トヨタのBEV戦略|販売台数100%を目指さないワケと技術開発について

皆さんはBEV(バッテリー電気自動車)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

BEVはエンジンに代表される内燃機関を使用せず、電力で動く自動車の総称です。

BEVは昨今重要な課題となっているカーボンニュートラルを実現するための手段として、世界中の大手自動車メーカーがしのぎを削って研究開発を進めています。

この記事では、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車が掲げるBEV戦略について解説します。

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出光のカーリース・ポチモへ
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そもそもBEVとは

トヨタbZ4X
bZ4X

BEV(Battery Electric Vehicle)は内燃機関を使用せず、電池に蓄電された電気で駆動する自動車です。

一般的に使用されているガソリン車と違い、走行中に二酸化炭素を排出しないことから、地球環境に優しい車として注目されています。

また、電気モーターで駆動することによりガソリン車よりも走行時の騒音が少ないこと、動力部品が少なく構造がシンプルなこともBEVの魅力といえるでしょう。

一方で、BEVの普及に向けては充電1回あたりの航続距離が短いことや充電設備の不足などの課題があります。

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トヨタのBEV戦略の動向

bZ4X充電ポート
bZ4X 充電ポート

大手の自動車メーカーであるトヨタは、BEVに対してどのように取り組んでいるのでしょうか。

トヨタは2030年のBEV販売目標を当初の200万台から350万台に引き上げており、BEVの販売に精力的に取り組む姿勢を見せています。

当時の豊田社長は150万台の目標上積みについて「ダイムラー、PSA、スズキの合計に相当する台数がBEVとして新たに立ち上がる規模」と述べており、いかに野心的な目標であるかがわかるでしょう。

また、トヨタはBEVを始めとしたEVのラインナップを全方位的に拡充することで、顧客のあらゆるニーズに対応することを基本路線としています。この「全方位戦略」には水素自動車も含まれているのです。

クラウン(セダン)
クラウン(セダン)

トヨタは全方位戦略をとるために、開発の効率化とブランディングという2つのテーマに取り組んでいます。

開発の効率化については、TNGA(Toyota New Global Architecture)というトヨタがグローバルで展開する設計思想を構築することで、開発にかかる無駄を省き新車のリリースにかかる時間を短縮しています。

ブランディングにおいては、高級車ブランドであるレクサスを中心にBEVのラインナップを展開する戦略をとっています。

レクサスRZとレクサス充電ステーション
レクサスRZとレクサス充電ステーション

さらには、Gazoo Racingというモータースポーツの分野でカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発と発信を行っているのです。

水素エンジンカローラ
水素エンジンカローラ

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トヨタがBEV販売台数100%を目指さないワケ

先述の通り、トヨタはカーボンニュートラルの分野では全方位戦略を推進しており、BEVなどの特定の分野に集中する戦略をとっていません。

ここでは、トヨタがBEVの販売台数100%を目指していない理由について解説します。

BEV供給に対応できるほどのインフラが整っていない

BEVは、電池に充電した電気をエネルギーにして走行する自動車です。
そのため、BEVの普及には、走行する地域に十分な充電設備が整っていることが前提となります。

しかし、充電設備が不足する地域ではBEVを販売したとしても、BEVのメリットが十分に発揮されることはないでしょう。

トヨタがBEVにのみ注力しない背景には、世界的に充電設備の拡充が進んでいるとはいえない現状があるといえます。

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税制やルールなどを見極めながら進める必要がある

近年、BEVを始めとしたEVの普及は大きく進んでいるといえるでしょう。
一方で、EVの普及においては、各国の補助金、税制、規制などの外部要因に大きく依存する側面があります。

実際にEVの普及率が高い国では、補助金や税制による支援が充実していることが多いでしょう。

トヨタはEVにまつわる税制やルールについては、自社でコントロールできない分野とみなしており、公平な視点を持って冷静に動向を注視する姿勢を保っています。

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雇用に関する問題が発生する可能性がある

従来の自動車産業は部品や鉄鋼などを供給するサプライヤーが多岐に渡ることから、裾野の広い産業といわれてきました。

一般社団法人日本自動車工業会(以降、自工会)によると自動車産業の関係人口は500万人以上であり、いかに多くの雇用を支えているかがわかるでしょう。

一方、BEVはガソリン車よりも部品数が少なく、構成がシンプルであることが特徴です。
BEVの構成部品が少ないということは、BEVの生産に関わる関係者が少なくて済むということであり、BEVの普及によって従来の自動車産業が維持してきた雇用が失われるリスクがあるのです。

トヨタの元社長である豊田氏は、自工会会長としての立場から日本で販売される新車が全てBEVになると100万人の雇用が失われると警鐘を鳴らしています。

そのような背景もあり、トヨタはBEVも含めた全方位戦略をとっているのです。

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トヨタのBEV技術開発について

ここでは、トヨタが進めているBEVの技術について代表的なものを解説します。

次世代電池

トヨタが開発している次世代電池には「普及版」と「パフォーマンス版」の2種類があります。

「パフォーマンス版」は、大幅な航続距離の延長や高速充電などのスペックを重視した電池です。
一方、「普及版」はBEVの普及につながる安価な電池を指します。

トヨタは電池の開発においても全方位戦略をとりながら、さまざまな選択肢を提供することを目指しているのです。

バイポーラ型リチウムイオン電池

バイポーラ型リチウムイオン電池は、正極と負極が同じ材料で構成されるセルを使用するものです。

従来の電池と比較して構成する部品数が少ないことから、EVの省スペース化に貢献します。

また、バイポーラ型リチウムイオン電池は電池内部の電気抵抗を減らし、より高い出力を生み出せることも大きな強みです。

BEV用全固体電池

全固体電池
全固体電池

全固体電池は、一般的にEV向け電池として使用されるリチウムイオン電池と比較し、安全性とエネルギー密度が高いとされています。

リチウムイオン電池では液体電解質を使用している一方で、全固体電池は液体を使わずに固体の電解質を採用していることから、過充電や過放電などのリスクが低減されます。

従来の電池よりも高い安全性に加え、冷却システムの簡素化や軽量化にも寄与することが期待されることから、トヨタは全個体電池の開発に注力しているのです。

出光の固体電解質小型実証設備
出光の固体電解質小型実証設備

小型eAxle

小型eAxle(Electric Axle)は、電気モーター、インバーター、減速機を一つに統合した小型駆動システムのことです。

複数の部品や機構が一つになったことで、車体の軽量化や航続距離の改善につながっており、今後のBEVの普及に大きく貢献する技術であるといえるでしょう。

マルチパスウェイプラットフォーム

トヨタは顧客のニーズに柔軟に対応し、多様な電気自動車の選択肢を提供できるように、マルチパスウェイプラットフォームという技術を有しています。

2026年に150万台のBEVを販売することを目指し、BEVのラインナップを現在進行形で充実させているのです。

まとめ

この記事では、EVの1種であるBEVをテーマにトヨタのBEV戦略について解説しました。

BEVはカーボンニュートラルを実現する手段として有望ではあるものの、充電設備の普及や航続距離などの課題が残っていることから、トヨタはBEVだけに注力することはせず、あらゆる選択肢を提供することを目指して全方位戦略をとっています。

トヨタは全方位戦略を実現するために、次世代電池の開発などさまざまな分野で研究開発を進めており、カーボンニュートラルの実現において大きな役割を果たすことが期待されます。

画像出典元:トヨタ自動車株式会社

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