ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

プジョー308SW GT BlueHDi に乗って長距離を走ってきた![MJ]

プジョーの基幹車種であり、日本でも手ごろなサイズで人気のあるプジョー308。

ボディバリエーションはハッチバックとSWと呼ばれるステーションワゴンの2種類があり、後者を3800kmほど旅に連れ出したので、その印象をレポートする。

〇文・写真:内田俊一

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3つのパワートレインと2つのボディタイプ

プジョー308。写真:内田俊一

フルモデルチェンジし3代目に進化したプジョー308は2022年より日本にも導入されている。

パワートレインは1.2リッター直列3気筒ターボガソリンエンジン、1.5リッター直4ターボクリーンディーゼルエンジン、1.6リッター直列4気筒ターボガソリンエンジンにモーターが組み合わせたPHEVの3種類をラインナップ。

1.2リッターガソリンエンジンの最高出力は130ps、最大トルクは250Nmで、燃費はWLTCモードで17.9km/l。
1.5リッタークリーンディーゼルエンジンは、最高出力が130ps、最大トルク が300Nm、燃費は21.6km/l(SWは17.6km/l)だ。
そしてPHEVは、180ps の1.6リッター4気筒ガソリンエンジンに110psのフロント電動モーターを組み合わせることによって、システムトータルで225psを発揮。

容量12.4kWhのリチウムイオンバッテリーが、リアアクスル下に搭載されており、EV走行可能距離は64km(ハッチバックのWLTCモードで燃費は17.3km/lとなっている。
充電時間の目安は、200V 3kWチャージャーで約5時間、6kWで約2時間半だ。

プジョー308。写真:内田俊一

先代と比較しボディサイズは拡大し、

  • ハッチバック
    • 全長:4,420mm(+145mm)
    • 全幅:1,850mm(+45mm)
    • 全高:1,475mm(+5mm)
    • ホイールベース:2,680mm(+60mm)
  • SW
    • 全長:4,655mm(+55mm)
    • 全幅:1,850mm(+45mm)
    • 全高:1,485mm(+10mm)
    • ホイールベース:2,730mm(±0mm)
    • ※()内は先代比

となった。

エクステリアデザイン

エクステリアデザインはフロントのインパクトが大きいだろう。
これまでのプジョーの縦目のきつい表情のヘッドランプは影を潜め、牙がイメージされた縦型のLEDが特徴的だ。

プジョー308。写真:内田俊一

ヘッドライトは超薄型マトリックスLEDテクノロジーを採用。
これは、フロントガラス上部のカメラが検出した周囲の状況をもとに、マトリックスLEDを自動的に最適な明るさに調整することで、周囲のドライバーを幻惑させることなくハイビームをオンの状態となり、また、夜間の追い越しや対向車などが車両に接近した場合にはハイビームの一部がオフにする機能だ。

サイドビューは60mm延長されたホイールベースによって伸びやかさとともに後席スペースが拡大している(ハッチバックのみ)。

プジョー308リヤシート。写真:内田俊一

独特のコックピット

近年のプジョーは独自のインフォテインメントシステム、Peugeot i-Cockpitを採用している。

その構成は小径ステアリングと、デジタルヘッドアップインストルメントパネル(小径ステアリングの上から見下ろす表示形式)、インパネ中央のセントラルタッチスクリーンというもので、これが大きな特徴になっている。

プジョー308ステアリング。写真:内田俊一

またGTグレードに装備されたi-Connect Advancedは、プロ-ブ交通情報を活用したリアルタイムなトラフィック情報を取得することができ、カーナビゲーションによる移動をよりスムーズなものとしている。

さらに、ボイスコントロール機能も備えられており、「OK、プジョー」という音声コマンドで起動させた後に、ナビゲーション、エアコン、シートヒーター、オーディオ、電話、天気予報検索など、さまざまな機能を声で作動、変更、停止させることができるものだ。

