ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

BMW5シリーズ・i5日本発表 電気だから高いとはいわせない 7年後を見据えたBEV[MJ]

〇文・写真:内田俊一 写真:BMWジャパン

BMWジャパンから8世代目となる5シリーズとその電気自動車i5が発表された。

納車は、BMW 523iおよびBMW i5は本年第四四半期以降を、523d xDriveは2024年第一四半期以降を予定している。

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電動化への工夫や高い車格を感じさせるデザイン

BMWi5 写真:内田俊一

最初に目を惹くのはデザインで、最も特徴的なのはシャークノーズと呼ばれるフロント周りが挙げられる。

これはサイドから見た時に少しボンネットが前方に突き出し、そこから真っ直ぐに下に降りるラインではなく、少し内側に入るようなラインになる、まさに鮫の鼻先をイメージするようなデザインだ。

BMWi5

実は1972年に登場した初代5シリーズから3代目まではこのシャークノーズが取り入れられていた。
なぜ廃されたのかは明確で、空力に対してあまり有効ではないからだ。

初代BMW

しかし、今回はあえて復活させた。
その理由は格式と車格感をより感じさせるため。

過去のBMWを感じさせるとともに、上下方向に大型化したキドニーグリルがそれらに寄与している。

BMWi5

また、シャークノーズにしたことでボンネットが長く見え、そこにパフォーマンスの高いエンジンが搭載されている印象を想起させる狙いもある。

もちろん空力もおろそかにしてはおらず、Cd値0.23という素晴らしいもの。

近年のBEVでは0.22という値のクルマもあるが、それはかなり空力を意識したデザインなので、普通のサルーンでこの数字は相当空力のエンジニアが力を入れた結果だ。

BMWi5デザインスケッチ

また、BMWの特徴としてくっきりとしたプレスラインをフロントからドアハンドルを通してリアまで通すデザイン手法が取り入れられてきた。

しかし新型5シリーズではそういった処理は行われず、ドアハンドルの上に少し柔らかいラインを通している。
そこから下の面に抑揚を持たせることで、金属の塊を削り出したような重厚感を生み、スポーティさとともにひとクラス上の印象となっている。

BMWi5.写真:内田俊一

さて、今回電動化したi5があるために、バッテリーを床下に収める必要がある。
そうすると必然的に全高は上がってしまい、先代と比較し、およそ3.5cm高くなった。

つまりボディがそれだけ分厚くなったことになる。

そこでBMWはリアをなだらかに下げると同時に、サイドの一番下のロッカーパネルと呼ばれる部分をブラックアウト。

さらにその上にあるプレスラインも後ろに行くにしたがって少しキックアップさせることでシャープさを演出。
ボディ全体を引き締めることで、分厚くなったことが鈍重に感じさせない工夫がなされている。

BMWi5.写真:内田俊一

内燃機関と電気自動車と

これまで多くのパワートレインのバリエーションがラインナップされていた5シリーズだが、今回はガソリンとディーゼル、そしてBEV(バッテリー・エレクトリック・ヴィークル 化石燃料を使わないでバッテリーのみで走る電気自動車)のi5と大きく3種類での導入となった。

BMW i5

まずi5には2つのバリエーションがある。

BMW i5 M60 xDrive

i5 M60 xDriveは、最高出力261PS(192kW)を発揮する1つの電気モーターが前輪に、最高出力340PS(250kW)を発揮するもう1つの電気モーターが後輪にある4輪駆動のMパフォーマンスモデル(BMW M社が関与した高性能モデル)である。

システムトータルでの最高出力は601PS(442kW)、最大トルクは820Nmで、MスポーツブーストまたはMローンチコントロール機能が作動していると、0-100km/hは3.8秒を記録。一充電での走行可能距離は455km から516kmと発表された。

BMW i5 eDrive40

続いてi5 eDrive40は、最高出力340PS(250kW)を発揮する電気モーターが後輪を駆動。

最大トルクは430Nmであり、スポーツブーストまたはローンチコントロール機能が作動していると、0-100km/hは6.0秒となる。一充電での走行可能距離は477kmから582kmだ。

BMW 523i

内燃機関では2リッター4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した523iがラインナップ。
48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、システムトータル最高出力は190PS(140kW)、同最大トルクは310Nmを発揮する。

BMW 523d xDrive

そして2リッター4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載した523d xDriveにも48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、システムトータル最高出力197PS(145kW)、同最大トルクは400Nmを発揮する。

なお、いずれの数値もヨーロッパ仕様値である。

ストレート6やPHEVを入れないわけ

BMWi5.写真:内田俊一

2030年には世界販売台数の50%を電気自動車に

ここでクルマに詳しい読者はBMWのストレート6や先代にあったPHEVがないことに気付くかもしれない。

その理由について、ビー・エム・ダブリューBMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクト・マネージャーの御舘康成さんによると、
「先代にあったPHEVはセグメントリーダーであり、PHEVの最量販車種でした。重量配分は50:50というBMWの駆け抜ける歓びを体現しながらも環境性能にも配慮した素晴らしいエンジニアリングのクルマでもありました。
しかし、BMWは2030年には世界販売台数の50%を電気自動車にすると明言しています。
つまり、我々がリードして電気自動車にシフトしていかなければいけないのです。
ですからこの自慢のPHEVは導入しませんし、BMWの命であるストレート6も入れないのです」とのこと。

