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工藤 貴宏くどう たかひろ

クラウン クロスオーバーは「新しい時代」へ。内装・外装・デザインを解説[MJ]

◯文:工藤 貴宏

クラウンはトヨタを代表する上級セダンであると同時に、日本を代表するセダンと言っていいでしょう。

1955年に登場した初代は、乗用車としてはじめて日本の技術だけで作られました。
以来、フルモデルチェンジを繰り返しながら60年以上もトヨタブランドの最高峰セダンとして君臨しています。

そんなクラウンに大きな異変が起きたのが2022年に登場した16代目。

4つのボディが用意される16代目クラウンのうちのひとつ「クロスオーバー」は、駆動方式を後輪駆動から前輪駆動ベースの4WDとしたほか、それまでのクラウンのイメージを覆すデザインで世の中を驚かせました。

この記事では、そんなクラウンクロスオーバーについて内外装のデザインや特徴を紹介します。

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前衛的ながら実用性の高いスタイル

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

デザインはこれまでのクラウンのイメージを打破

クラウンクロスオーバーのデザインは、これまでのクラウンのイメージを覆すもの。

従来のクラウンは、上級セダンらしい格式を重視したデザインでした。

しかしクラウンクロスオーバーは、セダンでありつつもハッチバックのようなスタイル。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

そして個性的なヘッドライトを組み合わせた大胆なフロントデザインとしています。
新しい時代に向けた流麗なデザインを身に着けたといっていいでしょう。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

もうひとつの大きな特徴は、径の大きなタイヤを組み合わせて車高を上げたクロスオーバースタイルとしていること。

クロスオーバーとは「何かと何かを組み合わせたもの」ですが、クラウンクロスオーバーはセダンとSUVを掛け合わせたパッケージとしているのです。

乗り降りしやすさも考えたリフトアップスタイル

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

クロスオーバースタイルにはいくつかのメリットがあります。

ひとつは視界がよくて運転しやすいこと。
これはドライバーが感じられる嬉しいポイントでしょう。

もうひとつ大きなメリットは乗り降りがしやすいこと。

クラウンクロスオーバーのヒップポイント(シートに座る部分の地面からの高さ)は前席が630mmで後席は610mm。

これは“一般的なセダンほど低すぎず、いっぽうでSUVほど高すぎず”の乗り降りがしやすい高さなのです。

乗り降りの動きがスムーズなのは、乗降時に足を出し入れしやすいほか、腰の上下移動量が少ないことに理由があるのです。

クラウンクロスオーバーに乗り降りしてみると、従来のセダンよりずっと人にやさしいパッケージングだと理解できることでしょう。

一部のグレード(Anvanced系)のリヤドアには、半ドア状態まで閉じればあとは電動で引き込んで完全にドアを閉めてくれるイージークローザーも搭載しています。

大きなタイヤは特別な設計を施したもの

クラウンクロスオーバーのタイヤは18インチ、19インチ、そして21インチが設定されています。

特徴的なのは、タイヤのカタチも一般的なものとは異なること。
一般的なタイヤは側面と接地面の境目が大きく丸みを帯びていますが、クラウン用のタイヤはその丸みが少なく直角に近い形状なのです。

理由は、タイヤをできるだけ外側に出して車体と面一(ツライチ)化するため。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

タイヤが張り出しているように見せることで、スタイリングの安定感を増そうというわけです。
そういった工夫や演出が、クラウンの美しいスタイリングを成立させています。

クラウンが履くそんなタイヤは、これまでタイヤメーカーもおこなってこなかった未知の領域。

タイヤひとつをとっても、新しいクラウンは先進性を持っているのです。

クラウンクロスオーバーのカラーバリエーションは?

クラウンクロスオーバーのボディカラーはモノトーンで6色、バイトーンで6色の合計12色が用意されています。

モノトーン

●プレシャスホワイトパール
●プレシャスシルバー
●プレシャスメタル
●ブラック
●エモーショナルレッドⅡ
●プレシャスブロンズ

バイトーン

●ブラック×プレシャスホワイトパール
●ブラック×プレシャスシルバー
●ブラック×プレシャスメタル
●ブラック
●ブラック×エモーショナルレッドⅡ
●ブラック×プレシャスブロンズ

