ジャックナイフ現象とは?トレーラースイング現象との違いや防ぐ方法も解説
車の運転にまつわる現象は多々ありますが、ジャックナイフ現象はあまり知名度がないようです。
トラクターやトレーラーで起こる現象なので、普通自動車しか運転していないとあまり馴染みがないでしょう。
今回は、ジャックナイフ現象について説明し、防止のための方法についても解説しますので、ぜひ最後まで読んでご参考になさってください。
この記事を参考に、ジャックナイフ現象について理解を深め、安全運転の意識に貢献できれば幸いです。
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INDEX
そもそもトレーラーとトラクターの違いとは
ジャックナイフ現象を語る上で欠かせないのが「トレーラー」と「トラクター」です。
この章ではトレーラーとトラクターについて簡単に説明します。
トラクターとは
トラクターとは、けん引するための、原動機(エンジン)付の車両のことです。
動力がない車、荷車、農業機械、被牽引車(トレーラー)などさまざまなものを引く役割があります。
トラクターの構造は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
- エンジン:トラクターの動力源
- シャーシ:トラクターの骨格
- 作業機:トラクターに装着して作業を行う機械
「シャーシ」とは、エンジンや作業機を搭載するフレームです。
シャーシの種類には、フレームが単一構造の「モノコックシャーシ」と、フレームが複数構造の「フレームシャーシ」があります。
モノコックシャーシは、軽量で強度が高いため、小型トラクターや家庭用トラクターに多く用いられ、フレームシャーシは、耐久性が高いため、大型トラクターや工業用トラクターに多く用いられています。
また、トラクターのエンジンは、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンが一般的です。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて燃費が良く、力強いトルクを発揮するため、農業用トラクターに多く用いられています。
一方で、ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンに比べて価格が安く、始動性が良いため、小型トラクターや家庭用トラクターに多く用いられています。
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トレーラーとは
トレーラーとは、トラクターによってけん引される車両のことです。
トレーラーは、荷台や客車などの車体がトラクターから独立している構造になっているため、トラクターとは別の車両として扱われます。
けん引自動車とは
けん引自動車とは、トレーラーなどの被けん引車をけん引する自動車のことです。
運転席と荷台や客車が分離できる構造のもので、前者をトラクター(またはトレーラーヘッドまたはけん引車)、後者をトレーラー(またはリヤカーまたは被けん引車)と呼びます。
日本における牽引自動車 日本の道路交通法の規定では、「けん引自動車」「けん引車」ともけん引する側(トラクター)のみを指し、けん引される側の車両(車両総重量が750 kgを超えるもので要けん引免許車輌)を「重被けん引車」としています。
けん引自動車には、以下の種類があります。
- セミトレーラー:トレーラーの荷台がトラクターから伸びたシャーシに接続されているタイプ
- フルトレーラー:トレーラーの荷台がトラクターから独立しているタイプ
- キャンピングトレーラー:キャンピングカーをけん引するためのタイプ
- ボートトレーラー:ボートをけん引するためのタイプ
- ジェットスキートレーラー:ジェットスキーなどをけん引するためのタイプ
けん引自動車を運転するには、けん引免許が必要です。
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トレーラーにおけるジャックナイフ現象とは
ジャックナイフ現象とは、けん引自動車が急ブレーキや急ハンドル操作を行った際、トラクター(動力部)とトレーラー(荷台)が「く」の字状に折れ曲がる現象です。
さまざまな要因があるといわれますが、主な原因は急ブレーキ・急ハンドル・急旋回などの急な行動、積荷の偏りです。
急ブレーキや急ハンドル操作を行うとけん引するトラクターは停止、または左右のいずれかに移動することが可能です。
しかし、後ろのトレーラーはトラクターから独立した構造となっているため突然のブレーキやハンドルに対処できず、重量があるため慣性によってそのまま進もうとします。
その結果、連結部分が無理やり押されたり振られたりすることでトラクターとトレーラーが「く」の字状に折れ曲がり、操縦不能な状態となります。
これがジャックナイフ現象です。
ジャックナイフ現象は、トレーラーの重量が大きいほど起こりやすい傾向にあります。
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ジャックナイフ現象を防ぐことはできる?
