EV・PHEVで電気代は節約できるのか?計算結果を紹介します!
2010年12月日産から電気自動車の初代リーフが発売されて14年近くが経過しました。
近年では、環境問題への意識が高まり、世界中で電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及が進んでいます。日本でも、自動車メーカーが続々とEVやPHEVの新モデルを発表し、選択肢が増えています。
これに伴い、ガソリン車に比べてどの程度のコストを節約できるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、電気自動車が充電される仕組みやメリット、安く充電できる方法、充電費用を抑えるポイントまで解説していきます。
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INDEX
EVとPHEVの仕組みと違い
EV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)は、どちらも環境に優しい次世代の自動車として注目されていますが、それぞれの仕組みや特徴は少し違います。
まずは、EVとPHEVの基本的な仕組みと、それが電気代にどのように関わるのかを理解しておきましょう。
EV(電気自動車)とは
EVは、100%電力で駆動する自動車です。
エンジンを搭載せず、バッテリーに蓄えた電気エネルギーだけでモーターを回して走行します。ガソリンやディーゼル燃料を一切使用しないため、排出ガスが発生しないクリーンな車として知られています。
EVの充電は、一般的に家庭用のコンセントや専用の充電スタンドを使用して行います。充電にかかる電気代は、車両のバッテリー容量と電力消費効率によって変動します。
たとえば、50kWhのバッテリーをフル充電するには50kWh分の電力が必要になり、電力消費効率が高いほど走行距離あたりの電気代は安くなります。
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PHEV(プラグインハイブリッド車)とは?
一方、PHEVはガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせた車両です。
短距離であれば、バッテリーに蓄えた電力だけで走行できますが、バッテリーが切れた場合はガソリンエンジンが作動し、通常のハイブリッド車のように走行可能です。
PHEVの特徴は、EVモードとハイブリッドモードを使い分けることで、効率的な走行が可能な点です。
PHEVの電気代に関しては、基本的にはEVモードで走行する距離分の電力を計算しますが、長距離走行の場合はガソリンを併用するため、電気代だけではなくガソリン代もかかる点に注意が必要です。
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EVとPHEVが電気代に与える影響の違い
EVは完全に電気だけで走行するため、電気代がすべてのコストに直結します。
一方、PHEVはバッテリー切れや長距離走行時にガソリンを使用するため、電気代だけではなくガソリン代の節約効果も考慮する必要があります。
そのため、日常的に短距離の通勤や買い物などに使う場合はPHEVでも電気代が節約できることがありますが、走行距離が長くなるほどガソリンの使用割合が増え、電気代の節約効果は相対的に低くなります。
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EV・PHEVが充電される仕組み
ここでは、EVやPHEV、特にEVがどうやって充電されるかという仕組みについて解説していきます。
バッテリーに蓄電した電気で走る
EVやPHEVには、バッテリー(蓄電池)が搭載されています。
充電設備がある場所で搭載されているバッテリーに電気を充電し、走行時には充電された電気を利用したモーターの力で走行します。
ガソリンを燃やし、エンジンを動力にして走行するガソリン車とは異なり、電気自動車は有害な排気ガスを排出しないのが特徴です。
普通充電と急速充電
充電方法には、大きく分けて「普通充電」と「急速充電」の2種類の充電方法があります。
普通充電は、自動車を長時間使用しないで停車しておくことができる自宅の車庫で行うもので、低電力でゆっくりと充電する方法です。
充電時間は短くなってきているとはいえ、満充電までの時間は、バッテリーが空の場合だと10時間以上かかる場合もあります。
しかし、高速道路のパーキングエリアなどで充電をする際には、素早く充電ができなければ利便性が低下してしまいます。
そこで、登場するのが急速充電です。
急速充填の設備は、高速道路のパーキングエリアや大規模商業施設、ガソリンスタンド、地方公共団体施設、カーディーラーなどに用意されています。
