車の馬力とは一体何?トルクとの違いや計算方法などを詳しく解説
乗り物などの力を表す単位として、「馬力」という言葉があります。
自動車カタログなどで馬力を用いた表現が使用されており、馬力とは何なのか疑問に思った人もいるのではないでしょうか。
なんとなく「馬の力の強さ○頭分」のように考える人が多いかもしれませんが、1馬力にははっきりとした定義があります。
正しい意味を理解していないと、車の性能を適正に比較できません。
そこでこの記事では、馬力とは何を表す単位なのかについて解説します。
馬力の概念をしっかり理解して、自動車の新しい魅力を発見しましょう。
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そもそも馬力とは何?
馬力とは、「どのくらいの重量のものを、どのくらいの時間をかけて、どのくらいの距離を動かしたか」を表す単位です。
つまり、馬力が大きくなればなるほど、重いものを、短い時間で、長い距離を動かすことができるようになります。
1馬力と聞くと、一頭の馬が動かせる力と簡単に考えてしまうかもしれませんが、1馬力の定義は次のように決まっています。
1馬力:75kgのものを1秒間に1m動かす仕事量
1秒間という短い時間の仕事量を表す数値であるため、サラブレッドなどの競走馬であれば15馬力以上の力を出すことも可能といわれています。
人間でも、短時間であれば1馬力以上の力を出すことも可能です。
車の場合は一定時間の馬力を維持することが求められるため、短時間だけ高い馬力であっても意味がありません。
なお、馬力は自動車カタログの最高出力の項目に「kW」や「PS」といった単位で表記されています。
自動車以外でも、単位として馬力が使われているものがあります。
たとえば、バイクのエンジンや船舶のエンジン、大型の業務用機器などです。
大型の船舶では、1万馬力を超えるものも少なくありません。
ちなみに馬力という単位を使い始めたのは、蒸気機関を発明し、イギリスの産業革命にも貢献したジェームズ・ワットといわれています。
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馬力とトルクの違い
自動車カタログでは、「最高出力(馬力)」と並列で記載される項目として、「最大トルク」があります。
ここでは、馬力とトルクの違いについて解説します。
前述のとおり、馬力は「どのくらいの重量のものを、どのくらいの時間をかけて、どのくらいの距離を動かしたか」を表す単位です。
一方トルクは「タイヤを回転させるための力を表す数値(単位:kgf・m)」として用いられます。
出力とトルクは密接な関係があり、車の馬力を表す計算式としては「出力(馬力)=トルク×回転数×定数(0.00136)」が成り立ちます。
イメージしやすくするために、自転車で考えてみましょう。
自転車を速く動かす場合、自転車ペダルを踏み込む力(トルク)が重要です。
ギアが重い場合は回転数は少なくなりますが、強く踏む力が必要です。
一方、ギアが軽い場合は、回転数を上げる必要があります。
いずれの場合も、大きな出力(馬力)を得るためには、ペダルにかける力(トルク)と回転数が必要になるのです。
車に置き換えて考えてみると、エンジンが生み出す最高出力(高馬力)を得るためには、エンジンがクランクシャフトをどれだけ力強く(トルク)回転させることが重要であることがわかります。
馬力の単位を紹介
会話の中などでは、「1馬力」や「100万馬力」といった言葉を使うことがありますが、世界中にはさまざまな馬力を表す単位が存在します。
ここでは、世界で使われている馬力の単位である「PS」「HP」「kW」について解説します。
PS(仏馬力)
「PS」は、主にヨーロッパ圏で使用される馬力を表す単位です。
PSはメートル法を用いた馬力であり、日本の自動車カタログでも「kW」と併記されていることが多いです。
メートル法はフランス発祥であるため、「仏馬力」とも呼ばれます。
ちなみにPSはドイツ語で馬力を意味する「Pferdestärke」を略した言葉です。
HP(英馬力)
「HP」とは、主にアメリカ・イギリスで使用される馬力を表す単位です。
HPはヤード・ポンド法を用いた馬力です。
HPは英語で馬力を意味する「Horse Power」を略した言葉であり、「英馬力」とも呼ばれます。
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kW(国際基準の馬力)
「kW(キロワット)」は、馬力を表す国際的な単位として使われています。
日本の自動車カタログでも出力(馬力)を表す項目にkWが採用されています。
国際的な単位ではありますが、アメリカなどでは馬力の主要な単位としては、HPが使用されているようです。
今回紹介した3つの単位は世界中で使われており、ややこしいと感じる人もいるかもしれません。
これらの単位の関係性は次のとおりです。
- 1PS=0.986HP
- 1PS=0.735kW
つまり、同じ「1馬力」という単位で考えると、1kW>1HP>1PSとなります。
外国製の車に興味がある人は、このように異なる単位をそろえてから比較検討する必要があるため、注意が必要です。
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馬力の計算方法について
ここでは、馬力の計算方法について解説します。
日本の自動車カタログには馬力の単位として「kW」「PS」併記されることが一般的ですが、1PS=0.735kWである点は頭に入れておきましょう。
馬力は、「トルク(kgf・m)×回転数(rpm)×定数(0.00136)」で算出できます。
たとえば、ヤリスクロス(ハイブリッド車)の場合、12.2kgf・m×5,500rpm×0.00136≒91PS(仏馬力)となります。
※参考元:トヨタ ヤリスクロス|主要諸元表
少し計算はややこしいですが、馬力はトルクの大きさと回転数の多さによって決まるということを押さえておきましょう。
また、トルクは瞬発的な力を表す数値である一方、馬力は持続的な力を表す数値である点も重要なポイントです。
高馬力な日本車を紹介!
高速域での高い加速性が求められるスポーツカーや力強い走りが求められるSUVの多くは、高馬力の車となっています。
ここでは、高馬力な日本車を2つ紹介します。
日産 GT-R
日本が世界に誇るスポーツカー、日産 GT-Rは、高性能で高馬力なスポーツカーとして知られています。
最高出力は419kW(570PS)となっており、570仏馬力とも表現されます。
※参考元:日産 GT-R|エンジン主要諸元
洗練された内外装のデザインと、日産の先端技術を駆使した走行性能の高さが特徴であり、走りを心ゆくまで楽しむことができる車といえるでしょう。
トヨタ ランドクルーザー
どのような悪路でも力強く走破できるランドクルーザーは、世界的に人気のある唯一無二の車です。
ランドクルーザー3.5Lガソリンエンジンモデルの最高出力は、305kW(415PS)となっています。
※参考元:トヨタ ランドクルーザー|主要諸元表
ランドクルーザーはあらゆる地形を走行できることを求められるため、力強い走りを実現するために高馬力となっています。
関連記事:ランドクルーザーの燃費はどのくらい?走行性能や燃費を解説!
まとめ
今回の記事では、「馬力」という言葉にスポットライトを当てて解説しました。
普段何気なく使用している馬力の具体的な意味がより明確になったと思います。
馬力という単位は、「どのくらいの重量のものを、どのくらいの時間をかけて、どのくらいの距離を動かしたか」を表すものです。
そして自動車の馬力を算出する際は、「出力(馬力)=トルク×回転数×定数(0.00136)」という計算式を使用します。
計算式は複雑ですが、一般的な自動車カタログには「kW(国際基準の馬力)」「PS(仏馬力)」などの馬力が表示されています。
車を選ぶ際には、今回紹介した馬力やトルクにも注目しながら選びましょう。