【BMW X1・iX1のデザインを徹底解説!】電気自動車だから特別という時代は終わろうとしている[MJ]
ビー・エム・ダブリューは3代目となるX1を発表。同時にフルEVのiX1も導入を開始。
納車は2月下旬からを予定している。
文:内田俊一 写真:内田俊一・ビー・エム・ダブリュー
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INDEX
SUVではなくSAV
BMWのXシリーズは1999年にX5が登場して以来、様々なクルマが導入され、2010年にはX1の初代モデルが誕生。
そして最新のXシリーズは2023年にBMW XMが発売され、現在は8モデルがラインナップされている。
この内、X1、X3、X5、X7、XM(奇数とXM)は、それまでの武骨なSUVとは明確な一線を画す、オンロード走行性能を高めたSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)というコンセプトを標榜。
一方、X2、X4、X6(偶数)は、スポーティでエレガントなクーペデザインとBMW Xモデルの力強い存在感を兼ね備えた、SAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼ばれるコンセプトの大きく2つのラインナップである。
昨年日本市場においてBMWは約3万台を超える台数を販売し、そのうちXモデルは約3分の1を占めている。
その理由はSUVではなくSAV・SACにあるという。
つまり、機能性や居住性や悪路走破性などを軸としたSUV性能に加えて、BMWの駆け抜ける喜びというスローガンに意味がある。
これはクルマを運転している時の喜びを指し、Xモデルにおいても例外なくこの思いが込められているのだ。
その結果としてXモデルの人気に繋がっていると同社は分析している。
BMW X1
さて、今回発表された3代目X1は、上記SAVコンセプトの下、コンパクトなボディサイズと高いアイポイントによるドライブ時に安心感をもたらすシートポジション。
そして開放感のあるインテリアスペースや多彩な収納機能、自由自在にアレンジ可能なリアシートなどを備え、かつ、動力性能や高い運動性能を備えたクルマである。
そして注目すべきiX1だ。
BMWは日本において、2013年にi3という電気自動車を投入。
2021年からは電気自動車のラグジュアリーなSUV、iXをはじめiX3、セダンのi4、そして昨年11月にはi7というBMWのフラッグシップのモデルを発表するなど電気自動車のラインナップをさらに拡充。
一見上級モデル方向に電気自動車が多く投入されているようだが、このiX1を皮切りに、コンパクト、そしてエントリークラスにも電気自動車を導入することで、さらに幅広いターゲットにBMWの電気自動車を訴求していく戦略なのである。
BMWらしさと新しさ
ではまず3代目X1のデザインはどう変わったか。
基本は先代のキープコンセプトにも見えるが実はアグレッシブさをさらに強調した印象もある。
ビー・エム・ダブリューBMWブランドマネジメント・デビジョン・プロダクト・マネーチャーのケビン・プリュポさんは、「特にヘッドライトの形がよりシャープになり、横から見ると先代よりもライト類が見える面積が増えています。これはテールランプも同様です。
さらにルーフラインももっと伸びやかになりましたので大きく印象を変えているでしょう」とコメント。
また、フロントデザインは、力強い印象を与える正方形に近い大型なBMW特有のキドニーグリルが存在感を放つ。
そしてBMWデザインの意匠の1つであるリング形状のシグネチャーを2回繰り返す4灯ヘッドライトをさらに進化させたアダプティブLEDヘッドライトが印象的だ。
さらに、ヘッドライト上部からグリルへ、そして、グリルから再びヘッドライト下部へ向かうキャラクターラインにより、コの字と逆コの字を描き、グリルを中心としたXの字体を演出している。
リヤデザインは水平方向のキャラクターラインがワイドで力強さを強調。
立体的なLEDリアコンビネーションライトも大型化された。
サイドビューは、ドアハンドルをドアパネルと一体化させたフラッシュハンドルの採用により空力特性にも配慮されたものになった。
その結果としてCd値は、セグメント内最高クラスの0.26となった。
インテリアは、昨年6月に日本デビューした『2シリーズアクティブツアラー』と共通している部分が多いようだ。
ケビンさんによると、「新しいコンパクトクラスのデザインコンセプトとして採用しているフローティングアームレストや、シフトノブがなくトグルスイッチにしていること。それからiDriveコントローラーも廃止していますので、そこからそう感じられるでしょう」という。
また、「大画面のカーブドディスプレイを装備することで、なるべくボタンを減らし、できることは全てタッチとスピーチコントロールに集約しましたので1歩先の時代、これから先のBMWのインテリアデザインが感じられます」と語る。