BMWは未来を作るメーカー

さらに御舘さんは、
「2030年に世界販売の50%を電気自動車にするとすれば、もう現段階でその答えを持っていなければいけません。
単にいっているだけではなく、有言実行です。
我々は未来を作るメーカーですから、そのための答えをここに出しました。それがこのラインナップに隠されたものでもあります」と教えてくれた。

バッテリーが高いからとコストアップはしない

同時に価格面についても、「先代のPHEVに性能差、装備差を加えるとこの価格になり(PHEVは825万円から。i5は998万円から)、結構フェアな価格です。
決して、バッテリーが高いからコストアップしてと決めてはいません。
これは電気自動車を世の中に普及させることからPHEVは潔くやめますというのであれば、その電気自動車はPHEVなどにお乗りのお客様が納得して買っていただけるだけのフェアな価格でないと通用しないわけです」と説明し、本国にある魅力的なパワートレインも、今回は見送り、i5を積極的に展開していくことを明かした。

走りだけでなく、運転を支援する装備も充実

BMWといえば、走りの性能は外せない話題だ。
当然前後50:50の重量配分はもとより、軽量構造やボディとシャシーの接続剛性の向上をはじめ様々な最先端シャシーテクノロジーを採用。

日本仕様では特に4輪操舵を可能とするインテグレーテッドアクティブステアリングと、電子制御のショックアブソーバーを備えたアダプティブサスペンションがi5に標準装備。523iおよび523d xDriveにオプション設定。

i5 M60 xDriveには、更にアクティブロールコントロール機能を備えた電子制御スタビライザーを含むアダプティブMサスペンションプロフェッショナルが標準装備される。

電気自動車を走らせて、最大のネガティブポイントは車両重量が重いことにあり、それが走行性能に悪影響してしまうことから、最新の電子制御技術を使って、いかに“駆け抜ける歓び”を体現するかに注力したわけだ。

そのほか、BMWが国内認可取得モデルとして初めて導入したハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能も搭載。

BMWi5.写真:内田俊一

これは高速道路での渋滞時において、ドライバーの運転負荷を軽減し安全に寄与する運転支援システムである。

この機能は、ドライバーが絶えず前方に注意するとともに、周囲の道路交通や車両の状況に応じて直ちにハンドルを確実に操作することができる状態など、一定の条件下においてステアリングから手を離しての走行が可能となるレベル2の運転支援システムだ。

また、駐車時にステアリング、アクセル、ブレーキ操作が一切不要な“パーキングサポートプロフェッショナルも標準装備。

自宅駐車場、勤務先駐車場を車両に登録しておくことで、駐車スペースが近づくと、車両が自動で検知し、検知後は、完全自動駐車が可能となる。

BMWi5.写真:内田俊一

駐車場所の記録は最大10ヵ所の登録が可能であり、最大200mまでの駐車操作を記録できる為、狭いスペースで複雑な切り替えしが必要な場合でも正確に再現することが可能である。

また、駐車スペースの幅が狭い場合はドライバーが下車し、車外よりスマートフォンでコントロールすることができるリモートパーキング機能も搭載されている。

そしてドライブレコーダーも標準装備されていることは注目だ。
これは車両全方向に対応したBMWドライブレコーダーと呼ばれるもので、車載カメラを使用した全方向(前後&左右)記録可能なもの。

後付けのドライブレコーダーと異なり、車両後方の映像もウインドウ越しではなく直接撮影するので、あおり運転等の危険運転車両と遭遇した際に、車両のナンバーも鮮明に記録すると同時に、サイドのカメラで幅寄せの映像記録にも対応する。

また、前方カメラを使ってドライビング中に前方の美しい景色を記録することも可能とのことだ。

BMWi5.写真:内田俊一

さらに車両の異常をスマートフォンに知らせるアラームシステムも標準装備。
車両の盗難や車上荒らし等の被害を事前に防止する機能で、車両がロック中に異常を検知した場合、登録されているスマートフォンに通知を行うと同時に、車両周辺および車両室内の映像もスマートフォン上で確認することが可能だ。

これにより、本当に盗難や車上荒らしが発生しているのか、あるいは家族などが車内の荷物を取ろうとしているのかが映像で確認することができるのである。

このように、考えうる様々な装備とともに、デザインをはじめとした秀逸な仕上げ。
そして何より、走りに手を抜かない開発には素直に脱帽という感じだ。

実はお話を伺った御舘さんは走りにはうるさ型で、だからこそBMWを愛しているのだが、その御舘さんが絶賛したi5には、ぜひ実際に乗って、その良さを味わってみたいと思っている。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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