ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

スズキスイフト新型登場 スポーティーさだけでないその魅力を解説[MJ]

スズキはスイフトをフルモデルチェンジし販売を開始した。

4代目となる新型は先代まで培ってきたスポーティーさだけでなく、新しい価値を持たせて若いユーザー、特にZ世代にも受け入れられるべく開発された。

そこで開発責任者やデザイン担当者などに話を聞きながら、新型スイフトがどういうクルマなのかを解説したい。

〇文:内田俊一 写真:内田俊一・スズキ

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ポチモバナー青
ポチモバナー青

電車の方が楽だったといわれないクルマ作り

スズキスイフト。撮影:内田俊一

スイフトはコンパクトモデルとして、イメージ訴求がうまくいった例といえる。つまり、スイフトといえばスポーティーなクルマだと多くの人に感じられているからだ。

しかし、新型の開発はその点が困難を極める要因にもなった。その理由は、購入見合わせ理由にあった。

その前になぜスイフトが選ばれたのか。

スイフトを購入したユーザーにその際の重視点を聞いてみると、外観スタイルや走る楽しさ、そして足回りの良さ、そして価格が高かった。これがスイフトの強みとなる。

スイフトの購入重視点

一方で安全運転支援システムや運転を楽にするような運転支援機能といった安全装備、コネクテッドサービスは競合車に対して低く、この辺りは新型の開発においてポイントとなった。

さらに、スイフトの購入に至らなかったユーザーからは、スポーティーな外観や走りのイメージが強いため、高い走行性能を求めているユーザー向けの商品だと思われてしまっていた。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

つまりスイフトの強みが弱みにもつながっていたのだ。
そこで新型車開発において、まずは市場調査からスタート。ユーザーが何を求めているかを把握するためだ。

新型スイフトの開発が始まったのは2019年頃。そして発売が2024年なのでその間約5年。

つまりスイフトのターゲットユーザーの年齢を仮に24歳とすると、調査時点では19歳ということになる。

そういった将来のユーザーが何を求めているのかを徹底的に話を聞きに行ったそうだ。

そこで見えてきたのは、
「お客様はクルマというプロダクトに興味がないことでした。クルマにお金を使うよりは、普段の生活時間をもっと自分の楽しい充実した時間にするためにお金を使うことに重きを置いていたのです。
クルマはどちらかというと余裕があればあってもいいかという程度。そこでそういうお客様にクルマがあるともっと楽しいと感じてもらえるようなクルマを開発しなければと思いました」
と話してくれたのは、スイフトの開発責任者であるスズキ商品企画本部四輪商品第二部の小堀昌雄さんだ。

スズキスイフトと小堀昌雄氏。撮影:内田俊一
小堀 昌雄 氏

そうして見えて来た方向性は、「先代で作った資産(つまりスポーティーさ)を生かしながら、そこに新たに価値を加えて“お客様に近づいてもらえる商品”にすること」。

これを開発のベースに置いた。
「お客様がどうしてクルマから離れていくのか。その問題点をひとつずつ理解して、それをひとつずつ取り払えることを少しでもやろう」としたのだ。

小堀さんはその例えとして室内空間を挙げる。

スズキスイフト助手席、撮影:内田俊一

「お客様にとってクルマは移動の手段であり、部屋にいるような感覚はないんですね。そうするとその狭いところにただずっと渋滞の中、我慢していなければいけない。
そんなところにお金をかけるメリットがないと思われているんです。
では、その時間が楽しくなるような室内にすればいいと考えると、ただ黒い樹脂しかないような無機質な空間ではなく、ちょっとでもリラックスできる空間にすればいい。
お客様がスマートフォンを使いながら楽しめる空間にすればいい。いろんな情報をやりとりできる装備がつけられるのであればそれがいいと考えていきました」と語る。

また運転が苦手な人がいるのであれば、
「運転が少しでも楽になる装備があればいい。少しでもお客様が使いやすくなるなどですね」。

スズキスイフト車線維持機能のスライド。撮影:内田俊一

やれることは確かに限られているかもしれないが、小堀さんは、「クルマを運転して目的地に着いた時に電車の方が楽だったといわれないようにしたいんです。
そこで新型スイフトのコンセプトは“エネルギッシュ軽やか。移動する時間を遊びに変える”というテーマにしたのです」という。

スズキスイフトと小堀昌雄氏。撮影:内田俊一
小堀 昌雄 氏

その結果として、「たとえ話として、お客様とクルマとの距離感が5m離れているとすれば、こういった施策でその距離感が4mになったとしましょう。つまり1mはクルマに近づいてもらえたわけです。
そうやってこのクルマの開発を進めていきました」とその思いを教えてくれた。