プジョー308タッチパネル。写真:内田俊一

さて、テストに借り出したのはBlueHDi GT SWで、ディーゼルエンジンを搭載した上級グレードだ。

ハンズフリー電動テールゲート(バンパー下に足をかざすだけでテールゲートを開閉できる)や、ルーフレール、テップレザー/アルカンターラシート、ランバーサポート、シートヒーター付き電動パワーシート、そして17インチ(225/45/R17)から18インチ(225/40/R18)にサイズアップされたアルミホイールなど、より豊富な装備が奢られている仕様だ。

プジョー308のタイヤ。写真:内田俊一

今回は九州で開催されたクラシックカーラリー、“クラシックジャパンラリー2023”の取材のために、東京から九州まで自走後、福岡や大分、熊本を巡る3泊4日の旅のあと、せっかくだからと山陰や四国を周り、トータル3800kmほどの走行距離を共に過ごしたのである。

Peugeot i-Cockpitは慣れると使いやすい

プジョー308インパネ。写真:内田俊一

プジョーブランドは308だけでなく多くのクルマに触れてきたが、最初はやはりPeugeot i-Cockpitに慣れることから始まる。

メーターの見やすさも含めて確かに慣れは必要だが、一度慣れてしまうと別のクルマに乗り換えた時に違和感を覚えてしまうほどなので、十分に乗りやすさが考慮されたレイアウトだと評価できる。

プジョー308。写真:内田俊一
プジョー308のメーター。写真:内田俊一

また、3Dメーター表示なので、若干の遠近感もあり見やすくなっている。

小径ステアリングとその上から見下ろすメーター周りのレイアウトは他にはないものなので、どうしても戸惑うことが多い。
しかしそれは慣れの問題で、小径ステアリングは街中での取り回しにメリットは大きく、わずかな舵角でより小回りがきくし、高速道路では軽く手を添えているだけで直進してくれるので、ステアリングを大きく切ることはあまりないのだ。

従って、ステアリングの操作量が少なくなるので小柄な方は特に乗りやすく感じるだろう。

プジョー308。写真:内田俊一

ただしこれは308だからいえること。

よりサイズが大きく車高の高い3008や5008では、わずかだがステアリング操作に対してボディの動きが遅れるだ。

小径ステアリングの特性で、通常のステアリグよりも切る量が少なくてもタイヤは大きく切れる(小回りがきく)ので、そのわずかな舵角でもボディがグラッと動きがちになり、ステアリングの操作に神経を使わざるを得なくなる。従って308程度のサイズと車高が最もメリットを享受できるのである。

308の魅力は疲れないこと

プジョー308。写真:内田俊一

今回東京の雑踏から高速道路、ワインディング、狭い道など日本の様々なシチュエーションを駆け巡ったのだが、そこで最も感じたことはボディサイズからくる乗りやすさだ。

クルマに乗り込みエンジンをかけて、セレクターレバーでDを選択。そこから無造作にアクセルを踏み込めば、あとは思い通りに走らせることができる。

特に慣れが必要な細い道でも視界性能は高く、かつ、斜めを含めた後方視界も良いので、ちょっとした切り返しもものともしないあたりは、パリの狭い道も意識したものだろうし、知らない道を走るのにストレスを感じさせないのはありがたかった。

だからといって運転していてつまらないということはあまりない。小径ステアリングを操りながら、ワインディングは軽やかに走り抜けるし、トルクフルなディーゼルエンジンなのでアクセルペダルを踏み込めばそれなりの加速を味わうこともできる。

プジョー308。写真:内田俊一

しかし、308の魅力はそこにはあまりない。

例えばイタリア車や日本のスポーツタイプのクルマであれば、走ろうよ!とクルマ側からアピールして来るので、ついついアドレナリンがあふれ出し、真剣にドライビングを楽しみたくなるものだ。これはこれでとても魅力的だ。

