メルセデス・ベンツ GLC・EQEの試乗記〜内装・外装も解説〜[MJ]
○文:諸星陽一
メルセデス・ベンツのGLCは2008年に市場投入されたGLKというモデルをルーツにもつ、DセグメントのSUVです。GLKのKはドイツ語で“短い”という意味を持つKurzの頭文字を取って名付けられたものです。
2016年にGLKはフルモデルチェンジされGLCと車名を変更します。2017年には車高の低いGLCクーペを追加します。
今回紹介するのは2023年に登場した2代目GLCで、クーペタイプではなく通常のSUVタイプとなります。
現在のところ2代目GLCに用意されるパワーユニットは、2リットルの直4ディーゼルターボにISGと呼ばれるモーター/ジェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、駆動方式は4WDのみ。
グレード名でいうと、GLC220d 4MATICのみとなります。
一方のEQEはメルセデス・ベンツの電動車ラインアップである、EQシリーズに含まれる1台です。
EQEはその名からもわかるようにEセグメントに属するモデルです。
EQEには292馬力/565Nmのモーターで後輪を駆動するEQE350+と、前後にモーターを搭載する4WD方式を採用するAMG EQE 53 4MATIC+がラインアップされています。
試乗車はAMG EQE 53 4MATIC+で、システム出力は505kW/1000Nmにもなるパワーユニットを搭載します。
関連記事:メルセデス・ベンツのAクラス・Bクラスのデザインや走りを解説!
INDEX
メルセデス・ベンツGLC、EQEの外装
2023年、GLCは初のフルモデルチェンジを迎えました。
メルセデス・ベンツ GLC
GLCは2020年、2021年の2年にわたりメルセデス・ベンツ車のなかでもっとも売れたモデルということもあり、かなり守り方向となるフルモデルチェンジとなりました。
ボディサイズを見ても全幅は先代同様の1890mm、ホイールベースは15mm、全長は50mm伸ばされました。
デザインを見ても先代モデルと大きく異なるようことはなく、キープコンセプトであることが確認できます。
最近はグリルを大きくしていくデザインが多く見られるのですが、GLCに関していえば、ビックリするほど大きくするようなことはなく、適度な大きさに留めている感じを受けます。
もっとも一昔前であれば、かなり大きいと感じたのでしょうが、最近の世界的潮流に比べると控えめです。
サイドから見ると、面や線がシンプルに構成されクセのない馴染みやすいスタイルであることがわかります。
リヤは幅広のクルマであることを主張するように、ハッチが左右フェンダーの内側にきっちりと収まっていることが確認できます。
メルセデス・ベンツ EQE
一方、EQEは上位モデルであるEQSと共通性のあるワン・ボウと呼ばれるデザインが採用されています。
ワン・ボウとは1つの弓という意味で、真横からみたシルエットが1つの弓のように滑らかな曲面と真っすぐな直線で構成されています。
また、従来のクルマのようにフロントセクションにエンジンやミッションを収めなくていいため、キャブフォワードといってキャブ(乗員スペース)をフロントよりに前進させたパッケージングが採用されています。
EVもある程度の冷却は必要ですが、エンジン車ほど積極的な冷却が必要ではありません。
そのため、センター部分に大型の大型のスリーポインテッドスターが配置されたフロントのグリルは実際に空気を入れるためのものではなく、デザインされたダミーとなっています。
実際のグリルはダミーグリルの下に設けられた開口部が担当しています。
メルセデス・ベンツGLC、EQEの内装
メルセデス・ベンツ GLC
GLCの内装はボリューム感のあるインパネが目を引きます。
上下2分割のインパネはT字型のデザインとなっています。
以前のクルマはダッシュパネルそのものに多くのスイッチ類などを装備しましたが、GLCのインパネにはイグニッションスイッチが装備されるだけです。
センターには縦型の11.9インチ液晶ディスプレイが配置されます。
このディスプレイを使ってさまざまな設定を行いますが、ハザードランプのスイッチなどはディスプレイ下に物理スイッチが装備されています。
そのほかのスイッチは、ステアリングスポークに集中されています。
横方向のステアリングスポークは多くのスイッチを装備でき、なおかつ配置位置を明確にできるよう2本となっています。
メルセデス・ベンツ EQE
EQEのインパネもGLC同様に一体感のある構成です。
GLCは上下2分割となっていましたが、EQEの場合は一体ものという感じを強く感じます。
メーター類はステアリング奥の横型液晶パネル、ナビや設定関係はセンターの縦型液晶パネルが担当するのは同様です。
ステアリングはGLCと同様のタイプで、ステアリングスポークに数多くのスイッチ類が装着されています。