充実の安全運転支援システム

スズキスイフトACC

このように強みや弱み、そしてユーザーニーズが明確になった結果、最新の安全運転支援システムを採用し充実したものとなった。

衝突被害軽減ブレーキには、クルマや歩行者に加え、自転車、自動二輪車も検知し、交差点での万が一にも対応するデュアルセンサーブレーキサポートIIを採用。

右左折時に歩行者や自転車がいた場合や側方から接近するクルマやバイクなど、見落としが起こりやすい交差点のシーンにも対応。様々なシチュエーションで衝突の回避または衝突時の被害軽減をサポートしている。

さらに低速時ブレーキサポートは前後バンパーに内蔵した超音波センサーにより車両前方と後方の障害物との距離を測定し、障害物との衝突の可能性が高まると、衝突被害軽減ブレーキが作動し、衝突の回避または衝突時の被害軽減を図るものとなり、
アダプティブクルーズコントロールはカーブ速度抑制機能をはじめとする新機能の搭載により、安全運転のサポートに加え、長距離運転の負担軽減に貢献している。

また、車線維持支援機能はアダプティブクルーズコントロール作動中、自車が車線中央付近を走行するようステアリング操作をアシスト。
渋滞などで車線を検知しにくい状況では、先行車の走行軌跡情報を利用して、車線を維持するようアシストする。

そのほかにも夜間の視認性を大幅に向上するアダプティブハイビームシステムも採用されるなど、このクラストップレベルの安全運転支援システムが搭載された。

またちょっとした気遣いなのだが、ガソリンが減った際に警告だけでなく音声でもガイドするなど、クルマに不慣れなユーザーにも安心できる情報提供がなされている。

こういった安全運転支援システムのほか、新開発エンジンやCVTを搭載し、先代よりもさらに乗りやすさや燃費性能を追求していった。

やり直したデザイン

スズキスイフトと高橋秀典氏。写真:内田俊一
高橋 秀典 氏

さて、どんなに装備が良くてもデザインがいまひとつだとショッピングリストには載りにくい。

では新型スイフトはどういう思いでデザインされたのか。
スズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリアグループ係長の高橋秀典さんに聞いてみよう。

スズキスイフトと高橋秀典氏。写真:内田俊一
高橋 秀典 氏

「実は一度やり直しが入ったのです。
基本的な寸法や乗員の座る位置、フロントのAピラーの位置などが先代とほぼ一緒なので変化しろが少なく、かつ、スイフト=スポーティというイメージをそのまま表現した案でした。それが保守的すぎると上層部から指摘されたのです」と当時を振り返る。

そこで、「もっと変えていこう、しかもハッとするデザインを求めた結果、キースケッチをはじめとした4案にまとまりました」と高橋さん。

スズキスイフトキースケッチ
スイフト キースケッチ
スズキスイフトキースケッチ
スイフト キースケッチ

キースケッチ以外の案では、いわゆる古典的なスポーツに振った案や、先進性を最大限出してきたものもあったそうだ。

その中でキースケッチが選ばれたのは、クルマをぐるりと一周するキャラクターラインがあったからだ。
「このテーマがいままでと一番違うところですし、上層部も“これまでと変えたい”という思いが強くあったことからこの案に決まりました」と話す。

スズキスイフト最終スケッチ
スイフト 最終スケッチ
スズキスイフト最終スケッチ
スイフト 最終スケッチ

やはりスイフト=スポーティーというイメージが開発陣にも強くあり、そこから抜け出すのはひと苦労だったのだろう。またZ世代に向けてというところも難しかったようだ。

小堀さん同様高橋さんも、「(先代は)ちょっとスポーティーすぎて私のクルマじゃないという声も聞いていました。
そこでそういう方にも買っていただける、私のクルマだと思っていただくために、スポーティー路線から何かを変えていく必要があるでしょう」とデザインを進めていった。

スズキスイフトの非購入理由

スポーティーでエネルギッシュ、そして軽やかさ

では何を変えるのか。

高橋さんは、「スポーティーでエネルギッシュな部分は残しつつ、軽やかさを出そうと考えました」。そこでボディ全体をキャラクターラインで一周させることで考え方を上下でわけだ。

まず、ルーフはフローティングルーフという表現を入れた。それぞれのピラーを黒くすることで、ルーフがあたかも浮いている印象にし、軽やかさを表現。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

そしてキャラクターラインの下側は、「四隅にタイヤをガッと出して地面に対しての踏ん張り感やボディの塊感を出し、そこは先代から踏襲。そこでスポーティーさやエネルギッシュさを表現しています」。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

さらに「四隅の踏ん張り感をさらに強調するためにヘッドランプがあります。通常はランプの発光部を強調しますが、今回はそこをあえて隠す方向でシグネチャーを目立たせました。
そうすることで、低くワイドに構えた印象になり、いままでのスポーティーさをさらに昇華させています」。

