自賠責保険の被害者請求のメリット・デメリットを解説
自賠責保険は強制保険とも呼ばれ、言われるがまま加入してしまう方が多いです。
内容を聞かされても結局は加入するしかないのですが、自賠責保険の制度をあまり知られていない中での加入に、メリットやデメリットの把握もしていない方も多く、いざ事故にあった時に困ると不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、事故で被害者となった時に自賠責保険をどういう風に保険を使えば良いのか、メリット・デメリットを解説しますので、ぜひ最後まで読んでご参考になさってください。
保険に関する知識を身につけていくことで、事故にあった時に慌てないようにしましょう。
関連記事:自賠責保険を使うとどうなる?デメリットや使用方法を解説!
INDEX
被害者請求とは
自賠責保険の被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険会社に直接損害賠償金を請求する方法です。
被害者は、治療費、休業損害、慰謝料などの傷害部分の請求や、後遺障害が残存した場合の等級認定を求める請求など、それぞれについて資料を準備して請求します。
被害者請求の期間
被害者請求をすると、示談前に自賠責保険から賠償金を受け取ることができます。
期間は請求から約1ヶ月で支払われることが多いようです。
ただし、請求資料に不備があったりすると、慰謝料の振り込みが遅れる可能性があります。
審査にかかる期間
自賠責の被害者請求の審査期間は、初回請求の場合は1~2ヶ月程度、異議申立ての場合は3~4ヶ月程度です。
損害保険料率算出機構のデータによると、90%以上の申請が2ヶ月以内に認定されています。
事故の内容が複雑であったりするとそれ以上かかる場合もありますが、それでも95%以上は3ヵ月以内に結果が出ます。
申請から3ヵ月以上経っても結果が出ない場合は、早期に対応しましょう。
後遺障害の認定まで時間がかかる理由は、審査件数の問題、提出書類の不備による遅れ、医療照会に時間がかかっている、審査対象が時間がかかる症状であること、提出書類の量が多い、上部機関で調査されているなどが考えられます。
被害請求の流れ
自賠責保険の被害者請求の流れは次のとおりです。
- 自賠責保険会社に請求書と必要書類を提出する。
- 自賠責保険会社が書類に不備がないか確認し、調査機関である損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)に送付する。
- 損害保険料率算出機構が事故の状況、因果関係、損害などを調査する。
- 調査結果が自賠責保険会社に報告される。
- 自賠責保険会社から被害者に対して結果が通知される。
- 支払うべき保険金がある場合、自賠責保険から支払が行われる。
加害者から賠償が受けられない場合は、加害者が加入している保険会社に直接請求することもできます。
加害者請求とは
一方で加害者請求という言葉もあります。
加害者請求とは、交通事故の被害者に慰謝料や治療費などの損害賠償金を支払った後に、その金額について加害者側から自賠責保険会社に保険金を請求することです。
加害者請求を行うには、まず事故が起きたことを保険会社に伝えます。
その後、被害者と示談を行って損害賠償金を支払います。
支払った後は、必要な書類を集めて自賠責保険会社に書類を提出して請求します。
加害者請求に必要な書類は、主に交通事故証明書、被害者の診断書、印鑑証明などです。
被害者請求のメリット・デメリット
上記の説明を見ると被害者請求って大変そうだなと思われる方も多いでしょう。
メリットとデメリットを比較してみましょう。
被害者請求のメリット
- 加害者の対応に左右されず、最低限の補償が受けられる。
- 手続の透明性が高い。
- 任意保険の保険会社に請求するよりも、損害賠償額が大きくなる可能性がある。
被害者請求は、加害者側の任意保険会社に請求するのではなく、自賠責保険会社に直接請求する手続きです。
そのため、加害者の対応に左右されることなく、最低限の補償が受けられます。
また、手続の透明性も高く、自ら必要な書類を準備し、直接請求するため、不当な減額を受けにくいというメリットもあります。
さらに、任意保険の保険会社に請求するよりも、損害賠償額が大きくなる可能性があります。任意保険の保険会社は、自賠責保険の限度額を超える損害賠償を支払う義務があるためです。
そのため、被害者は、自賠責保険会社に請求した後、任意保険の保険会社に示談交渉をすることで、任意保険の保険会社が加害者側に支払った保険金の範囲内で、さらに損害賠償を請求することができます。
関連記事:自賠責保険と任意保険どっちを使う?補償内容の違いも解説
被害者請求のデメリット
- 手続に費用と手間がかかる。
- 後遺症等級認定までに時間がかかる場合がある。
- 示談交渉が二度手間になる。
一方、被害者請求のデメリットとしては、手続に費用と手間がかかる点が挙げられます。
被害者請求には、後遺症等級認定に必要な診断書やその他の書類の準備が必要であり、その費用は被害者側の負担となります。
また、後遺症等級認定までに時間がかかる場合があり、示談交渉が二度手間になるというデメリットもあります。
やはり手続きの煩雑さがデメリットとなるようです。
後遺症等級認定とは
後遺症等級認定とは、交通事故で負った怪我が完治せずに後遺症が残った場合、その程度が自賠責保険の等級に該当するかを判断する手続きです。
後遺症等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求できるようになります。
後遺症等級は、1級から14級までの14段階に分かれており、等級が高いほど後遺障害の程度が重いと判断されます。
後遺症等級の認定は、医師の診断書やその他の書類に基づいて行われます。
被害者請求ですと、この手続きにも時間がかかる可能性があります。
事故の被害者になった場合
被害者請求のメリット・デメリットをお伝えしましたが、そもそも事故の被害者になった場合、そんなに細かいことまで考えられないケースも多々あります。
ここでは被害者になった場合の対応について解説します。
関連記事:車をぶつけた際の対処法とは?保険や修理費用についても解説
事故の被害者になったらどうすればいい?
