エンジンマウントとは?役割や交換の目安・劣化した場合のリスクについて解説
車のエンジンは、「エンジンマウント」というゴム製の部品によって車体に固定されています。車に詳しくない場合、役割についてよくわからない人もいるでしょう。
エンジンマウントは車体とエンジンをつなぐ重要な部品であり、車の安全性や快適性を維持する役割があります。
この記事では、エンジンマウントの具体的な役割や交換を判断する目安、また交換の手順や劣化した場合のリスクなどについて解説します。車のことをより詳しく知りたい人は参考にしてください。
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エンジンマウントの役割
エンジンマウントはあまり知られていない部品ではありますが、車のアキレス腱といわれるほど重要な部品です。ここでは、エンジンマウントが果たしている役割について紹介します。
振動や騒音を抑える
車の走行中は、エンジンの内部で燃焼や動力の伝達が行われており、常に強く振動しています。
エンジンマウントには、エンジンを正しい位置に固定することで、振動・衝撃を吸収したり、騒音を抑えて車体に伝わらないようにしたりする役割があります。
エンジンマウントはゴムで作られているものが一般的であり、吸収力の高さによって乗り心地のよさや静粛性を実現可能です。
なお、レーシングカーの場合は、エンジンの動力を伝えやすくするためにあえて金属製のエンジンマウントが使用されていることもあります。
部品の接触を防止する
エンジンマウントがあるとエンジンの位置が固定されるため、周囲の部品と接触するリスクを軽減できます。パーツ同士がぶつかり合って劣化してしまうことも防げるでしょう。
エンジンマウントの交換目安
エンジンマウントは、長年使用していると徐々にゴムが硬くなり切れやすくなっていきます。
さらに、エンジンの熱や小刻みな振動の影響を受け続けるため、劣化しやすいパーツです。
劣化したまま車に乗り続けた場合、車の快適性が損なわれたり故障の原因になったりする可能性があります。
しかし、エンジンマウントの状態は車検の保安基準には定められていないため、交換したことがない人も多いでしょう。ここでは、どのような状態のときにエンジンマウントを交換する必要があるのかを解説します。
走行距離が10万キロを超えた場合
車の種類や日頃の運転の仕方などによっても異なりますが、一般的な目安として走行距離が10万キロを超えた時点で交換することをおすすめします。
また、車の初年度登録年月から10年以上経過している場合もエンジンマウントを確認し、交換を検討した方がよいでしょう。
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車の振動や異音を感じたとき
エンジンマウントが劣化した場合、エンジンの振動を抑える役割も徐々に損なわれ、通常時に比べて振動・異音が大きくなる可能性があります。
信号待ちの停車中に揺れが激しく感じられたり、加速時に異音が発生したりする場合は、エンジンマウントの劣化を疑いましょう。なお、オートマチック車の場合は、ギアをニュートラル(N)からドライブ(D)にシフトチェンジした際に大きな振動を感じることがあります。
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エンジンマウントの交換手順
エンジンマウントは自分で交換することも可能ですが、車に関する専門的な知識や経験がある程度必要なため、整備工場に依頼した方が安心です。
ただし、自分で交換すれば費用が部品代のみで済むため、コストを抑えられる点がメリットといえます。費用を抑えたいものの、一人での交換が不安な場合は経験者にアドバイスしてもらうとよいでしょう。
エンジンマウントの相場は、1つ当たりゴム製の一般的なタイプが約3,000円~5,000円、オイルが封入されたタイプが8,000円~10,000円程度です。
ここでは、エンジンマウントを自分で交換するときの手順について解説します。
必要な工具を準備する
まずはエンジンマウントを交換する際に必要な工具を準備します。必要な工具は以下の通りです。
- ジャッキ
- リジットラック
- メガネレンチ
- ソケット(12mm・14mm)
- ディープソケット(14㎜)
- エクステンションバー
- ラチェット
工具のほか、ボルト・ナットも新しく準備することをおすすめします。
作業に取り掛かる前に、自分の車はエンジンマウントがどこにあるかをマニュアルで確認することが大切です。交換する際は、車体の下部に潜り込んで作業します。
必要な工具が揃ったら車体をジャッキで持ち上げ、リッジトラックをかませて車を固定しましょう。作業する際に車が固定できていないと危険なため、事前にしっかり固定できているか確認します。
古いエンジンマウントを外す
エンジンマウントを固定するために使用されているボルトを、ソケットやメガネレンチなどで緩め、古いものを外します。車種の違いによってエンジンマウントやボルトの数が異なるため、注意が必要です。
新品のエンジンマウントを取り付ける
古いエンジンマウントを外した際と逆の手順で、新品の取り付けを行います。このとき、ボルトの付け忘れや紛失などに注意しましょう。
動作確認
新品のエンジンマウントの取り付けが完了したら、ジャッキを下ろし、エンジンをかけて異音や揺れがないかを確認して作業終了です。
自分でエンジンマウントの交換を行うときの注意点
エンジンマウントは自分で交換することが可能ですが、難度が高く、ジャッキで車体を持ち上げる必要があり危険を伴う作業であるため、くれぐれも慎重に行いましょう。
なお、後方のエンジンマウントが劣化しやすいため、作業を始める際は後方から一箇所ずつ交換を行うことをおすすめします。
エンジンマウントの固定に使用されているボルトなども劣化している可能性があるため、同時に新品に取り替えるとよいでしょう。
エンジンマウントを交換しないとどうなる?
エンジンマウントは定期的に交換する必要はなく、交換をしなくても車検には通るため、劣化していても長期間放置してしまうケースも考えられます。しかし、少しでも異常を感じたときは専門業者に点検を依頼し、必要であれば速やかに交換することが重要です。
ここでは、劣化が進行しても交換しなかった場合、車にどのような影響があるのか解説します。
乗り心地が悪くなる
エンジンマウントの劣化が進行した状態では、エンジンの振動が車体に伝わりやすくなるため、乗車時の揺れが激しくなることがあります。また、異常な音が発生して乗り心地が悪化するケースもあるでしょう。MT車の場合は、シフトチェンジがスムーズにできなくなるおそれがあります。
劣化がひどいときは、エンジンマウントのゴムが断裂し、振動・衝撃を軽減する機能が失われてしまいます。
エンジンの周囲の部品が損傷する
エンジンマウントが劣化し、エンジンがしっかりと固定されていない場合、振動を受けやすくなることによって、周囲の部品とぶつかり合い損傷する可能性があります。
さらに劣化が進むと、エンジンが脱落したり周囲の部品が故障したり、エンジンマウントの交換だけでは済まない重大な故障につながるおそれがあります。
まとめ
この記事では、エンジンマウントの役割や交換の目安・交換手順について解説しました。エンジンマウントは交換しなくても車検に通ることから、長期間放置する人もいる部品です。
走行距離が長い車や初年度登録から年数が経っている車に乗っている人は、エンジンマウントの交換によって乗り心地が向上する可能性があります。メンテナンスの際に交換してみると、自分の車に長く快適に乗り続けられるかもしれません。
エンジンマウントはゴム製であるため経年劣化しやすく、放置した場合は車に乗ったときの快適性が低下するだけでなく、車自体の故障につながる可能性もあります。普段とは異なる大きな振動・異音を感じたときはエンジンマウントの劣化を疑い、専門業者に点検を依頼しましょう。