スーパーアンビュランス(特殊救急車)とは?
緊急時に出動する車には、パトカーや消防車、救急車などが思いつくでしょう。
多くの負傷者を出すような大規模な災害の場合には、東京消防庁から特殊な車が出動することがあります。
そのひとつがスーパーアンビュランスです。
過去には地下鉄サリン事件や、最近では京王線刺傷事件でも出動しています。
テレビの中継で見たことがある人もいるのではないでしょうか。
ここでは、スーパーアンビュランスとは何かについて詳しく見ていきましょう。
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INDEX
スーパーアンビュランスとは?
スーパーアンビュランスとは、特殊救急車とも呼ばれる車です。
大規模災害や多数傷病者発生時に、現場救護所として救急活動の拠点となることを目的としています。
超大型車両で、全長は11m、全幅は2.5m、全高は3.78mあります。
通常の救急車と比べても一回り大きく、大型トラック並みの大きさです。定員数は10名で、多くの救助隊員や患者を収容することが可能です。
また、車両は左右に拡張できることが大きな特徴です。最大40平方メートルの床ができ、これにより、8床のベッドが置けるようになります。
けが人を搬送するための担架も、2基積めるような広さもあります。
車内の機能としては、手術室やレントゲン室、診察室、待合室などがあります。
また、人工呼吸器や心電図モニター、血圧計、輸液ポンプなどの医療機器も搭載しており、緊急時に必要な医療処置を行うことができるような設備を用意しています。
スーパーアンビュランスは、東京消防庁が保有する車の一種です。
大型資材搬送車や遠距離大量放水装備などとともに、災害時に機動救急救援隊として活躍します。
救急救命士を中心に動き、後方支援として人を助ける役割を担います。
スーパーアンビュランスはいつ出動する?
スーパーアンビュランスは、大きな災害や事件があった際に出動します。
多くの人が怪我をしている可能性があり、スーパーアンビュランスは現場にいち早く駆けつけて、救護所として機能します。
過去に出動したケースとしては、1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件があります。
東京の複数の地下鉄の駅で、5,800人以上の負傷者を出した事件でした。
そのほか、2008年6月8日に発生した秋葉原通り魔事件や2019年7月26日に発生した小田急線内殺傷事件など、東京で発生した無差別殺傷事件の現場にも出動しています。
そのほか、営団日比谷線脱線衝突事故や歌舞伎町ビル火災、渋谷温泉施設爆発事故の際にも活躍しました。
直近では、2021年10月31日に京王線車内で発生した京王線刺傷事件でも、出動が確認されています。
このように、スーパーアンビュランスは大きな被害が出る現場に出動して、救助活動に従事しています。
多数の人の命を守らなくてはいけない現場の中で、スーパーアンビュランスの充実した設備が必要となってくるのでしょう。
スーパーアンビュランスのベースは?
救急車などの専門車両にも、ベースとなっている車があります。
たとえば、よく見かける救急車のベースは、トヨタが製造・販売するハイエースです。
そのほか、ドクターカーにはトヨタ・コースターや日産・ジューク、軽救急自動車には軽自動車のワンボックスカーがベースとなっています。
それでは、超大型車両であるスーパーアンビュランスのベースはなんでしょうか。
スーパーアンビュランスはいすゞ ギガがベースとなっています。
いすゞ ギガとは、いすゞ自動車が製造・販売する大型トラックです。
全幅は2,490mm、全長は11,810mmあり、ホイールベースは7,125mmの大きさがあります。
大きな車体で、大容量の荷台スペースを備えているだけでなく、ディーゼルエンジンを搭載してパワフルな走りを実現しています。
高いトルクを発揮し、重い荷物を引っ張る力を持っていることも特長です。
また、安全性能や快適な運転環境にも配慮されて作られています。
ミリ波レーダーとカメラの2つの検知システムを搭載し、前方の障害物をいち早く察知します。
また、車線のずれに警報を出したり、車体の姿勢制御を行ったりもしています。
前方の障害物が避けられないと判断されると、自動で強いブレーキが作動する仕組みもあり、重大な事故を防ぎます。
運転環境については、長距離の運転でも運転手が疲れないように、車内の快適性にこだわりがあります。
運転席には大きなヘッドレストがつき、アームレストは段階なしで自由に調整可能です。
そのほか、運転スペースは圧迫感なくゆとりを持てるよう、周辺機器や収納の使いやすさに留意して設計されている点なども評価が高いポイントです。
機動救急救援隊とは?
これまで紹介したスーパーアンビュランスは、機動救急救援隊のひとつです。
他にはどのような車両があるのでしょうか。
ここでは、機動救急救援隊に含まれる車両をそれぞれ紹介します。
特殊救急車(スーパーアンビュランス)
特殊救急車は、多くの負傷者が発生する災害現場に出動して、救護所としての役割を果たす車です。
左右は2mずつ拡張できるようになっており、8つのベッドが配置されます。
いすゞ・ギガをベースにした車両で、安全性能にも優れている点が特徴です。
医療機器や医師、看護師が常駐して、重傷者の救助や治療に必要な処置を行います。
大型資材搬送車
大型資材搬送車は、その名の通り大型の資材を運搬することを目的とした車両です。
災害で選別した資材を運ぶ役目を担います。
一般救助用コンテナや林野火災用コンテナ、遠距離大量放水装置ホース用コンテナなどがあり、それぞれのコンテナは着脱可能です。
遠距離大量放水装備 送水車
遠距離大量放水装備送水車は、地震や集中豪雨などの大規模災害や浸水災害時に、遠距離から大量の水を供給する役割を担っています。
火災現場などでの消火活動において、水源から火災現場までの長距離かつ大量の水の供給を行うことが可能です。
周囲に水源がない場合にも、水中ポンプを伸ばして最大60mの範囲から水を吸い上げることができます。
遠距離大量放水装備 ホース延長車
遠距離大量放水装備ホース延長車は、送水車の水中ポンプを最大約2,000mまで延長します。
また、ホースの回収は油圧駆動式で、素早い回収が可能です。
10トン水槽車
10トン水槽車は、震災や高速道路の火災などで周囲に水利のない災害現場に10トンの水を持っていき、水利としての役割を果たします。
燃料補給車
燃料補給車は、消防車両や救急車両などの緊急自動車に燃料を補給する車です。
災害時には、燃料不足による救急車両や消防車両の活動制限を防ぐためにも、燃料補給車が必要とされます。
車体には、950リットルの軽油タンクがあります。
貨物車
貨物車は、災害現場で使用する機材・資材を運ぶためのトラックです。
デュアルファイター ドラゴン
デュアルファイター ドラゴンは、消防ロボットの一種で、無人で走行しながら放水することができます。
最大100mまで離れたところから操作でき、火災現場などでの消火活動において、危険な場所に人を送らずに放水することができます。
デュアルファイター セーバー
デュアルファイター セーバーも、デュアルファイター ドラゴンと同じく消防ロボットの一種です。
セーバーは、放水ではなく障害物除去に特化しています。
まとめ
この記事では、スーパーアンビュランスとは何かについて紹介しました。
災害現場にて活躍し、多くの人の命を救ってきた車両です。
救護室として機能するため、広い車内が必要となっており、いすゞ ギガという大型トラックがベースとなっています。
車内には、さまざまな医療機器のほか8床のベッドも備わっています。
スーパーアンビュランスの他にも、大型資材搬送車や遠距離大量放水装備送水車など災害時に活躍する車があります。
特殊な現場で働く車両について、その役割と特徴を理解しておきましょう。