しかし人間はいつもそんなに絶好調ではないし、ある時は疲れていることもあるだろう。そういった時にクルマからたくさんの主張をされてしまうと、余計疲れてしまう。

また今回は取材の足という立ち位置を考えると、まさにフランス車は絶好な選択肢なのだ。
これはフランス車全般にいえることなのだが、クルマ側から何かアピールして来るものが特にないことが挙げられる。

プジョー308。写真:内田俊一

308でいえばエンジンは普通に回り、乗り心地は極端に悪くもなく、シートは若干後ろ下がりで他のプジョーよりは座り心地は悪いものの、多くの日本車と比較するとそこそこ快適ではある。

プジョー308。写真:内田俊一

このように例えばレーダーチャートを描いてみても、何か突出した魅力があるわけでもないのが308だ。

朝から晩まで走りづめでホテルに到着。その後食事をしたあと、その日の取材内容や写真を整理するという日課を苦もなくこなすことができたのである。

これを普段に生活に置き換えると、休日の朝早く起きて、そこから100km以上離れた行楽地などへドライブ。お昼を食べて沢山遊んで、夕方に現地を出て帰宅する。ゆっくりとお風呂に入ってから翌日の仕事の準備ができる。

これが苦も無くできるのがフランス車でありプジョー308の大きな魅力なのである。

従って今回3800km走らせて、翌日身体が痛いとか、運転したくないという思いは全くなく、一晩寝てリフレッシュした身体と気持ちで、新たにスタートが切れたのである。

また、せっかくのSWなので積載性も見ておきたい。結論から言うと荷室容量は非常に広い。

プジョー308。写真:内田俊一

後端ピラーが若干寝ているにもかかわらず、そこまで荷物を積むことは少ないので問題はなかろう。

今回大型スーツケース1個、中型1つ、小型ひとつ、その他いろいろな荷物を満載しての走行となったが、余裕をもって飲み込んでくれた。もしそれで足りなければリアシートを倒せばさらに広がるので心強い限りだ。

さらに積載位置が低いのでとても乗せやすいことも高いポイントになろう。

気になることあれこれ

しかし、もちろんプジョー308とて万能ではない。ここからは気になったことを挙げてみたい。

まずは乗り心地だ。先ほど“乗り心地は極端に悪くもなく”と書いた。本来プジョーの場合、乗り心地は良いと書きたいブランドなのだが、今回に限ってはそうは書けない。

プジョー308。写真:内田俊一

その理由は低速域から高速域までタイヤ周りが重く、バタついた印象が付きまとってしまったのだ。

先代308SWのアリュールというタイヤサイズの小さいクルマではそういったことはなかったので、どうやらサイズアップしたホイールやタイヤが大きな影響を与えているようだし、荒れた路面ではゴーゴーとロードノイズが室内に侵入してきたのもこの影響だろう。
もしこの辺りを重視する方はタイヤ径が小さいアリュールをお勧めする。

さらにタイヤサイズも影響し高速での直進安定性もこれまでよりも若干劣り、意外と修正舵を求められた。

プジョー308のタイヤ。写真:内田俊一

そこで安全運転支援システムのひとつ、レーンキープアシスト(LKA)を使用してドライバーの負担を減らそうと試みたところ、これが意外と過敏でちょっとしたことでステアリングに強く介入し驚くこともあった。
例えば工事などで車線が減ったシーンなどで、この反応が出てしまうとかなり怖い思いをすることになる。

また、アイドリングストップも問題だ。信号などで停止寸前に308のアイドリングストップは働くのだが、そのタイミングと同時くらいに進もうとしても、アイドリングストップが優先されワンテンポ以上発進が遅れてしまい、非常に危険だ。

特に右折時などで対向車の切れ目を狙って、あるいは対向車が譲ってくれてスタートしたくても、遅れてしまうので事故の確率が高くなってしまうし、あれ?と思ってよりアクセルを踏み込んでしまうこともあるだろう。