スズキスイフトヘッドランプ。撮影:内田俊一

これら上下の個性を両立によってこれまでのスイフトらしさと新しさを両立させたのだ。

もうひとつ新たなユーザーに向けてデザインで工夫が凝らされたところがある。それはフロント周りだ。

高橋さんによると、「クルマ以外の最近のデザイントレンドでは、デジタル系のデザインが増えています。
そこでスマートな印象を持たれる面構成とか、多角形的な印象がデジタルネイティブの世代にも響くと考えました。そこでフロントエンドの多角形的な表現を取り入れています」という。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

具体的にはキャラクターラインがボディをぐるりと周っているが、それがボンネットの隅部分にエッジ感を出し八角形にデザインされている。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

このように角を持たせることで、単純なラウンドではなく強弱がつくので、新しさを感じさせているのだ。

新色のブルーやイエローでユーザーの好みを反映

スイフトのボディカラーといえばブルーやレッド、イエローというイメージが強いかもしれない。

新型でもこの3色は重要視されており、特にブルーとイエローは新色が投入された。

まずブルーはフロンティアブルーパールメタリックと呼ばれる。先代のバーニングレッドという3コートカラーがモチーフだ。

スズキスイフトフロンティアブルーパールメタリック2トーン

そのカラーは「非常に透明感があって深みと鮮やかさがありました」と高橋さん。そこで新色のブルーでもこの印象を持たせたいと3コートで作られたという。

スズキは2020年に100周年を迎えたことから、何か記念となるメモリアルなカラーを作ろうと開発がスタート。
スズキのコーポレートカラーである赤とブルーで対をなす、次世代のスズキを象徴するようなブルーを作ろうという目標があったそうだ。

スズキスイフト3層コート

高橋さんによると、「色を出す部分が2層になっており、最後にクリアで仕上げています。下のカラーベースは、ちょっと赤味のブルーで、2層目はそれを透かせながらグリーン味のブルーを入れました。
そうすることで、影では若干紫みたいなブルーになり、光が当たったところはグリーン味が出て非常に表情豊かな仕上がりです。特に走り去るところを見ると、非常にドラマティックに見えるでしょう」とコメントした。

こちらはこれまでのスイフトを好ましく思っていたユーザーをイメージしたカラーだそうだ。

そしてもう1色はクールイエローメタリックだ。

スズキスイフトクールイエローメタリック

「これまでのスポーティーなスイフトが大好きなお客様向けではなく、新しいお客様、Z世代のお客様に向けた色です」と高橋さん。

そこで、「最近の先進素材を使ったスポーツウェアなどの滑らかな質感と、ハイテクなイメージを表現しました。
同時にシリコン系のハイテクスニーカーの一皮被ったような乳白感や、デジタル世界の仮想空間にあるようなちょっと発光するような、蛍光色のような印象も一部取り入れられないかと思い作ったカラーです」。

黄色は、「カジュアルでポップ、あるいはスポーティーな印象になりがちですが、そことは一線画す新しいミステリアスなイエローなので、新しい世代の方に支持してもらえるようにチャレンジしたカラーです」とのことだった。

さらに今回スイフトには2トーンも用意。赤と青はこれまで通りのスポーティーなイメージを持たせたいとルーフは黒で締めた。

一方クールイエローとホワイトは、ガンメタのルーフを合わせることでコントラストを弱めている。

高橋さんは、「微妙な色合いなので、黒にするとコントラストが強すぎてボディカラーが飛んでしまうのです。
それを緩和させるためにガンメタを採用しました。非常にファッショナブルな印象にもなりましたので、ファッションにうるさいZ世代のお客様にも評価してもらえるでしょう」と語った。

そのほかインテリアにも様々なこだわりが散見されるし、新開発のエンジンやCVTに関しても語りたいことは山ほどある。

スズキスイフト運転席。撮影:内田俊一

そのあたりは試乗記の中で触れていくので、そちらをご覧いただきたい。
扱いやすいコンパクトカー、新型スズキスイフトに早速試乗

これまでのスポーティーさはスイフトのDNAとして大切にしながらも、新たなトライとして軽さをイメージし、若い世代のクルマ離れを引き留めたいという思いで開発された。

そこでクルマとの距離を縮めるために様々な方策が打たれた。

その一例がデザイン。

これまであまり見られないキャラクターラインをボディ1周回すなどがトライされ、新鮮さを感じさせている。

スズキスイフト。撮影:内田俊一

実はこのキャラクターラインは非常に難しいものだ。
なぜなら、フェンダーやドアなどラインが途切れるところがいくつもあるが、そこをずれなく通さなければ品質が悪く見えてしまい、台無しになってしまうからだ。

その精度を保ちつつこのデザインを成立させたことを高く評価したい。

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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