メルセデス・ベンツGLC、EQEのグレード構成と装備差
メルセデス・ベンツGLC
現在、GLCはGLC220d 4MATICの1グレードのみの設定となっています。
GLCには以下のパッケージオプションが用意されています。
AMGラインパッケージ(60万円)
- AMGラインエクステリア
- 19インチAMG5スポークアルミホイール
- シートヒーター(後席)
- スポーティエンジンサウンド
- スポーツシート
- アンスラサイトライムウッドインテリアトリム
- 本革巻スポーツステアリング
- AMGラインインテリア
レザエクスクルシブパックージ(66万円)
- 本革シート
- ヘッドアップディスプレイ
- Burmester 3Dサラウンドサウンドツステム
- サラウンドパーソナライゼーション機能
- シートヒーター(後席)
- MBUX ARナビゲーション
- ブラックオープンボアウッドインテリアトリム
AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(55万円)(AMGラインパッケージとの同時装着が必須)
- 本革シート
- ヘッドアップディスプレイ
- Burmester 3Dサラウンドサウンドツステム
- サラウンドパーソナライゼーション機能
- MBUX ARナビゲーション
- ブラックオープンボアウッドインテリアトリム
ドライバーズパッケージ(49万円)(AMGラインパッケージとの同時装着が必須)
- リア・アクセルステアリング
- AIRMATICサスペンション
パノラミックスライディングサンルーフ(22万円)
メルセデス・ベンツ EQE
EQEには標準仕様で292馬力/565Nmのモーターで後輪を駆動するEQE350+と、AMG仕様で前後にモーターを搭載する4WD方式を採用、システム出力は505kW/1000NmにもなるAMG EQE53 4MATIC+が用意されます。
EQE350+は1248万円、AMG EQE53 4MATIC+は1922万円というプライスになります。
AMGラインパッケージ(39万8000円)(EQE350+のみ。EQE 53 4MATICは標準装備)
- AMGラインエクステリア
- AMGスタイリングパッケージ
- スポーツシート
- 本革巻スポーツステアリング
- ブラックペイント19インチAMG 5ツインスポークホイール
- AMGラインインテリア
- 本革シート(ステッチ入り)
デジタルインテリアパッケージ(99万8000円)(EQE 53 4MATICのみ)
- MBUXハイパースクリーン(助手席有機ELフロントディスプレイ、MBUXマルチメディアシステム)
- AMGカーボンインテリアトリム
- AMGカーボンファイバーセンタートリム
パノラミックスライディングルーフ(25万5000円)
EQE350+用エクスクルーシブパッケージ(50万2000円)
- マルチコントロールシートバックパッケージ(運転席、助手席)
- クライメートコントロール(前席左右後席左右独立調整)
- アコースティックコンフォートパッケージ
- 赤外反射・ノイズ軽減ガラス
- ラグジュアリーヘッドレスト(運転席、助手席)
EQE 53 4MATIC用エクスクルーシブパッケージ(34万3000円)
- マルチコントロールシートバックパッケージ(運転席、助手席)
- アコースティックコンフォートパッケージ
- 赤外反射・ノイズ軽減ガラス
- ※クライメートコントロール(前席左右後席左右独立調整)は標準装備
AMGスポーツホイールパッケージ(64万1000円)EQE 53 4MATICのみ
- AMGカーボンセラミックブレーキ(フロント)
- マットブラック21インチAMG Yスポークホイール
エナジャイジングパッケージ(115万円)
- エアバランスパッケージ
- エナジャイジングパッケージ
メルセデス・ベンツGLC、EQEの走り
メルセデス・ベンツGLC
Integrated Starter Generator
GLCはディーゼルエンジンモデルですが、ISGというモーター&ジェネレーターをプラスして、マイルドハイブリッドとして仕上げています。
ISGというのはIntegrated Starter Generator の略で、発進時や加速時にはエンジンの力をアシストするモーターとして使われ、減速時には回生ブレーキとして働き運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収します。
そもそもディーゼルターボは低回転から高トルクを発生するので、発進はスムーズなのですが、それでもモーターのスムーズさにはかないません。
モーターアシストを得たGLCの発進はじつにスムーズです。
マイルドハイブリッドなので、モーターのみで走るというモードは持たないのですが、それでも十分なスムーズさ。加速時などにはちょっとディーゼル然としたノイズを発生しますが、快適さを損なうほどではありません。
