ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

新型ヴェルファイア(ガソリンエンジン車)の実燃費を試乗して計測[MJ]

トヨタ「アルファード」の兄弟車である「ヴェルファイア」。

従来はスタイリングの一部が異なるのみでしたが、2023年に発売した新型はパワートレインや走りの味付けが異なるのが大きなトピックで、エンジンはアルファードに設定がない2.4Lターボも選べます。

そんなヴェルファイアのターボエンジン搭載車は燃費も気になるところ。実際に計ってみました。

○文、写真:工藤貴宏

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ヴェルファイアの概要

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

ヴェルファイアとその兄弟車であるアルファードは、トヨタの最上級ミニバンです。

初代アルファードがデビューしたのは2002年。当時人気だった大型ミニバンの日産「エルグランド」に対抗するモデルとして開発されました。

魅力はなんといっても、室内が広々としていて開放的、それに快適装備も相まって居心地がいいことです。瞬く間にヒットモデルとなりました。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

そんなアルファードの兄弟車として2008年(アルファードの2代目へのフルモデルチェンジと同時)に初代が登場したのがヴェルファイア。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

上下2段としたヘッドライトなどエクステリアのデザインは個性や力強さをイメージしたもので、豪華さや上質さを求めたアルファードに対して差別化していました。

いっぽうで車体設計だけでなく搭載エンジンやグレード構成などのバリエーションは、両車で共通。「基本的にデザインの一部か異なるのみ」という構成は、その後の2代目(アルファードでは3代目)まで続きました(モデルライフの終わりには、それまで別の販売店だったのが同じ販売店で両車を買えるようになった影響でヴェルファイアのグレード構成が簡略化されています)。

しかし、2023年に登場した3代目(アルファードでは4代目に相当)では、両車の関係が大きく変化。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

アルファードとヴェルファイアはスタイリングの一部が異なるだけでなく、パワートレインや操縦性の味付けも異なるのです。

具体的には、ガソリン車のエンジンはアルファードが2.5L自然吸気(182馬力)なのに対し、ヴェルファイアは2.4Lターボ(279ps)でよりハイパワーな設定。
このターボエンジンは従来用意していたV6エンジンの置き換えと考えるとわかりやすいかもしれませんね。

また、操縦性もヴェルファイアはアルファードに比べるとスポーティな設定で、車体補強を施した上にダンパーやパワーステアリング制御が異なり、またタイヤは19インチを標準装備します(アルファードは17インチもしくは18インチが標準で19インチはオプション)。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

つまり新型ヴェルファイアのガソリン車は、アルファードに対してパワフルかつハンドリング(操縦性)もより運転を楽しみ味付けとしたモデル。

これまで以上に、両車のキャラクターに差をつけているといっていいでしょう。
今回は、そんな注目のターボ車の実燃費を確かめてみました。

ヴェルファイアのパワートレイン

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

2023年に登場したアルファードには、2つのパワーユニットが展開されています。

ひとつは注目のガソリンターボエンジン、もうひとつはハイブリッドです。

<2.4Lガソリンターボ>

  • 直列4気筒自然吸気
  • 排気量:2393cc
  • 最高出力:200kW(279ps)/6000rpm
  • 最大トルク:430Nm/1700~3600rpm
  • 使用燃料:ハイオク

<2.5Lハイブリッド>

  • 直列4気筒自然吸気
  • 排気量:2487cc
  • 最高出力:140kW(190ps)/6000rpm
  • 最大トルク:236Nm/4300~4500rpm
  • 使用燃料:レギュラー
  • フロントモーター最高出力:134kW(182ps)
  • フロントモーター最大トルク:270Nm
    • ※システム最高出力(エンジンとモーターの合計値最大):250ps(184kW)
  • 【4WD車にはリヤモーターを追加】
    • リヤモーター最高出力:40kW(54.4ps)
    • リヤモーター最大トルク:121Nm

2.4Lターボエンジンは4気筒で、従来の3.5L V6ガソリン自然吸気エンジンに比べると排気量が小さいものの、それに匹敵するパワーを発生。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

また、それを上回る太さのトルクを、より低い回転数から発生するので加速の力強さが増しています。

いっぽうハイブリッドはモーターを組み合わせることで滑らかな加速感が魅力です。

ヴェルファイアのカタログ燃費はどのくらい?

