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工藤 貴宏くどう たかひろ

新型スペーシアの内外装、グレード、そして価格を速攻チェック[MJ]

人気の軽自動車、スペーシアが2023年11月にフルモデルチェンジして3代目に進化しました。

その内外装や進化のポイントをチェックしてみましょう。

◯文:工藤 貴宏

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出光のカーリース・ポチモへ
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スペーシアは人気の軽自動車

スズキスペーシア
先代 スペーシア

いま、日本の乗用車における新車販売の約4割が軽自動車です。

なかでも人気が高いのは「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる、背が高い車体にスライドドアを組み合わせたタイプ。具体的な車種を言えば、「ホンダ・N-BOX」のようなモデルです。

人気の理由は室内(特に後席)が広く、スライドドアで乗り降りもしやすいから実用性が高く、それが重宝がられているから。

スズキスペーシア内装
先代 スペーシア 内装

もちろん軽自動車だから車体は小さく、狭い道や駐車など日常域の運転も楽。

一度使うと、「これがいい」となるユーザーが多いのです。

「スズキ・スペーシア」もそんなスーパーハイトワゴンに属する1台。販売トップであるN-BOX、そして2番手の「ダイハツ・タント」に続く人気を誇り、2022年度には11万697台を販売しました。

そんなスペーシアが新型になったので紹介しましょう。

スペーシア カスタム
先代 スペーシア カスタム

フルモデルチェンジだけどキープコンセプト

スズキスペーシア_HYBRID X_ミモザイエローパールメタリック ソフトベージュ2トーンルーフ
新型 スペーシア

2023年11月9日に発表された新型の雰囲気は、先代モデルに近いもの。

スペーシア(標準車)は直線基調デザインながらボンネットやヘッドライトの角をとって丸みを感じさせるデザインで、やわらかい雰囲気です。

いっぽうカスタムはシャープな顔つきですが、いずれも先代モデルを知っていればひとめでスペーシアだとわかるのではないでしょうか。

スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・ HYBRID XS_スチールシルバーメタリック ブラック2トーンルーフ
新型 スペーシア カスタム

先代のイメージを色濃く残す理由は雰囲気が好まれていたこと、そして今回のフルモデルチェンジが車体骨格を先代から継承していることなども背景にあります。

ちなみに、フロントだけでなく真横から見たときも先代との違いは一目瞭然。

側面にプレスライン(線状の凹凸)が増えているのに加えて、Dピラー(車体最後部の柱)の下が斜め上に跳ね上がっているのが先代モデルとの大きな違いですね。

スズキスペーシア_HYBRID X_ミモザイエローパールメタリック(リヤ)
新型 スペーシア
スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・HYBRID XS_インディゴブルーメタリック2(リヤ)
新型 スペーシア カスタム

先代のスタイリングはスーツケースをイメージし、シンプルに「箱」っぽく見せるために窓の下端が一番うしろまで直線でした。

新型のエクステリアの特徴は

スズキ発表会 鈴木俊宏社長とスペーシア
鈴木俊宏社長と新型スペーシア

新型のエクステリアデザインは「頑丈で大容量のコンテナをモチーフ」としたそうです。

真横から見ると、先代ではテールランプを埋め込んで黒くしていたDピラーをボディ同色としたのも特徴的。

標準車もカスタムもボディ自体は共通で、キャビンが大きく、室内空間が広いことがスタイリングからも伝わってきますね。

スズキスペーシア_HYBRID G_ピュアホワイトパール
スズキスペーシア カスタム_HYBRID GS_ピュアホワイトパール

標準タイプとカスタムの外装はどう違う

スズキ発表会 鈴木敏明専務とスペーシア
鈴木俊宏社長と新型スペーシア

カスタムではない標準車はシンプルなデザインでヘッドライトをカスタムに比べると大きくするなど愛嬌のある雰囲気です。

いっぽうカスタムは、上下を狭くして“細めた”ヘッドライトに大型のグリルを組み合わせるなどシャープなテイスト。

スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・ HYBRID XS_クールカーキパールメタリック

精悍さが増しているのに加え、外装にメッキを組み合わせて高級感を高めているのも特徴といっていいでしょう。

カスタムの外観は、内部をブラック化した薄型フルLEDヘッドランプと、LEDフロントシーケンシャルウインカー(流れるように光って点滅するウインカー)、透明感の高いテールランプなどを採用して先進的な印象を与えますね。

スペーシアカスタムフルLEDヘッドランプ&LED;フロントシーケンシャルターンランプ

フロントはヘッドランプ&ウインカーとグリルのほか、ボンネットフードやバンパーも標準車と異なる専用デザインとなっています。

側面はホイールのデザインが異なるほか、車体下にサイドアンダースポイラーが備わるのが標準車との違い。

スズキスペーシア専用15インチアルミホイール(スペーシア カスタム HYBRID XSターボ、HYBRID XS)