エアサス
試乗車はドライバーズパッケージが付いたモデルなので、サスペンションがエアサスとなります。
エアサスはブワブワして気持ち悪いという先入観は、四半世紀前の思考です。
現代のエアサスはものすごくしっかりしています。エアサスはバネの強さを調整できるだけでなく、車高調整も容易なのが利点。
GLCの場合、スポーツモードを選ぶと車高が標準より15mmダウンするので、高速走行などでしっかりした走りを得ることができます。
また、オフロードモードを選べば、車高が標準よりも15mmアップしロードクリランスを稼ぎます。
さらに、車外のカメラが撮影した映像を合成して、車体下の状況をモニターに映し出す(リアルタイムで車体下を撮影しているのではなく、少し前の時間に撮影した車両前方の画像を現在の時間に合わせて映し出している)ことで、安心してオフロードを走れるようにもしています。
リアアクスルステアリング
ドライバーズパッケージにはリアアクスルステアリングが装備されています。
リアアクスルステアリングは約60km/hを境に、低速時には後輪が逆位相(前輪と逆向きにタイヤが切れる)、高速時には同位相(前輪と同じ向きにタイヤが切れる)装置です。
低速時の小回り性能は格段に上がっていて、大きな車体を感じさせないものとなっています。
メルセデス・ベンツ EQE
EQEはとんでもないクルマです。
とくに今回試乗したAMG53 4MATICは、際立ってとんでもないクルマでした。
スペック
まずそのスペックですが、最高出力は505kW、最大トルクは1000Nmにもなります。
ハイパフォーマンスで知られている日産GT-Rの最大トルクが625Nmですから、1000Nmがいかにすごいか想像できるでしょう。
加速
また、エンジンは一定の回転数まで回転が上がらないと最大トルクを発生しませんが、モーターは起動時から最大トルクを発生します。
このため、停止状態からアクセルを床まで踏み込むと、とんでもない勢いで発進するのです。
あまりの加速の強さは、発進と同時に脳の血液を後頭部に押しやり、一瞬めまいを感じるほどです。
ハイパフォーマンスEVは同じような加速を披露しますが、発進加速時の安定感の高さはさすがメルセデス・ベンツという印象でした。
速くするだけなら大きなバッテリーと高出力のモーターを持ってくればいいですが、安全にかつ安定して使いクルマとして成立させるには自動車メーカーのノウハウが大きく生かされます。
メルセデス・ベンツが100年以上にわたって培ってきたノウハウにはさすが、と感じました。
コーナー
コーナーではしっかりと路面をつかみ、安定したコーナリングを示しますが、2.5トンを超える車体が路面をつかんで高速でコーナリングしている慣性力はなかなかの迫力です。
このコーナリングを成立させている高性能シャシーの底力にも驚かされます。
EQEもリアアクスルステアリングが装備され、最小回転半径は5.7mに抑えられています。
EQE350+の場合は最大切れ角が10度で最小回転半径が4.9mとなるのでそこまでではありませんが、3.6度のリヤタイヤの切れ角が生み出す5.7mの最小回転半径は使いやすいものです。
メルセデス・ベンツGLC、EQEのまとめ
メルセデス・ベンツGLC
GLCは先代モデルがメルセデス・ベンツのラインアップのなかで、もっとも売れたモデルです。
つまりそれだけニーズが多かったこともあり、日本でも人気が高いモデルとなっています。
ただし、GLCの全幅は1890mmとかなり広めになるので、自宅付近や通勤、通学で使う道路幅などを十分に考慮することが必要です。
とはいえ今回試乗したGLC220d 4MATICでも価格は820万円と高価ですので、気軽におすすめできる車種とは異なります。
ボディサイズさえ気にならなければ、ディーゼルエンジンでもあり、マイルドハイブリッドでもあるGLCは燃料費面での出費を抑えつつ使うことができるモデルです。
ラゲッジルーム容量も十分に確保されているので、レジャーユースとしての使いやすさも十分に備えています。
メルセデス・ベンツ EQE
試乗車のAMG EQE 53 4MATIC+は車両本体価格が約2000万円。オプションを含めると確実に2000万円オーバーとなるモデルです。
国や地方自治体の補助金が最大で150万円以上充てられますが、さすがに庶民には手が届かないプレミアムなモデルとなります。
アンダーモデルのEQE35+にしても1248万円の車両本体価格です。
EQEやEQSはEVではありますが、クルマのジャンルとしてはプレミアムサルーンということになります。
今までEクラスやSクラスに乗って来た人達が、もはやエンジン車ではなくEVだろう、と考えた際に選ばれるクルマということになります。
エンジン車が軽自動車からプレミアムモデルまでラインアップされるのと同じように、EVも軽自動車からプレミアムモデルまでラインアップされる時代になったというわけです。