自動車で使われる高校レベルの物理学の法則や数式について
高校レベルの物理では、「正直社会に出たらあまり使わないのではないか」と思われがちです。
しかし、車が動いている以上、どうしても理解しておくべき法則や式は多数存在します。
今回は、その代表例をいくつか紹介しますので、車を運転する際に気を付けるベクトルが少し変化するかもしれません。
また、重要度を1〜5に分けてみましたので、ぜひ知っておいてください。
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INDEX
速度(重要度5)
運転、というよりは運動するすべての物質に重要な概念です。
自動車では「km/h」で表されることが多く、「時速〇〇キロメートル」と呼びます。
数式
速度(km/h)=距離(km)/時間(h) |
一般的に「車の速さ」と言ったら上記の式で求められます。
念の為、一般的な物理学での単位は「m/s:メートル毎秒」です。
以下の数式で求めることができます。
速度(m/s)=距離(m)/時間=秒(s) |
秒を時間にするにあたり、3600で割る必要があります(1時間=3600秒のため)が、「1km/h≒0.278m/s」とざっくり覚えておくとごく稀に役立ちます。
慣習的に、速度はv、距離(位置)はx、時間はtを使用することが多いです。
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加速度(重要度3)
1秒間に増えていった速度のことで、加速、減速するときの単位となります。
通常、車は常に多少の加減速が行われ、一定の速度で運動することの方が少ないので、知っておくと役に立つ概念です。
急激な加減速を行わないことが、車を大事にする運転につながります。
数式
加速度は「m/s2(メートル毎秒毎秒)」で表されます。
1秒あたりの速度の変化量だからです。
慣習的にaで表され、以下の数式で求めることができます。
加速度a(m/s2)=速度(m/s)/時間(s) |
距離を時間で2回割ることでも求められます。
加速度(m/s2)=距離(m)/時間の2乗(s2) |
加速度(m/s2)=距離(m)/時間(s)/時間(s) |
ちなみに、地球の重力加速度は9.8m/s2です。
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微分(重要度5)
運動を語る上で絶対に理解しておかないといけないのが微分です。
実は色々な数式を求める際に微分を使うと一度に色々分かったりすることもあります。
数式
一般的には以下の数式で求めることができますが、日常的に使うような重要度の高いものは大体暗記されています。
f'(x)=lim(h→0)(f(x+h)−f(x))/h |
ほとんどが時間関数なので、秒数であるtで微分することが多いです。
微分をする際には上記のようなf'(x)と表記する方法や上に点を置いていく方法、dx/dtなどのように表記する方法があります。
微分した回数を知りたいときには点やf'(x)が便利です。f”(x)なら2回、f”'(x)なら3回と一目でわかります。
しかし、多変数関数の場合に何で微分をしたのかがわかりづらいです。
積分する際にはdx/dtの表記の方が便利です。分数のように扱うことができます。
2回微分するとd2x/dt2となります。
速度は位置xの1階微分なのでv=x'(=dx/dt)、加速度は位置xの2階微分なのでa=v’=x”(=d2x/dt2)と表記することもあります。
積分(重要度4)
微分の逆ですが、高校レベルであれば物理ではあまり使いません。
下記の運動方程式を解くためには必須となります。
数式
定義自体は以下の通りなので、暗記しかありませんが、解くには「微分の逆」と考える必要があり、慣れるまではなかなかセンスが必要です。
F(x)=∫f(x)dx |
力(運動方程式)(重要度5)
運動方程式の概念をわかっておくと、自動車以外でも色々な場面で応用でき、非常に便利です。
物理学上の「〇〇力」のようなものは大体運動方程式で求めることができます。
数式
慣習的に力はFで表され、単位はN(ニュートン)です。
以下の数式で求めることができます。
F=ma |
ここで、mは質量(kg)、aは加速度(m/s2)です。
加速度が不明な場合は速度や位置で表すこともできます。
F=m×dv/dt |
F=m×d2x/dt2 |
質量は、地球上にいる限りは「重さ」「重量」と思って大丈夫です。
地球以外に行く場合は「物の動きにくさ」と考えることになります。
m=F/aに変換して、mが大きいほど力Fも大きくなっていくためです。
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慣性(重要度4)
慣性とは、動いている物体は、同じ方向、同じ速度で動き続けようとし、止まっているものは止まり続けようとする性質のことです。
慣性の法則と言ったりもします。
慣性も慣性力という力と考えると、質量によって決まり、質量が大きいほど大きくなります。
ブレーキを踏んでもすぐには止まれないのは、物体が動き続けようとしているためです。
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運動量(重要度3)
運動量は、質量×速度で表され、「物体の運動の激しさ」と言うとわかりやすいかもしれません。
衝突した際には重要な数式で、「相手へのダメージ」となります。
数式
p=mv |
単位は力積と同じで、N⋅s = kg⋅m/s2⋅s = kg⋅m/s。定義通りの単位です。
運動量には、慣習的に文字pを使います。
運動量保存則(運動量保存の法則)