リヤは、テールランプのほかバンパー(より下部の張り出しが大きなデザイン)が専用デザインで、またテールゲートにメッキのガーニッシュが装着されて高級感な雰囲気としています。

スペーシアカスタムLEDリヤコンビネーションランプ

インテリアの特徴は? 後席の新発想が便利

スズキスペーシアシート_HYBRID X
スペーシア HYBRID X

室内の注目は、なんといっても上級グレード(スペーシア「HYBRID X」/スペーシア カスタム「HYBRID XS」系)の後席に採用された「マルチユースフラップ」。

座面先端の一部が独立し、角度調整と前後調整ができるようになっている新発想です。

スズキスペーシアマルチユースフラップ

座面先端の状態を変えることで、後席に置いた荷物が急ブレーキ時に床へ滑り落ちるのを防ぐ「ストッパーモード」、足を延ばしてリラックスできる「オットマンモード」、そして足を保持する「サポートモード」と3タイプの使い方を実現。

ライバルにはない、スペーシアだけの注目機能です。

ちなみにリヤシートには、センターアームレストも追加しました。
マルチユースフラップとあわせ、後席をより快適にしようという心意気が伝わってきますね。

スズキスペーシア後席センターアームレスト

新型ではシートヒーターに加え、ステアリングヒーター(ハンドルの握る部分を温める)を用意したのも、快適性を高める大きなポイントです。

ステアリングヒーター 作動イメージ(スペーシア カスタム HYBRID XSターボ、HYBRID XS)
ステアリングヒーター 作動イメージ(スペーシア カスタム HYBRID XSターボ、HYBRID XS)

もちろん、後席スペースが驚くほど広いのは言うまでもありません。この後席の広さは、多くのコンパクトカーを超えています。

スズキスペーシアカスタムシート_HYBRID XSターボ
スペーシアカスタム HYBRID XS ターボ

スズキ生産車初。待望の電動パーキングブレーキが付いた

機能装備として注目したいのが、スペーシアの「HYBRID X」でメーカーオプション「セーフティプラスパッケージ」装着車とスペーシア カスタム全車に備わる電動パーキングブレーキ。

パーキングブレーキの操作を従来の足踏み式からスイッチ式にしたもので、軽い力でも確実に作動できることと、解除も力をかけずにおこなえるのが長所です。

これまでのスペーシアには採用されておらず、はじめて採用しました。

スペーシア電動パーキングブレーキ
電動パーキングブレーキ

実は電動パーキングブレーキの搭載は、スズキが生産する車両としてははじめて(これまではトヨタ自動車からのOEMモデルとして販売する「ランディ」だけに搭載)。

今後は、スズキのほかの車種にも展開していくことでしょう。

また、電動パーキングブレーキ装着車のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、渋滞時の完全停止時には自動的にブレーキがかかりドライバーがブレーキペダルを踏み続けなくても停止状態を保持する停止保持機能も組み込まれました。

これは渋滞した高速道路を走るとメリットを実感できます。

先進安全機能・運転支援機能説明(イメージ)

エンジンは自然吸気とターボ。4WDも選べる

発表会 鈴木猛介チーフエンジニアとスペーシア カスタム
鈴木猛介チーフエンジニアとスペーシア カスタム

スペーシアは全グレードともに小型のモーターを組み込んだマイルドハイブリッド。

マイルドハイブリッドは燃費向上のほか、アクセルを踏んだ際にモーターが働くことで加速の反応がよくなるメリットもあります。

エンジンは自然吸気とターボがあり、前者はリーズナブルな車両価格と優れた燃費(WLTCモード25.1km/Lでクラストップ!)が自慢。

スズキスペーシア_HYBRID X_コーラルオレンジメタリック ソフトベージュ2トーンルーフ

いっぽうターボエンジンは力が強く、バイパスや高速道路への合流、そして上り坂などでもグイグイ走れる心強さが魅力です。

スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・ HYBRID XS_フェニックスレッドパール ブラック2トーンルーフ

街乗りだけなら自然吸気でも不安なく走れますが、郊外や峠道を日常的に走る人や高速道路を使って遠くまで出かけることが多い人は力強いターボエンジンをお勧めします。

動力性能に余裕があると運転が疲れないし、燃費も自然吸気エンジンに比べてそれほど悪くはありません。

また、駆動方式は全グレードでFF(2WD)と4WDが選択可能。4WDの価格は、FFに対して12万円ほど高く設定されています。

新型スペーシアのグレード構成は?

