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工藤 貴宏くどう たかひろ

新型アルファードとヴェルファイアの違いを解説[MJ]

○文:工藤 貴宏

8年ぶりのモデルチェンジで新型となったトヨタ「アルファード」と「ヴェルファイア」。

兄弟車という関係は従来通りですが、これまでとは少し様子が違うようです。

2台の違いはどこにあるのかをチェックしてみました。

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廃止の方針から一転、ヴェルファイア継続となった背景

トヨタヴェルファイア。写真:工藤貴宏

8年ぶりのフルモデルチェンジで待望の新型となったトヨタ「アルファード」と「ヴェルファイア」。

かつては販売チャンネルごとに専売車種を用意していたトヨタですが、今はどの販売店へいっても同じ車種が買えるので兄弟車を用意する必要がありません。

そこで新型は、開発の初期段階ではアルファードの兄弟車であるヴェルファイアは廃止する方向でしたが、「ヴェルファイアを望む顧客がいる」として開発の途中段階から同車の継続を決定。

しかし従来のように「アルファードとヴェルファイアは外装のデザインが違うのみで基本的にグレード構成は同じ」というのではなく、差異をさらに広げてキャラクターの違いをいっそう明確にしたのが新型における両車の関係です。

この記事では見た目の差別化だけに留まらない新型アルファードとヴェルファイアの違いを見ていきましょう。

関連記事:新型ヴェルファイア(ガソリンエンジン車)の実燃費を試乗して計測

トヨタアルファード。写真:工藤貴宏

【違いその1】エクステリアデザインの違い

もちろん新型も、従来モデルと同様にスタイリングで差をつけています。

フロントはグリルやバンパーのデザインを変えることで雰囲気が異なる印象。

グリルはどちらも大きなデザインですが、アルファードがV字基調なのに対し、ヴェルファイアは水平基調としているのが特徴です。

トヨタアルファード
アルファード
トヨタヴェルファイア
ヴェルファイア

リヤはテールランプが異なるデザインになっているほか、ヴェルファイアのみバンパー下にメッキの加飾が備わっているのが分かりやすい識別点といえるでしょう。

トヨタアルファード
アルファード
ヴェルファイア
ヴェルファイア

【違いその2】グレード構成の違い

トヨタアルファードとヴェルファイア。写真:工藤貴宏

従来モデルとの大きな違いとなるのが、グレード構成に差がつけられたことです。

最上級グレードとして「エグゼクティブラウンジ」を用意するのは両車とも共通ですが、その下のグレードはアルファードが「Z」、ヴェルファイアは「Zプレミア」として差別化。

価格も異なり、アルファード「Z」はガソリン車が540万円から、ハイブリッドが620万円からなのに対し、ヴェルファイア「Zプレミア」はガソリン車が655万円から、ハイブリッドは690万円からと価格帯が違うのです。

ヴェルファイアはアルファードよりも高価格帯となっているのがポイントでしょう。

【違いその3】Z系グレードのインテリアの違い

グレード名に“プレミア”と付き、価格が高いだけあってヴェルファイアの「Zプレミア」はアルファードの「Z」に対してインテリアの仕立てや装備も充実。

たとえばシート表皮は、アルファード「Z」が合成レザーなのに対し、ヴェルファイア「Zプレミア」はプレミアムナッパレザー(本革)とより上質になっています。

アルファード
アルファード
ヴェルファイア
ヴェルファイア

またヴェルファイアの「Zプレミア」は全車とも電子制御式シフトの採用に加えてハンドルにパドルシフトを組み込みますが、アルファード「Z」は一般的なストレート式のシフトレバーを搭載。

ハイブリッドモデルのみ、オプションで電子制御式シフトとパドルシフトを選択できる仕様です。

【違いその4】ガソリン車のエンジンの違い

これまでアルファードとヴェルファイアは同じエンジンを搭載していました。

しかし新型は、ハイブリッドこそ同じユニットを搭載するものの、ガソリン車に関しては別のエンジンを組み合わせるのも大きなトピック。

アルファードのガソリン車に搭載するのは、排気量2.5Lの4気筒自然吸気エンジン。トランスミッションはCVT(無段階変速機)です。

アルファード
アルファード

いっぽうヴェルファイアのガソリン車は、排気量2.4Lの4気筒ターボエンジンを搭載。トランスミッションもCVTではなく8速ATとアルファードとは大きく違うのです。

ヴェルファイア
ヴェルファイア

アルファードの2.4L自然吸気エンジンは最高出力182psで最大トルクは235Nm。
ヴェルファイアの2.5Lターボエンジンは最高出力279psで最大トルク430Nm。