普通充電の何倍もの大きな電力で充電できるため、30分充電するだけでかなりの電力を車のバッテリーに蓄えることができます。
移動途中の充電を手っ取り早く済ませたい場合には、急速充電を利用すると良いでしょう。
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普通充電と急速充電の充電口
普通充電と急速充電では、充電口の形状が異なります。
国産メーカーの電気自動車の多くは、2種類の充電口が1つずつ装備されています。
例外として、一部車種にはどちらか一方の充電口しかない場合もありますし、テスラのようにオリジナル形状の充電口が1つしか付いていない場合もあります。
充電料金が決まる仕組み
充電料金は、充電する場所と充電方法によって決まります。
充電する場所は自宅か、自宅以外の充電スポットを利用するかの違いになります。
また、充電方式は普通充電か、急速充電かという違いになります。
ここでは充電料金が決まる仕組みについて解説していきます。
自宅で普通充電する場合
自宅での電気料金は1kWhごとに設定されています。
1kWhとは1kWの電力を1時間使用した場合の電気使用量のことをいいます。
自宅で普通充電を行う場合、加入している電力会社のプランや昼夜によって料金が変動しますが、1kWhで約17円〜35円、平均するとおよそ30円になります。
自宅以外で充電する場合
自宅以外の充電スポットで充電をする場合、充電器を利用するために充電カードを作成する必要があります。
自宅以外で充電する場合は、充電カードの月会費と充電した時間に応じて料金がかかります。
ただし、充電カードが発行された会社によっては毎月の会費に充電利用時間が含まれていることがあります。
充電カードのプランには、普通充電のみ、急速充電のみ、普通・急速充電の3つに分かれており、普通充電が一番安く、普通・急速充電が一番高くなっています。
EV・PHEVの充電の電気代の計算シミュレーション
EVやPHEVの維持費を計算する際、電気代の計算は非常に重要です。
ここでは、一般的なEV・PHEVの充電コストを計算するための基本的な手順を見ていきましょう。計算に必要な要素は「1kWhあたりの電気料金」、「バッテリー容量」、そして「走行効率(消費電力量)」です。
1kWhあたりの電気料金
まず、1kWh(キロワットアワー)あたりの電気料金を知る必要があります。日本の一般家庭の電気代は、地域や契約プランによって異なりますが、平均的には1kWhあたり約30円程度です。
ただし、深夜電力や時間帯によってはこれより安い場合や、EV専用の割引プランを提供している電力会社も存在します。
バッテリー容量と消費電力
EVやPHEVの充電コストは、車両に搭載されているバッテリーの容量と、走行時の電力消費効率によって左右されます。
EVの場合(例:日産リーフ)
EVである日産リーフは、総電力量40kWhのバッテリーを搭載しています。
日産リーフがフル充電されると約300km走行できると仮定すると(WLTCモードでは一充電走行距離322km)、1kWhあたりの走行距離は7.5km(300km ÷ 40kWh)になります。
PHEVの場合(例:プリウスPHEV)
一方、PHEVでは電気モードでの走行距離が短いですが、例えばトヨタ・プリウスPHEVは約11.6kWhのバッテリーを搭載し、EVモードで約80km(WLTCモードでのEV換算走行距離では87km)走行可能です。
つまり、1kWhあたりの走行距離は約6.9km(80km ÷ 11.6kWh)になります。
充電費用の計算例
次に、実際の充電費用を計算してみましょう。
EV(例:日産リーフ)
- バッテリー容量:40kWh
- 1kWhあたりの電気代:30円
- フル充電にかかるコスト:40kWh × 30円 = 1,200円
- 1回のフル充電で走行できる距離:300km
- 100kmあたりの充電コスト:1,200円 ÷ 3 = 約400円
PHEV(例:トヨタ・プリウスPHEV)
- バッテリー容量:11.6kWh
- 1kWhあたりの電気代:30円
- フル充電にかかるコスト:11.6kWh × 30円 = 348円
- EVモードでの走行距離:80km
- 100kmあたりの充電コスト:354円 × 1.25 = 約435円
このように、EVは100kmあたりの充電コストが約400円に対し、PHEVはガソリンを使わない電気モードのみで計算しても約435円となり、PHEVの方が充電コストは高めになることが分かります。
1年間あたり1万キロ走行すると仮定すると、EVである日産リーフは約40,000円、PHEVであるプリウスは約43,500円となる計算です。
これは、PHEVが搭載するバッテリーが小さく、EVモードでの走行距離が短いためです。
ただし、PHEVはガソリンエンジンを併用するため、長距離走行時にはガソリン代が発生する点にも注意が必要です。
自宅と外はどちらが充電料金が安い?
