ルナ・クルーザー(有人与圧ローバ)とは?トヨタ車が月面を走る?
2019年から、トヨタとJAXA(宇宙航空研究開発機構)が共同開発している車があることはご存知でしょうか。
今回は、トヨタが挑戦している、宇宙開発というミッションについてこれまでどう歩んできたかをご紹介します。
これを機に、宇宙開発の目的や今後の発展技術に興味を持っていただけたら幸いです。
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国際宇宙探査ミッションへの挑戦
トヨタとJAXAの国際宇宙探査ミッションは、2019年3月19日に双方合意をしました。
その第一弾として開発が検討されたのが、「有人与圧ローバ」です。
有人与圧ローバ
有人与圧ローバは、燃料電池車(FCV)技術を用いた、月面での有人探査活動に必要なモビリティで、月面まで輸送し得るエネルギーが限られる中、1万km以上の走行を可能にします。
国際宇宙探査ミッションの目的
「人類の活動領域の拡大」と「知的資産の創出」が国際宇宙探査ミッションの目的で、人類の持続的な繁栄を目指しています。
そのためには、宇宙飛行士が月面で活動できるような有人探査が必要で、その移動や活動の拠点となるのが有人与圧ローバです。
「ホームタウン」「ホームカントリー」を念頭に置いてきた自動車業界が、「ホームプラネット」の概念を大切にし、故郷である地球規模の問題への対応を進めていきます。
FCVは吸い込んだ空気に含まれる有害物質を削減して排出する「マイナスエミッション」の特徴があるので、この性能は、大いに期待できます。
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有人与圧ローバに必要なスペック
月面での探査にあたり、有人与圧ローバには以下のようなスペックが求められるとしました。
- 室内空間の広さが4畳半よりも少し小さいぐらいの面積
- サイズはマイクロバス2台分より、少し大きいぐらい
- 42日間で1万kmの走行が可能
- 水素1回の満充填で1,000km走行
- 過酷な環境でも走行可能な悪路走破性
- 自動運転機能
トヨタ車は5大陸を走っており、中には「生きて帰ってくるために車が必要」とされる地域もあります。
そのような地域でさえも走ることのできるトヨタ車に白羽の矢が立ったというわけです。
これを元に、2019年7月に、月面探査車開発組織を立ち上げました。
実はトヨタは以前も宇宙に貢献した
トヨタは実は、有人与圧ローバ以前にも宇宙開発に貢献しています。
2012年、スペースシャトル「エンデバー」が引退する際に、ロサンゼルス空港からカリフォルニア科学センターまで輸送する際に、トヨタのタンドラという車が一部の区間牽引を行なっています。
タンドラは、アメリカのテキサスで製造されているピックアップトラックです。
この頃にはもう、トヨタは宇宙と縁があったのです。
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LUNAR CRUISER(ルナ・クルーザー)
2020年08月、有人与圧ローバに「ルナ・クルーザー」という愛称がつけられました。
ランドクルーザーがもつ「必ず生きて帰ってくる」という精神、品質、耐久性、信頼性を月面という過酷な環境を走る有人与圧ローバにも引き継いでいきたいという想いが込められています。
この年に、VRや原寸大の模型を使用して、機器の配置、タイヤの試作、動力性能・放熱性能の確認など、実物のルナ・クルーザーの試作に進んでいきます。
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「トヨタのローバ」というよりは、「日本のローバ」
月面では、地球上の1/6の重力しかなかったり、放射線が降り注ぐ、昼と夜が2週間ずつ続く、昼夜間の温度差が-170℃〜120℃の300℃近くあるなど、過酷な状況での走行をしなければなりません。
ゴムのタイヤが使えず、金属製のタイヤを使用したり、大きな窓が作れず、小型の窓を3つにして視認性を確保したりと今までにないような車を作らなければなりません。
トヨタもJAXAも、自分たちだけで作るというよりは、100社以上の協力のもとで製造されるローバを「日本のローバ」と捉えています。
打ち上げは2029年
ルナ・クルーザーは2029年に打ち上がる予定です。
月を拠点にできれば、さらなる宇宙開発も期待できます。
月を攻略したら、次は火星ですが、宇宙の資源の必要性や、宇宙での知見が地球でどう活かせるかなどを考えると、トヨタのルナ・クルーザーには、ぜひ成功してほしいものです。