水平対向エンジンとは?構造やメリット・デメリットについて解説します
車に対して興味・関心が低い場合、エンジンなどの構造を理解している人は少ないでしょう。
自動車メーカーによって、燃費性能や静粛性の向上などを実現するために各パーツの刷新・開発が行われています。
また、車の動力源となるエンジンも各メーカーによって取り扱いが異なります。
各エンジンにおける構造や機能面の違いについて理解することで、自身にとって適切な車選びを行えるでしょう。
車に搭載されているエンジンには、主に直列エンジンやV型エンジン、水平対向エンジンが存在します。
そのなかでも、この記事では「水平対向エンジン」について理解できていない人に向けて概要を紹介するため、気になる人は参考にしてください。
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水平対向エンジンの概要
まずは水平対向エンジンの概要について紹介します。
水平対向エンジンとは?
「水平対向エンジン」とは、燃料が燃焼する際に発生するエネルギーによって、ピストンが直線的に動作し、クランクシャフトによって回転運動に変換される、レシプロエンジンの一種です。
水平対向エンジンは、向かい合ったピストンが交互に上下し同じ動作を繰り返すため「ボクサーエンジン」と呼ばれることもあります。
水平対向エンジンは広く流通されている?
水平対向エンジンは、1897年に登場しました。
登場後、世界各国でさまざまな自動車メーカーが水平対向エンジンを搭載した車を製造・販売しています。
しかし、水平対向エンジンには生産コストが高くなることが懸念され、徐々に直列エンジンを採用する車が増えました。
2023年4月現在、水平対向エンジン搭載車を製造・販売している自動車メーカーは、スバルとポルシェの2社のみです。
そのため水平対向エンジンは、需要が低いといえるでしょう。
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水平対向エンジンのメリット
需要が低い水平対向エンジンですが、取り入れることでさまざまなメリットを得られるでしょう。
以下では、水平対向エンジンの代表的な3つのメリットを解説します。
走行安定性やハンドリング性能の向上
一般的なエンジンと水平対向エンジンの大きな相違点の1つはピストンの配置です。
一般的なエンジンが縦置きのピストンに対して、水平対向エンジンは横置きのピストンになっています。
横置きのピストンであれば、エンジン本体の全高を抑えられるため、重心を低くすることが可能です。
重心を低くできれば、車の走行安定性やハンドリング性能の向上が期待できるでしょう。
衝突時のダメージ軽減
水平対向エンジンを取り入れることで、衝突安全性能の向上が見込める点もメリットといえるでしょう。
全高が高いエンジンであれば、正面衝突事故を起こした場合にエンジン本体が前席を押し込んでしまいます。
その結果、乗っている人へ多大なダメージを与えてしまう可能性があるでしょう。
しかし、水平対向エンジンであれば、全高が低く設計されているため、正面衝突事故を起こした場合でもエンジン本体が前席を押し込むことは少ないといえます。
振動を抑制
水平対向エンジンは、左右に向かい合った横置きのピストンが同時に中央へ向かい、同時に離れる動作を行います。互いの力が相殺されるため、振動の抑制につながるでしょう。
また、振動が抑制されることでスムーズな加速を実現できます。
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水平対向エンジンのデメリット
水平対向エンジンにはメリットのほかにも、デメリットも存在します。以下では、水平対向エンジンのデメリットについてみていきましょう。
精緻な設計が求められる
先述した通り、水平対向エンジンを取り入れることでエンジン本体の全高を抑えられます。
しかし、車に搭載する際は吸気系パーツや排気系パーツといった、さまざまなパーツを装着しなければなりません。
さらに、エンジンルームに設置が必須となるパーツは、エンジン本体以外にもいくつか存在します。
設置するパーツが多くなれば、車両重量が重くなり燃費性能が低下するため、創意工夫が求められるでしょう。
必要となるパーツが増大する点は、水平対向エンジンのデメリットといえます。
精緻な設計が求められることは、長期にわたる開発期間が必要となる可能性が高いでしょう。
また、パーツが増大すれば、コストも上昇すると考えられます。
エンジンの横幅が広がる
水平対向エンジンは、ピストンを水平に配置するため全高を抑えられます。
しかし、横幅は広くなってしまうので、水平対向エンジンを搭載する車には、ある程度の車幅が必要といえるでしょう。
車幅が狭い軽自動車や、コンパクトカーへの搭載は難しい点がデメリットとして挙げられます。
オイル漏れの発生リスクが高い
水平対向エンジンはピストンだけでなく、動作範囲を形成するシリンダーも水平に配置されています。
そのため、一般的なエンジンに比べると、オイル漏れが発生しやすいといえるでしょう。
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水平対向エンジン以外のエンジン
車に搭載されているエンジンは、水平対向エンジンのほかに直列エンジンやV型エンジンなどがあります。
以下では、「直列エンジン」や「V型エンジン」の概要について紹介するため、水平対向エンジンとの違いを理解したい人は参考にしてください。
直列エンジンとは?
軽自動車やコンパクトカーに多く搭載されているエンジンが直列エンジンです。
水平対向エンジンのようにピストンを含むシリンダーを向かい合わせて水平に配置するのではなく、シリンダーを垂直に配置していることが特徴です。
また、配置するシリンダーの数によって「直列4気筒エンジン」「直列3気筒エンジン」といった種類に分かれます。
少ない気筒数の直列エンジンであれば振動を抑制するためのパーツが必要です。
気筒数を多くすればエンジン本体のサイズが大きくなってしまいます。
しかし、エンジン本体で見ると、ほかのエンジンに比べて使用パーツが少なくなるため、コスト抑制につながるでしょう。
V型エンジンとは?
V型エンジンは、水平対向エンジンのようにクランクシャフトを中心に、ピストンを含むシリンダーを左右に分けて配置しています。
シリンダーを左右に分けて配置するため、直列エンジンに比べて必要となるパーツが多くなり、コストが増加するでしょう。
一方で、シリンダーを左右に分けて配置するため、同じ気筒数の直列エンジンよりもエンジン本体の全長や全高を抑えられます。
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まとめ
水平対向エンジンは、レシプロエンジンの1つであり、中央のクランクシャフトを左右から押し込むように、ピストンが向かい合って水平に配置されています。
水平対向エンジンは、走行安定性・ハンドリング性能を向上できることや、衝突時のダメージが軽減できるなど、さまざまなメリットがあります。
一方で、精緻な設計が必要であることや、横幅は広がってしまうといったデメリットもあるため、事前に理解しておきましょう。
2023年4月現在、水平対向エンジンを搭載した車の開発・販売は減少しています。
スバル、ポルシェであれば水平対向エンジンが搭載された車を販売しているため、興味があれば購入を検討してみてはいかがでしょうか。