新型スペーシアのバリエーションは、以下の通りです(価格と燃費はFF車のもの)。

スペーシア

スズキスペーシア_HYBRID G_ブルーイッシュブラックパール3
  • HYBRID G 153万100円(燃費25.1km/L)
  • HYBRID X 170万5000円(燃費23.9km/L)

スペーシア カスタム

スズキスペーシア カスタム_HYBRID GS_ブルーイッシュブラックパール3
  • HYBRID GS 180万1000円(燃費23.9km/L)
  • HYBRID XS 199万5400円(燃費23.9km/L)
  • HYBRID XSターボ 207万3500円(燃費21.9km/L)

「HYBRID G」や「HYBRID GS」に対して「HYBRID X」と「HYBRID XS」系は左右両側の電動スライドドア(「「HYBRID X」は電動スライドドア非採用で「HYBRID XS」は助手席側のみ電動スライドドアを標準装備)、ロールサンシェード、サーキュレーター、マルチユースフラップなどが追加されます。

スズキスペーシアカスタムインパネ_HYBRID XSターボ

また、カスタムは本革巻きのハンドルやアルミホイールを全車に標準装備し、装備でも高級感が高められています。

どんなメーカーオプションがある?

スズキスペーシアカスタムインパネ_HYBRID XSターボ(全方位モニター付メモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機装着車)イメージ

注目のメーカーオプションは、すべてのグレードに設定している「全方位モニター付メモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機」で19万5800円。

9インチと大きめの画面を組み合わせたナビ&オーディオに、車両周囲全方位の様子を画面を通じて見渡せることで車庫入れを楽にし、安全にも貢献する全方位モニターを組みあわせたものです。

スズキスペーシアメモリーナビゲーション[9インチHDディスプレイ、フルセグTV・AM・FMラジオ・スマートフォン連携機能付、Bluetooth対応]

このオプションを選ぶと事故や急病など緊急時に車内のボタン一つでコールセンターにつながり消防(救急車)や警察への緊急車両手配のサポートをうけられる「SOS」ボタンのほか、スマホからドアロックや乗る前のエアコン作動(乗り込んだ時には車内が快適な温度になっている)が遠隔操作できる機能も組み込まれます。

スペーシアスズキコネクト[SOSボタン、スズキコネクト対応通信機]
SOSボタン、スズキコネクト対応通信機

20万円弱という価格はやや高いように感じるかもしれません。

しかし、スペーシアは全車ともオーディオが装着されておらず、カー用品店で後付けのナビを装着してもバックカメラも組み込めば10万円台中盤となるでしょう。

そう考えると、全方位モニターや通信機能まで含めて20万円弱は意外にリーズナブルと判断できます。

ほかには電動パーキングブレーキやACCの停車保持機能を加えた「セーフティプラスパッケージ」を「HYBRID X」向けに6万6000円で設定。

こちらも装着がオススメです(スペーシア カスタムでは全車に標準採用)。

ボディカラーのラインナップは?

たくさんのボディカラーが選べるのも新型スペーシアの魅力。

スペーシア

スズキスペーシア_HYBRID X_シフォンアイボリーメタリック
  • ミモザイエローパールメタリック※
  • トーニーブラウンメタリック※
  • オフブルーメタリック※
  • コーラルオレンジメタリック※
  • ピュアホワイトパール
  • ブルーイッシュブラックパール3
  • シフォンアイボリーメタリック
  • モスグレーメタリック
    (※のついた色はルーフをソフトベージュに乗った2トーンカラーも設定)

スペーシア カスタム

スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・ HYBRID XS_アーバンブラウンパールメタリック
  • ピュアホワイトパール※
  • インディゴブルーメタリック2※
  • スチールシルバーメタリック※
  • フェニックスレッドパール※
  • アーバンブラウンパールメタリック
  • ブルーイッシュブラックパール3
  • クールカーキパールメタリック
    (※のついた色はルーフをブラックに乗った2トーンカラーも設定)

スペーシアはどうして人気があるのか?

スペーシアが高い人気を集めている理由はまず、小さく運転しやすい車体サイズにもかかわらず室内が広いことです。

スズキスペーシアインパネ_HYBRID X(全方位モニター付メモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機&セーフティプラスパッケージ装着車)

これはN-BOXやタントといったライバルも同じですが、前後席の距離が大型セダン以上に広くてミニバン並み。

これを知ってしまうと、スペーシアのような軽自動車のスーパーハイトワゴンから逃れられなくなってしまうのです。

スズキスペーシア カスタム_HYBRID XSターボ・ HYBRID XS_アーバンブラウンパールメタリック

また、背が高いからドア開口部の天地高が十分なうえに、シートの高さ絶妙で乗り降りがしやすいこと。

さらに後席はスライドドアを組み合わせるので狭い場所でもドアを全開にできるし、子供が隣のクルマにドアをぶつける心配もありません。

スズキスペーシア_HYBRID X_モスグレーメタリック

また、新型ではクラスナンバーワンとなるなど燃費がいいのもスペーシアの魅力。そういった実用性の高さが、人気の理由といえるでしょう。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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