料がハイオクではなく燃料単価の安い軽油なのもうれしいポイントです。

カングーのカタログ燃費はどのくらい

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

カタログに記載されているカングーの燃費は以下の通り。

左側の数字がガソリンエンジン車、右側はディーゼルエンジン車のものです。

  • WLTCモード総合燃費:15.3km/L / 17.3km/L
  • WLTC市街地モード燃費:12.2km/L / 12.9km/L
  • WLTC郊外モード燃費:15.5km/L / 17.7km/L
  • WLTC高速道路モード燃費:17.0km/L / 19.9km/L

WLTCモード燃費は、各自動車メーカーで共通の決められた走行パターンにおいて測った燃費値のこと。

総合的な値となるWLTCモード総合燃費では17.3km/Lのディーゼル車はもちろんのこと、ガソリン車でも15.3km/Lとハイブリッドカーでない車両としては優れた数値と言っていいでしょう。

市街地モード、郊外モード、高速道路モードの値をガソリン車とディーゼル車で比べてみると、市街地を走るときよりも高速道路を走るときのほうがガソリン車とディーゼル車の燃費の差が開いていることがわかります。

カングーの実燃費はどのくらい

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

そんなカングーの、カタログ燃費ではなく実燃費はどのくらいでしょう。

ガソリン車とディーゼル車で、同じ日に同じルートを走って比べてみました。

ルートは一般道(郊外路ではなく市街地で平均速度は低めだが渋滞ではなくストップ&ゴーも少ない)と高速道路を半々ずつで50キロほどの道のり。

一般道も高速道路も、省燃費運転ではなく一般的な運転を心がけました。

実際の燃費はドライバーの運転の癖にも大きく左右されます。
今回はガソリン車もディーゼル車も同じドライバーが、できるだけ同じような運転を心がけて計測しました。

その結果、実燃費は

ガソリン車:15.1km/L
(メーターでは欧州式に「100km走るのに何リッターの燃料が必要か」を表す6.6L/100km)

ディーゼル車:19.2km/L(5.2L/100km)

今回の実装による燃費計測では、カタログ値以上の差が付きました。

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

2つのエンジンは速度域が上がるほど燃費の差が広がる傾向にあるようですが、高速道路も含めて燃費計測したことがカタログ値以上に大きく差が開いた理由と言えそうです。

いずれにせよ、実測による計測からも燃費の実力は高いと判断していいでしょう。

ディーゼルの価格差は何キロで取り戻せる?

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

カングーの車両価格(2023年春現在)は、主要グレード(「インテンス」「クレアティフ」)のガソリン車が395万円。
いっぽう同グレードのディーゼル車は419万円です。

すなわち、エンジンの違いによる価格差は24万円で「ディーゼルのほうが24万円高い」といえます。
エンジンが異なっても装備は基本的に共通なので、この価格差はすべてエンジンに起因するものと言っていいでしょう。

いっぽうでディーゼル車は燃費がいいうえに、燃料の軽油はガソリン車の指定燃料であるハイオクに比べ2割程度安いので、燃料代はガソリン車より安く済みます。

走行距離が増えれば増えるほど、ガソリン車とディーゼル車の「車両代+燃料代」の合計は差が狭まっていくことになるというわけです。

では、ディーゼルを買ったとして、購入時の車両価格差はどのくらい走れば取り戻せるのでしょうか?

仮に、燃料単価を2023年春の平均的な価格である1リットルあたりハイオク165円、軽油130円とし、燃費をカタログ燃費(ガソリン車15.3km/L/ディーゼル車17.3km/L)で計算してみましょう。

すると1000キロ走るのに必要な燃料代はガソリン車が1万785円、ディーゼル車が7115円。
ディーゼル車の燃料代はガソリン車の2/3ほどで1000キロ走るごとに3670円の差がつくことになります。

その計算でいけば、6万6000キロほど走れば車両価格+燃料価格の合計額が同等となり、そこから先は走れば走るほどディーゼル車のほうが割安になっていきます。

いっぽう、今回計測した実燃費で同じ計算をしてみると5万8000キロ走れば両車の車両価格+燃料価格の合計がイーブンとなります。

コストパフォーマンスを考えてパワートレイン選びをする際は、6万キロ以上走るかどうかがひとつの基準となるでしょう。

ライバルと比べてみたら

さて、そんなカングーのカタログ燃費(ガソリン車15.3km/L/ディーゼル車17.3km/L)はライバルと比べてみるとどうでしょう?

シトロエン・ベルランゴと比べてみたら

CITROEN BERLINGO
Post-production : Astuce Productions

カングーにもっともキャラクターが近いライバルと言えるのが、フランスのシトロエンが用意している「ベルランゴ」。

そのWLTCモード燃費はディーゼル車で18.1km/Lとカングーよりもやや良好。

トヨタ・シエンタと比べてみたら

国産ライバルの1台といえるトヨタ「シエンタ」のWLTCモード燃費は、ガソリン車が18.3~18.4km/Lで、ハイブリッド(FFモデル)は28.2~28.8km/L。

カングーに比べると車体が一回り以上小さくて車両重量が軽いので有利なのは事実ですが、ハイブリッドだけでなく、ガソリン車も極めて優れた燃費性能を持つのはさすがです。

日産セレナと比べてみたら

ファミリー向けのユーティリティに優れたクルマとして考えると、日産「セレナ」もカングーのライバルになりそうな1台。

そのWLTCモード燃費はガソリン車(FF)が13.0~13.4km/Lでハイブリッド(e-POWER)では18.4~20.6km/L。

ガソリン車ではカングーのほうが優れ、ハイブリッドになるとセレナ有利といえます。

カングーを買うなら、ガソリンとディーゼルどっち?

ルノーカングー。写真:工藤 貴宏

カングーを買う際に、ガソリン車を選ぶべきか?それともディーゼルを選ぶべきか。

オススメはディーゼルです。
なぜなら、加速が力強いうえに、燃料代が安いから。

カングーは遊びに出かけたくなるクルマですが、燃料が安く済のであれば気分的に気軽に遠くまでお出かけしたくなるのではないでしょうか。

また、6万キロをひとつの目安とし、それ以上走行距離が増すようであれば車両価格まで含めたトータルのコストパフォーマンスでガソリン車よりも有利となるのも魅力です。

いっぽうで、車両価格をできるだけ安く収めたい人、あまり走行距離は伸びない人、そして滑らかに高回転までまわるエンジンが好きな人はガソリンを選ぶといいでしょう。

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この記事を書いた人

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工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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