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モータージャーナリスト

工藤 貴宏くどう たかひろ

トヨタ クラウンクロスオーバーの実燃費はどのくらい?試乗して測定[MJ]

○文:工藤 貴宏

従来モデルから大胆に変更したデザインでも話題になっている新型クラウンは、4つのボディでシリーズを構成しています。

まず発売されたのがセダン名ながらクロスオーバーSUVスタイルの「クロスオーバー」。

そんなクラウン クロスオーバーの燃費はどのくらいなのでしょう。実際に計ってみました。

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クラウン クロスオーバーの概要

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

日本の技術だけで作られたはじめての乗用車で、初代デビューは1955年。
トヨタ・クラウンは70年近い歴史を持つ、トヨタを代表する高級セダンです。

そんなクラウンは、2022年の16代目へのフルモデルチェンジで大きな変化が起きました。
メインモデルが「クロスオーバー」と名付けられたSUVとセダンを兼ね合わせたモデルになったのです。

デザインは伝統と格式を重んじるこれまでのものから激変。アバンギャルドな「攻め」のスタイルになりましたね。

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

そんなクラウンの変化に対しては賛否両論がありますが、これまでの方向性を継承するのであれば“時代に取り残された、年老いたクルマ”となっていくのは目に見えていました。

だから心機一転し、時代を切り開いていく存在へと生まれ変わったのです。

また、メカニズムも刷新。初代登場以来継承してきた「エンジン縦置き+後輪駆動&それをベースとした4WD」をやめ、「エンジン横置き+前輪駆動ベースの4WD」としました。

また、パワートレインは全車ハイブリッドで、後輪はモーターだけで駆動する4WDとしているのも大きな変化です。

ちなみに16代目のクラウンは「クロスオーバー」だけでなく、SUVの「スポーツ」や「エステート」、そして純粋なセダンの「セダン」と4つのボディでシリーズを構成。今後、順次発売される予定となっています。

今回は、先陣を切って発売された「クロスオーバー」の実燃費を確かめてみました。

クラウン クロスオーバーのパワートレイン

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

2022年に登場したクラウン クロスオーバーは全車ハイブリッドで、2タイプのパワートレインが搭載されています。

ひとつは2.5Lエンジンを組み合わせたハイブリッド、もうひとつは「RS」に搭載する2.4Lターボエンジンを組み合わせたハイブリッドです。

2.5Lハイブリッド

  • 直列4気筒自然吸気
  • 排気量:2487cc
  • 最高出力:137kW(186ps)/6000rpm
  • 最大トルク:221Nm/3600~5200rpm
  • 使用燃料:レギュラー
  • フロントモーター最高出力:68kW(119.6ps)
  • フロントモーター最大トルク:202Nm
  • リヤモーター最高出力:40kW(54.4ps)
  • リヤモーター最大トルク:121Nm

2.4Lターボハイブリッド

  • 直列4気筒自然吸気
  • 排気量:2393cc
  • 最高出力:200kW(272ps)/6000rpm
  • 最大トルク:460Nm/2000~3000rpm
  • 使用燃料:ハイオク
  • フロントモーター最高出力:61kW(82.9ps)
  • フロントモーター最大トルク:292Nm
  • リヤモーター最高出力:59kW(80.2ps)
  • リヤモーター最大トルク:169Nm

2.4Lターボエンジンは排気量が小さいものの、ターボのサポートのおかげで2.5L自然吸気エンジンよりも高出力です。

また力強いリヤモーターを組み合わせるのが特徴で、後輪駆動車のように爽快な曲がり方をするのも魅力といっていいでしょう。

クラウン クロスオーバーのカタログ燃費はどのくらい?

カタログに記載されているクラウン クロスオーバーの燃費は以下の通り。左側の数字が2.5Lハイブリッド、右側は2.4Lターボハイブリッド車のものです。

WLTCモード総合燃費:22.4km/L / 15.7km/L

WLTC市街地モード燃費:21.2km/L / 12.6km/L

WLTC郊外モード燃費:23.8km/L / 15.8km/L

WLTC高速道路モード燃費:22.1km/L / 17.6km/L

WLTCモード燃費は、各自動車メーカーで共通の決められた走行パターンにおいて測った燃費値のこと。
総合的な値となるWLTCモード総合燃費をみると、2.5Lハイブリッド車は22.4km/Lというこのクラスとしては常識外れの燃費性能を誇ります。

いっぽうで2.4Lターボハイブリッド車は15.7km/Lに留まり、これは大型セダンと考えれば良好な数字ですが2.5Lハイブリッド車の約7割です。

新型クラウンの燃費やパワーを見ると、

2.4Lハイブリッドは動力性能が控えめな一方で燃費は驚くほど高いレベル

2.5Lターボハイブリッドは高い動力性能が自慢で、燃費に関しては2.4Lハイブリッドに届かない

といえるでしょう。

クラウン クロスオーバーの実燃費はどのくらい

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

そんなクラウン クロスオーバーの実燃費はどのくらいでしょうか?

