ジャーナリスト寄稿記事

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

【SUBARUの屋台骨がフルモデルチェンジ】あのクルマといかに差別化するか〜新型インプレッサのコンセプトとデザインを解説〜[MJ]

昨年11月、ロサンゼルスオートショーでワールドプレミアした新型インフレッサが日本でも発表された。

価格は229万9000円からである。早速、開発責任者とデザイナーに話を聞きながら、より詳細に解説したい。

そこで、開発責任者とデザイナーに話を聞きながら、より詳細に解説したい。

〇文・写真:内田俊一 写真:SUBARU

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SUBARUの屋台骨

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

インプレッサは1992年の誕生なので昨年で30周年だ。
今回の新型インプレッサは6代目のモデルとなる。

SUBARUは長年にわたり、人を中心にしたクルマ作りにこだわり、安心と楽しさという価値を提供してきた。

現在インプレッサはそのSUBARUのラインナップを支える屋台骨となる非常に重要なモデルといえる。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

インプレッサは誕生当初はスポーティーなモデルとして、近年では、高い運動性能だけでなく安全支援装備も備えるクラスを超えたクルマとして、多くのユーザーに選ばれており、またグローバルモデルとして世界中の多くのユーザーにも愛されるクルマと成長した。

さて、新型となったインプレッサは、
「目的地へ向かう運転がわくわくして、いつでも楽しく乗る人全てをアクティブな行動へ後押しするモデルです」
と紹介するのはSUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネジャーの毛塚紹一郎さんだ。

今回、名称をインプレッサスポーツからインプレッサへと変更。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

「インプレッサはWRXや、以前はターボモデルもありましたが、その時代からスポーティーさや走りだけではなく、実用性や、安全面も高く評価されてきています。ですので、そういった面も含めて今回、インプレッサとしました」と毛塚さん。

現在インプレッサを中心としてSUV系はクロストレック、スポーツ系はWRXがラインナップ。
そこで、インプレッサの本来の立ち位置を明確にしたということだ。

デザインは、「より洗練させ、スピード感ある鋭いシェイプと力強さを感じさせるフェンダーにより、行動的なライフスタイルを後押しする躍動的でスポーティーなエクステリアとしました」。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

インテリアは、「大型のセンターインフォメーションディスプレーの採用など、ドライビングとアクティビティの時間を自然体で過ごせる使い勝手の良いカジュアルなインテリアにしています」と毛塚さんは説明。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

また、運動性能や動的質感では、
「新シートの開発など、車両と人体構造からアプローチで磨き上げた人に優しい動的質感や、SUBARUグローバルプラットフォーム(SGP)の進化、さらに2ピニオンの電動パワーステアリングの採用などにより、楽しく、気持ちよく疲れない、いつまでも運転したくなる走りを実現しました」という。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

重要な安全性能では、
「新世代アイサイトに広角単眼カメラの搭載をはじめとした新機能を装備し、日常のドライブからアクティビィティに向かうロングドライブ、また毎日の時まであらゆるシーンでお客様が安心して運転できるクルマになっています」とコメントした。

なお、クロストレックも毛塚さんが開発責任者を務めた。

そのクロストレックは、
「まさにインプレッサの性能をベースに、さらにSUV性能を高めたモデルです。
一方、新型インプレッサに搭載される技術や性能はクロストレックと共用しつつも、最低地上高が低く、よりスポーティーに楽しんでいただけるモデルになっています」といい、

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

「ぜひ新型インプレッサに乗って、スポーティーに、そして気軽に安心してアクティビティをとことん楽しんでいただけたら嬉しく思います」と語っていた。

基本のクルマ

スバルクロストレック,写真:内田俊一
クロストレック

SUBARUの中でインプレッサは重要な柱となる1台だがクロストレックなどがラインナップされたことで、どうポジショニングが変わったのかをもう少し詳しく聞いてみたい。

「スタンダードのモデルなので基本となるクルマあることは変わらないでしょう」と毛塚さん。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

ただし、マーケット自体が大きく変わってきている。

「SUVが世の中の主流になってきていますので、お客様の志向としてはこのクルマからスタートというよりも、クロストレックなどになるのかもしれません。
しかし、我々の考えとしては、やはり1番基本のクルマですので、そこのスタンスは決して変わらないと思います」という。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

さて、開発責任者としてインプレッサの最も重要なことは何だったのだろう。

「このクルマはシンプルなのでSUBARUの最も大切なところをきちんと入れなくてはいけないということです。
クロストレックは、よりSUVらしく見せるとか、そういう工夫をデザインをはじめいろいろなところでやりましたが、このクルマはむしろシンプルで、安全であったり、動的質感、快適で素直に走れるようなところをしっかりと作り込んでいます」という。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

