自動運転レベル4解禁!実際にはいつ導入される?普及のための課題も紹介
2022年10月17日、警察庁は一定の条件下で自動運転レベル4の公道での運行を認める改正道路交通法について、2023年4月1日より施行する方針を発表しました。
自動運転レベル4とは「特定自動運行」として定義されるのですが、一体どのようなものなのでしょうか。
この記事では、自動運転レベル4の概要や注意すべき点、自動運転の課題などについて解説していきます。
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自動運転レベル4は2023年4月に解禁
自動運転レベル4を定義した改正道路交通法が、2022年4月27日に公布されました。
同年10月27日には、警察庁が改正道路交通法を2023年4月1日より施行し、いよいよ自動運転レベル4が日本で始まることとなります。
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自動運転レベルごとの概要
自動運転レベルとは、自動運転の度合いを0〜5までの6段階で表したものです。
数字が高くなるほど、高度な自動運転制御が必要となります。
ここでは、自動運転レベルの各段階における概要を紹介します。
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自動運転レベル0
運転支援装置や自動運転装置が何も搭載されていない状態の車が「レベル0」に分類されます。
ABSや予防安全システムなどについては、車の制御に影響を与えないことから自動運転レベルとは関係ありません。
車の操作は常にドライバーが行います。
自動運転レベル1
自動運転レベル1では、システムが前後(加速・減速)、左右(ハンドル操作)のどちらか1つの車両制御を行う運転支援装置が搭載された車です。
衝突安全のための自動ブレーキ、前を走る車と一定距離を保って自動で追走するACC(アダブティブ・クルーズ・コントロール)、車線からはみ出さないように自動でハンドル操作を支援するLKAS(レーン・キープ・アシスト・システム)をそれぞれ単独で搭載している車が該当します。
現行の新車には、何かしらの機能が入っている場合も多いですが「レベル1」ではまだ基本的な車の操作についてはドライバーが行います。
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自動運転レベル2
自動運転レベル1の機能を2つ以上使って車両制御を行う車、つまり加速・減速とハンドル操作の両方で車両制御ができる車が「レベル2」に該当します。
例えば、高速道路で前を走る車に追走しながら車線を維持する様な運転支援機能については、ACCとLKASの2つの機能を使用するため、自動運転レベル2となります。
自動運転レベル2に該当する技術は高度化しており、高速道路で周囲の交通状況をシステムが把握し、自動で追い越しや車線変更を行うシステムも実用化されています。
現在市販されている機能としては、日産の「プロパイロット2.0」スバルの「アイサイト3.0」トヨタの「Toyota Safety Sense」レクサスの「Lexus Safety System」が自動運転レベル2に相当します。
レベル2の場合、条件次第で「ハンズオフ」の運転が可能ですが、あくまで車の操作の主体となるのはドライバーです。
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自動運転レベル3
高速道路など限定された領域において、条件付きでシステムが車両の制御を行い、自動で運転できる車が「レベル3」に該当します。
自動運転時には何も操作しなくていいものの、走行する環境にシステムが対応しきれないと判断した場合には、ドライバーが運転操作をしなくてはなりません。
そのため、居眠りや飲酒はできません。
ホンダが限定販売したレジェンドに搭載されている、Honda SENSING Eliteが自動運転レベル3にあたります。
レベル3になると運転の主体は人ではなく車となり「アイズオフ」での運転が可能ですが、システムに反応できる状態でいなければなりません。
関連記事:ホンダの次世代技術!Honda SENSING 360とHonda SENSING Elite!今までの技術もおさらい!
自動運転レベル4
特定の道路や施設の敷地内など特定の場所のみで自動運転可能な車が「レベル4」に該当します。
現段階では2025年に開催される大阪万博の敷地内でのバス運行や、公共交通機関が廃止された地域でのバス運行などが想定されています。
警察庁は自動運転レベル4の車にカメラやマイクを設置して事業者の管制室で監視できること、位置情報の把握、サイバーセキュリティ対策を求めています。
条件さえ満たせば、自動運転レベル4の乗用車を運行することも可能です。
あくまで「限定された範囲内」であれば、車の操作は完全にシステムが行い、ドライバーによる操作は不要となり「ブレインオフ」の運転ができる状態です。
自動運転レベル5
条件や範囲に限定されず自動運転できる車が「レベル5」に該当します。
自動運転の完成形となり、どの場所においても車の操作は完全にシステムが行い、ドライバーが不要となります。
車内での睡眠、読書、飲食、映画鑑賞、同乗者との団欒などが可能で、乗員が車の運転に関与することはありません。
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自動運転レベル4の導入と普及の時期予測
改めて説明すると、レベル4は「限定領域自動運転」とも呼ばれる、あらかじめ設定された特定のエリア内において、システムがすべての運転操作を行うことを指します。
2023年4月1日に道路交通法改正され、自動運転レベル4の公道走行が解禁されたことで、自動運転レベル4のタクシーなどのサービスが、限定地域においては実用可能になりました。
しかし、未だに自動運転レベル3が普及しているとは言い難い状態で、レベル4の実用化が現実的なのかどうかは、業界内でも様々な見解があります。
政府は、2025年度を目処に全国50か所程度で自動運転の実用化を行う方針です。
初めは、限定的な導入になる見込みですが、技術の進歩や社会のニーズに応じて、順次拡大していく想定です。
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自動運転のメリットと社会への影響
