エアモビリティとは何なのか?国内外の開発状況について紹介
SF映画などで登場する夢の乗り物、エアモビリティ(空を飛ぶクルマ)の普及が現実味を帯びてきています。
現在、世界中でエアモビリティの開発や実験が行われており、実用化に向けてさまざまなメーカーが取り組んでいます。
この記事では、エアモビリティの概要やメリット・課題について、さらに国内外の開発状況について解説します。
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INDEX
エアモビリティとは
エアモビリティは空飛ぶクルマともいわれており、次世代の航空機として注目されています。
エアモビリティについて、経済産業省では「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」と定義されています。
ただし安全性を考慮し、しばらくは有人飛行から段階を得ての無人飛行となる見通しです。
ボディタイプとしては、複数のプロペラを装備したドローンタイプか、飛行機のような翼のあるタイプの2種類に分類されます。
航空機やヘリコプターとの大きな違いは、燃料が不要であり電力で駆動できることです。
パーツの数を大幅に減らせるので整備コストを下げることが可能です。
開発に向けて自動車メーカーも多数参入しており、トヨタ、ホンダ、スズキ、アウディなどが表明しています。
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エアモビリティのメリット
エアモビリティは、車をはじめとする乗り物と比べて多数のメリットがあります。
エアモビリティが実現することによって得られるメリットは、以下の4つです。
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移動距離と時間の短縮
エアモビリティは、車と違って道路を通行する必要がなく、立体的な移動が可能です。
飛行禁止区域を除いては、直線的な移動ができるので機械やバッテリーにかかる負担も軽減されやすいです。
また、距離が短くなるということは目的地までの到着時間短縮にも繋がります。
例えば、東京駅から車や電車でおよそ1時間圏内の距離の場合、エアモビリティで移動をすれば15分ほどで到着できると想定されています。
渋滞と環境負荷の軽減
陸路ではなく空路を使えるということは渋滞の軽減に繋がります。
都心部はかなりの割合で渋滞しがちですが、空路を使うエアモビリティなら渋滞問題を気にせずに目的地までの到着が可能です。
さらに渋滞問題が起きないということは、目的地まで延滞することなく正確な時間で到着できるため、重要な会議や時間指定の荷物の運搬の際に役に立ちます。
また、エアモビリティからは排出ガスは発生しないので、移動中に周辺の健康被害が起こることはなく、環境に優しいといえます。
山間部や離島への移動手段
山間部や過疎地などへの移動や荷物の配送の際に、陸路だとコストと時間がかかります。
さらに、離島の場合だと移動手段も少ないので不便なことが多いでしょう。
その点、エアモビリティなら移動に関するコストを気にすることなく移動が可能です。
また、時間的にも移動手段を気にする必要がないため、都心部以上に効果的な手段といえるでしょう。
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緊急時や災害時の移動や運搬に強い
陸路での移動や運搬において不便になるのが、災害時などの移動や荷物の運搬です。
河川の増水、橋や道路の崩壊は、ライフラインに甚大な被害をもたらします。
しかし、エアモビリティなら災害時や緊急時でも、影響を受けることが少ない移動が可能です。
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エアモビリティ実現のために解決すべき課題
エアモビリティはメリットが多い一方で、実現するために解決すべき課題もあります。
エアモビリティが抱える課題についてご紹介します。
技術的な問題
万が一、エアモビリティの墜落や事故が起こった場合、地上で起こる事故よりも甚大な被害をもたらすことが予想されます。
特に人の移動の際の墜落は、死亡事故に直結する可能性が高いです。
そのため安全に運用するためには、高い技術力が必要不可欠です。
しかし、現在では移動中の故障やエアモビリティ同士の接触時に緊急着陸できるかどうかは不透明であり、今後の課題といえます。
また、遠方や迅速な移動は大容量のバッテリーが必要になります。
しかし、バッテリーは大型化すると重量がかさみコストもかかります。