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

カタログに記載されているヴェルファイアの燃費はどのくらいでしょうか。左側の数字が2.5Lハイブリッド(ZグレードのFF車)、右側は2.4Lガソリンターボ(FF車)のものです。

  • WLTCモード総合燃費:17.5km/L / 10.6km/L
  • WLTC市街地モード燃費:15.6km/L / 7.2km/L
  • WLTC郊外モード燃費:19.3km/L / 11.3km/L
  • WLTC高速道路モード燃費:17.8km/L / 12.6km/L

WLTCモード燃費とは、メーカーを問わず共通の走行パターンにおいて測った燃費値です。
総合的な値となるWLTCモード総合燃費をみると、2.5Lハイブリッド車の17.5km/Lはこのクラスとしては常識外れの燃費性能といっていいでしょう。

いっぽうで2.4Lガソリンターボ車は10.6km/Lとハイブリッド車に比べると控えめ。ハイブリッド車との差は少なくありません。

新型ヴェルファイアの燃費やパワーを見ると、

  • 2.5Lハイブリッドは動力性能が控えめだが、燃費は大型ミニバンと思えないほど良好
  • 2.4Lガソリンターボは高い動力性能が自慢だが、燃費に関しては2.5Lハイブリッドに届かない

といえるでしょう。

ヴェルファイアの実燃費はどのくらい

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

そんな新型ヴェルファイアの実燃費はどのくらいでしょうか?

今回は、燃費に優れる2.4Lガソリンターボモデルで実際に走り、燃費を計測してみました。

走行時は燃費運転を意識することなく走行モードは「ECO」ではなく標準状態。エアコン(25度でオート設定)も使いながら、流れに乗って通常通り走ることを意識しての記録です。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

気温が30度(車載の温度計は38度を示すこともあった)を超える真夏の日中に走ったのでエアコンの負担が大きく、燃費にとっては悪条件の計測でしたことはお伝えしておきましょう。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

やや混雑した市街地では7.6km/L

日中で交通量多めの市街地道路を30キロほど走って計測した燃費は7.6km/L。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

道路状況は走っている時間よりも信号待ちなどで停車している時間のほうが長く感じられるほどで、平均速度は20キロ強でした。

朝の通勤ラッシュほどの厳しい渋滞ではないとはいえ、高い気温も含めて燃費にとっては不利な状況での計測だったといえます。

しかしながら、カタログ値を超える実燃費となったのは驚きました。

高速道路をゆっくり走って14.5km/L

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

次は約60キロの距離を、渋滞がない高速道路でクルーズコントロールを活用しながら走行。

高速道路は混雑気味で、結果として高速道路としてはゆっくりとしたペースでの計測となりました。大型トラックの走行速度くらいをイメージしてもらえればいいと思います。

ちなみに高速道路の燃費は、速度を上げれば上げるほど悪化します。それは速度が増すと空気抵抗(高速道路の走行抵抗は大部分が空気抵抗)が増えるからです。

ここでのヴェルファイア ガソリンターボ車の燃費は14.5km/L。
カタログ記載のWLTC高速道路モード燃費は12.6km/Lなので、それを上回る燃費となりました。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

理由は走行速度が低かったからと考えられます。ペースを上げ、100km/h巡航となれば燃費はこれよりも悪化することでしょう。

とはいえ、大型トラック程度の巡航速度であればここまで燃費が伸びるというのは注目すべきポイントではないでしょうか。

ヴェルファイアのガソリン車も他の車種と同様にハイブリッドに比べると燃費がよくありませんが、速度さえ控えめにすれば十分に納得の燃費を実現すると判断していいでしょう。

いずれにせよ、実際に走ってみると、市街地も高速道路もカタログ記載値を上回る燃費値を実現できることがわかりました。

ヴェルファイアで燃費をよくする運転のコツ

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

新型ヴェルファイアのガソリン車で燃費をよくするコツはまず、アクセルを踏み込みすぎないことです。

エンジンは低回転から発生する太いトルクが特徴なので、回転を上げすぎずジワジワとアクセルを踏んで“トルクに乗った加速”をするのがポイント。

また、前方の信号が赤になっている場合や下り坂などはできるだけ早くアクセルを戻し、空走を有効活用するのが燃費を伸ばすコツです。

高速道路では、もっとも簡単で燃費に効果的なワザがあります。

それは巡航速度を控えめにすること。高速道路では走行速度と燃費に密接な関係があり、速度を抑えれば燃費がよくなります。

オススメは、左車線を走る大型トラックの後ろにつき、ペースをあわせて走ること。

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

大型トラックは速度リミッターがついているので控えめな速度で走り、また(安全な車間距離は確保したうえで)大型トラックの後ろを走ることで空気抵抗を減らせ、これも燃費向上に効きます。

ぜひ試してみてください。

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この記事を書いた人

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工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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