近年注目のV2Gとは?V2Hと何が違うの?普及に向けたステップを解説

近年、再生可能エネルギーの導入が拡大したことにより、安定した電力供給や発電コスト、電力の貯蔵システム整備などの課題が顕在化してきました。

自然のエネルギーを活用するため、地理的な制約もあり、風力発電は風の強い場所、太陽光発電は日照条件があるなど利用可能な場所が制限される場合があります。

そこで、注目されているのがV2Gと呼ばれる技術で、これらの課題を克服することが期待されています。

今回のコラムでは、V2Gについて詳しく解説していきます。

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V2Gとはどんな技術?

V2G(Vehicle-to-Grid)とは、車両(Vehicle)と電力グリッド(Grid)の間で電力を相互に供給するという意味で、

具体的には、電気自動車を車としてだけではなく蓄電池として活用し、電力会社のネットワークに接続し相互に利用できる技術のことです。

また、V2Gが電力ネットワークに接続し、車の蓄電池を使用して電力の需要や供給の変動に応じて電力を供給、または受け取ることを需要応答と言います。

この技術は電力ネットワークの安定性を向上させ、再エネの有効活用を促進するために利用されます。

電力需要がピークに達する時間帯には、V2Gを使用して車から電力を供給することでピーク負荷を削減します。

これにより需要応答が可能となり、エネルギーの使用効率を向上させます。

電力需要が低い時には、電力ネットワークから車両の蓄電池に供給することで、再エネの余剰を車両に蓄えることができます。

このように、V2Gを利用することで、車は電力を受動的に受けとるだけでなく、能動的に供給することができるようになります。

2024年1月現在、日本での実用化はまだされていませんが、自動車メーカー各社が実証実験を行なっています。

EV V2G

V2GとV2Hの違いは?

V2H(Vehicle to Home)は、電気自動車を蓄電池として家庭で利用することです。

家庭から自動車に電力を供給し、家庭で電力が必要なときに自動車から家庭に電力を供給します。

災害時などライフラインがストップした時でも、電気を供給できるシステムとして注目されていて、こちらはすでに実用化されています。

V2GとV2Hは、電気自動車と電力をやり取りするのが、家庭(V2H)または電力会社(V2G)という違いがあります。

V2Gのメリット

環境負荷の軽減

再エネを導入することで、エネルギーの有効活用が可能になり、環境負荷の軽減が見込まれます。

太陽光や風力をはじめとした再エネは、化石燃料と違い、発電する過程で二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出しないというメリットがあります。

また、自然の力を利用しているため、資源が無限にあり、持続可能なエネルギー源とみなされています。

化石燃料はいずれ枯渇し、採掘や利用が環境に悪影響を及ぼすため、V2Gは環境対策に寄与することが期待されています。

再生可能エネルギー

コストを抑える

再エネを導入するためには、設備の構築が必要で、初期投資や技術開発にはコストがかかります。

V2Gはこれらの投資を削減できる可能性があります。

需要応答によってピーク時の需要を抑制でき、新たな発電設備や送電ネットワークの拡張を回避できるため、インフラ整備に伴うコストが抑えられます。

電力需給のバランスを保つ

V2G最大のメリットは電力安定性が向上することです。

太陽光や風力は、気象条件に依存するため一定の供給量が確保できない場合があり、安定した電力量を維持するための対策が必要です。

電力の供給が需要を下回り、需給量のバランスが崩れると、発電機などに影響を与えてしまい、最悪の場合は大規模停電につながることもあります。

逆に電力が余ることが予測される場合は、発電量を減らすなどの調整を行う必要がありますが、V2Gは電力量の調整役としてこれらの課題を解決できると期待されています。

電気自動車が蓄えたエネルギーを供給することで、電力需要がピークを迎えても柔軟に対応することが可能です。

また、発電量が余る場合は電気自動車に蓄電し、発電量が少ない場合は放電するなどの対応をとり、停電などの非常時にも電力供給を行うことが可能です。

V2Gを普及させるために必要なこと

V2Gの普及率はどのくらい?

日本において、V2Gは2024年時点ではまだ実証段階にあります。

一方、世界に目を向けると、欧米を中心に利用が進んでいる国もあり、日本メーカーの実証実験が国内外で実施されていることから、そう遠くないうちに実用化に至ると見られます。

インフラ整備

国内でのEV所有者は伸び悩んでおり、V2G普及における課題の一つがインフラ整備です。

V2Gが実用化されても、EV所有者が増えなければその機能を活かすことができません。

EVの充電ステーションは都市部に集中しており、地方や郊外では不足しているため、途中で電池がなくなる不安からEV購入を見送る人が多く、一般的に普及できていないのが現状です。

全国的な充電ステーションの増設を行いインフラを整備することは、V2G普及のために必須といえます。

EV 充電ステーション

インセンティブの整備

EVを導入し電力インフラとしてV2Gに賛同し協力してもらうために、EV所有者への経済的なメリットが必要です。

V2G事業へ参加するEV保有者のメリットとして、経済的なインセンティブが用意される可能性があります。

例えば、電力に余裕のあるオフピーク時にEVバッテリーを充電して、電力負荷がかかるピーク時には、V2Gを使用してEVのバッテリーに電力を売り戻すことで、実質的には無料で充電することが可能だと考えられています。

また、米国では参加時に1,000ドル+電力供給量に応じて報奨金が支払われています。

日本では、資金源や報奨金の額をどうするかなど、インセンティブの資金源や報酬金の設定などがまだ不透明ですが、他国の事例を見るとEV保有者にもメリットがある可能性は高いと考えられます。

インセンティブ

システム技術開発

最も大きな課題とも言えるのがシステム技術開発です。

蓄電池の性能が向上し、EVの航続距離が伸びれば、ガソリン車同様に所有者が増えることが見込まれます。

短距離走行では充電ステーションの少ない地方の利用者は導入を見送る可能性があります。

また、充電と供給を繰り返した際に蓄電池が摩耗し買い替えが発生するとコストも馬鹿にならないため、蓄電池の耐久性も向上させることが必要です。

EV車が一般的に受け入れられ、多くのユーザーに普及するためには、これらのシステム技術開発を行うことが大きな課題と言えます。

V2Gの実用と普及はこれから

V2Gは再エネの電力供給の調整役として注目を集めていますが、普及には多くの課題が残っています。

V2Gを一般的に普及させるためにはまず、EV所有者が増えることが不可欠ですが、充電インフラの不足やバッテリーの航続距離が短いなどの改善が急務となります。

今後は、インフラやシステムに加え、EV保有者のメリットを整備することがV2G発展の鍵となるでしょう。

まとめ

V2Gはまだ日本では実装されていませんが、近いうちに実現すると考えれています。

V2Gが普及する頃にはEVの航続距離が長くなり、充電インフラが整備されるなど、EVはより身近な存在になっていることでしょう。

V2Gは再エネの調整役として期待されている技術です。

持続可能なエネルギーを有効活用するために、EVを選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

関連記事:電気自動車(EV)の航続距離はどれくらいなのか?ガソリン車との違いも解説

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