「クジラ クラウン」と呼ばれた「4代目クラウン」とは?トヨタの名車にも失敗作があった?
2022年にクラウンのフルモデルチェンジが行われ、クラウン クロスオーバーが販売開始されました。
2023年には、スポーツ、エステート、セダンの残り3種のモデルもリリースされることもあり、クラウン自体への期待や興味が増している方も多いことでしょう。
今回は、歴史あるクラウンシリーズの中でも、不思議な意味で話題となった4代目クラウン、通称「クジラクラウン」について解説します。
いわゆる「旧車」に興味を持ったり、クジラクラウンに乗りたくなってみたり、新型クラウンの4つのモデルへの期待感が高まったりしていただければ幸いです。
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INDEX
クジラクラウン誕生までの歴史
今でこそトヨタのフラッグシップモデルとしての地位を確立していて、車にあまり興味のない方にも名前の通じるクラウンですが、初登場は1955年と、70年近い歴史を持っています。
今回取り上げる「クジラクラウン」は4代目に当たります。
ここでは4代目までのクラウンを紹介していきます。
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初代クラウン(1955年〜)
記念すべき初代クラウンは1953年に開発が開始され、1955年に発売されました。
当時高級車の象徴であったアメリカ車の影響を強く受けながらも、純国産の設計に成功しました。
機能性も、オーストラリアで行われたモータースポーツで外国賞3位に入るなどの成績を残しています。
この実績は、トヨタのモータースポーツの始まりでもあり、TOYOTA GAZOO Racingの原点と言っても過言ではないでしょう。
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2代目クラウン(1962〜)
1962年に販売開始された2代目クラウンは、小型車規格が新しくなったこともあり、長く幅広い車体となりました。
1960年に発表されたアメリカのフォード社の「フォード・ファルコン」をモデルにした、「フラット・デッキ・スタイル」と呼ばれるデザインを採用しました。
お馴染みの王冠マークのロゴもこの代で初登場しています。
3代目クラウン(1967年〜)
3代目クラウンは、「日本の美」をテーマにしています。
2代目まではアメリカを手本にしていた面が強く見られましたが、日本車としての路線を確立させたような形です。
販売層も社用車、公用車向けから、一般ユーザーも狙った上でのキャンペーンや、低価格化も行なっています。
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4代目 クラウン(1971年〜)
いわゆる「クジラクラウン」と呼ばれるクラウンはこの時の4代目となるモデルです。
3代目までは「トヨペット・クラウン」でしたが、奇しくも4代目からはトヨタ名義の「トヨタ・クラウン」となりました。
なぜクジラクラウンと呼ばれているのか
車体の下側の、丸みを帯びたシェイプがクジラのお腹部分に例えられ、「クジラ」の愛称がつきました。
この形は「スピンドル・シェイプ(紡錘形:ぼうすいけい)」と呼ばれ、三角窓を廃止したこと、バンパーとボディを同一色にしたことなど、当時としては斬新なデザインを採用しています。
クジラクラウンのスペック
ここではクジラクラウンの実際のスペックを紹介します。
(※参考元:1971年 NEWS from TOYOTA「ニュークラウンを発売」)
クジラクラウンのサイズ
- 全長:4,680mm
- 全幅:1,690mm
- 全高:1,420mm(RS60は1,425mm、ハードトップモデルは1,410mm)
となっており、現在のクラウンクロスオーバー(4,930×1,840×1540mm)とはもちろんそもそもの車体サイズが大きく違います。
クジラクラウンの排気量
1,988ccと発表されています。
クラウンクロスオーバーの2.4Lと2.5Lとは大きく違いますが、現行車でもおかしくはない排気量です。
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クジラ クラウンのデザイン
1971年当時のカタログに「エレガンツ・クラウン」というキャッチコピーと共に紹介された4代目クラウンは、3代目までの直線を基調としたデザインから、曲線を多用したデザインへと変化しました。
丸みを帯びたボディと2段形状のフロント、ボディバンパーを全車に標準装備した先進性は、ひょっとしたら当時の保守層には受けが悪かったのかもしれません。
今でも賛否両論あるクジラ クラウンのデザインですが、保守的になりすぎず、革新的な姿勢こそ今に続くクラウンを象徴するようです。
そしてここまで先進的な車として登場したからこそ、「不人気」と言われながらも人の記憶に残る車になり得たのでしょう。
クジラクラウンの新機能
- 後輪ESC(現在でいうところのABS:アンチロックブレーキシステム)
- EAT(電子制御式自動変速機)
- 電動リクライニング式リアセパレートシート
- EASS(現在でいうところのアイドリングストップ機能)
がこの代で追加されています。
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クジラクラウンは失敗作?
クジラと今でも言われていることから、「失敗作」と揶揄されることもありますが、現在でもケンドーコバヤシさんが好んでいたりとファンが大勢いらっしゃいます。
50年経っても愛されている車なので、失敗作とは言えないでしょう。
「スピンドルシェイプ」も、直接は関係はないですが、レクサスが「スピンドルグリル」を採用しているので、スピンドルのデザインや響きのかっこよさは憧れられています。
なぜ失敗作と言われる?
後に評価されだしたスピンドルシェイプが仇となり、夏にオーバーヒートを起こしたり、先端の見切りの悪さから運転のしにくさが指摘されたりと当時は批判の声も大きくありました。
セドリックやグロリアに販売台数で負けてしまったことも災いし、「クラウン史上唯一にして最大の失敗作」と言われることもあります。
しかし、「スピンドルシェイプ」のデザイン、最上級グレード「スーパーサルーン」の設定、「墨花」「白鳳」などの漢字表記のカラー名称などチャレンジ精神の塊と言えるかもしれません。
クラウンの最高傑作は?
8代目クラウン(1987年)が最高傑作との声が大きいです。
いつクラ
バブル景気の後押しもあり、「いつかはクラウン」のフレーズが生まれたのもこの代で、「いつクラ」と言われていました。
発売から35年経った今でも、中古車価格200万円を超えることもあるようです。
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ゼロクラ
12代目クラウン(2003年)も評判がよく、CMでの「ZERO CROWN」のキャッチコピーから、「ゼロクラ」と呼ばれています。
まとめ
クラウンは70年以上の歴史ある車です。
クジラクラウンは確かにチャレンジングな性能で、失敗もあったかもしれませんが、今では親しまれています。
このような失敗がなければ、クラウンブランドが確立されていない可能性もあります。
現在の16代目クラウンシリーズの展開も、もしかしたらクジラクラウンのおかげかもしれません。