交通事故の被害者になったら、以下の手順で対応しましょう。
もちろん人命優先なので、比較的被害の少ない、余裕がある場合の対応となります。
警察に通報する
事故を起こしたら、まず警察に通報しましょう。
警察への通報は、道交法上の義務であり、報告を怠ると、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。
また、警察に報告をしなければ、損害賠償金請求に必要な交通事故証明書が発行されません。
加害者の情報を確認する
加害者の情報は、交通事故証明書に記載されますので、よく確認しましょう。加害者の情報は、示談交渉や損害賠償請求の際に必要になります。
被害を記録する
事故の状況や被害状況を、できるだけ詳しく記録しておきましょう。
記録しておくと、示談交渉や損害賠償請求の際に、自分の主張を証明する材料になります。
記録する際は、日時、場所、事故の状況、被害状況、加害者の情報などを記載しましょう。
保険会社に連絡する
加害者側の任意保険会社に連絡し、損害賠償請求の手続きを進めてもらいましょう。
保険会社から連絡があった場合は、虚偽の申告や不利な回答をしないようにして、誠実に対応しましょう。
治療を受ける
怪我をしたら、すぐに病院を受診しましょう。治療を早めに開始することで、症状の悪化を防ぐことができます。また、治療費は、加害者側の任意保険会社から支払われます。
後遺症等級認定を受ける
後遺障害が残っている場合は、後遺症等級認定を受けましょう。
後遺症等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求することができます。
示談交渉を行う
保険会社と示談交渉を行い、損害賠償額を決めましょう。
示談交渉では、保険会社に任せることになりますが、場合によっては弁護士に依頼することも検討しましょう。
事故の被害者がやってはいけないこと
交通事故の被害者がやってはいけないことは、以下のとおりです。
事故直後に示談をしない
事故直後は、まだ事故の状況や被害状況がよくわかっていないため、示談をすると不利になる可能性があります。
そのため、事故直後には、示談をせずに、まずは警察に通報し、加害者の情報を確認しましょう。
自己判断で治療をやめない
怪我をしたら、必ず病院で治療を受けましょう。
治療を早めに開始することで、症状の悪化を防ぐことができます。
また、治療費は、加害者側の任意保険会社から支払われます。
加害者側の任意保険会社と直接交渉しない
加害者側の任意保険会社と直接交渉をすると、不当に減額されるリスクがあります。そのため、示談交渉は、基本的には保険会社、場合により弁護士に依頼することをおすすめします。
後遺障害等級認定を受けずに示談をしない
後遺障害が残っている場合は、後遺症等級認定を受けましょう。
後遺症等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求することができます。
被害者請求の利用を検討する場合
自賠責保険の被害者請求は、交通事故や様々なシーンでの意外な出来事に備えるために重要です。
被害者請求をどのような場合に利用すべきかをお伝えします。
1. 交通事故に巻き込まれた際の自身の損害
交通事故に巻き込まれた場合、急に訪れるストレスや身体的な損傷、治療費の負担が大きくなります。
被害者請求を利用することで、自身の損害に応じた医療費や損害賠償を受けることができます。
精神的・金銭的にカバーが出来る観点から、自分の安全と損害の補償を最優先に考えるべき場面です。
2. 加害者が任意保険に未加入の場合
事故の加害者が任意保険に未加入である場合、被害者請求は資金面で頼りになります。
加害者側の資金的な問題に懸念があった場合でも、自賠責保険は保険の有無にかかわらず、最低限の補償を提供します。
この場合、相手の加入保険に頼らずに、自身の損害を適切に補償するために被害者請求を検討しましょう。
3. 被害者の過失の程度と相手の関与
事故に合った場合、自身の過失の程度や相手の関与度によって被害者請求に影響を与えます。
被害者の過失が大きい場面であれば、加害者が加入している自賠責保険会社に請求する方が、任意保険会社の補償支給額と比較して、保険金が多くもらえる可能性があります。
過失や相手の関与度を正確に把握することで、多く補償を貰う被害者請求を検討しましょう。
まとめ
被害者請求を行うかどうかは、被害者の状況や希望によって判断する必要があります。
手間はかかりますが、加害者の対応に不安がある場合は、被害者請求を検討するとよいでしょう。
交通事故は、被害者にとって大きな負担となります。上記のことに注意し、適切な対応をとるようにしましょう。