こうしてスペックを並べてみると両車の違いは明確で、ヴェルファイアはパワーで約1.5倍、トルクでは2倍近い性能を誇る高出力ユニットなのです。

このターボエンジンは、先代まで搭載していた大排気量V6エンジンの後継に相当すると考えればキャラクターがつかみやすいかもしれません。
すなわち新型アルファードからはハイパワーモデルがなくなり、逆にヴェルファイアのガソリン車はハイパワーモデルだけの展開というわけです。

実際に運転してみるとその違いは明確で、アルファードの2.5L自然吸気エンジンでも日常走行に不満はありませんが、ヴェルファイアに乗り換えるとそのパワフルさに感動を覚えるほど。

しかも、単に加速が力強いだけでなく加速にダイレクト感がある上に、エンジンの吹け上りや高回転のパンチ力が強いからアクセルを踏む歓びがあるのも好印象。

ヴェルファイア。写真:工藤貴宏

運転好きのドライバーなら迷わずヴェルファイアを選ぶことをオススメします。アクセルを踏み込んだ時の音が自然吸気エンジンより静かなのも注目したいポイントでしょう。

ただし、燃費面ではアルファードの自然吸気エンジンのほうが有利。
WLTCモード燃費(ガソリンFF車)はアルファードが10.6km/Lなのに対してヴェルファイアは10.3km/Lとそう変わりありませんが、実燃費ではそれ以上に差が付く印象でした。

ヴェルファイアは、エンジンの気持ちよさゆえについついアクセルを踏み込みがちになってしまうかもしれませんが……。

【違いその5】ハンドリングの味付けの違い

実は両車の走りの違いはパワートレインだけに留まりません。ハンドリングにも差をつけているのです。

アルファードに対してヴェルファイアは、車両最前部に「フロントパフォーマンスブレース」と呼ぶ補強部品を追加して車体剛性を高めたうえで、サスペンション(ショックアブソーバー&スプリング)やパワーステアリングの制御を専用にチューニング。

ヴェルファイア
ヴェルファイア フロントパフォーマンスブレース(赤枠部分)

全車に19インチタイヤ(アルファードは18インチもしくは17インチが標準設定)を履くこととあわせ、ひときわ運動性能を高めているのです。

実際に両車を運転して比べてみたところ、クルマの挙動や曲がり方のスッキリ感では明確にヴェルファイアが勝っていて、ドライバーズカーとして運転を爽快にしてくれています。

運転を楽しみたいのであれば、ヴェルファイアを選びたいところですね。

【違いその6】乗り心地も若干異なる!?

アルファード

サスペンションの作り分けは、乗り心地にも影響を与えます。
つまり、アルファードとヴェルファイアは乗り心地も異なるのです。

乗り心地がいいのは、アルファード。
しかもそれは、運転している気にならず、2列目や3列目に座る人のほうが違いが分かりやすいといえるでしょう。

とはいえ、ヴェルファイアの乗り心地も「悪い」ということはありません。
ヴェルファイアでも十分に快適であり、アルファードのほうが「より上質」と考えればいいでしょう。

アルファードがおすすめの人、ヴェルファイアと相性がいい人

見た目は好みで選べばいいと思います。

しかし、運転を楽しみたいドライバーにとってはヴェルファイアのパワフルでエモーショナルなエンジンやより運動性能の高いシャシー性能は魅力。
ドライビングプレジャーを求めるのであれば、ヴェルファイアを選ぶことを強く推奨します。

ヴェルファイア

いっぽうで、快適性を追求するのであれば乗り心地に優れるアルファードのほうがマッチングがいいでしょう。

2023トヨタアルファード

運転する歓びをとるか、それとも後席に座って移動する人の快適性をとるか。

選択は複雑なようで、実はシンプルなのです。

アルファードとヴェルファイアの関係は新しいステージへ

従来モデルまでは、アルファードとヴェルファイアの違いは見た目だけなので好みで選べばOKでした。

しかし新型は走りの味付けが異なるので、それを含めてどちらかを選ばなければなりません。

とはいえキャラクターが明確になったぶんだけ、従来よりも選びやすくなったと考えていいのではないでしょうか。

ちなみに、現状ではアルファードとヴェルファイアのどちらにも設定されていない(アルファードの福祉車両のみ設定がある)ベーシックグレードは今後追加されるようです。

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この記事を書いた人

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工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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