このカーブドディスプレイは運転席側に傾けることで視認性も高められている。
また、センター・コンソールにQi対応機器(スマートフォン等)を置く事で、充電も可能となる等、利便性も高められた。
リアは、大人3名が座れる空間を確保すると共に、40:20:40分割可倒シートの採用により、ラゲッジスペースを有効活用することが可能だ。
BMW X1 xDrive20iのラゲッジスペースは、大人3名乗車時には540L、リアシートを前方に全て倒すことで最大1,600Lにまで拡大することが可能である。
また、バックレストは最大で12度傾向けることができ、前後に130mmスライドも可能だ。
さらにオートマチックテールゲートも標準装備。
荷物で手が塞がっている時には、足をバンパー下にかざすことでテールゲートの開閉が自動で可能になった。
違いをなくして
ではX1とiX1とでデザインの違いはあるのか。
ケビンさんは、「実はエクステリアとインテリアの違いはほとんどありません」と述べる。
これは日本仕様に限って意図的にそうしているとのこと。
「本国仕様ではフロントの左右にあるエアインテークやサイドシル部分にブルーのエレメントがありましたが、日本仕様では採用していません」。
その理由は、「BMWは日本でもi3の導入以降電気自動車を10年以上販売してきました。ですのでもうBMWにとって電気自動車はあえて差別化するものではなく、パワーオブチョイス、選択肢の1つになっているのです。ですからあえて意図的にブルーのエレメントによる差別化はせずに、同じにしました」と説明。
ただし、フロントのエンブレム周りとステアリングのエンブレムにiX1はブルーの加飾がつけられ、スタートストップボタンは、iX1はブルーに、X1は赤く光るとのこと。
また、全高はiX1の方が5mm低く、フロントのキドニーグリル内部の形状が違い、「iX1は完全に閉まっていますが、X1はグリルシャッターがついていて開閉するようになっています」とのことだった。
因みにテールパイプも見えないデザインになのでそこでの区別は出来そうもない。
BMWコネクテッドドライブ
さて、近年は“つながる”ことも重要だ。X1とiX1はBMWコネクテッドドライブが搭載されている。
これは、車載通信モジュールにより、ドライバー、クルマ、そして取り巻く情報をITネットワークで繋ぐことで、「もしもの時に備える万全の安全性」、「カーライフを進化させる革新の利便性」、「充実の情報と最新のエンターテインメント」を提供する総合テレマティクス・サービスとして2013年に輸入車として初めて導入されたものだ。
また、スマートフォン向けアプリの導入により、車両情報やニュース等へのアクセスを可能にし、顧客の利便性を向上させるサービスを提供。
さらに、2021年夏には、より操作性・利便性を高めた新たな機能を追加すると共に、新しいスマートフォン向けアプリ「My BMW」を導入し、クルマとユーザー、情報をシームレスに繋げ、より快適でスマートなモビリティライフをサポートする新しいパーソナルアシスタントサービスとして生まれ変わった。
このパーソナルアシスタントサービスは、AI技術を活用することで、音声会話だけで車両の操作、情報へのアクセスが可能となるBMW最新の機能である。
いままでの音声入力と異なり、より自然な会話に近い言葉で、ドライバーの指示や質問を理解し、適切な機能やサービスを起動可能にする他、使用頻度に応じてドライバーの好みを学習し、長く乗り続けるほどドライブにおける真のパートナーとしての役割を担うことが可能となる。
さらに、ドライバーがシステムの「名前」を自由に付けることが可能な点も大きな特徴だ。
例えば、起動時に「OK, BMW」だけでなく、例えば、「X1」と起動ワードを任意に設定することが可能なため、より身近な存在としてストレス無く使用することが出来るようになるのだ。
また、BMWデジタルキープラスを標準装備。
車両のキーを持たずとも、自身や家族のモバイル端末を最大5台までバーチャルキーとして登録が可能で、このバーチャルキーはiメッセージなどを利用し、家族や友人に送信をすることもできる。
その際、必要に応じて最高速度など機能に制限を設けることもできるという。
このデジタルキープラスを携行していれば、車両に近づくだけでロック解除が可能であり、さらに車室内にロック解除に使用したデバイスがあるだけで、エンジンの始動も可能である。
フルモデルチェンジしたX1とiX1。最先端技術とともに、最新のBMWのデザインを纏って登場した。
そのうえでガソリンか電気のどちらにするかをユーザーの志向性で選べるよう、内外装での変化が少ないのは好ましい。
もう電気自動車だから特別という時代は終わろうとしているのだ。
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