※モノトーンは「ブラック」を除き5万5000円(消費税込)、バイトーンは全車16万5000円(消費税込)のメーカーオプション。

いずれも深みがあるととともに光に照らされると美しい陰影を見せてくれるカラーですが、個性的なのはバイトーン。

ボンネット、ルーフ、トランクリッド、そしてテールランプ周辺がブラックとなり、まるでカスタムカーのような雰囲気です。

こんなカラー設定にも新しいチャレンジが感じられます。

クラウンの室内は広さと快適性が特徴的

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

大きなディスプレイを組み合わせた運転席

クルマ用としてはかなり大きなサイズとなる12.3インチのフル液晶メーターと同じサイズのセンターディスプレイを組み合わせた運転席まわりは先進的な印象。

水平基調とし、機能的ながらスッキリとしたレイアウトになっています。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

シフトレバーは全車とも電子式で操作後にレバーから手を離すと中立位置へ戻るタイプ。

「クロスオーバーRS」系には手元の操作でシフトアップ/ダウンができるパドルシフトも用意しています。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

またハンドルはベーシックグレードの「クロスオーバーX」を除き、電動調整機能付き。

「クロスオーバーRS」と「Advanced」系のモデルは発熱することで寒い日に手を暖めてくれるステアリングヒーターも組み込まれています。
快適装備の充実度はさすがトヨタの最高峰セダンだと納得です。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

フロントシートは「クロスオーバーX」を除き運転席は電動式で、「クロスオーバーRS」と「Leather Package」系は助手席にも電動調整機能を採用。

また、助手席に電動調整機能が組み込まれる仕様はシートに「ベンチレーション」と呼ばれる通風機構が組み込まれ、送風することで夏場のムレなどを防いで快適性を高めます。

加えて運転席や後席から助手席を操作するためのスイッチが助手席背もたれの右側側面に組み込まれているのも珍しい機能といっていいでしょう。

珍しいといえば、珍しい装備として運転席には除電スタビライジングシートを採用。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

これはシート表皮の一部に電気を通す素材を使うことで、ドライバーにたまっている静電気を車体に逃がして帯電量を軽減。

車体のまわりを流れる空気の流れを静電気に邪魔されることなくスムーズにし、運転操作に対する車両の反応を最適にする効果があります(「クロスオーバーX」を除き採用)。

広さが自慢の後席

クラウンクロスオーバーの後席に座ってまず驚くのは、膝まわりスペースの余裕です。

前席と後席の距離(タンデムディスタンスと呼ばれる前席と後席に座った人のお尻の距離を測ったもの)は1mもあり、さすが大型セダンといえるもの。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

しかし、単に大型セダンというだけではなく、新型のクロスオーバーは従来のエンジン縦置きではなくエンジン横置きのプラットフォームを採用したことでエンジンルームの前後長を狭めることができ、そのおかげで前後席間の距離が増したパッケージングなのです。

この広さには感動を覚えますね。

新しいクラウンはスタイルなどが大胆になり、後席居住性を心配する人もいることでしょう。
しかし、後席の快適性を優先するというクラウンの本質はしっかり受け継がれているので安心してください。

リヤシートは「クロスオーバーRS”Advanced”」だけのオプション設定とはなりますが、電動リクライニングも用意。
40:20:40の左右3分割で独立して背もたれの角度を調整できます。

また「クロスオーバーRS”Advanced”」で電動リクライニングを選択すると、センターアームレストにシート調整や空調などのコントロールスイッチが組み込まれます。

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

クラウンクロスオーバーのインテリアの素材とカラーは?

クラウン クロスオーバー。写真:工藤 貴宏

シート表皮は仕様により異なり「ファブリック+合成皮革」「上級ファブリック+合成皮革」「本革」の3タイプ。

「クロスオーバーX」がファブリック+合成皮革、「クロスオーバーG」と「クロスオーバーG“Advanced”」が上級ファブリック+合成皮革、そして「クロスオーバーG“Leather Package”」「クロスオーバーG“Advanced ・Leather Package”」「クロスオーバーRS」系が本革となります。

ファブリックや上級ファブリックのインテリアカラーはブラックのみですが、本革になるとブラックのほかフロマージュやブラック、ブラック/イエローブラン、そしてブラック/ダークチェスナットと選択肢が増えます。

コーディネートにこだわりたい人は、本革シートのモデルを選ぶといいでしょう。

まとめ

スタイルもメカニズムもこれまでのクラウンと大きく異なる新型に関して「これまでのクラウンとは違うクルマ」と心配する声も聞こえてきます。

たしかに、上級セダンとしての表現方法はこれまでのモデルとは大きく変わりました。
しかし、広さと快適装備の両面から後席の居心地の良さといったクラウンの本質はしっかりと継承されています。

また、アバンギャルドになったスタイリングもそれ自体も好意的に受け止める人も多いのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

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工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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