なので今回の開発にあたっては、
「クルマの基本性能の部分はものすごく磨き上げていますし、私自身、重要にしたところです。
もちろん同じような考えで、クロストレックもあるわけです。
今回アイサイトXといった利便性の部分見送ったりしています。
要は本当に素のクルマ、ベースの部分をきちんと作りましょうということでやりました」と語る。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

アイサイトXとは、通常のアイサイトにプラスして、ある一定条件下であればステアリングから手を放しての走行が可能な渋滞時ハンズオフアシストなどが備わる安全運転支援システムだ。

現在レヴォーグなどに採用されているが、インプレッサでは見合された。

毛塚さんは、
「あくまでもスタンダードですので、ある程度お求めやすい価格でというところも1つポイントになります。
本当に基本的な部分を充実させたうえで、その他の部分に関しては、他のクルマにも役割がありますので、そこでやってもらう。そんな感じです」とコメントした。

そのベースの部分を充実させるために、クロストレック同様、アイサイトに単眼カメラを追加して、より広範囲の状況を把握した安全運転支援システムに進化させたものを搭載しているのだ。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

ここまで書くと、インプレッサとクロストレックのどちらを買えばいいのか迷いそうだ。

毛塚さんは、「迷っていただいて結構なんです」と笑う。

クロストレックにFFが追加されるなど、
「お客様自身が、自分のライフスタイルに合わせてクルマを選んでいただければいいのかなと思うんですね。
我々としても、クロストレックがいいとか、インプレッサがいいとかではなく、お客様のライフスタイルに合わせて、どちらのクルマを選択していただいても満足していただけるように仕上げています」と自信を見せた。

鉄板とガラスはクロストレックと共通

インプレッサとクロストレックではデザインが大きく違っている。

そこでクロストレックのデザインも担当したSUBARU商品企画本部デザイン部主査の井上恭嗣さんに聞いてみよう。

大前提として、鉄板部分やガラス部分はインプレッサとクロストレックは共通である。
つまり、フロント周りとリア周りの未変更されていることを覚えておいてほしい。

スバルクロストレック,写真:内田俊一
クロストレック
スバルインプレッサ,写真:内田俊一
インプレッサ

その作りわけについて聞いてみると、井上さんもまず市場環境から語り始める。

「世の中の状況の変化がありますよね。
SUVという市場はもはやメインボリューム。
ミニバンよりも多い状況ですし、SUVの形は、“車高が高くて厚くてごつくて箱型”というクルマだという認知も進んでいます。

一方で、先代となるXVもSUVのカテゴリーにいましたが、基本的には乗用車の車高を上げたクルマだったんです」と振り返る。

ですから、「SUVの市場が拡大している中、クルマの形がそうなっていないと選択肢に入れてもらえないんじゃないかと考えました」。

スバルクロストレック,写真:内田俊一
クロストレック
スバルインプレッサ,写真:内田俊一
インプレッサ

そうはいってもインプレッサとクロストレックとは兄弟車であるのでデザイン上の差別化は難しそうだ。

「基本的に分厚いものを作らなければいけません。
それをベースによりクロストレックの方をもっと分厚く見せるようにしています。
例えばフードを上げたりすることで、SUVの骨格を作り上げ、これならSUVに見えるだろうとしていきました。
そして、そこから車高を下げてインプレッサでも大丈夫かを確認し、修正すべきところは修正し、今度はクロストレックではどうかという確認を繰り返していったのです。
つまり、どちらかを完成させてから別のクルマを作るのではなく、両方をいっぺんに作っていったのです」と開発ストーリーを語る。

入り口は違っても使い方は同じ

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

インプレッサの商品コンセプトは“行動的なライフスタイルへと誘うユーティリティ・スポーティカー”だ。

これを踏まえながらデザインされていったのだが、このワードだけを読むとまるでSUV(スポーツユーティリティビークル)と捉えてしまいかねない。

井上さんはそれも分かったうえでこのコンセプトを受け入れていた。
「インプレッサという乗用車のユーザーと、クロストレック(先代XV)とは使用状況の傾向は同じだったんです」という。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

「インプレッサのお客様もクルマを使って遊びに出かけて、そこでアウトドアもやっているんですね。
それが他社と比較してすごく特徴的でした。
なので、アウトドアシーンでも乗用車に見えつつ、もっと外に遊びに行きたくなったり、アウトドアができたりする印象を持つようなデザインにしようと考えたのです」とのことだった。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