そういうこともあり、クルマに乗るとまずはアイドルストップを解除し、高速も使う場合はLKAもオフにして使用していた。

これらは本末転倒な事柄なので、もう少し日本の道路事情にあったセッティングを望んでおきたい。

同時にアイドリングストップに関係してブレーキペダルのフィールもあまりよろしくはない。
一定の踏力で踏み込み続けるとあるところでカツンと効き始めたり、そこから緩めてもあまり減速Gが変わらずに、停止時にガックンとショックを感じてしまうことが多かった。

もう少しペダルコントロールを緻密にしてもらえるとより乗りやすくなるだろう。

ただし、乗り心地や直進安定性に関してはあくまでもプジョーやフランス車の中で比較してのこと。多くの日本車などと比べると非常に高いレベルにあることは申し添えておきたい。

308の燃費

プジョー308。写真:内田俊一

最後に燃費について触れておこう。

  • 市街地:18.8km/l(17.6km/l)
  • 郊外: 22.7km/l(21.0km/l)
  • 高速: 23.1km/l(24.4km/l)

(  )内はWLTCモード値

市街地や郊外路ではWLTCの値を上回る好成績を記録し、高速においてもほぼ誤差範囲という数値だったことから、8速ATとエンジンのマッチングが非常にうまくいっていることが伺える。

いずれにせよこの数値は軽油ということもありとてもお財布にやさしく、高く評価できるものだ。

しかし、この高燃費を得るために若干ドライブフィールを損ねてしまっていることもあった。それはコースティング機能だ。

中・高速域でアクセルペダルを緩めているとエンジンとトランスミッションを切り離し、その抵抗を減らし滑空状況を作り出すことで燃費を稼ぐもので近年多くのクルマで採用されている。

タコメーターを見ていると、コースティング機能が働くとアイドリングかそれに近い回転域まで落ちて来るのでそれと分かる。
それが308でも採用されているのだが、その制御がいまひとつで道路状況に関係なく頻繁に機能してしまうのだ。

例えば高速道路でエンジンブレーキを使おうとしてアクセルペダルを戻してもコースティング機能が働いていて、僅かな減速も出来ず、結局ブレーキペダルを踏まざるを得なくなる。
これがたまにであればいいのだが、高速や郊外路ではほぼ全域で起きてしまうので非常に煩わしい思いをした。

BMWなどのように前走車をカメラなどでとらえ、その状況に応じてコースティング機能のオンオフを判断するとか、あるいは、ドライバーのアクセル開度などに応じてもう少し緻密な制御を望んでおきたい。

時代に即した308

3800kmを苦もなく走りきれたのはまさに308が十分な長距離を走ることができる実力を備えていたからだ。

細かく苦言を呈したのはもともと308が備えていた実力を損なうことに繋がっていた(例えばタイヤサイズ)からだ。
もちろんADAS系の熟成不足もあるが、これは308そのものの責任ではないことは明らかだ。

ここでいう308の責任とはクルマそのものの実力を指している。

プジョー308。写真:内田俊一

ドライバーを含めた乗員を安全にかつ快適にA地点からB地点に送り届ける。それを高い次元で実現しているのがまさに308なのである。だからこそより一層の熟成を望みたい。

さて、プジョーというとみなさんはどんなイメージをお持ちだろうか。

オシャレ、乗り心地が良い、実用的など様々だろう。

何せ乗用車から商用車まで、コンパクトカーからフルサイズのセダンやミニバンまでフルラインメーカーなのだから、様々なイメージがあって当然だ。

その中で308はまさに中堅どころ、まさにプジョーの代名詞ともいっていいクルマだといっていい。
新型になって大きく刷新されたデザインは新しさとオーソドックスさを上手く両立しており、横に高級車が並んだとしても特に気になることもないクラスレスな印象を醸し出している。

まさにいまの時代に合った、“好きだから買う”というニーズにうまく適合しているのがプジョー308といえるだろう。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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