自動運転技術がもたらす可能性は計り知れません。
交通事故の減少、交通の効率化、新たなビジネスモデルの創出など、そのメリットは多岐にわたります。
交通事故の減少
自動運転が実現すると、人間の運転ミスによる事故を大幅に減少させる可能性があります。
なぜなら、交通事故のほとんどは人間による操作ミスだからです。
また、疲労運転や注意散漫によるリスクも軽減されることから、交通事故の大幅な減少が期待されています。
交通の効率化
自動運転車は、交通の流れの最適化により渋滞を減らすことが期待されます。
これにより、燃料消費の削減や排出ガスの低減にも貢献する可能性も考えられています。
また、高齢者や障害者、運転免許を持っていない人など、これまで公共交通機関を利用する機会が少なかった人も、移動しやすくなることが期待されています。
新たなビジネスモデルの創出
自動運転タクシーや自動運転バスなどのサービスが、新たな移動手段として確立することが期待されています。
人間が運転しなくても良くなったら、24時間365日、目的地まで移動することができます。さらに、予約や配車の手間も自動化によりオペレーターの労力なども削減されるでしょう。
移動手段に留まらない、新たな活用方法が出てくることも予想されます。
例えば、観光やエンターテイメント、警備などの分野で、自動運転車両が活用される可能性があります。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 観光: 自動運転バスや自動運転タクシーを活用した観光ツアーの提供
- エンターテイメント: 自動運転車両を活用したアトラクションの開発
- 警備: 自動運転ロボットを活用した警備サービスの提供
自動運転技術の進展により、今後も新たなビジネスモデルが生まれてくることが期待されています。
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完全な自動運転を普及させるために解決すべき課題とは
自動運転レベル4の実施を目前に控え、自動運転レベル5までの道のりもそう遠くないようにも思えますが、自動運転が普及するためには課題が多く残っています。
ここでは、現時点で把握されている課題について紹介します。
自動運転システムの課題
自動運転システムは、運転支援装置として2006年ごろから実用化されてきました。
それから約15年で自動運転レベル4に到達した進歩のスピードは驚異的です。
自動運転レベル4においては、公共交通機関が廃止された地域などの道路を行き交う人、自転車、車などが少なく、ある程度の安全性が確保された状態での自動運転の実施が規定されるに留まっています。
そのため、レベル5への移行に向けては都市部の複雑な道路状況に対応する必要があります。
自動運転において、都市部の走行には、高精度な地図や、車両間の通信インフラなど、高度なインフラを必要とします。
自動運転システムは様々なセンサーやソフトウェアによって、周囲の状況を把握し運転操作を行いますが、システムの誤作動や予期しない状況への対応などの安全上の課題がまだあります。
気象条件による影響
自動運転には、気象条件による影響についても課題があります。
自動運転システムの目となるカメラやセンサー類が気象条件によっては確実に作動するかわかりません。
例えば、フロントカメラの前に雪が積もるとカメラには雪しか写らなくなります。
センサー類に雪が積もると、レーダーを出せなくなり、歩行者や自転車を検知できなくなり、自動ブレーキが作動しなくなる可能性もあります。
自動車はあらゆる道路状況、過酷な気象条件下でも運行されます。
そのため、レベル5の自動運転システムの実現に向けてはどのような場面でも作動する確実性が求められます。
複雑な交通状況への対応
国土交通省が実施した自動運転の実験によると、自動運転システムが解除されドライバーに操作を譲った理由が「路上駐車の回避」「GPSなどの自己位置特定の不具合」「自転車・歩行者の回避」でした。
GPSは複数の人工衛星からの電波を受信して、車の位置を特定する装置です。
悪天候で位置を見失うことはありませんが、車がビルの影やトンネル内に入るとGPSが必要とする電波が届かず、場所を見失います。
さらに、現在の道路では対応が難しいのが「路上駐車の回避」と「自転車・歩行者の回避」です。
日本の道路においては複雑な条件が多く、道幅が狭いと歩道が設置されず、路側帯が確保されている場合でも路上駐車の車両が置かれている可能性があります。
自転車は軽車両であるにも関わらず、通行区分違反、信号違反、一時停止違反などを繰り返しながら道路を通行しています。
このような「システムにとっての想定外」が立て続けに起こるのが、都市部の道路です。
こういったケースではシステムの演算も追いつかず、自動運転レベル4が対応しきれないようになり、事故が発生する原因となる可能性があります。
自動運転のための環境整備
自動運転を安全かつ確実に行うためには、日本の道路環境を変える必要があります。
GPSで自己位置を必ず特定できない現状から、道路に位置センサーを埋め込むことも議論されています。
また、複雑な状況を作り出している道路においては歩行者と自転車をはっきりと分ける必要があります。
歩行者については歩道を100%完備し、横断歩道以外では道路を横切れないようにすること。
自転車については自転車専用道路を整備することと、交通ルールの教育を徹底するなど、ソフトとハードの両面での整備が必要となります。
路上駐車への対策として、道幅の拡幅や駐車場を増やすといったことも課題です。
これらのインフラの整備がなければ、自動運転の普及は難しくなります。
関連記事:自動運転レベル3の機能が搭載されている市販車はあるのか?レベル3の概要や現状を紹介
まとめ
この記事では、自動運転レベル4の概要や注意すべき点、自動運転レベル5に向けた課題などについて解説してきました。
2023年4月1日より、条件付きながら自動運転レベル4が解禁されました。
当面は公共交通のない地域や施設の敷地内での自動運行バスなどのサービス展開が念頭に置かれています。
現在の乗用車は自動運転レベル3が実用化されていますが、条件をクリアすれば乗用車でも自動運転レベル4での運行が可能となります。
自動運転レベル5が実用化されるには技術、インフラ、交通マナー面での解決すべき問題が多くあります。
実用化に向けての今後の動向に注目しておきましょう。