ここでは、自宅と自宅以外で充電した場合、充電料金にどの程度差が出るかを試算してみます。
試算にあたっては、以下の条件を前提として行いました。
- 1ヶ月の走行距離=1,000キロ
- 交流電力消費量=155Wh/km(日産リーフのWLTCモード)
- 必要な充電気量=155kWh
- 充電は普通充電のみ
自宅で充電をした場合、電気代を30円/kWhとした場合、1ヶ月の電気代は4,650円となります。
また、自宅では充電ができないという人や、遠出が多く充電スポットをよく利用するといった人は、充電カードを作成するのが一般的です。
e-Mobility Powerの「普通充電プラン」で充電カードを作成すると仮定します。
こちらのカードは月会費で最も安いプランが税込1,540円で、急速充電は使用することができません。
月会費以外に、普通充電は1分あたり2.75円の時間課金がかかります。
充電スポットで3kwの普通充電を行った場合、55.5時間の充電時間になります。
その場合、時間課金される充電料金は9,157円となり、月会費1,540円と合わせた費用は10,697円となります。
自宅で充電をする場合は1カ月に4,650円、充電スポットで充電する場合は1カ月に10,697円と充電スポットで充電するほうが2倍以上高いという結果となります。
ガソリン車との比較
EVやPHEVの充電コストを理解したところで、次にガソリン車とのコスト比較を行いましょう。EVやPHEVの魅力の一つは、ガソリン代に比べて電気代が安く済む点です。
では、ガソリン車と比較してどれほどの節約効果があるのか、具体的な例を用いて見ていきます。
ガソリン代の計算方法
ガソリン車のコストを計算するためには、以下の要素が必要です。
- ガソリン価格(Lあたりの価格)
- 燃費(km/L)
2024年時点の日本のガソリン価格は、地域によりますが高めにとって1リットルあたり約170円とします。ガソリン車の燃費は車種によりますが、平均的な普通車の燃費は15km/Lと仮定します。これを基に、100km走行するための燃料費を計算します。
ガソリン代計算例
- 燃費:15km/L
- ガソリン価格:170円/L
- 100kmあたりのガソリン消費量:100km ÷ 15km/L = 約6.67L
- 100kmあたりのガソリン代:6.67L × 170円 = 約1,134円
これにより、一般的なガソリン車で100km走行するための燃料コストは約1,134円となります。これを先ほどのEV・PHEVの電気代と比較してみましょう。
コスト比較(100km走行あたり)
- EV(日産リーフ): 約400円
- PHEV(プリウスPHEV、EVモードのみ): 約435円
- ガソリン車(平均燃費15km/L): 約1,134円
これを見ると、ガソリン車の燃料代がEVやPHEVの電気代よりも高いことがわかります。
EVは特にコストパフォーマンスが高く、ガソリン車の半分以下のコストで走行できます。
PHEVは電気モードのみでの計算でも、ガソリン車より安いものの、EVほどのコスト削減は見られません。
長距離走行時の比較
次に、長距離走行を考慮してみます。PHEVは電気モードだけではなく、ガソリンエンジンも使用するため、ガソリン代も発生します。
たとえば、電気モードで80km走行した後に、残りの20kmをガソリンエンジンで走る場合、PHEVの100kmあたりの燃料コストは次のようになります。
- 80kmのEVモード:約218円(11.6kWhの充電コスト)
- 20kmのガソリンモード:20km ÷ 26km/L = 約0.77L × 170円 = 約131円
- 合計コスト:414円 + 131円 = 約575円
これにより、PHEVが電気とガソリンを併用して100km走行した場合のコストは約575円となり、ガソリン車よりは安いものの、EVほどの節約効果は得られません。
電気自動車の充電費用を抑えるポイント
ここでは、電気自動車の充電費用を抑えるポイントをお伝えします。
