電気自動車と水素自動車はどっちを選ぶのがいい?何が違う?
電気自動車と水素自動車は、どちらも電気でモーターを回すことで駆動力を生み出し、走行時にCO2を排出しない車です。
こうした特徴から、脱炭素による地球温暖化や気候変動の防止を目指す現代社会において、購入を検討する人が増えています。
車を購入する際は、事前に特徴やメリット・デメリットを調べることが重要です。
しかし、電気自動車と水素自動車は共通点が多いため、違いがよくわからずにどちらを選ぶべきか迷っている人もいるでしょう。
この記事では、電気自動車と水素自動車の定義と併せて、両者の違いを解説します。
それぞれのメリット・デメリットも紹介しますので、車を選ぶときの参考にしてください。
なお、水素自動車とは水素エンジンを搭載した車と定義される場合もありますが、この記事においてはいわゆる燃料電池車を指します。
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INDEX
電気自動車の定義
電気自動車(EV)は、バッテリーに充電された電気でモーターを回し、走行する車です。
EVのモーターには、電流の流れる向きや電圧が周期的に変化する交流方式と、それらが変化しない直流方式の2種類があり、一般的には交流モーターが採用されています。
交流モーターは交流を流し、内蔵されているコイルのN極とS極を交互に切り替えることで磁石やコイルを回転させ、エネルギーを車輪まで伝える仕組みです。
バッテリーには、主にリチウムイオン電池が使用されています。
コンセントなど外部からの充電だけでなく、減速時にタイヤやモーターが回る力を電気エネルギーに変換する「回生」という方法でも充電が可能です。
2023年12月現在販売されている国産EVとして、日産が製造するリーフや、スバルが製造するソルテラなどが挙げられます。
電気自動車のメリット・デメリット
ここでは、EVのメリット・デメリットを項目ごとに紹介します。
メリット
EVのメリットといえば、走行時に地球温暖化を加速させるCO2や、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などを排出しない点です。
ガソリン車のように化石燃料を燃焼させるのではなく、電気エネルギーを駆動力に変換することで走行するため、環境負荷が小さい車といわれます。
また、EVはエネルギー伝達効率が高く、9割ほどの効率で電気を駆動力に変換できます。つまり、無駄になるエネルギーが少ないのです。
車体価格はガソリン車に比べると高額なものの、補助金や減税措置を利用することで従来の新車と大きく変わらない価格まで値引きされる場合があります。
日産の試算例によるとリーフ(グレード:X)は、「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金」と自動車税・重量税の減免により、320万円程度で購入可能です。
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デメリット
EVのデメリットは、充電時間が長い点です。
主な充電方法には、自宅にも設置できるコンセントを使用する普通充電と、SAやディーラーなどに設置された高出力充電器を使用する急速充電の2種類があります。
一例では、普通充電には少なくとも8時間以上かかり、急速充電でも約40分はかかるため、充電がなくなるとすぐに運転できないのが懸念点です。
また、EVにはバッテリー容量が小さいほど1回の充電で走行できる距離が短いというデメリットもあります。
ガソリン車の航続距離が通常500kmを超えるのに対し、リーフの航続距離はWLTCモードで最長322kmです。
バッテリー容量が大きい車種であればガソリン車と同等の距離を走れる代わりに、車体価格が高額になることに注意してください。
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水素自動車の定義
水素自動車は燃料電池車(FCV)とも呼ばれる、水素を燃料とする車です。
燃料電池で水素(H2)と酸素(O2)を化学反応させることで電気を発生させ、EVと同様の仕組みでモーターを回して走行します。
燃料電池で起こる化学反応は、水の電気分解(2H2O→2H2+O2)を反対にした反応です。
水素は水素ステーションで貯蔵タンクに補給し、酸素は空気中に含まれるものを利用します。
現在販売されている国産EVは、トヨタが製造するMIRAIとクラウン セダン(FCEV)の2種類です。
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水素自動車のメリット・デメリット
次に、水素自動車のメリット・デメリットを項目ごとに紹介します。
メリット
水素自動車には、EVと同じく走行中のCO2や大気汚染物質の排出量がゼロになるメリットがあります。
水素と酸素の化学反応により発生した電気を動力源として利用し、同時に発生した水のみが排出されるためです。この特長から、水素自動車は「究極のエコカー」とも呼ばれます。
加えて短時間で燃料補給できる点も、水素自動車の魅力です。
具体的に、水素はガソリンの給油と同程度の約3分で補給できます。
1回の補給で走行できる距離も長く、MIRAIの航続距離は最長850kmです。
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デメリット
水素自動車のメリットとして燃料補給に時間がかからない点を紹介したものの、補給に必要な水素ステーション自体が少ないという深刻な問題は無視できません。
現在全国で運用されている水素ステーションは、四大都市圏を中心とした161カ所に留まっています。
したがって、充電スポットが2万カ所以上設置されているEVに比べると、利便性が劣ってしまうのです。
水素自動車は燃料電池に希少なプラチナを、燃料に99.97%の高純度水素を使用するため、車体価格や燃料費が高くなりやすいという問題も抱えています。
MIRAI(グレード:Z)の場合、CEV補助金やエコカー減税を利用しても価格が600万円を超えており、一般的なEVやガソリン車よりも高額です。
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電気自動車・水素自動車の違いと選び方のポイント
EVと水素自動車の大きな違いは、走行中に発電できるか否かという点です。
EVにおいては、バッテリーに蓄えられた電気そのものが燃料のような役割を果たします。
減速時に限り回生による発電はできるものの、外部からの充電が不可欠です。
他方の水素自動車は、常に燃料電池で発電しながら走行するため、外部からの充電は不要です。
代わりに、発電に必要な水素を補給しなければなりません。
このような違いや前述したメリット・デメリットを踏まえると、どちらが自分に適しているか判断する際は、次の3点が重要です。
- 燃料補給時間と航続距離
- 主に車を使う地域
- 車にかけられるコスト
現時点では、充電スポットが充実しており経済性に優れたEVの方が利点は多いでしょう。
しかし、長距離を走行することが多く燃料補給に時間をかけたくない場合には、水素自動車が適しています。
そのような人は水素ステーションが多い都市部で運転するのであれば、水素自動車を選んでもよいかもしれません。
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まとめ
この記事では、電気自動車と水素自動車の違いや選ぶ際のポイントについて解説しました。
EVはバッテリーから電流を流してモーターを回すことで走行するため、CO2や大気汚染物質を含む排出ガスが発生しない点が大きな特長です。
水素自動車も、電気モーターを回して走行する点ではEVの一種といえるでしょう。
しかし、水素を燃料として走行中に電気を発生させる点は、EVと大きく異なります。
EVは比較的安価で購入でき、充電スポットが全国的に普及しているため使い勝手がよい一方で、充電に長い時間がかかる割に航続距離が短いというデメリットがあります。
水素自動車は、燃料補給に時間がかからないうえに航続距離が長いものの、水素ステーションの設置数が少なく日常的に運転するには不便です。
EVか水素自動車の購入を検討している人は、これらのメリット・デメリットを把握したうえでどちらを選ぶか判断しましょう。
特に航続距離の長さや総合的なコスト、動力源の確保について考慮したうえで選ぶことをおすすめします。