今回は、燃費に優れる2.4Lハイブリッドモデルで実際に走り、燃費を計測してみました。

走行時は燃費運転を意識することなく、エアコン(25度でオート設定)も使いながら、流れに乗って通常通り走ることを意識しての記録です。

流れのいい首都高速では24.8km/L

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

首都高速道路は渋滞がなければ燃費に悪影響となる停止/発進がなく、なおかつ高速道路としては走行速度域が低い環境。つまり燃費にとっては条件のいい場所です。

走行モードを「ECO」にしてACCを使いながら、混雑していない首都高速道路を26キロほど走った燃費値は24.8km/L。

なんと、カタログのWLTCモード燃費値を超える優れた数字が出ました。
1Lのガソリンで25キロちかく走れてしまうのですから、驚かずにはいられません。素晴らしい燃費ですね。

順調な市街地では19.5km/L

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

早朝の空いた市街地の道路を41.5キロ走って計測した燃費は19.5km/L。
走行モードはECOモードです。これも大型セダンとしては極めて優れた燃費といえます。

走行速度は速くても50km/hほど。
早朝だから渋滞や長い信号待ちはありませんでしたが、ときどき赤信号で止まることがありました。

やや混雑した市街地では21.2km/L

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

「順調な市街地」とほぼ同じルートを逆方向に走って計測しました。
時間帯が異なり夕方だったので交通量が多く、ところどころで渋滞。平均車速は下がり、ストップ&ゴーも信号待ちの時間も増えています。

しかし、そんな燃費にとって不利な環境だったにもかかわらず、順調に走った時よりも燃費がいいのだから驚くしかありません。

ハイブリッドならではの、エンジンを止めてモーターだけで走る状況が多かったことが燃費を伸ばした理由と考えてよさそうです。

高速道路をゆっくり走って25.4km/L

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

高速道路をゆっくりめに走って燃費をチェックしました。

約76キロの距離を、渋滞がない高速道路でACCを活用しながら、大型トラックと同程度の速度で走ってみました。

燃費は、なんと25.4km/Lという優れた値。もう驚くしかありません。

高速道路を普通に走って21.0km/L

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

往路が25.4km/Lだったのとほぼ同じルートを、少しペースを上げて走行。制限速度を目安にACCを使って走りました。

88キロ走っての燃費は21.0km/L。往路に比べるとペースが上がったことで燃費は低下しましたが、とはいえ21.0km/Lなのだから見事です。

こうして実走行で燃費をチェックして分かったのは、クラウン クロスオーバーの2.5Lエンジンハイブリッド車の燃費性能は素晴らしいということ。

とても大型セダンとは思えないガソリン消費量の少なさです。

しかも、実際に走ってみると、カタログ記載値を上回る燃費値をマークすることもあるのだから驚かずにはいられません。

クラウン クロスオーバーで燃費をよくする運転のコツ

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

クラウン クロスオーバーで燃費をよくするコツは、“モーターの有効活用”と“空走の活用”です。

まず加速する際はゆっくり加速するのではなく、少しアクセルを踏み込み気味にしてモーターのアシストを最大限に利用することで燃費を抑えます。

ダラダラではなくキビキビと加速し、巡行速度に到達したらアクセルをスッと緩めると瞬間燃費計の示す値がスッと燃費のいい状態となり、結果的に燃料消費を減らせるのです。

下り坂になった時や前方の車両が減速した時も、早めにアクセルを離すと空走状態で前へ進むので燃料を節約。
そのためには、車間距離を多めにとって前方の様子をしっかりと確認するのがポイントです。

また市街地ではエンジンを止めてモーターだけで走る「EVモード」を積極的に活用すると、その状態での走りはガソリンを消費しないので燃費が良くなります。

クラウンクロスオーバー。写真:工藤貴宏

ちょっとしたコツを覚えて、燃料を節約しましょう。

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この記事を書いた人

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工藤 貴宏くどう たかひろ

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2023-24日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。生粋のクルマ好きで現在の愛車は マツダ CX-60 とスズキ・ソリオ、そしてホンダ S660。 1976年長野県生まれ。

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