運動量保存則(運動量保存の法則)とは、「運動量は、外部から力が与えられない限り、保存する(変わらない)」ということで、これは割と重要です。
運動エネルギー(重要度5)
運動エネルギーは、質量に比例し、速さの2乗に比例します。
また、運動エネルギーも、物体に何らかの力が与えられない限り保存します。(運動エネルギー保存則)
数式
運動エネルギー=1/2×mv2(=mv2/2) |
暗記の方が効率はいいですが、理屈としては、先ほどの運動量mvを積分すると出てきます。
運動エネルギーに限らずエネルギー全般の単位はJ(ジュール)で、基本的に、仕事(力×位置の変化)と同じ物です。
エネルギー保存則(エネルギー保存の法則)
自動車に出て来るエネルギーには、主に運動エネルギーと熱エネルギーが存在し、相互に変換が可能です。
エンジンでは、熱エネルギーを運動エネルギーに変えます。
ブレーキでは、運動エネルギーを熱エネルギーに変えます。
エネルギー保存則とは、エネルギーは、形が変わってもその総量は変わらないことをいいます。
微々たる物ではありますが、熱エネルギーと運動エネルギーを変換する際に音エネルギーや、位置エネルギー、摩擦エネルギーに変換されているものがあり、運動に関わるエネルギーは若干減っていきます。
仕方のない物ではありますが、今後どれだけ技術が発達しても、一定の動力源で永久的に動くことは不可能です。
なので、動力源をガソリンから、環境にいい電気や水素などに変えようとしているのですね。
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角度(重要度3)
今までの公式は直線運動についてです。
普通の運転状況を考えると、高低差を無視したとしても、右左折は確実に行うはずです。
つまりは、平面で考える必要があるのです。
そこでここでは、回転軸が固定された簡単なモデル、「極座標平面」の概念も踏まえて説明します。
極座標平面
一般的な座標平面では、「x,y平面」と呼ばれるものを使用しますが、極座標平面では、回転軸が固定され、そこからの距離(=半径r)と角度の2つから点を求めます。
度を用いる方法と、ラジアン(rad)を用いる方法があります。度では360度で1回転、ラジアンですと2πで1回転となります。
x,y平面からの変換では(x=rcosθ,y=rsinθ)となります。
0<θ<π/2を第一象限、π/2<θ<πを第二象限、π<θ<3π/2を第三象限、3π/2<θ<2πを第四象限といいます。
角速度(重要度1)
角振動数とも言い、意味は、回転する早さです。
一秒間に、1rad回るものの角速度を、1rad/s(ラジアン毎秒)といいます。
昔からの習慣で角速度は、ωで表されます。
rpm(revolution per minute、毎分回転数)も同じ意味ですが、こちらは、一分間当たりの回転数です。
ちなみに、1rpm=0.1047198rad/sです。
さらに、角速度ωrad/sを2π(rad)で割ったものを、回転数(s-1)、または周波数(Hz:ヘルツ)と言います。
これは、一秒あたりの回転数の事です。
1分は60秒なので、1Hz=60rpmです。
つまり、6000rpmで回っているエンジンは、ヘルツ表記にすると100Hzとなります。
角運動量(重要度1)
カーブを走行する(円周上を回っている)車の速度
まず、円周をωrad/sで回っている物体の速さの式は、速さ=円の半径×ωm/sです。
v=rω |
角運動量
さて、 普通の運動量は、上で説明したように、質量×速度でした。
回転している物体の運動量も同様に、運動量=質量×円の半径×角速度です。
p=mrω |
更に、角運動量はこの運動量に、円の半径を掛けたものと決められています。
角運動量 = 円の半径×(質量×円の半径×角速度)=r×mrω=mr2ω |
角運動量も、運動量と同じように、外から力を与えられない限り保存し、「角運動量保存則」と言います。
つまり、回転が止まっているものは止まり続けようとし、回っているものは回り続けようとします。
力のモーメント(トルク)(重要度4)
正しくは「力のモーメント」と言いますが、自動車では、トルクと言う言葉の方が使われますので、以下トルクを使います。
トルクとは、物体を回転させる力のことです。単位は、N・m(ニュートンメートル)です。
自動車の世界では、kg・mの方がよく使われます。
1kg=9.8Nなので、1kg・m=9.8N・mです。
数式
トルクの式は、トルク=円の半径×円の接線方向の力です。
慣習により、トルクをτとすると、以下の通りです。
τ=r×F |
ちなみに馬力=トルク×回転数です。
関連記事:車の馬力とは一体何?トルクとの違いや計算方法などを詳しく解説
遠心力(重要度5)
遠心力とは、円周上を回っている物体が、中心から外に膨らもうとする力です。
円周を回っている物体の遠心力の式は、「遠心力=質量×円の半径×角速度2」です。
更に、角度ではなく、速さの表記にすると、速さv=rωを利用すると下の数式が成り立ちます。
遠心力=mrω2 |
遠心力=mv2/r |
回転における慣性力とも考えられ自動車業界では「イナーシャ」と言われることもあります。
要は、急カーブでスピードを出しすぎると危ないよということです。
極座標での速度(重要度3)
r方向の速度をvr、θ方向の速度をvθとおくと、定義より、以下の通りになります。
- vr=vxcosθ+vysinθ
- vθ=−vxsinθ+vycosθ
また、vx、vyを導きます。
- vx=d(rcosθ)/dt=r’cosθ-rθ’sinθ
- vy=d(rsinθ)/dt=r’sinθ+rθ’cosθ
これを代入すると極座標平面での速度がわかります。
途中式が美しく綺麗に消えるのでぜひご自身でチャレンジすることをおすすめしますが、以下のようになります。
- vr=r’
- vθ=rθ’