最適な電気プランを選択する
自宅で充電をする人は、最適な電気会社の料金プランを選択することがポイントです。
プランによっては、充電する時間帯によって電気代金が変動するものもあります。
昼間に外出し、夜間に帰宅する人の場合には夜間電力が安くなるプランを、反対に昼間は在宅して夜間に外出する人は昼間の電気料金が安いプランを選択することで充電費用を抑えることができます。
電費悪化を防ぐ
電費とは1kmを走るのに必要な電力のことであり、電費の悪化を防ぐことが充電費用を抑えるポイントとなります。
例えば、タイヤの空気圧が低下するとタイヤの転がり抵抗が増加してしまい、電費悪化につながってしまいます。
また、エアコンを使用することでも電費悪化につながります。
電気自動車にはシートヒーター、ステアリングヒーターといった装備があり、エアコンの代わりにヒーター類を使用することで電費の節約になります。
太陽光発電を利用する
太陽光発電の余剰電力で電気自動車を充電することができます。
余剰電力がそのまま電気自動車の動力として活用できるため、充電費用をさらに下げることができます。
ただし、自宅に太陽光発電や電気自動車の設備がない場合は、設置に高額な料金がかかってしまうため、計画的な運用が求められます。
電気自動車のメリット
ここでは、電気自動車のメリットについてガソリン車と比較して解説していきます。
部品代が安い
電気自動車は、エンジン車に比べて使用する部品が少ないのが特徴です。
エンジンやトランスミッションを必要としていないため、エンジン車に比べて交換する消耗品もはるかに少なく済みます。
エンジンオイル、オイルフィルター、点火プラグ、ATFといった消耗品が電気自動車には使われていません。
特に、最低でも年に1度は必ず交換しなければならないエンジンオイル、オイルフィルターが使われていない点は大きな違いです。
そのため、電気自動車のメンテナンス費用はガソリン車の場合よりも経済的な負担が少なく使用することができます。
走行性能が高く静か
エンジン車は、エンジンの回転数を上げなければ力を発揮できないという特徴を持っているため、停止状態から加速するまでに時間がかかります。
しかし、モーターを搭載している電気自動車は、停止状態からすぐに最大トルク(タイヤを回す力)を出せるため、加速性能にとても優れています。
また、電気自動車は車体の底に、重量物であるバッテリーを搭載しています。
そのため、非常に低重心となり安定した走行ができます。
エンジンは常に騒音と振動を発するのに対し、電気自動車はエンジンを搭載していないため、停止時には振動がなく、騒音もほとんどありません。
車内だけでなく、車外への騒音もないため、周辺環境に与える音の影響は心配がありません。
排気ガスを出さない
電気自動車は車体に搭載されたバッテリーに蓄えた電力を動力として動くため、排気ガスが出ず、環境性能に優れているといえます。
一方で、エンジン車では、運転時には有害な排気ガスを排出しています。
関連記事:PHV(PHEV)とはどんな車種?電気自動車(EV)との違いやおすすめの3台を紹介
まとめ
この記事では、電気自動車の仕組みやメリット、電気代が安くなる充電方法、充電費用を抑えるポイントについて解説してきました。
電気自動車はガソリン車と比べて、ランニングコストやメンテナンス費用などの維持費が安く、排出ガスを出さないエコな車です。
電気自動車の充電料金は自宅で充電する場合は、1kWhごとの料金となります。
また、自宅以外の充電スポットで充電する場合は充電カードが必要となり、充電カードの月会費と充電した時間の料金となります。
どちらの場所で行う充電方法であっても、電力会社や充電カード会社のプランにより料金は異なります。
充電費用を抑えるためのポイントとしては、最適な電気プランに加入する、電費悪化を防ぐ、太陽光発電を利用するなどが挙げられます。
電気自動車の購入を検討される際には、ぜひここで紹介した内容を参考にしてください。