さらに、エアモビリティの電費は電気自動車に比べてはるかにかかるため、大容量の充電設備も必要になるでしょう。
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法的な問題
エアモビリティの法律的な管轄は航空法となることが想定されています。
自動車の道路交通法や道路運送法よりも高いレベルでの法整備が求められ、特に安全に関する規定はかなりハードルが高く、安全対策にかかるコストも高額になることが予想されます。
また、接触や墜落の事故があった場合の法的責任をどこまで問われるのかも現段階では不透明な部分が多く、法律のインフラ整備が必要不可欠です。
ほかにもヘリコプターよりは小型とはいえ複数のプロペラは、かなりの騒音の元となります。
時間帯はもちろんのこと移動場所の制限もでてくることでしょう。
エアモビリティの開発状況(国内)
現在、エアモビリティに参入している国内企業の開発状況を紹介します。
トヨタ
トヨタはアメリカのエアタクシー企業である、Joby Aviationと協業してエアモビリティの開発に取り組んでいます。
トヨタは自動車で培ってきた効率的な生産方法やアフターサービス、Joby Aviationはエアタクシーの開発技術のノウハウを共有することにより、相乗効果を活かしたモビリティ事業を目指しています。
開発しているエアモビリティはパイロット含めて5人乗りで、満充電の場合は約241kmの飛行が可能です。
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SkyDrive
SkyDriveは、愛知県豊田市に本社を置く運搬用ドローン企業です。
現在は人の移動ができるエアモビリティを開発しており、開発中の機体「SD-05」は定員2名で満充電の場合は約10kmの移動が可能です。
販売価格は1億円ほどを想定しており、2025年の実用化を目指しています。
JAL
JALでは、これまでの航空機分野の知見を活かして、2023年よりドローン事業に取り組むことを目指しています。
まずは離島や山間部の過疎地に物資の運搬を行う予定です。
また災害時などの緊急物資の運搬も積極的に行うと説明しています。
さらに、空を飛ぶクルマの活用に関しては2025年の事業化を目指しています。
空港からの人の送迎や緊急物資の運搬に使われる予定です。
2025年開催予定の大阪万博において、会場周辺の飛行体験を計画しています。
エアモビリティの開発状況(海外)
現在、エアモビリティに参入している海外企業の開発状況を紹介します。
Uber
Uber (ウーバー) は、世界で初めてエアモビリティ事業に取り組んだ企業です。
韓国の自動車メーカーヒュンダイと協業で、2023年のエアモビリティのタクシー事業サービス開始に向けて取り組んでいます。
コンセプトモデルとして開発された「SA-1」は、最長100kmの運行が可能であり、充電にかかる時間は10分未満というスピードです。
サービス開始時点では操縦士が同乗しますが、将来的には完全自動運転を目指しています。
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Boeing
アメリカ大手航空機メーカーのBoeing (ボーイング) は、ドイツ自動車メーカーのポルシェと共同でエアモビリティの開発に関する覚書に署名しました。
電動垂直離着陸機のメカニズムの開発はボーイングが請け負い、試作機の製造と試験はポルシェが行います。
airbus
ボーイングに並ぶ、ヨーロッパの大手航空機メーカーのairbus (エアバス) は、2019年に有人でのエアモビリティのテストを成功させたほか、2020年には無人による自動運転を達成しています。
また2021年に発表したCityAirbus NextGenの性能は、航続距離は80kmで時速120kmの巡航速度を備えています。
エアモビリティ業界の今後
エアモビリティ業界は急速に進化しており、世界中で大企業が開発に乗り出すなど、実用化に向けた動きが活発になっています。
安全性の確保や法整備などの課題はあるものの、現行の移動手段と比較して大きなメリットと需要があることは事実です。
エアモビリティの実用化によって、現在の交通環境が一変する日もそれほど遠い未来ではないのかも知れません。
まとめ
まだ試験段階のエアモビリティですが、実用化に向けて各自動車メーカーや航空会社が開発を進めています。
各メーカーにおいて性能は飛躍的に向上しているので、今後の課題となるのは費用面や安全性を含めた技術面、法整備といえるでしょう。
これらの課題を解決できれば、日常的な空の移動が現実になる可能性も考えられるのではないでしょうか。