そもそもトラクターにはジャックナイフ現象を起こさない対策として横滑り防止装置が装着されています。
とはいっても、運転の仕方によってはジャックナイフ現象は起こってしまうため、運転自体に気を付けておく必要があります。
トレーラーヘッドと荷台部分の動きの差を意識した上でカーブの時などは特にスピードを抑えるよう心がけましょう。
下り坂のようにアクセルを強く踏まずともスピードが出てしまう場面や、雨や雪によって路面が濡れている際にも注意が必要です。
カーブなどがあるところでは車間距離を十分に取り、減速しながらハンドル操作とブレーキ操作を慎重に行うことが一番の対策でしょう。
危険なトレーラーの現象、ジャックナイフ現象との違いとは
トラクターで注意が必要な現象はジャックナイフ現象だけではありません。
トラクターが関連する危険な現象として、ジャックナイフ現象以外に下記が挙げられます。
- トレーラースイング現象
- プラウアウト現象
- スネーキング現象
この章ではそれぞれの現象の特徴を解説します。
トレーラースイング現象
ジャックナイフ現象と似た現象で「トレーラースイング現象」があります。
トレーラースイング現象とは、トレーラーが進路外側に大きく振られてしまう現象です。
スイングのようにトレーラーが左右に大きく振れることから、このように呼ばれています。
左右に振られてしまうため、他の車両を巻き込んだ事故にもつながりやすくとても危険です。
トレーラースイング現象の主な原因は、急なハンドル操作やブレーキです。
急ブレーキをかけると、トレーラーのタイヤがロックしてトレーラーが大きくスイングしてしまいます。
プラウアウト現象
プラウアウト現象とは前輪がロックしてハンドル操作どころかブレーキ操作も効かなくなってしまう現象です。
トラクターとトレーラーが一直線になるため、カーブで曲がりきれずに衝突してしまう恐れがあります。
プラウアウト現象も急ブレーキで起こることが多いため、運転は慎重に行いましょう。
スネーキング現象
スネーキング現象は、急なブレーキや加速によって連結部が曲がったまま操縦不能になる現象のことです。
スネーキング現象は荷物の重量バランスが崩れることで起こりますが、それだけでなくタイヤの空気圧が左右不均等だったり、タイヤの片方が摩耗して傾いていたりなど、タイヤが原因で起こることもあります。
強風や悪路など環境が要因となって起こることもあります。
激しいスネーキング現象は横転の可能性もあるため、注意が必要です。
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折りたたみナイフ現象との違いは
折りたたみナイフ現象とは、四肢の関節を他動的に動かそうとすると強い抵抗が見られ、その後、抵抗が急激に弱くなるという現象のことで、車とは全く関係がありません。
ジャックナイフ現象と折りたたみナイフ現象は言葉の意味は似ていても、全くの別物です。
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二輪車におけるジャックナイフとは
二輪車でのジャックナイフもありますが、こちらもまた全くの別物です。
二輪車におけるジャックナイフは、後輪を浮かせるウィリーの逆バージョンとも言える技(トリック)で、ストッピー、ノーズマニュアル、フロントウィリーとも言われます。
両者とも急ブレーキと慣性の法則により起こりますが、トレーラーのジャックナイフ現象とは全くの別物です。
まとめ
一口にジャックナイフ現象と言っても、車の世界では、トレーラーが「く」の字に折れ曲がるようなものを指し、折りたたみナイフ現象は医療用語です。
二輪車におけるジャックナイフはフロントウィリーのことであり、競技上の技名です。
トレーラースイング現象が最もジャックナイフ現象に近いですが、両方とも急ブレーキ、急ハンドルが原因で起こります。
けん引免許を持っている方以外には馴染みのない言葉だらけかもしれませんが、高速道路ではトラクターはこういう事故が起こりうるということを念頭において、安全な運転を心がけましょう。