電気自動車が日本で普及しない理由や今後の展望とは?
ガソリン車から電気自動車へ移行を進める「EVシフト」は、地球温暖化対策の有効な手段とされ世界規模で進んでいますが、日本では電気自動車の普及が遅れているといわれています。
今回は電気自動車を取り巻く情勢や、日本で普及が進まない理由について解説します。
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そもそも電気自動車を普及させたい理由とは?
ガソリン車の排気ガスに含まれるCO2に関するパリ協定の目標達成や地球温暖化の抑止に向けて、現在、世界中で電気自動車の普及が進んでいます。
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CO2
ガソリンの原料である石油を燃やすと発生するCO2は、地球温暖化の大きな要因の1つです。
全世界で排出されるCO2の中でも、排気ガス由来のCO2は大きな割合を占めているため、世界中で削減する流れが加速しています。
パリ協定
また、2015年に採択されたパリ協定では、世界共通の長期目標として以下を掲げました。
「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」
この目標達成に向けて、主要排出国を含む各国の目標は、5年ごとに更新し提出することが求められています。
その影響もあり、各国政府は排気ガスの出ない電気自動車の普及に力を入れているといえるでしょう。
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世界と日本で見る電気自動車の現状
現在、日本ではあまり普及が進んでいない電気自動車ですが、海外では着実に普及が進んでいます。
続いては、日本の現状とともに世界での電気自動車の普及状況を見ていきましょう。
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欧州を中心に普及が進む
環境意識の高い欧州では、電気自動車の普及が進んでいます。
例えば、環境意識が高いことで知られるドイツでは、2021年の新車販売実績のうち14%が電気自動車です。
また、欧州の中でも特に電気自動車の普及が進んでいるノルウェーでは、65%と非常に高くなっています。
こうした普及が進む背景として、欧州全体が高い環境対策意識を持っていることや、電気自動車に向いている平地が多いことが挙げられます。
また、地震などの自然災害が少なく再生可能エネルギーの生産に適した地形が多いため、発電手段の選択肢が多いことも電気自動車が普及しやすい理由といえるでしょう。
ガソリン車が根強いアメリカでも少しずつ進む
国土が広く車社会の性質を持つアメリカでは、構造が簡単でパワーを得やすいV6エンジンや、広大な国土をストレスなく走るための大排気量の車が好まれる傾向にあります。
そのため、航続距離が短く充電が必要な電気自動車は、普及しにくいといわれます。
しかし、州ごとで見るとEVの普及が進んでいる州があるのも事実です。
例えば、西海岸のカリフォルニア州では、CO2の排出制限や一定以上の電気自動車の販売が義務付けられており、普及に向けた動きが進んでいます。
また、テスラを始めとした電気自動車メーカーもあり、ガソリン車の人気が根強いアメリカでも電気自動車の普及が進んでいる傾向にあるといえるでしょう。
一方で日本ではなかなか普及が進まない
電気自動車の普及が進む国に比べて、日本の普及率は低くなっています。
2022年9月時点で、電気自動車の新車販売実績におけるシェアは4%と非常に低く、日本国内メーカーも電気自動車よりハイブリッド車のラインナップが豊富な状況です。
しかし、各自動車メーカーは、カーボンニュートラルに向けて電気自動車の開発・展開に力を入れ始めています。
また政府は脱炭素社会に向け、2035年頃を目安にガソリン車の販売を禁止する方向で動いており、今後は電気自動車の普及率が増えていく展望です。
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電気自動車が日本で普及しない5つの理由!
世界中で電気自動車の普及が進んでいますが、日本では普及が進まない理由として主に5つが挙げられます。
高騰する電気代
日本で電気自動車が普及しない理由として、電気料金が高いという問題があります。
これは発電に必要な石油や石炭、原子力燃料を輸入に頼っていることが大きな理由です。
海外から船で運んでくるため、ほかの国に比べ電気代が高くなる傾向があります。
また、火力発電に必要な液化天然ガスの価格が高騰中です。
燃料価格の高騰は電気代にも影響します。
充電が必要な電気自動車の普及が進まない理由の1つとして、電気代に対する不安が挙げられるでしょう。
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電力確保の問題
日本は電気自動車の普及が進む欧州と比較し、山が多く海に囲まれた島国です。
そのため、発電所の建設に適した場所を確保しづらく発電量に限りがあります。
また、日本は津波や地震など災害も多い国です。
東日本大震災の影響もあり、多くの原発が停止していることから、発電量を増やすことが難しいとされています。
特に近年、冷房や暖房を頻繁に使う真夏や真冬に電力が逼迫しており、政府が節電を呼びかける程です。
こうした電力の問題が、普及に対して逆風になっているといえるでしょう。
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航続距離の短さ
ガソリン車と比較すると、電気自動車は航続距離が短いデメリットがあります。
特に、短い走行と停止の「ストップアンドゴー」を繰り返す街中では、電気自動車の電力を消費しやすいです。
こうした航続距離の短さが「電気自動車は不便」という認識につながっています。
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充電スタンドの設置問題
ガソリンスタンドは全国に多数ありますが、それに比べて電気自動車の充電スタンドは多くありません。
そのため「電気自動車を購入しても充電に困るのではないか」と考える消費者も多く、こうした心配や不安が電気自動車の普及の足かせとなっています。
また、ガソリン車に対し充電に時間がかかる点や、地域によって充電スタンドの普及が遅れている点も影響しているといえるでしょう。
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ハイブリッド車のラインナップが豊富
日本の自動車メーカーには、多くのハイブリッド車がラインナップされています。
そのため、懸念点を抱える電気自動車より、利便性の高いハイブリッド車を選ぶ人が多く、電気自動車の普及が後れているといえるでしょう。
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普及しない電気自動車の今後の展望
現在、日本における電気自動車の普及率は低いものの、今後普及が進むことが予想されます。続いては、日本の今後の展望について見ていきましょう。
各メーカーや政府の取り組みに期待
政府は電気自動車の普及を推進しており、各自動車メーカーも以下のように目標を定め開発を進めています。
- トヨタ:2025年までに電気自動車を15種類投入
- ホンダ:2040年に世界で販売するすべての新車を電気自動車や燃料電池車に切替
- マツダ:2030年の世界販売での電気自動車率を25~40%の想定
国内メーカーにおける電気自動車のラインナップ増加に伴い、政府も充電スタンドの設置拡大計画を立てています。
2021年に公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置の目標を掲げました。
電気自動車の快適な走行を実現させる環境整備によって、今後、普及は加速していくでしょう。
ガソリン車との共存
政府は2035年までにガソリン車の新車販売禁止を目指していますが、この目標におけるガソリン車とは、純粋なガソリン自動車が対象になっています。
ハイブリッド車や燃料電池車などの「ガソリンも使う車」は対象から外れており、将来的にはガソリンも使う車と共存していく可能性もあるといえるでしょう。
まとめ
この記事では、電気自動車を取り巻く世界の動きや国内で普及しない理由を紹介しました。
世界中で普及が進む電気自動車ですが、日本では普及が遅れているのが現状です。
しかし、世界的な流れに伴い、各メーカーや政府において具体的な目標が掲げられ変化が見られます。
今はまだ普及率が低い電気自動車ですが、今後は充電スタンドの設置拡大など乗りやすい環境づくりが進み、利用者が広がっていく可能性が高いでしょう。