水素自動車が「環境に悪い」といわれる理由とは?普及に向けた問題点も解説

水素自動車は、二酸化炭素を排出しない、環境にやさしい車として登場した新しいタイプの車です。

環境にやさしいといわれる一方で、「環境に悪い」といわれることもあります。
水素自動車が環境に悪いといわれる理由は何なのでしょうか。

この記事では、水素自動車が環境に与える影響や、普及に向けた問題点などについて詳しく解説していきます。

電気自動車との違いも紹介しますので、水素自動車に興味があるという人は、ぜひ参考にしてください。

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水素自動車とはどのような車なのか?

水素

水素自動車は、水素を燃料として走る車です。
ガソリン車はガソリンスタンドで給油をしますが、水素自動車は水素ステーションで水素を補給します。

なお、水素自動車は、水素を直接燃焼させてエネルギーにする「内燃機関車」と、燃料電池を使用する「水素燃料電池車(FCEV)」に大別されます。
しかし、水素自動車といえば「内燃機関車」のことを指すのが一般的です。

関連記事:燃料電池車と水素自動車の違いとは。メリット・デメリットも解説

内燃機関車

内燃機関車は、ガソリン車やディーゼル車に搭載されている内燃機関を改良した水素エンジンを搭載しています。

仕組みとしてはガソリン車と変わりません。

水素エンジンはガソリンではなく、水素と空気を取り入れて燃焼させることで走行するエネルギーを作り出すと考えてよいでしょう。

水素燃料電池車(FCEV)

一方の「水素燃料電池車(FCEV)」は、水素と酸素を取り込むことで発電する燃料電池を搭載している車です。

FCEVはFuel Cell Electric Vehicle(燃料電池自動車)の略です。
このタイプは「燃料電池車」として別枠で扱われるのが一般的です。

2021年4月には、トヨタが水素エンジンの開発に取り組むことを発表して話題になりました。

トヨタはすでに水素燃料自動車を量産していますが、FCEVに対するメリットを見出しているようです。

たとえば、水素エンジンはガソリンエンジンと仕組みがほぼ同じであるため、安価に製造できる可能性があります。

さらに、純度の低い水素でも走行でき、水素の生成コストも抑えられます。
2022年6月には、トヨタが水素エンジン車を市販化する意向を示しました。

水素自動車は環境によい?悪い?

環境にいいのか悪いのか

水素エンジンは環境によいといわれる一方で、環境に悪いと考えられる部分もあります。

具体的には「窒素酸化物の排出」が挙げられます。
水素エンジンは原理的に二酸化炭素を排出しませんが、高負荷運転時における燃焼反応の過程では、窒素酸化物を排出しています。

また、水素は天然ガスや石油などの化石燃料から作られるのが一般的であるため、採掘時や改質時に二酸化炭素が排出されます。

さらに、液化水素を水素ステーションへ輸送する際にも、微量の二酸化炭素が発生します。

走行中は二酸化炭素を排出しませんが、環境に配慮して二酸化炭素の排出量を減らすのであれば、水素の製造や運搬方法などから見直す必要があるといえるでしょう。

電気自動車とは何が違うのか?

水素自動車と電気自動車は、仕組みが全く異なります。

水素自動車のエンジンは、ガソリン車とほぼ同じ仕組みです。
燃料として使用しているのが「ガソリン」か「水素」かの違いと考えてよいでしょう。

一方の電気自動車は蓄電池を動力源として走るため仕組み自体に違いがあります。

では、水素燃料電池車と電気自動車の違いは何なのでしょうか。

1つ目の違いは、搭載されている電池の違いです。

電気自動車に搭載されているのは蓄電池ですが、水素燃料電池車には燃料電池が搭載されています。
蓄電池に発電機能はありません。

一方、燃料電池には発電機能があります。
そのため、燃料電池車は1回の補給で長距離を走行することも可能です。

2つ目の違いは、充電方法です。水素燃料電池車が燃料を補給できるのは専用の水素ステーションだけですが、電気自動車は専用ステーションのほかに家庭で充電することもできます。

また充電時間にも違いがあります。

水素燃料電池車の充填は約3分程度で完了しますが、電気自動車は急速充電でも約30分、普通充電だと数時間程度の時間が必要です。

関連記事:EVを家庭用電源に活用するV2Hが普及!仕組みやメリットとは?

水素自動車の普及に向けた問題点とは?

水素自動車の市販化・普及に向けては、いくつかの問題があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

水素の脆化

ほとんどの材料を透過しやすい水素は、時間の経過とともに材料を脆くさせてしまいます。
トヨタはFCEVで構築した材料や技術を採用するとしていますが、コストには大きな影響を与えると考えた方がよいでしょう。

タンクの小型化

液体水素のタンクはマイナス253度に保つ必要があるため、二重構造の真空超断熱タンクを採用するのが一般的です。

さらに、タンクの内側にはステンレスライナーを設けなければいけません。
このような強度化や耐熱策を講じたタンクを小型化するのは大変困難です。

蒸発現象

タンク内の液体水素が減少すると、外部からの侵入熱によって液体水素が蒸発して、タンクの内圧が上昇します。

これを避けるためには、水素ガスをリリーフ弁で大気に逃がさなければいけません。

しかし、その結果として充填あたりの走行距離が減ってしまい、燃費が悪くなります。
長時間車庫に停めておくこともできないでしょう。

水素ステーションの数

2022年6月末時点における水素ステーションの数は、全国でわずか174箇所です。

主な設置場所は都市部に集中しているため、ガソリンスタンドのような利便性ないといえます。

建設コストがガソリンスタンドの4〜5倍もかかる水素ステーションは、簡単に設置数を増やすことができません。
水素自動車が普及していない現時点では、国の補助金なしに水素ステーションをビジネスとして成立させるのは困難といえるでしょう。

タンクの寿命

高圧水素タンクは700気圧という高圧力で水素を押し込んでいるため、無期限に使えるものではありません。

そのため、水素燃料電池車の高圧水素タンクには、定期的に検査をした場合で「15年」という充填可能期限が公式に定められています。

寿命を超えても水素タンクを交換すれば乗り続けられますが、水素タンクの交換には数百万円という高額な費用がかかります。タンクを交換して乗り続けるのは現実的とはいえないでしょう。

実際に販売されている水素自動車について

ここではトヨタの「MIRAI」を紹介します。

「MIRAI」は水素自動車ではなく水素燃料電池車(FCEV)ですが、燃料に水素を使う車として参考になるでしょう。
水素自動車とは仕組みも違いますが、自動車業界の水素普及に貢献していることは間違いありません。

「MIRAI」は、2014年に発売を開始した車です。

水素の充填時間は約3分で、1回の充填における航続距離は約750〜850kmとなっています。
2020年12月には第2世代が発売されており、第2世代は最高出力174psという高出力を実現しています。

まとめ

水素自動車は走行中に二酸化炭素を排出しませんが、窒素酸化物は排出します。

また、水素の製造や輸送過程においては、二酸化炭素を排出しています。
このような問題から、すべての点において環境にやさしい車とはいえないでしょう。

また、水素ステーションの不足によって普及が進まないという課題もあります。

水素自動車の充填時間はガソリン車とほぼ変わらないため、電気自動車にはない利用しやすさがあるのは事実です。

しかし、水素ステーションの数が少ないため、ガソリンスタンドのように気軽な利用はできません。
メーカーや政府はさまざまな取り組みを行っていますが、問題解決までの道のりは長いといえるでしょう。

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