そこで、最初の分厚いものを作らなければいけないということがインプレッサでも活きて来るのだ。

さらに、インプレッサとして、「角とか線がちょっと多めにできてます」と井上さん。

例えばフォグランプの周りを囲っている形も、「普通は四角でいいんですけど、下側が1回多いんです」。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

リアフェンダーもリアのドアハンドルあたりから上がってきて、通常はリアコンビランプあたりにその面やラインを伸ばしてくのだが、インプレッサの場合は、リアコンビの下側へ一度下げて、そこから少し上に向かいつつリアに回り込んでいる構成だ。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

その結果として、
「しっかりカッチリした印象になりますので、アウトドアや、雪だとか雨だとかというシチュエーションでも安心できるような外観がベースになるようにしているのです」と語る。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

最終的に、
「シンプルに(クロストレックと)同じことをやっているわけです。
何が違うかといったら、ユーザーの目線として、SUVに乗りたい人と乗用車に乗りたい人がターゲットだということです」と井上さん。

「最初は僕も悩んだんです。やっていることは同じなら同じひとつのクルマでいいんじゃないか。しかし、単純に彼らの中では流行りのSUVに乗りたい、私はああいうクルマが好きという方々と、いやいや、私は乗用車がいいです。流行りじゃなくていいです。

そういうことだったので、だったら乗用車らしく見せる、SUVらしく見せるという作り分けにしたのです。それぞれの専用パーツではそういうところを注力してやっていますね」と説明してくれた。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

伸びやかさがキー

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

その乗用車らしく見せるためのインプレッサのデザインのポイントを解説してもらおう。

「SUV(クロストレック)は車高が高くて分厚いことをどう見せるか、どうやったらそうなるかに注力したわけですが、インプレッサは乗用車なので、伸びやかさが重要だと思っています。
前後に伸びやか、左右に伸びやか。そういうイメージを植え付けたいとデザインをしました」。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

専用部分は前後のバンパーとグリルがメインでそこでの差別化が主だ。
なぜなら、先に書いたように鉄板部分やガラスは全部同じだからだ。

そこで、フロントでは横長に見せたいので、クロストレックとグリルの大きさが違い、横長タイプになっている。

スバルクロストレック,写真:内田俊一
クロストレック
スバルインプレッサ,写真:内田俊一
インプレッサ

このグリルの下の部分に凹み(ナンバープレートの上部あたり)があり、それが左右を一本でつなぐように見せ、これが横長に見せる効果を生んでいる。

同時に両端に、
「目立つ部品がちょこんとついていますので、左右をより強調しています。
そういうところから見た目の印象を実際の物理的なものよりも横長に見せられるように工夫しているのです」と井上さん。

これはリアも同様で、リアリフレクター(バンパー両端の反射鏡)同士を凹みの造形でつないでるのだ。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

これが横方向の伸びやかさだが、前後方向ではどうしたか。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

「長く出来るわけではないので、どうやって感じさせるかです。
そこで、奥行きのある穴が開いているように見せるとそう感じるでしょう」。

そこで、リアではリフレクター周りがかなり深く凹んでおり、これは「ジェットエンジンやマフラーの筒状を思い出していただけると、前後の奥行を感じるのではないかと考えました」。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

フロントも、フォグランプ周りのボディー色の部分を、
「実際穴が空いてるわけではないんですけど、上半分が暗くなってて下半分が明るいので、三角形の穴が開いてるように見せているんです。そうすることで実際の車体よりも長いと感じさせるように見せています」。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一

このフォグランプの上のボディー色の部分は下向きの面になっている。通常クルマのデザインは、光を当てたいので上向きの面が多い。

しかし、「この大きな面積を思い切って下に向けることで、実際のクルマのサイズよりものびやかに見せられないかという工夫をしています」とその細部を語ってくれた。

何度もいうがインプレッサとクロストレックとでは鉄板部分と窓は共通だ。

それをそう感じさせないようにフロントとリア周りのデザインを変え、しかも、違和感なくまとめ上げるのは相当な苦労があったことだろう。

スバルインプレッサ,写真:内田俊一
スバルインプレッサ,写真:内田俊一

デザインは好き嫌いが主ではあるが、デザイナーは細部までこだわってデザインしているので、何でここはこうなっているんだろうという視点で、クルマを見てみるのも面白いだろう。

インプレッサとクロストレックをぜひ眺めてみてもらいたい。そこからそれぞれの性格が読み取れるはずだ。

関連記事:スバル クロストレックのコンセプト【デザイナーインタビュー】〜XVとの違い〜

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この記事を書いた人

モータージャーナリスト/日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

内田 俊一うちだ しゅんいち

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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